第2章 語の書き表し方

その1 仮名遣い

1 基本的な仮名遣い

1.p16 1.直音・拗音・促音・撥音など

用例「ぴょこり」を取り上げた理由は?見出し語に採用しない辞書が多く、普遍性に乏しいのではないでしょうか。

【A】

この箇所の用例は、語としての普遍性よりも、清音・濁音・半濁音・拗音・拗濁音・拗半濁音などの文字をできるだけ多く取り上げることを重視しました。拗半濁音「ピャ」「ピュ」「ピョ」を含み、これより後の項目で扱う長音などの要素を含まない語は大変少なく、苦慮したところです。点訳では、辞書に載っていない言葉にも少なからず出会いますので、用例の選択に当たっては、実例をできるだけ幅広く採用するように心がけました。

2.p17 2.ア列・イ列・エ列の長音

「ふるさと」を歌っています。
うぅさぁぎおぉいし、かのやまぁ、こぶなつぅりし、かのかわぁ
ゆぅめはいぃまもめぇぐぅりぃて
わすれがぁたきふるさと
これは、どのように書けばよいでしょうか。

【A】

ウーサアギ■オオイシ、■カノ■ヤマア、■コブナ■ツーリシ、■
カノ■カワア
ユーメワ■イイマモ■メエグーリイテ
ワスレガアタキ■フルサト
「う」と書かれているウ列の長音は、長音符を用い、そのほかは、仮名で書かれている発音の通りに書いてよいと思います。

3.p18 3.現代仮名遣いとの相違点 【備考1】

「てびき」p18【備考1】の「見まごうばかり」について伺います。
調べたところ、「ばかり」は「活用語の終止形・連体形につく」となっています。「見まごう」は「見まがう」の音便形で、終止形・連体形のときに「見まごう」になることが多いともありました。
p19【備考2】の終止形・連体形であっても、音便でウ列オ列に「う」がつく形になる動詞は、長音で書くことを優先するのでしょうか。同じような形になる言葉を思いつかないのですが、他にも同様の動詞はありますか。

【A】

「給う」(たまう)を「たもう」と読めば、「タモー」、「能う」(あたう)を「あとう」と読めば「アトー」と書きます。
方言などで、「逆らう」が「サカローテモ■ムダ」のように用いられることがあります。ウ音便になれば、後ろが「ミマゴーテ」「ミマゴータ」のように「て」や「た」でない場合も長音を用いることになります。
ただ、「見紛う」「給う」と書いてあった場合、「みまがう・みまごう、たまう・たもう」いずれの読みも考えられます。音便扱いとして長音で表記することを優先すべきということではありません。
「てびき」p18【備考1】は、「見まごう」と読めば長音で書きますということを説明している規則であって、「見紛う」は「みまごう」と読む方がよいと言っているのではありません。
「てびき3版Q&A第2集」Q8もお持ちでしたらご覧ください。「給う」は、「タモー」よりも「タマウ」の方が語幹が明らかで活用が分かりやすいことが述べられています。

4.p18 3.現代仮名遣いとの相違点 【備考1】 [参考]

「思ひて」の例から活用語尾が「ひ」の変化はわかるが、「び」、「み」の例にはどんなものがありますか。

【A】

現代の共通語の音韻には見当たらないようですが、文語表現には多く存在したようです。
呼びて → 呼うで    賜びて → 賜うで  喜びて → 喜うで
読みて・詠みて → 読うで・詠うで   たのみて → たのうで
また、活用語尾ではありませんが、
頭(かみべ) → かうべ → こうべ
まれびと →  まらうど → まろうど
などもあるようです。
「日本語文法がわかる事典」(東京堂出版)、「古典基礎語辞典」(角川学芸出版)などを参考にしています。

5.p19 3.現代仮名遣いとの相違点 【備考2】

用例「閏年」「稀有」「未曾有」について、ここに掲載した理由や注意点を説明してください。

【A】

長音にせずに「ウ」と書くことを注意する【備考】の用例として、3版では動詞の語尾だけをあげていましたが、間違えやすい例として取り上げました。「閏年」は、歴史的仮名遣いとの関係から現代の音韻を読み解くのが論理的な説明になります。「指導者ハンドブック2章編」p24コラムを参照の上、「現代仮名遣い」付表から現代の音韻で「う」となることを確認してください。「ハンドブック」ポイント解説の、「閏う」という動詞に「年」がついたと考えると分かりやすいという補助的なアドバイスと合わせて、参考にしてください。「稀有」「未曾有」は「有る」という字を「う」と読んでいますので、長音になりません。

