点字に親しむ

                      2023年9月1日

今年も、前期の点字の授業が終わり、試験、採点も終了しました。
今年は、大学4年生に7回だけの授業でしたが、一昨年までは、介護福祉専門学校でも授業を担当してきました。少子化などの影響で閉校になってしまい寂しい思いもしています。

学校での授業は、限られた回数のなかでも、目標を設定し、目標に向けての各回の内容を考えたシラバスを提出しなければなりません。
そのようなこともあり、授業では、テキストに書いてある内容をできるだけ伝え、点字の基本的な規則を理解し、正確な点字を書いてほしいという思いに長い間とらわれていました。
しかし、点字の授業は回数が限られています。また、私が担当したのは福祉や介護を学ぶ学生・生徒で、点字の専門家になるわけではありません。ですが、卒業後は、視覚障害のかた、とりわけ中高年になってから視覚障害になったかたに出会う機会が多い仕事に就く人が大半という学校です。
当初は、点字の形もすべて覚えてほしい、規則も正確に覚えて書いてほしいと取り組んでいましたが、近年は、学校での他の専門科目の履修に影響なく、楽しみながら点字に関心を持ち、視覚障害者の文字である「点字」を記憶に残してほしいと思うようになりました。
卒業して、仕事に従事する中で、中途で視覚障害になった人に出会ったとき、視覚障害者を支援する施設・団体がある、点字を習得する方法もあるということを思い出してほしい、そしてその方法を紹介してほしい、その実現を目指すことにしました。そのために、点字にできるだけ親しみ、点字を楽しんで読めるようになる授業に取り組んでいます。

第1回に、Lサイズ点字を一人1枚印刷して準備し、点字のしくみを説明した後触って読んでもらいます。15回の授業があったときには、最後の方に時間をとって1枚触読したり、お互いに教え合ったりしてもらいましたが、今年は7回だけでしたので、そこまではできませんでした。それでも、触って「ウレメフアイニナ」を確認し、「アメ■アメ■フレ■フレ」「アレ■ナアニ」「アニニ■イウ」などを触って読んでもらいました。そして「これは、中途で視覚障害になったかたが点字を習得するときに最初に覚える文字です。皆さんも触って読めましたね。少し大きな点字になっているので読みやすいのです」と説明します。
ここで、点字のしくみの説明の時に覚えた「アイウエオ、カキクケコ」に「ウレメフアイニナ」の「レメフニナ」の5文字を加え、15文字を点字一覧表を見ずに読めるようにします。
これらの文字を含む「アオイ■カキ」「フニアイナ■アカイ■フク」「オカニ■イク」などなど、読めるようになり、1日目から点字の読みが楽しくなります。実際に今年は学生全員が読めるようになりました。授業の終了時に笑顔になってもらえるのが嬉しいですね。
2回目以降も、読みに重点を置き、推定読みも「いいですよ!その調子!」と後押ししながら進めました。点字の規則は説明しますが、数の書き方の複雑なルール(大きい数、第1つなぎ符の用い方、漢字音と和語読みなど)やアルファベットの書き方は、書くことに四苦八苦するよりも、電話番号や血液型などが読めればよいと考えました。分かち書きは、文節分かち書きを十分に理解することに力を入れました。
大学構内のエレベーターには点字表示があります。階数や「あけ」「しめ」だけでなく、エレベーター内には「非常時には・・・」の表示、またエレベーターの外には「注意事項」も5~6行書いてあります。それが適切な内容かどうかは別として(それも大事なことですが)、点字を読む材料に事欠きません。各階にわかれて、皆がその点字をすべて読むこともしています。
試験は、点字を書くことと読むこと、それに点字を学んで感じたこと・学ぶ前の自分と変わったことを書いてもらいました。書く問題は、文節分かち書きで書く練習をした20程度の短文の中から出題。一度は書いているので、ほとんど全員ができました。読みは半ページほどの初見の文章です。今年は、クロックポジションに関する説明で数字も含まれます。昨年は盲導犬に関する、頭数も含まれる文章にしました。その他、点字ブロックに関する文など、かならず数字が含まれるようにしています。初見でもみなさんほとんど完璧に読めていました。(点字一覧表の持ち込み可です!)

点訳ボランティアの養成講習会でも、点字を読むこと、墨訳することに重点を置いています。
講習会では、毎回、墨訳を宿題にしています。1ページから8ページ程度まで、次第に長くして墨訳をしてきます。墨訳ですから、点字を読んで漢字仮名交じり文にして提出します。
1~2行の短文にはじまり、なじみの曲の歌詞、盲導犬や、点字ブロックなどの情報が入った文等に進み、新聞の記事、情報誌の記事やコラムなども取り入れます。最後の方では、視覚支援学校の生徒さんの作文や弁論大会の作品で、地元の視覚支援学校から提供していただいた文章です。
これを毎回、墨訳して提出すると、点字を読むことも苦にならなくなると感じています。
賛否あるところと思いますが、パソコン点訳に入るのは受講開始1年後になります。その間、十分に点字を点筆で書き、点字を読み、Lサイズ点字を触読し、点字学習をサポートする方法も数回経験します。
点訳するには点字を読めなければと考えています。

最後に、時間に余裕のあるときや、ボランティアの交流の機会などに、点字を取り入れたゲームを楽しむのも点字に親しむ一つの方法だと思います。
前回のブログ「点字を楽しむレクリエーション」も取り入れられますね。
「点字を楽しむ」の変形の一つになりますが、点字で二マスしりとりをするのも楽しいです。
最後から二マスでしりとりをします。ですから、最後の文字が「ん」でもOK。最後から二マス目が、「ん」、長音、促音になったら負けです。

テンヤク ヤクシャ シャシン シンガポール(×)
テンジ ジーパン ハンバーグ グンテ(×)
ウルトラマン マンネンユキ ユキオトコ トコナツ ナツヤスミ スミッコ (×)

また、点字で書いた「なぞなぞ」を解き、答えも点字で書くのも、講習会の最初の方でやってみると、気分転換になって楽しめます。
問題は何でもよいですし、ネットにもなぞなぞがたくさん紹介されていますので、読むのにあまり難しくない問題を選べばよいですね。
受講生同士でペアになり、二人で知恵を出し合って考え、答えを点字で書いてもらいます。

マミムネモ コレワ ナニ
セカイノ マンナカニ イル ムシワ
ショクジヲ タベル マエニ ダク モノワ
アタラシイ クルマワ シンガタ デワ フルイ クルマワ
カンサイベンヲ ハナス イヌノ シュルイワ

など、点字を読むことも書くことも楽しめます。

点字を手で書くのも、点字を読むのも苦手と思わず、機会を捉えて積極的に点字に親しみましょう。  (M)