点訳指導者養成講習会について
(2021年11月1日)
私の施設では、平成25年度より「次の時代を担う点訳指導者養成講習会」を実施してきました。以下では、その概要についてご紹介します。
その前に、当施設と点訳グループの関係について少し説明しておきます。
私の施設には、数名から50名程度まで大小12の点訳グループが、蔵書等の図書製作にご協力いただいています。それぞれのグループでは、日々の点訳活動に加え、新たな点訳者を養成するための講習会も、直接、あるいは地域の社協と協力しながら開催しています。本来であれば、施設の担当職員が出向いて講習会の指導に当たるべきところですが、現実には施設が置かれた地域の地理的な制約などから、それはかなわず、各グループで点訳経験の長い方が、自然と指導に当たる形で行われてきました。しかし、指導担当者の高齢化や、親族の介護などさまざまな事情で指導のみならず点訳そのものが困難となる方も増え、新たな点訳者の養成が課題となりつつありました。
そこで、施設として、今後はボランティア指導者の人材育成が重要であるとの認識の下、これを事業の柱の一つに位置付け、まず、日盲社協の点字指導員資格認定講習会へボランティアを派遣することとしました。現在、すべてのグループまでとはいきませんが、約10名ほどのボランティアが認定を受け、指導に当たっていただいています。最近は、受講希望者を募ってもなかなか手を挙げてくれる方が少なく、認定者も徐々に減少の傾向にあるのが悩みです。
こうした状況を踏まえ、認定講習会への派遣と並行して、継続的にボランティア指導者を養成するための、施設独自の認定制度を設けることといたしました。それが、最初に書きました、平成25年度より開始した「次の時代を担う点訳指導者養成講習会」です。
これまでに、9点訳グループに対し11回の講習を実施し、約45名の指導者を認定してきました(認定者の中には、既に日盲社協の認定を受けた方もいます)。
講習会は、事前に開催希望調査をし、希望するグループに対して実施します。また、原則としてグループの所在地で行います。カリキュラムは、1回2時間の講習を8回+認定試験の構成となっています。微調整しながらも、概ね次のような内容で実施しています。
第1回 点字概論 ― 点字の意義と歴史、点字のサイズと手触り
第2回 点字表記法の変遷、「日本点字表記法」と「点訳のてびき」の関係について
第3回 視覚障害者概論 ― 視覚障害者の状況、「初めてのガイド」DVD上映など
第4回 情報提供施設の役割と「サピエ」
第5回 下調べと読み方調査
第6回 日本語文法の基礎
第7回 点訳ボランティア養成カリキュラムの作成と指導者の役割
第8回 「モデルカリキュラム*」と「モデルカリキュラム」に基づいた指導のポイント
*:「モデルカリキュラム」は、「点訳のてびき」を用いた講習を前提に、当施設が作成した、いわゆる標準的カリキュラムです。これを基本に、それぞれのグループの実情に合わせ、適宜組み替えて使用していただいています。令和元年、点字編集システムの使い方などパソコン導入に伴い一部見直しをしました。
講習会終了後には学科試験と実技試験の認定試験を実施します。学科試験は、全8回の講習内容から出題します。ちなみに、平成30年度の試験では初めて、20回の講習を想定したカリキュラムの作成を問題として出題しました。各受講生が考えるカリキュラムを「回数」「テーマ」「内容」「備考」の表に書き込んでもらうものです。実技試験は校正試験です。いずれも一定の基準に達した方には施設長名の認定証を交付するとともに、「指導講師」として委嘱します。
以上が概要です。
終わりに課題をいくつか。
①8回は多すぎるので、もっと圧縮できないか。
②基本的に点字・点訳の周辺の知識を身につけてもらうことに主眼をおいているので、どうしても一方的な講義中心の講習になっている。いわゆる、教育実習ならぬ講習の実習など実技も取り入れたカリキュラムを工夫できないか。
これからボランティア指導者の養成を考えておられる施設・団体がありましたら、その参考になれば幸いです。
●お知らせ
5月1日のブログで「解答にパソコンを用いた認定試験(点訳試験)の取り組みについて」取り上げましたが、その際、実際に試験が実施できた場合には、その結果等について報告するとお知らせしました。残念ながら、今年度も新型コロナの影響により、予定していた方法での試験は中止せざるを得ませんでした。代わって、通信による試験実施に向けて準備を進めているところです。 (I)
【点訳フォーラムからのお知らせ】
点字表記の語例の以下の語の表記を変更しましたので、お知らせいたします。
1.「ポリファーマシー」が「一般」と「医学」に重複して収載されていましたので、「一般」の方を削除して、「医学」のみを残しました。
また、「ポリ」は後ろの語と続けて書き、マスあけを含む語全体にかかる場合にはマスあけするというルールに統一しました。
その結果、「一般」の「ポリカーボネート」の表記を、一続きに書くことに変更しました。
理化学用語の「ポリ」は以下のようになります。
ポリエチレン
ポリエチレン■オキシド
ポリ■エンカ■ビフェニル
ポリ■オキシ■エチレン
ポリカーボネート
ポリスチロール
ポリプロピレン
2.「眼疾患」を「ガンシッカン」と一続きに書くことにしました。
「心■疾患」「腎■疾患」「眼疾患」「鼻疾患」となります。「心」「腎」は自立する意味のまとまりですが、「鼻(ビ)」「眼(ガン)」は自立する意味のまとまりではないと判断しました。
「筋■疲労」「脳■疲労」は区切って書きますが、「眼疲労」は一続きに書きます。
3.「ラウンド・トゥ・パンプス」を「ラウンド・トウ・パンプス」に変更し、「ラウンド■トウ■パンプス」としました。そして、注記に、「トゥ」の場合は、「ラウンドトゥ■パンプス」と記載しました。
「ラウンド・トウ・パンプス」の「roundtoe」は、つま先が丸みを帯びたパンプスのことで、「トゥ」と1拍の場合は「ラウンドトゥ」と続けて書くことになります。