6.p19 3.現代仮名遣いとの相違点 【備考2】

福祉を学ぶ学生です。点字の授業で、仮名で「う」と書く長音は点字では長音符を使うと習いましたが、長音符を使わずに「ウ」と書くのはどういう場合でしょうか。閏年、稀有、未曽有は「ウ」と書くことは学びました。

【A】

点字では、仮名にして「う」となる伸びる音は、長音符(②⑤の点)を用います。ですから、伸びないで「う」と発音する場合は「ウ」と書きます。
その主な例は
1.動詞の終止形・連体形
合う、争う、憩う、追う、買う、食う、逆らう、吸う、思う、縫う、漂う、迷う・・・などです。
なお、「学校へ行こう」「一緒に遊ぼう」などは、終止形や連体形ではなく、動詞の未然形に助動詞が付いたものですので、「イコー」「アソボー」と長音符を用いて書きます。
2.語頭が「う」ではじまる名詞の前に、接頭語などが付いた場合
子牛 ⇒ 「こ」+「うし」なので「コウシ」と書きます。
不運 ⇒ 「ふ」+「うん」なので「フウン」と書きます。
小売店 ⇒ 「こ」+「うり」+「てん」なので「コウリテン」と書きます。
星雲 ⇒ 「せい」+「うん」なので「セイウン」と書きます。
3.その他
「希有」や「未曾有」などの「有」も「う」と読みますので「ケウ」「ミゾウ」
これらは、伸して発音すると、現代の日本語の正しい発音になりません。
例えば、「合う」は「あー」とはいいませんし、「子牛」も「こーし」とは言いません。そのような、現代の日本語として発音してみて判断することができます。

7.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

中央競馬会の重賞レース「菊花賞」、勲章の「菊花大綬章」は、「きくか」「きっか」どちらの読みがよいのでしょうか。

【A】

「菊花賞」は「キクカショー」、「菊花大綬章」は「キクカ■ダイジュショー」といずれも「キクカ」と書きます。
点訳フォーラムでは「菊花」は、点字では「キクカ」と書くとしてきましたが、この二つは固有名詞ではないかとのご質問やご意見をいただいたため、中央競馬会と内閣府に文書で問い合わせ、正式に文書で回答をいただきました。ここにその経過を記します。
内閣府の回答は、
《ご照会をいただきました「菊花大綬章」の仮名表記につきましては、根拠となるべき規定において、表記は漢字のみとなっており、仮名表記を示すものは特に定められていないところとなっております。「菊花大綬章」を仮名表記するにあたり、内閣府賞勲局としては、一般的な日本語における表記を用いていくこととなりますが、そのうち「菊花」については、「きっか」、「きくか」ともに表記されてきているものと認識しており、その中で「きっか」を使用し、「きっかだいじゅしょう」とホームページ、パンフレット等においてご案内している状況となっております。》
ということでした。この回答を受けて、点訳フォーラムでは、回答のお礼とともに以下のように記して、点字では「キクカ」と書くことを内閣府に報告しました。
《この記述を受けて、当フォーラムの関係者で協議した結果、点字表記の以下の規則に該当するので、点字では「きくか」と表記するとの結論に至りましたことをご報告させていただきます。(以下、「てびき」p20 (2)の規則を引用)
※ 菊花大綬章 ⇒ キクカ■ダイジュショー》
中央競馬会の回答は以下の通りでした。
《菊花賞は国営競馬時代の1948年から現在の名称となっております。弊会の周年史等を確認しましたが、あいにく典拠となる文書等はなく、表記は漢字のみで、仮名表記も見つけられませんでした。しかしながら、弊会が海外向けに作成している印刷物等では従来より kikuka sho としており、現在の英語版WEBサイト(Horse Racing in Japan) においても同様の記載を行っています。
なお、ご指摘のURL 表記については、一般的に発せられている「kikka」を使用しているものの、これはWEB 上の場所を示す記号であり、正式な仮名表記は「きくかしょう」とご理解いただいて差し支えありません。
典拠をお示しできず恐縮ですが、ご賢察いただけると幸いです。》

