コロナ禍の講習会

2022年3月1日

思うように講習会・研修会などを開催できなかったこの2年。
試行錯誤しながらすすめたこの1年。
きっと、多くの施設・団体等でも、いろいろ進められていると思いますし、Web講習があたりまえになってきている中、いまさら、という感もありますが、やってみたこと、失敗したこと、などなど、まとめてみました。
以下にまとめてみたことは、あくまでもやってきたことのまとめであって、「こうすればいい」とかいうようなお手本になるようなものではありません。
でも、うまくいかなかったことは、何かの参考になるのかな、と思ったりします。
また、これからの講習会の在り方は、どんどん変わってくると思います。メタバースとかになると、受講生も講師も、それぞれのアバターで集まって講習会が開催できていたりする??? という小説のような話も、すぐそこまで来ているのでしょうね。ワクワクします。が、まずは、今できることから。

ご紹介している「講習会」は、「フォローアップ講習」と呼んでいる講習会です。手打ち等の基本編を終了して、点字編集システムを使っています。
講習会では、現在点訳中のものについての質問を受けながら、

・文書分割・結合、見出し指定、目次作成
・取扱説明書の点訳
・グラフィック点訳
・テキストデータの利用

などを講習します。そのため、受講生もご自身のパソコンを操作しながらの講習です。
講習会は、Webと現地を組み合わせて次のように進めています。

・講師はリモート(Zoom使用)
・現地研修室は人数制限あり
・現地研修室の制限人数を超えた場合、施設内等にサテライト会場を設けて部屋を分ける
・Zoom参加の講習生複数名(Zoom参加者数は無制限)
・受講生とのデータ等のやりとりは、Dropboxやメールを使用

月1回程度の講習会を進めてきて、<絶対に必要なこと>は次の3点かなと思います。

① 開催主体の理解
② 現地でのサポート体制
③ Zoom参加者のサポート体制

①~③のそれぞれについて、書いてみます。

① 開催主体の理解
これは、各施設・団体等で異なることだと思います。この1,2年で、かなり理解が進んできていると思いますが……。
「Zoom対応なら可能」と提案しても、「対面でなければ困る」とか、「Wi-Fiの環境がない」とか……。「Zoom参加を出席扱いにできますか。学校もオンライン授業は『出席停止』扱いですが」とか、などなど。Wi-Fi環境のような物理的な問題ではなく、「対面でなければいけない」という意識がまだ全くないとは言い切れないなと感じています。もちろん、「やってみましょう」と協力してくださるところもあります。「そういう時代でしょ」と決めつけてしまうのではなく、Web講習でできること・できないことを示し、できない部分をどう補えるかを提案していくことが、理解を進めることにつながるはずだと思います。

② 現地でのサポート体制
現地でも講習を開く場合は、とてもとても大事なことでした。
プロジェクター、カメラ、集音マイクの準備などをお願いします。集音マイクは、部屋と人数に合ったものを。ちょっと安い方へ……と購入してしまうと、会場の音を拾いきれない、ということになります。最初に購入したものが、ぎりぎりの人数サイズだったせいか音を拾いきれず、会場の人には大きな声で話してもらわないといけなくなり、それでもZoom参加者には聞こえにくいということになってしまいました。現地参加者が「大きな声」で話さなくてもいいような集音マイクを準備します。
また、今年度は会場の人数制限があり、もう1部屋をサテライト会場として、現地2部屋で行うこともありました。部屋の設定等はほぼ同じです。先に購入失敗した集音マイクがもう一部屋では役に立ちました(小さめの部屋だったので)。現地サテライト会場は、そのまま外部のサテライト会場として使える方法だと思います。
会場のマイクは必ずミュートに。必要に応じて、講師が解除しながら講習を進めます。
また、Zoomは時間制限がありますので、施設等で有償版を準備してもらえるとベストです。有償版があれば、講師がZoom先にいる場合でも、ホスト交替して講習することができ、時間制限も気にせずに講習できます。

③ Zoom参加者のサポート体制
一度Zoomでつながれば、参加者のパソコンをリモート操作できます。(もちろん、参加者の許可をもらったうえで)
参加者と一緒に同じ画面を見ながら、参加者のパソコンを操作するので、うまくいかなかった箇所を、対面で伝えるのと同じような感覚でお伝えすることができます。(ただし、Zoomの設定については、リモート操作できませんでした。このことは以下で説明します)
Zoomでつながるまでは、現地に行ける方については現地対応できますが、現地に行くことができない方については電話対応になります。長電話になりますので、LINE等の無料通話を使ってできるといいと思います。ビデオ通話ができると、さらにうまく伝えることができます。

