「墨字原文を点字に置き換える」点訳ゆえの悩み -いただいた質問から-

       2023年1月1日

皆さま、新年あけましておめでとうございます
点訳フォーラムは、4年目を迎えました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年も数多くの質問をいただきました。特に、漢字の読みに関する質問、点訳挿入符の入れ方に関する質問、それに目次の書き方に関する質問が多かったことが心に残っています。どれも「墨字原文を点字に置き換える」という点訳の基本的なところで悩み、迷う点です。そこで、今回はこの3点について、昨年いただいた質問からご紹介します。

1.漢字を的確に読む
「てびき」第1章その6「3.調査」に関するQ&Aの数は50を超えました。難しい漢字ではなく、点訳でなければ「何となく」読み過ごしてしまうところですが、いざ点字にしようとすると、果たしてこの読みでよいのか迷ってしまいます。
昨年加わったQ&Aには、「一時」(いちじ、いっとき)、「下」(した、もと)、「間」(あいだ、ま)、「人」(にん、じん)、「開け放し」(あけはなし、あけっぱなし)などがありました。いずれも、易しい漢字ですが、文脈にあった読みをするには大いに迷う言葉です。漢字の読みは、これで解決!ということはありませんので、あくまでも考え方の参考として「Q&A」を活かしていただければ嬉しいです。
このなかで、「人」の読みは、昨年1月のブログでご紹介しましたが、今回、追加で「ニンは数詞と結合し、ジンは地名と結合する。その逆はない」との資料を見つけ、数詞のあとは「にん」、地名のあとは「じん」と断定できることが分かりましたので、ご紹介しました。
また、「開け放し」については、すでにQ&Aにある「真(っ)赤」との関係で、注意しなければならないことに気付きました。「真赤」「真白」を「まっか」「まっしろ」と読めるのは、送り仮名の省略の問題で、国語辞典にも「真(っ)赤」「真(っ)白」と促音を省略して表記することができると示されています。ですから「真赤」を「まっか」と読むこともできるわけですが、「開けっ放し」は、送り仮名の省略とは関係しませんので、「開け放し」は「あけはなし」、「開けっ放し」が「あけっぱなし」ということになります。この点、似たような表記でも読みの選択には慎重にならなければならないことを改めて感じました。

2.点訳挿入符の効果的な入れ方
点訳挿入符を入れるかどうか、どのように入れるかも非常に迷います。点訳挿入符のQ&Aもずいぶん増えましたが、点訳挿入符は個別の疑問が多く、皆さんに共通のQ&Aとはなりにくいところもあり、実際には掲載していない質問をまだまだいただいています。最近は、言葉遊びのような本も多く、漢字の説明を効率的に分かりやすくすることによって、原本の面白みも伝わるということがありますので、悩みも大きいですが、点訳のやりがいのあるところです。
そのなかで、一つの型のようにできるものがありますので、ご紹介したいと思います。

もともとぼくには「辞書狂(教)」的なところがある。
本のページの手触りを意識し、視線(指線)で活字を追いながら、紙上ワークショップをお楽しみください!
商品自体を替(変)えるしかない。
家臣たちからは「お館様(お家形様)」と呼ばれ、

上の4例のような場合、どのように点訳すればよいでしょうか。
原本に忠実に点訳しようとすると
ジショキョー(キョー)
シセン(シセン)デ
カ(カ)エルシカ
オヤカタサマ(オヤカタサマ)
となり、カッコのなかに点訳挿入符を入れると、レ下がりカッコ(②③⑤⑥の点)が3マス続くことになります。これは「てびき」p112【備考2】に反することになりますので、困ってしまって質問をいただくというケースが多かったようです。
これらの点訳はすべて、重なる読みを一つにしてその直後に二つの漢字の違いを点訳挿入符で断ることにすれば、レ下がりカッコが3つ続くことも避けられます。原本とは形が異なりますが、この方がずっと読みやすいと思います。また、読者が、説明は必要ないと思えば、点訳挿入符の部分を飛ばして読むこともできます。
私たちが考えた説明は以下の通りです。

「ジショキョー」点挿「キョー」ワ■「クルウ」、■カッコナイニ■
シューキョーノ■「キョー」点挿テキナ■~
シセン点挿ミル■セン、■カッコナイニ■ユビノ■セン点挿
カエルシカ点挿イレカエル、■カッコナイニ■ヘンカノ■ヘン点挿■ナイ