これらのことから、点訳フォーラムのこれまでの書き方を変更することはなく、すべて「キクカ」と書くことといたします。

8.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

「国公立」の読みは大辞林、広辞苑ともに「コッコーリツ」ですが、「コクコーリツ」と書く方がよいのでしょうか。

【A】

「てびき」p20(2) のような規定は、点字独特のものです。国語辞典で判断が揺れているような語は、漢字の表意性や意味の理解のしやすさを考慮して、点字では促音符を用いない方を選択することが原則となります。「刻々」「極寒」「鉄拳」「活気」のように、2字漢語で促音化することが広く定着している語は、促音符を用いないと不自然になりますが、「国立」と「公立」を一つにした「国公立」は、[参考]に説明している、「漢字2字の語と他の語のつなぎ目は促音化しないで書く」という考え方から言っても、その境目が分かりやすいように、「コクコーリツ」とした方がよいでしょう。

9.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

「刻刻」と「逆光」について質問します。
促音符を使わないで書く空見出しがある場合は、促音符を使わないとのことですね。両方ともに空見出しがあるために「コクコク、ギャクコー」とすると教えられました。点訳フォーラムの「語例集」では「コッコク」となっています。
他のグループでも「コッコク、ギャッコー」と書いている所があるのですが、どのように理解したらいいでしょうか。全国的には統一されていなくて各グループで決めていいということでしょうか。

【A】

「てびき」p20で、促音化しない方を選択することを特に強調しているのは、語が複合している場合のつなぎ目についてです。【参考】にある「劇作+家」「著作+権」「活+火山」のような場合になります。
漢字2字のような短い語の場合、促音化して読むことが明らかな語もたくさんありますので、必ず促音化しないで読まなければならないと言っているのではありません。
たとえば、ある辞書では促音化しない方が空見出しになっていて、別の辞書では促音化している方が空見出しになっているというように辞書によって判断が揺れる場合は、促音化しない方を選ぶことをお勧めします。「菊花」(キクカ)、「敵機」(テキキ)のような場合です。
「刻刻」「逆光」などは、促音化しない読みが空見出しにもない小型辞典もあり、殆どの辞書で「コッコク」「ギャッコー」の方に語義が書いてありますので、「コッコク」「ギャッコー」と読んでよいというのが、「てびき」、「点訳フォーラム」の判断です。
「逆効果」「逆光線」などは、「ギャクコーカ」「ギャクコーセン」と読みます。
漢字2字の語は無数にありますので、判断が揺れる場合も中にはあると思います。そのような場合は、上記の基準を基に、各施設・団体で判断してください。

10.p20 4.注意すべき仮名遣い (2) [参考]

「鉄製」「鉄柵」は「テツセイ」「テツサク」でよいでしょうか。
「鉄製」はフォーラムの語例に「テツセイ」とありますし「テツセイ」でよいと思うのですが(鉄製を「テツセイ」と読むということではないと理解していますが)、
辞書には「テッセイ」という見出し語で載っていて(テツセイとも)と説明の中に書かれています(広辞苑)。(・・・とも)というのは点字では使わないようにといわれたことがありますが、促音に関しては使っても良いのでしょうか。
「鉄柵」は私の持っている辞書では「テッサク」としか出ていないのですが、ネットの「ふりがな文庫」には「てつさく」という読み方が載っています。辞書ではありませんが「ふりがな文庫」の読み方を採用してもよいでしょうか。
また他の言葉についてですが、促音化しない読み方が、空見出しとして載っている場合はどうすればよいでしょうか。「空見出し」は間違った読み方をしている人のために載せている場合もあると伺いましたので。

