あらためて、点訳フォーラムの内容紹介

            2024年9月1日

毎日活用していただいている点訳フォーラム、いまさら内容紹介?と思われるかもしれませんが、点訳フォーラムは日々(月々?)進化しています。

1.Q&Aの「その他」に注目!
Q&Aは『点訳のてびき第4版』(以下、「てびき」)の第1章~第5章の内容に従い、規則の順に並べてまとめています。「てびき」のページ順に並んでいますので、その点では、求める回答を探しやすいのではないかと思います。
ところが、質問のなかには、どの章にも当てはまらない、直接解決につながるような説明が「てびき」に載っていない疑問も寄せられます。できるだけ第1章~第5章に振り分けているのですが、どうしても適当な場所がなく、だけど「これは、点訳の場面では遭遇するかも」という質問を、Q&Aの目次の一番下に「その他」を設けて収載しています。
8月1日現在で「その他」は、39項目あります。
たとえば、絵本の点訳で、絵の説明は?原本でページ替えの所は点訳ではどうしたらいい?会話文だけで構成されていて絵を見なければ誰の言葉か分からないときは?など、絵本や低学年向けの本を点訳する場合の留意点については、11.~14.16.にあります。(番号は2024年8月現在)
9.は、原文に国語辞書の掲載例が出てきた場合の点訳方法について、10.は野球の打順と守備位置が、1(中)高山、2(三)橋本、3(左)バティス のように書かれていた場合、15.は「最高裁第一小法廷平成12年3月9日判決」を記載した文書を(最一小平12.3.9民集54巻13号)のように書かれている場合の書き方、そのほか、レシピ、自動車のナンバープレート、将棋の棋譜、墓碑・檄文、アンケート、修了証、訂正文の点訳の仕方などなど、「これってどう点訳したらいいの」と迷ったときに、検索してみてください。
また、小学校などでの点字体験についてや「てびき」の「できる」についてなどもまとめています。

2.Q&A第1章その6「3.調査」の特徴
ここでは、漢字の読み分け、人名や地名の調査方法などについての質問を収載しています。現在92まで増えています。点訳作業の多くの部分を占める調査ですが、いわゆる難読漢字よりも、見過ごしやすい、または思い込みしやすい基本的な漢字を適切に読むことが意外と難しいと思います。
下(もと、した)、上がる・上る(あがる、のぼる)、見出す(みだす、みいだす)、入る(はいる、いる)、何(なに、なん)、生者(せいしゃ、せいじゃ、しょうじゃ)、品(しな、ひん)などなど。
質問をいただいて、私たちで改めて数種類の国語辞典を読み比べ、調査した結果を収載しています。そしてここでは、点訳をするならこのように読み分けた方がよいのではないでしょうかというお勧めと、校正する場合は、指摘の対象になるのか、ならないのかという視点も加えて説明を心がけています。
こちらで読んでほしいけれど、異なる読みも一般に用いられているという場合、校正者は迷います。校正の指摘箇所ではないけれど、校正者の意見として書いてもよいのではないかなど、私たちの考えを加えたところもあります。点訳フォーラムのメンバーも日々点訳・校正に携わっていますので、悩みを共に解決していきたいという姿勢がここの特徴です。

3.語例集の修正について
語例集は現在34,000語を超えて、毎月着実に語例は増加しています。最近は、今年の大河ドラマ「光る君へ」の影響もあってか、平安時代を描いた作品の点訳に取り組んでおられる方も多いようで、関連の質問をいただくことも多く、その結果語例集への追加も増えています。
語例集は、点字表記が即解決することを主目的にしていますので、詳しい説明はないのですが、ポイントを「注記」に示しています。注記も、簡潔に、不要な内容は避けてと考えていますので、ときには誤解を生むこともありました。それで、ときどき注記の追加や修正を行っています。
最近のいくつかをご紹介します。

