解答にパソコンを用いた認定試験(点訳試験)の取り組みについて

(2021年5月1日)

 皆さんの施設・団体では、点訳者養成講習会修了後などに、点訳者として認定するための試験(点訳試験)を行っているでしょうか。私が勤務する施設では、平成15年度より、いわゆる認定制度(「蔵書点訳認定試験」(点訳試験))を導入し毎年実施しています。これまでに、延べ211名が受験し、平均の合格率は64.9%でした。
以下では、その概要と、令和2年度より新たに予定していた、解答にパソコンを用いた認定試験(点訳試験)の実施方法等についてご紹介します。「予定していた」と書いたのは、試験日直前になって新型コロナウイルス感染拡大の影響により、試験そのものは結果的に中止せざるを得ませんでした。

●1.認定試験の概要
平成15年度に開始した「認定試験」は令和元年度までに17回を数えます。この「認定試験」に合格すると認定証が交付され、施設の蔵書製作を担うための資格を得ることができます。

(1) 対象
初心者養成講習会の全課程(基礎編・応用編)を修了し、修了証の交付を受けた方が対象です。
(2) 試験科目:点訳試験
(3) 出題範囲:「点訳のてびき 第4版」(2章~5章)に含まれる内容
(4) 試験時間:1時間30分
(5) 試験問題の選定
試験は、基本的な点字表記の理解度を確認するためのものなので、無理に難易度を高めるような問題は避けるようにしています。
具体的には、次の事項を基本に選定します。
①数字・アルファベットが含まれること
②記号類は、できるだけ4章その1からその3の範囲に留めること
③5章については、なるべくその1・その2の範囲に留めること
④固有名詞については、専門分野の辞書に当たらなければ確認できないようなものは含まれないようにすること
(6) 試験の分量:約1200字~1300字程度(点字で約4ページ半程度)
これは、本試験制度の導入前に、検証を行い決めたもので、1時間30分で解答する分量としては概ね妥当と考えています。
(7) 解答方法:手書き(点字器・点字タイプライターから選択)
(8) 判定基準
減点方式で判定します。
規準は次のとおりです。
・誤字、明らかな誤読、脱字・脱文、余字・余文
・点字表記の明らかな誤り
(9) その他
①試験会場には、国語・漢和、英和等の各種辞典類を備え付け、いつでも参照できるようにしています。
②数年前から、外部との通信により解答に影響がでることを回避するため、試験中、スマホ等の携帯型端末を一時預かりの対策をとっています。

●2.解答にパソコンを用いた試験について
既に書きましたように、昨年度より解答にパソコンを用いた試験を導入することにしました(実際は中止になりましたが)。
基本的には、上記1.の(1)~(5)、(9)は手書きの場合と変わりありません。
ここでは、パソコンを用いた場合の実施方法などについてご紹介します。

(1) 試験の分量:約1800字~1900字程度(点字で約7ページ程度)
事前に検証を行った結果、概ね手書きの1.5倍程度が妥当と判断しました。
(2) 判定基準:(8)に加え、データ上の誤りの基準を設けました。
具体的には「てびき」p7~p9に基づき判定します。
(3) 解答に使用するパソコンは、受験者が用意します。
同一環境で、しかも少しでも試験中のトラブルを回避するためには、施設側で準備するのが望ましいところですが、現状では人数分のパソコンを確保することが難しく、課題の一つとなっています。
(4) 解答の保存にはUSBメモリを使用し、施設側で準備します。
(5) 事前準備
試験開始30分前になったら、解答保存用USBメモリを配付し、次の準備をするよう指示します。
①パソコンの電源を入れ、Windowsを起動します。
②解答保存用USBメモリを、パソコンに装着します。
③点字編集システムを起動します。
④以下について設定または確認をします。
・行・マス数を「18行32マス」に設定、または、「18行32マス」になっていることを確認
・入力方式を「6点入力」に設定、または、「6点入力」になっていることを確認
・[新規作成]を実行
・[名前を付けて保存]を実行し、ファイル名を「点訳試験解答(受験者氏名)」とし、「BES形式」で保存
・画面表示を点字表示に設定(凸面・凹面表示は任意)
(6) 解答は、試験時間内に、USBメモリに保存して終了とします。
(7) 試験中のパソコンのトラブルについて
個々の受験者のパソコン環境が異なるため、原則受験者の責任において対応してもらいます。
(8) その他
読み返し等で音声読み上げ機能を使用する場合は、イヤホンを使用するよう説明します。

●3.解答にパソコンを用いた場合の課題について
実際に試験が行われた場合は、その結果について検証し、明らかになった課題は、その解決に向けて取り組んでいくことにしていましたが、残念ながら実施できませんでした。しかしながら、現状で見えてきた課題もいくつかありますので、以下に列挙しておきます。
(1) パソコン内に保存されているデータの確認
受験者のパソコンには、点訳に関連した資料類のデータが数多く保存されていることが考えられます。その中には、解答に直接影響を及ぼす資料も含まれている可能性があります。事前に削除しておくようアナウンスすることもできますが、それを確認することは時間的にも簡単ではありません。
(2) 解答用パソコンの確保
上の問題を解決するためにも、解答に使用するパソコンは、可能な限り施設側で準備しておくのが望ましいと思いますが、コストの問題もあり、こちらも簡単に解決できる課題ではありません。
(3) 公衆無線LANについて
数年前、入居ビルの1階に無料のWiFiスポットが設置されました。これにより、スマホだけでなく、無線機能を搭載したパソコンはWiFiが利用できるようになりました。幸い、今のところ試験会場となるフロアまでは電波が届いていないようですので、影響はないと思われますが、今後、他のフロアまで設置が進んだ場合、対策を考えなければならない課題といえます。

以上は、あくまでも1施設での取り組みの概要に過ぎませんが、今後、認定試験、あるいは、試験の解答にパソコンの導入を検討中の施設・団体がありましたら、一部でも参考になればと思いご紹介させていただきました。
なお、パソコンを用いた試験が実施できたときには、改めてこの場でご報告させていただきたいと思います。 (I)

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