【A】

「てびき」p20[参考]に、「促音」については《一般的な辞書の読み方とは異なりますので、注意しましょう》と書いてありますように、点訳における一般的な辞書の読み方は「てびき」p14にあるように、「空見出し」ではなく、語義が記してある方の読みを採用しますが、促音化するかどうかは、できるだけ促音化しない方を選択します。ですから、促音化に関しては、空見出しでも、(~とも)でも、辞書に記載があればそちらを選びます。
鉄製も、いくつかの辞書を調べてみますと以下のようになっています。
三省堂国語辞典「てつせい」の見出しのみ
大辞林「てっせい」の見出しに(「てつせい」とも)
広辞苑「てっせい」の見出しに(「てつせい」とも)
大辞泉「てっせい」の見出しの字義説明の最後に、「てつせい」
新潮国語辞典「てっせい」の見出しに(「てつせい」とも)
岩波国語辞典、新明解には、見出しなし。
日本国語大辞典では「てっせい」のみ
これらのことから、点訳では「テツセイ」と書いた方がよいことになります。
「鉄柵」「鉄柱」「鉄板」「鉄管」「鉄器」「鉄拳」などは、「鉄」に造語要素である「製」が付いた「鉄製」より、一語としての結びつきが強いので、どの辞書でも促音化して書かれています。このような場合は、「テッサク」「テッチュー」「テッパン」「テッカン」「テッキ」「テッケン」と促音を用います。
「ふりがな文庫」は、そのホームページに「青空文庫などで公開されている作品に含まれる「ふりがな」の情報を元に作成しています。語句に振られたふりがなの使用頻度や用例を簡単に検索できます。当サイトで掲載している情報には、現在では使用が不適切とされる語句が含まれますが、資料としての価値に鑑み原文のまま掲載しています。ご了承ください。」と書かれていますので、国語辞典のように読みの根拠とすることはできないと思います。どこにも根拠が無かった場合に、判断の参考にはなるかもしれません。

11.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)[参考]

「足根管」に、原本で「そっこんかん」とルビがあります。
点訳フォーラム「点字表記の語例」で「足根」を調べると、
足根関節 ソクコン カンセツ
足根動脈 ソクコン ドーミャク
の語例があるので、「ソクコンカン」と思い、校正にあげましたが、「ルビに『そっこん』とあるので、『ソッコンカン』ではないでしょうか」と言われました。
「てびき」p20[参考]によると、促音化しない読みがあるときは促音化しない方を優先とありますが、ここでも当てはまるでしょうか。
また、「ソッコンカン」にこだわる場合、校正でどこまでお勧めしてよいものか、迷っています。

【A】

校正で指摘して、点訳者に修正していただくかどうか迷う場合が多いですが、今回は、以下の2点から校正で指摘したとおりに修正していただくのがよいと考えます。

1.促音を用いるかどうかの判断
「足根」は、多くの医学関係の辞典で「そくこん」と読まれていますが、中には、「そっこん」の読みもあります。点字では、促音かどうかに揺れがある場合は、意味の理解を容易にするために、促音でない方を選択します(「日本点字表記法」)。
促音かどうか迷った場合、辞書に促音を用いない読みがあれば、促音を用いない方を選択します(「点訳のてびき」)。
ここから、点字では、「足根」は「ソクコン」と読むことになります。

2.ルビがある場合、ルビに従うかどうかの判断
ルビには誤りが多いことは、点訳フォーラムの「点訳に関する質問にお答えします」(第5章、その5、4.「コラム36」)やブログ(校正雑感)でもご紹介してきました。また、誤りとは言えないまでも、ルビは、著者の意図ではなく、ほとんどが編集担当者が読者の読みの便宜のために付けていますので、適切でない場合が多くあります。
まして、点字で読むことまでを考慮したルビは皆無と言ってよいと思います。
「菊花大綬章」の内閣府の回答も参考になさってください。
もっと一般的な語、たとえば「的確」「三角形」に「てっかく」「さんかっけい」とルビが振ってあったら、校正で迷わず指摘し、点訳者に修正して貰うと思います。「足根」についても、ルビを根拠に「ソッコン」と読むことを決めるのではなく、1.の理由で「ソクコン」と読むか「ソッコン」と読むかを決めるように、点訳者に伝えるのがよいと思います。

12.p20 4.注意すべき仮名遣い (2) [参考]

「大腿骨頭壊死」は、語例集では「ダイタイ■コツトー■エシ」になっていますが、ルビは「こっとう」と促音になっています。「てびき」に従い「コツトー」にするべきか、ルビに従って点訳するか迷っています。また、なぜ「人工骨頭置換術」だけが「コットー」と促音になるのでしょうか。