・ならいショウ ならいセイ
「明鏡国語辞典」の「習い性となる」の項目に《「性」を「しょう」と読むのは誤り》とあるところから、語例集の「ならいしょう」は削除すべきではというご意見がありました。調査の結果、「習い性となる」を「ならいしょうとなる」と読むのは間違いですが、「ならいしょう」という語は、広辞苑・大辞林・日本国語大辞典にも載っている語であることが確定できましたので、「習い性となる」に「習慣がその人の生まれつきの性質のようになることを意味する『書経』由来の成語」と注記をしたうえで、「若いときの習い性が抜けない」の文例と二つが「習い性」でヒットする形にし、単独の「ならいショウ」は削除しました。

・全47都道府県と全■12府省のマスあけの違い
「全」の後ろに数字がくることは同じなのに、なぜマスあけが異なるのかという質問が寄せられました。「全」は「すべてで」の意味の場合は、「全3巻」「全10作品」「全12府省」のように区切って書きますが、「すべての」という意味の場合(多くはこの意味ですが)、「全都道府県」「全人口」「全自治体」など続けて書きます。
「全47都道府県」はあまり使わない言い方ですが、これだけの語例では意図が伝わらなかったので、語例を「全47都道府県幸福度ランキング」に変更して、注記に《「すべての」の意》と加え、「全12府省」の注記に《「すべてで」の意》と加えました。

・「南無三宝」は「三」が仮名表記だけでしたが、数字の意味の場合もあるとのご意見をいただき、数字の例を加え、「注記」に説明を入れました。
ナム■サンボー 驚いたり失敗したりしたときに発する語
ナム■数3ボー 「三宝に帰依する」意味のとき

・「新道」が「シンドウ」と読む例だけでしたので、「シンみち、ジンみち」と読む例を加え、注記も入れました。
保谷新道 ホーヤ■シンドー
下駄新道 ゲタジンミチ ゲタ■シンミチ

・「知らん振り」「シランフリ」の注記に「しらんぷり」ともと加えました。

語例集の誤字を教えてくださる方がいらっしゃって、たいへん感謝しています。複数の目で複数回校正しているのですが、間違いは避けられません。しかし、「点訳フォーラム」を活用してくださる皆さまのご協力によって、間違いは確実に減っています。この1年で修正した語例は以下の通りです。

・二弦琴(ニゲンキン)の漢字仮名交じり表記 ニ(カタカナ)⇒ 二(数字)
・コのジにならべる 読み コ(カタカナ) ⇒ こ(ひらがな)
・「多ございます」 漢字仮名交じり表記 ⇒ 多う御座います
・「打球が前後ろに飛ぶ」 読み タキュウ ⇒ ダキュウ
・「武骨一辺」 漢字仮名交じり表記 ⇒「武骨一偏;武骨一辺」

誤りが点字表記に影響した例もあります。
・「建御雷之男神」ミカヅチ ⇒ タケミカズチノ■オノ■カミ
・さんふらわあ サンフラワア ⇒ サン■フラワア
・アカチャンカバ ⇒ アカチャン■カバ(カバは漢語)
・ユーロネクスト(オランダ語)⇒ ユーロ■ネクスト(企業名)
・「術師」が辞典にも載っていることから、心霊術師、死霊術師を、シンレイ■ジュツシ、シリョー■ジュツシ
・萌え漫画(漫画のジャンルを示すことから)⇒ モエマンガ
・「各駅に各駅停車」は、収載の意図が分かりにくい語例でしたので、マスあけは変えずに、語例を「各駅停車は各駅に止まる」としました。

以上、この1年に修正・変更した内容でした。紙の印刷物と異なり、ネット上のデータは、気がついたときに修正できますので、教えていただいた箇所から修正し、より精度の高い語例集を目指します。ご協力いただけますようよろしくお願いいたします。

最後に、語例集の収載範囲は基本的に「てびき」第2章・第3章に対応する語例です。語の一部にパーセント記号やアットマーク記号などを含む場合もありますが、原則として第4章・第5章に関する表記は対象としていません。ですから漢字仮名交じり表記に中点があっても、点字表記欄には中点を用いていません。点訳では中点を用いないという意味ではありませんので、ご注意ください。

点訳フォーラムは「てびき」に準じた点字表記を示しており、根本は『点訳のてびき第4版』です。語例集だけで完結ではなく、同時に「てびき」の該当箇所の規則も確認してくださるようお願いいたします。  (M)