「製作基準」について その2

7月10日、全視情協から『「サピエ図書館」登録点字文書製作基準(第2案)』が示されました。これは、3月に提示された第1案を、寄せられた意見によって修正した第2案です。「製作基準」そのものの意義や、第1案の問題点については、3月25日のブログ「『製作基準』について」をお読みください。
3月25日のブログは非常に多くの方にお読みいただきました。そして、おそらく、もともと問題意識を持っておられた方に加え、ブログに共感された方も全視情協に意見を寄せてくださったことと思われます。
第2案では、「はじめに」が修正され

点字表記については『点訳のてびき 第4版』に準拠することを原則とします。必要に応じて、『点訳のてびき 第4版』が基にしている『日本点字表記法 2018年版』をはじめ、点字に関する専門書籍(英語、理数、情報処理、楽譜、医学用語、試験問題等)を参考にしながら点訳してください。

と、表現が変更されました。

別紙で示された変更点の説明には

『点訳のてびき』と『日本点字表記法』を同列に扱い、どちらにも準拠するような姿勢は混乱を招くといった多くのご意見をいただきました。これらのご意見を踏まえ、『点訳のてびき』に準拠することを原則とする立場を明確にしました。

とあります。

まだ、文章として指摘したい曖昧な部分はありますが、多くの人がおかしいと思ったことに声を上げることによって、修正につながったのだと思います。

さて、第2案は、これですべて問題が無いのかというと、まだ「おかしい」、「残念だ」という点があります。
このブログをお読みの方の中には、まだ第2案に目を通していない方もいらっしゃるかもしれませんが、「サピエ」に登録する点訳書を作成する現場の声を届けることが大切です。ぜひお読みください。

残念に思う点の一つは、点字編集システム(BES)の機能を制限していると思われることで、BESの機能をこれまでと同じように使用できるようにすることを提案したいと思います

1.p2に《「文書情報編集」への記入は不要です》と切り捨ててあります。「文書情報システム」は確かに「サピエ」に登録するときに必須の項目ではありませんが、「文書情報」はBESに付いているとても便利な機能です。
今回の製作基準案には「製作注記」に記入するようにという注意事項が多くありますが、「製作注記」に記入することはもちろん必要ですが、ダウンロードしてしまうとデータは一人歩きします。いくら書誌に丁寧に書いてあってもデータにはついていきません。
「原本の一部抜粋」「手書きの図が添付されている」「手書きの本のデータ化の場合」など、文書情報に書いてあれば便利です。

2.p26に「グラフィックデータの登録」についてまとめてありますが、ここは再点検の必要があるように思われます。
(1) グラフィックデータをアップする方法として、グラフィックコードは「エーデルグラフィック」を選択と書かれています。これでは「Winグラフィック」は登録できないように読み取れてしまいます。たしかにBESのグラフィックは制約が多いのですが、数学の図形や放物線などを描くには、十分ですし、BESのデータの中にグラフィックを自由に入れることができます。さらにBESのグラフィックデータは今年もアップされています。グラフィックデータは「エーデルグラフィック」を選ぶと限ってしまわないで、「Winグラフィック」も選べることを書く必要があります。

(2) BESEで変換したBESデータを登録する注意が大きなスペースを取って書かれていますが、よく読むと、BESEには不具合はないことが分かります。点字編集システムやBESEの最新バージョンを使用するという、一般的な注意以外は必要ないようです。また、(3)(ア)は製作注記に書くにはそぐわない表現です。
さらに、サピエ会員からデータの提供の求めがあった場合については、手書きの図なども同じことですからここに書くべき表現ではありません。

(3) グラフィックでは、エーデルで作成したデータを変換してBESにすることができるBESEが開発され、前回の製作基準では、できるだけ文書をBESに統一しようという方向でした。エーデルブックでアップするのはやむを得ない場合としていたのに、エーデルブックのデータの種類を.ebkに.hebkを加えようというのは納得できません。フリーソフトの開発に合わせてデータの種類を増やしていっては、データの統一はできないと思います。サピエのデータはBESが原則です。

このほかいくつか気になる箇所はありますが、主な点を挙げてみました。
皆さんも気になる点がある場合は、施設・団体を通して意見を出した方がよいと思います。新しい製作基準にすべての施設・団体が従って、サピエに登録される点字データの標準化を図るために、現場で点訳に関わるボランティア、担当職員の意見が最も大切です。(M)