【A】

医学用語では、大腿骨頭、中足骨頭、上腕骨頭など、すべて「こつとう」と読みます。ルビが「こっとう」でも、点字では「コツトー」となります。
これらはそれぞれ「大腿骨」「中足骨」「上腕骨」などの「骨頭」ですので、「てびき」p20(2)[参考]の促音符を用いない例に該当します。
「人工骨頭」は「人工の骨頭」ですので、「骨」は「大腿骨頭」のような「つなぎ目」ではありません。ジンコー■コットーとなります。

13.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

原本に
名前の中に「っ」が入っていたような
とある場合の書き方について教えてください
活水(カッスイ)高校の名前を探すという状況です。促音符だけでの表示ができないので「かっ」とするか「つ」とするか、となるのでしょうか

【A】

第1カギの中に②の点を一つだけ書くと読み取りにくいので「ソクオン」と書くのがよいと思います。「ツマル■オン」「チイサナ■ツ」なども考えられます。

14.p23 4.注意すべき仮名遣い (5)

伏せ字のあとに(第1つなぎ符をはさんで)長音符を書くことはできますか。
例:いくつかの駅を過ぎて、「次は○○ー、○○ー」のアナウンス・・・

【A】

つなぎ符類の後ろに、長音符、促音符を単独で書くことはできません。
ですので、この場合も、長音符を省略して書くことになります。
駅のアナウンスということが書いてありますので、長音符を省略しても雰囲気は伝わると思います。

15.p23 4.注意すべき仮名遣い (5) 【処理】

「三郎~~~!」とある場合、どう点訳したらよいですか。
「サブロー」と長音符の後に、波線が数個付いています。

【A】

「てびき」p26【処理1】にあるように、長音符を用いて書きます。そして、p23【処理】により長音符は複数続けて用いることはできませんので、
「サブロー!」と書くことになります。
しかし、これでは、声をのばしていることがわかりませんので、それを表す必要がある場合は、発音を考慮して
「サブロオー!」
と書くことをお勧めします。

16.p23 4.注意すべき仮名遣い (5) 【処理】

「てびき」に「もーーう」を「モー」と書くとありますが、「もーう」のように長音符が一つであれば「モーウ」としてもよいですか。最近の本は若者言葉など様々な会話文が出てくるのでそのニュアンスを表現するには、ただ「モー」と書くのでは足りない気がします。
歌うシーンにも「ほーうてーいしき」や「さんかくじょーうぎー」などと長音符を「う」と続けているところが多くあるのですが、原文どおり「ホーウテーイシキ」「数3カク■ジョーウギー」と書いてもよいでしょうか。

【A】

基本的な仮名遣いに従って書くことが原則ですが、擬声語・擬態語・嘆声や方言などは、文脈を考慮して、発音に近い点字を用いて書くという処理もありますので、原則を考慮しながらの判断はできると思います。
ただ、「もーう」は、「モー」ではないかと思います。「もうお」「もーお」という言い方はあると思いますが、「モーウ」は不自然のように思います。
歌うシーンの方は、カギで囲まれた中で、「ほーうてーいしき」「さんかくじょーうぎー」と音符の数通りに歌っていることに意味があるのであれば「ホーウテーイシキ」「数3カク■ジョーウギー」と書くこともあるかもしれません。しかし、一般的には「ホーテーイシキ」「数3カク■ジョーギー」で伸ばして発音していることは十分に分かると思います。

17.p23 4.注意すべき仮名遣い(5)【処理】ほか

原文に「NOッーーーーーーーーーーーーーーー」と書いてあります。
外国語引用符で囲みNOと書いた後に、つなぎ符でつないで、促音符、長音符を書いてよいのでしょうか。

【A】

点字では「ノーッ」と書く方法しかないと思います。
原文の表記を説明する必要がある場合は、点訳挿入符で、「原文はNOに続けて、小さな「ツ」そのあとに長音が15個付いている」のように説明します。
外国語引用符を閉じた後に促音符を書いても、促音とは分かりませんし、促音符の後長音を続けることはできませんし、長音符を複数書くこともできませんので、この方法以外にはありません。

18.p23 4.注意すべき仮名遣い (5)

長音符から始められますか。
「かーごめかごめ」の歌が眠気のなかで聞こえてくる場面が「ーごめ…め」で始まります。3マス目に長音符から書いていいでしょうか。

【A】

長音は前の音を伸ばして発音する音ですので、3マス目から長音で始めることはできません。省略して「ゴメ」から書くか、発音を考慮して「アーゴメ」と書くかどちらかがよいと思います。

