校正表のチェックについて

                         (2022年2月1日)

私は長く校正に携わっていることから、1校・2校だけでなく、校正表のチェックを担当することがあります。
校正表のチェックについては、2021年4月のブログ「点訳と校正の関係」で取り上げられています。
繰り返しになりますが、多くの校正者によって校正が行われている現在、提出された校正表をそのまま点訳者に返すのは望ましいことではありません。点訳者と校正者の意見の食い違いがトラブルに繋がることを避けるためにも、担当者は施設・団体の立場で校正表を見直し、指摘箇所に問題があれば校正表を修正したうえで、校正者にその個所と理由を伝えることが大切です。
以下、校正記録の指摘が妥当ではないと判断して、私が校正表を修正した事例について書かせていただきます。
以下、点訳者の表記 → 校正者の指摘 の順です。


達磨大師  ダルマ■ダイシ → ダルマダイシ
何がさて  ナニガサテ → ナニガ■サテ
皆々  ミナミナ → ミナ■ミナ
江戸時代の歌舞伎・狂言にまつわる推理小説で、古文調の個所が含まれる作品でした。連濁や繰り返し言葉の勘違いなどからの誤った指摘だったと思います。いずれも点訳フォーラムの点字表記の語例に掲載されていましたので、校正記録を削除しました。


悪態を吐く  ツク → ハク
出汁のきいた味噌汁  ダシノ → ダシジルノ
他人事とは思えない ヒトゴト → タニンゴト
いずれも点訳者の読みのほうが文脈から自然だと感じました。辞書を調べたところ校正指摘は必要ないことがわかりましたので、校正表を修正しました。


選りすぐりの食材  エリスグリノ → ヨリスグリノ
昨夜は一晩中雨が降った  ユーベワ → サクヤワ
毎年の行事  マイトシノ → マイネンノ
いずれも点訳者の読みは文脈から自然だと感じましたし、辞書を調べても誤と正の違いは分かりませんでした。そこで点訳者の読みを尊重することにして、校正表を修正しました。ただ、この指摘箇所を削除することで一貫性が保てなくなる恐れがあると思いましたので、検索機能を使って全体を確認しました。


32GBのUSBメモリ  32外大G大B → 32外大大GB
二酸化炭素CO2  外大Co2 → 外大大CO2 (この場合、2は②③の点)
単位記号と理科記号の大文字符の用い方を勘違いされての誤った指摘ですので、校正表を修正しました。


マグニチュード7クラスの地震  7■クラスノ → 7クラスノ
廃家電製品  ハイ■カデン■セイヒン → ハイカデン■セイヒン
「クラス」は3拍の意味のまとまりで、この場合は助数詞ではありませんので区切って書きます。また、「廃」は「家電製品」全体にかかっていますので、区切って書くのが正しいと思います。ですから、両方の指摘とも削除しました。


総務部会長  ソーム■ブカイチョー → ソームブ■カイチョー
駐チェコ大使  チュー■チェコ → チューチェコ
「部会」が意味のまとまりですから「会長」と区切って書くのは適切ではないと思います。また、チェコは2拍ですが「駐米」の「米」などとは異なり、自立した固有名詞ですので、続けて書くのは適切ではありませんから、両方とも削除しました。


GEROGE MASON UNIVERSITY  GEORGE → GEROGE
原文通りにという指摘ですが、原文の綴りが明らかな誤りですので、点訳のままのほうが親切だと考えて削除しました。

以上、校正表を修正した事例を書いてみましたが、文脈を確認するために前後を読んでいると指摘箇所以外のところに誤りを見つけることがあります。そうなると最初から最後まで読みたくなってしまい、実際全部読んでしまったこともあります。でも、それでは製作に時間がかかってしまいますし、校正表のチェックではなくなります。校正表のチェックは1校・2校の指摘を信頼しなければ成り立ちません。それだけに自分自身を含めて校正者のスキルアップが求められ、研修の場が必要です。より精度の高い校正ができるよう、今後とも研鑽を積んでいきたいと思います。  (T)