「私には無理無理!」と言っていたボランティアさんが、しっかりはまってくれました(笑)。
「これができない」→「こうしてみない?」を繰り返して、メール、クラウド、リモートと少しずつ幅を広げていくことも大事なことかなと思います。
点字だけでなく、生活の中でも活用できることが増えていきます。
しかし、ネット利用には危険もいっぱい。よくある「このパソコンはウイルス感染しています。駆除するには……」という詐欺にひっかかりそうになって、ぎりぎり防げたことも。不必要に怖がる必要はありませんが、ウイルス対策についてしっかり情報を持っておくことは、何よりも大切なことだと、改めて感じました。

③-1 Zoomの全画面表示
複数のZoom参加者から「全画面表示を解除できない」という問い合わせがありました。
このとき、Zoomでリモート操作しようとしましたが、参加者のパソコンに入っても、Zoomの画面をみることはできませんでした。考えてみれば当然かな、と思いますが、結局、Zoom設定については、リモート操作では確認できず、状況がわからないまま、しばらく講習を進めてしまいました。
その後、調べた結果、全画面解除するにはアカウントがないとできないようだということに気づき、アカウント取得してもらって解決。これは、初めてZoomを使うときに、「参加するだけならアカウント要りませんよ」と案内していたことの弊害でした。

③-2 外付けディスプレイのお薦め
全画面表示を解除できれば、パソコンの画面を2つに分けで、片方をZoomの画面に、もう片方を自分の操作画面にとすることが可能です。しかし、画面が小さかったり、他のことをしようとすると画面が変わってしまったりと、なかなか大変。そこで、可能なら、外付けのディスプレイをつけると、ぐっと操作しやすくなります。
これは、講師側にも言えることで、外付けディスプレイをそのまま共有することで、講習を進めやすくなります。
※タブレットでZoom、点字編集システムはパソコンという使い方もありだと思います。ただし、講師が受講生のデータを共有することはできなくなります。

≪Web講習で難しいなと感じたこと≫
「反応をつかみにくい」
理解してもらえているのか、先に進めていいのか、という反応を掴みにくいという点は、やりにくいな、と何度か感じました。
これは、受講する側、講習する側の「慣れ」の問題もあると思います。
Zoomにある「反応」機能。「拍手」「手を挙げる」「Good」「Bad」などなど、うまく使いこなせるといいと思います。講習の最初に、この機能のことをしっかりお伝えして、練習してもらっておけばよかったなと思いました。
現地の反応も掴みにくいです。通常の講習でも発言が少ないのに、会場の様子がカメラ越しになってしまいます。カメラをとおして表情を見ながら進めようにも、なかなかわかりません。このときは現地スタッフに、「進めていい?」の確認をとりながら進めていきました。受講する側も、もっと参加型にしていく必要を感じました。
Zoomなどを使った講習会は、従来からあるテレビ講座のような一方通行ではなく、双方向に進めていけるもの。講師が講習会の進め方をしっかり考えていく必要があると思います。

≪Web講習を組み合わせてよかったなと感じたこと≫
「現地には行けない、という方々が参加できたこと」
なんといっても、これです。「○ヵ月ぶりに顔を合わせることができた」と喜んでくださった方、引っ越されて「もう受講できないなと思っていたけれど、現地で受講しているような感覚でした」と参加してくださった方、「体力的に現地には行けないけれど、Webなら参加できます」という方。いろいろな事情で現地での講習会には参加できない、という方々が参加してくれました。
コロナ禍の「ストレス解消」にもつながったと思います。

≪まとめ……のようなもの≫
それでもやっぱり「現地」の方がいい、という方もいらっしゃいました。一度Zoomではいって、2回目からは現地で、という方。
Webをうまく利用しながら、柔軟に対応できたらいいなと思います。
そして、何よりも点字を学び、点字に親しむ機会が、減っていってしまうことがないようにと、切に願います。

最後になりましたが、点訳フォーラムの「点訳に関する資料集」には、「『点字編集システム+ZOOMのオンライン講習会』手順書」を公開しています。まだまだ初期の頃の手順書なので、改修すべき点も多々あるとは思いますが、何らかの参考にはなると思います。ご利用ください。 (Y)