19.p23 4.注意すべき仮名遣い (5) 【処理】

ライトノベルの本です。

懐からハンカチを取り出し、」女性の口元へと被せる。
「~~~~~っ!」
女性の胸が上下した。きちんと息が吹きこめている証拠だ。

この文の「~っ!」の部分を「棒線!」と書いてよいのでしょうか。

【A】

ご質問の「~」は棒線ではなく、長音を繰り返している表現だと思います。
長音は語頭に用いることはできませんし、繰り返して用いることもできません。
そうかといって、感嘆符だけでは、息をしていることが分かりませんので、「ふ」「う」「む」などの音を補って、最初に長音があることを表してはどうでしょうか。
「フーッ!」
のようになります。

20.p23 4.注意すべき仮名遣い (7)

(7)の用例の「そのとうり」「ほおっておく」のように、「う→お」「お→う(長音)」と仮名遣いを直す場合の基準をもう少し詳しく教えてください。
「おまちどうさま」というセリフの「う」は「お」に直して書けますか。
「お好きにどおぞ」「どおしたの?」「こおいうふうに」「そおなんですけどお」「よぉし、行くぞ」などの「お」は、そのまま「お」を使えるでしょうか。

【A】

ここでは、現代仮名遣いとして誤った表記になっている場合に、正しい点字の仮名遣いにすることをいっています。
擬声語・擬態語や、セリフなどで、意図的に発音を変えているような場合は、原文通りに点訳します。
「おまちどうさま」は、発音を意図的に変えたとは判断しにくいので仮名遣いの誤りと思います。
「お好きにどおぞ」「どおしたの?」「こおいうふうに」「そおなんですけどお」「よぉし、行くぞ」などの「お」は、そのまま「オ」と書いてよいと思います。
「オマチドオサマ」「オスキニ■ドオゾ」「ドオ■シタノ?」
「コオ■イウ■フーニ」「ソオナンデスケドオ」「ヨオシ、■イクゾ」

21.p23 4.注意すべき仮名遣い (7)

松本清張の『風紋』という本にでてくる「むつかしい」という言葉についてです。現代ものでは方言以外は「むずかしい」と読んだ方が良いということですが、「むつかしい」と原本通り点訳したほうが、その時代や本全体の雰囲気にあっているように感じます。「むずかしい」と点訳しないといけないのでしょうか。
文化庁の「国語施策・日本語教育」語形の「ゆれ」の問題について(ネット)では、《「むずかしい・むつかしい」の揺れは関東・関西の対立によるものと考えられ、「むつかしい」も認めないわけにはいかないであろう。》とあります。
本の中には「むつかしい」と「むずかしい」が混在しています。特に使い分けがされているようにも思えません。このような場合はどうすればよいのでしょうか。

【A】

「難しい」と漢字で書いてあれば、「むずかしい」と読みますが、仮名で「むつかしい」と書いてあれば、「むつかしい」と読むことになります。現在でも、「むつかしい」は、西日本中心に用いられている方言の一種ととらえてよいと思います。「てびき」p23(7)の「じずじゃじゅじょ」や「お・ほ・ふ・う」などの仮名遣いの間違いでもないですので、仮名で書いてあれば、その通りに点訳してよいと思います。ただ、「むづかしい」は「むずかしい」と書きます。

22.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

現代文中の古文点訳について、現代文の表記に従う場合、次の語の表記はどのようにしますか?
原本の清音通り、或は現代語の濁音に変えるか。よろしくお願いいたします。
一例として
1.なつかしけれはとて 2.花をみすや
3.みやことり 4.きこえぬれと
5.誰たれ 6.耀くかかやく

【A】

現代文の仮名遣いに直して書く場合は、濁点、半濁点、促音なども含めて、現代文の仮名遣いに直して書くことになります。
1.ナツカシケレバトテ
2.ハナヲ■ミズヤ
3.ミヤコドリ
4.キコエヌレド
5.「誰」は漢字で書いてあれば「ダレ」でよいと思いますが、仮名で「たれ」とあった場合は、現代でも、「タレ」を用いることはありますので、その文脈に適切な方を選んでよいと思います。
6.カガヤク
となると思います。