「お館様(お家形様)」の漢字の違いについては、原本でこの前後に2種類の漢字表現について言及されていず、単に2種類の書き方を示しただけでしたら、「オヤカタサマ」と書くだけで、(~)は無視して、省略するという方法もあります。
もし、漢字で2種類の表現があることを示す必要がある場合は、
①オヤカタサマ 点挿カッコナイニ■コトナル■カンジ点挿
②オヤカタサマ 点挿ヤカタワ「タテ」、カッコナイニ「イエ、カタチ」点挿
などの説明をいれてはいかがでしょうか。
3番目の「替(変)えるしかない」についても、この漢字の違いを説明しなくてもよい場合もあるかも知れません。

このような、漢字の違いの説明は、原文と同じ形、原文のとおりにこだわると、点字で読んで意味が取りにくくなる恐れがあります。一つのパターンとして、このような処理方法が分かっていると便利ではないでしょうか。なお、点訳挿入符の中はもっと分かりやすい説明があるかもしれません。あくまで一例としてお読みください。

3.目次の書き表し方
原本に忠実に点訳するということが気になって、点訳書の目次は、原本の目次を点訳することだと思っている方も多いようです。
目次に関しての質問の3つの例をQ&Aの形で示してみます。

① 原本にない目次項目を追加してよいか
・原本に目次がないが、見出しがあって点訳ではそれらを見出しとして点訳している。点訳書には目次を作成してよいか
・9マス目から、7マス目からの見出しがあるが、7マス目からの見出しが、原本目次に記載があるものとないものが混在している、原本の目次の通りに点訳すべきか
【A】
「てびき」p200の(1)にあるように、原本に目次がない場合でも目次を作ることができます。本文に見出しがあれば、目次を作成することをお勧めします。
点訳書の目次は、その点訳書の内容が分かりやすく検索できるように、作成するものです。原本の目次とは異なるものと考えてください。ですから、原本の目次にない項目でも点訳書の目次に入れてかまいません。原本の目次になくても、点訳書では7マス目からの見出しをすべて入れた方がよいと思います。

② 本文に見出しがない場合は、目次を作れないが・・・
原本には目次がなく、作者のメッセージ・献辞・本文・訳者解説の構成となっている。本文に見出しはなく1行あけがあるだけです。この場合、第2巻以降の書き始めはどうなるか。目次は1巻と最終巻に必要か
【A】
原本に目次が無く、全体の構成も、本文の前に、作者の言葉や献辞、本文の後ろに解説があるだけで、特に目次を必要としない構成ですので、点訳書にも目次を入れなくてよいと思います。なお、見出しもありませんので、第2巻以降に、点訳挿入符で囲んで(ツヅキ)と入れる必要もありません。すぐに本文を書き出します。

③ 原本の目次にある項目はすべて点訳しなければならないか
7マス見出し1項目に5マス見出しが10個ほど(原本2ページに満たないぐらいの小見出し)あるエッセイです。原本の目次にはすべての見出しが書かれていてページ数も記載してある。この場合点訳本の目次は小見出しは省略して7マス見出しのみとしてよいか。ページの間隔が狭くなっても小見出しも書くのか
【A】
一般に、原本の目次にも小見出しまで載っている場合は、点訳書の目次にも掲載します。例えば、新聞連載のコラムを単行本化したような場合など、このような形は割合よく見られます。1話1話完結していますし、タイトルから内容への想像がふくらんだり、読後にそのエピソードをもう一度読みたいときも役に立ちます。
点訳書の目次が8~10ページ程度にもなる場合もありますが、点字編集システムの見出し指定機能を用いれば、苦労しないでできます。

以上のように、原本の目次にない項目でも点訳書の見出しに入れてよいか、反対に、原本の目次には小さい見出しまですべて書いてあるが、点訳書の目次にすべて必要かなどの質問を多くいただきました。
このほか、原本の目次と本文の見出しが異なるという質問も多く、これにはいろいろな場合があり、実例を紹介するのがむずかしいのですが、点訳書の目次は、原本の目次を書くのではなく、その巻の点訳書の見出しを目次の項目として書くのが基本となることを押さえていただきたいと思います。点訳書の目次は点訳書独自のものですので、原本の目次にかかわらず、その点訳書の内容が分かりやすいように、検索しやすいように、点訳書の本文のレイアウトに準じて作成することになります。

以上、昨年いただいたご質問のなかから、3点に絞ってご紹介しました。
Q&Aの数も多くなり、目的のQ&Aを探すのもコツが必要になってきました。「Googleカスタム検索」と、「Ctrl+F」のページ内検索を有効に活用して、点訳に活かしていただけることを願っています。  (M)