23.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

《現代文の中に歴史的仮名遣いの語句や文が挿入されているときは、現代文の仮名遣いに直して書くことを原則とする。ただし、原文の種類や文脈によっては、①~③の方法で書くことができる。
①現代文の仮名遣いで書いたあとに、古文の仮名遣いをカッコ類で囲んで書く
②古文の仮名遣いで書いたあとに、現代文の仮名遣いをカッコ類で囲んで書く》
とあります。
①あるいは②を選ぶ場合の考え方を教えてください。
また、文脈によって、上記の②でなく①を使う場合、以下の文はどのようにしたらよいでしょうか?旧仮名遣いのみの1字をカッコで囲んで書くのでしょうか?

古文の授業で、「竜胆」は現代仮名遣いでは「りんどう」、旧仮名遣いでは「りんだう」と書く、と教えられた。

【A】

ご質問の
古文の授業で、「竜胆」は現代仮名遣いでは「りんどう」、旧仮名遣いでは「りんだう」と書く、と教えられた。
を点訳する場合、「現代仮名遣いでは~、旧仮名遣いでは~」と原文に書いてありますので、「竜胆」「りんどう」「りんだう」をそれぞれ
「リンドー点挿カンジデ■リュー■タン点挿」~
「リンドー」
「リンダウ」
と書いてよいと思います。

なお、「竜胆」は漢語ですので、点字では、古文の点字表記の場合も「リンドー」となります。
「古文の点字表記」と墨字の旧仮名遣いは異なりますのでご注意ください。(「てびき」p211~p216参照)
「てびき」p23(8)については、殆どの場合原則に従って、現代仮名遣いで書きます。
ただ、原文の文脈の中で、古文の仮名遣いの説明がある場合や、短歌の鑑賞などで、仮名遣いを説明したいときなどには、①や②を用います。カッコ内は読み飛ばす可能性もあることを考慮し、原文の文脈にあわせて、書き方を選びます。

24.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

タイトルに旧仮名遣いが使われていた場合について教えてください。
サピエの書誌は
副書名 月の人の一人とならむ
副書名読み1 ツキ ノ ヒト ノ ヒトリ ト ナラム
です。
短編集で、一般小説です。本文中の旧仮名遣いは、現代仮名遣いに直して点訳しています。書名は、旧仮名遣いのままがいいのでしょうか。現代仮名遣いに直すと、検索してもヒットしないということにもなってしまいそうです。
タイトルのみ、旧仮名にした場合は、凡例等が必要でしょうか。

【A】

本文中は現代の基本的な仮名遣いで点訳しているのでしたら、標題紙・奥付も現代仮名遣いにするのが一般的な処理だと思います。
もし、標題紙・奥付だけを古文の仮名遣いで点訳されるのでしたら、点訳書凡例で「標題紙・奥付は、原本の仮名遣いのまま、古文の点字表記で点訳した」ことを、一言断るのがよいと思いますが、規則というわけではなく配慮事項に入る部分だと思います。
標題紙を、古文の仮名遣いで点訳された理由が、TRCの読みに併せてということですが、点字印刷した標題紙を見てから、サピエを検索する方は非常に少ないでしょうし、これは書名ではなく副書名なので、更に少ないのではないかと思われます。

25.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

飛鳥時代の歌人額田王の半生を書いた本「恋ふらむ鳥は」の中に、以下のような
紫の にほへる妹を憎くあらば
人妻ゆゑに 我恋ひめやも
歴史的仮名遣いの和歌が15首程あります。「てびき」での原則は現代文の仮名遣いで書きますが、【備考】の最後に「古文の仮名遣いで点訳できる」とあり、「できる」が、この本が著者の主義として、特別な事情なのかどうか判断に迷っております。
現代仮名遣いか、③の歴史的仮名遣いかを、また、特別な事情なのかの判断の方法はどうなりますか。原本は、飛鳥時代を醸し出すように、全体に、文函(ふみひつ)・汗衫(かざみ)・瘧(おこり)・捷報(しょうほう)のように古風な表現が多い本です。

【A】

一般書の場合は、現代文の仮名遣いで書くことをお勧めします。古文の学習書や、現代でも歴史的仮名遣いで書くことの多い短歌の仮名遣いを学ぶための本、プライベートの依頼などは、点訳書凡例で断った上で、歴史的仮名遣いの部分を古文の点訳の仕方で点訳することもあります。
しかし、一般書の場合は、古文の仮名遣いで書いたから鑑賞が深まるとか、現代語の仮名遣いでは雰囲気が伝わらないと言うことはないと思います。
墨字の見た目の印象に左右されているように感じます。墨字では主要な言葉に表意文字である漢字が用いられるので、ひらがな書きの部分が使い慣れない仮名遣いで綴られても意味を受け取るのに不都合は少ないのですが、点字ではすべて表音文字であるために、普段読み慣れない仮名遣いだと読みにくく、慣れないと意味を読み取りにくくなります。
墨字で「にほへる」「恋ひ」などと書かれていても、「におえる」「こい」と読むのですから、読むように書くことをお勧めします。
タイトルも「コウラン■トリワ」となります。

26.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

現代文の中に「男もすなる日記というものを」の土佐日記の一文があります。この場合「にっき」でよいでしょうか。あるいは「にき」でしょうか。
また、「土佐日記」「定家卿日記」などの書名は、どう書けばよいでしょうか。
ルビがない場合には、知識不足で現代の読みを書いてしまいそうですが、どのように対応をしていけばよいのでしょうか。

【A】

本文は
オトコモ■スナル■ニキとなります。
仮名遣いは現代文の仮名遣いになりますが、古語の読み方はそのままになります。
「土佐日記」や「定家卿日記」などは、その時代に著者が付けたタイトルではなく、後々の人々によって、呼ばれ方が定まってきたものですので、現代の仮名遣い、現代の読み方で書きます。
トサ■ニッキとなります。
本文については、できるだけ調査して書くことになります。

【新規】p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

有岡利幸著『資料 日本植物誌』(複数人で点訳)の校正をしています。樹木24種、山菜15種の文化史ですが、どう校正すればよいかわからない点があります。
万葉集など和歌・出雲風土記など古典が数多く挿入されています。てびき、フォーラムのQ&A、古語辞典の現代仮名遣いを参考に現代仮名遣いに校正していますが、3ウメ、12ネムノキ、13センダンの校正についてお尋ねします。
3ウメ…和歌の「むめ」は「ウメ」に直してよいでしょうか。
12ネムノキ…
「ネブとカウカと合歓木
古今和歌集では合歓を「かうか」と読ませ、新撰和歌六帖や夫木和歌抄では「かふくわ」と読ませているが、これらは合歓を音読したもの」
点訳は「カウカ」「かうか」「かふくわ」のままです。すべて「コーカ」とし「かふくわ」だけ点挿でいれたほうがよいでしょうか。和歌の「かうか」は「コーカ」と校正してよいでしょうか。
13センダン…古名「あふち」が和歌だけでなく文中にたくさんでてきますが、点訳ではそのままです。原文の一部を書きます。
古名あふち・現せんだん
わが国で古名で「あふち(おうち)」とよばれ、「せんだん」を現在の標準和名としている樹木は…
センダンは…古名のあふちの字を誤って樗(ちょ)にあてた。…かつて悪木の代表である樗の字を「あふち」にあてたが…
センダンは「あふち(おうち)」として『万葉集』に四首の歌が詠まれている。
(和歌…すべて「あふち」)

挿入されている古典の点訳が「あふち」だけ歴史的仮名遣いはおかしいと思うのですが、原本にあふち(おうち)とあるので、「おうち(あふち)」と逆にして「おうち」に点訳したほうがよいでしょうか。また「おうち」は扇のように長音にせず、このままでしょうか。

【A】

「むめ」は現代仮名遣いでも「むめ」になりますので、仮名で「むめ」と書かれていれば「むめ」でよいと思います。「梅」は「ウメ」と読みます
「カウカ」「かうか」「かふくわ」は、現代仮名遣いでは「コーカ」となります。
「かふくわ」も特に点訳挿入符は要らないと思います。
「あふち」は歴史的仮名遣いで、現代仮名遣いでは「おうち」ですので、「オーチ」となります。歴史的仮名遣いの「あふ」は現代仮名遣いでは「おう」(オー)、扇の「オー」と同じです。すべてオーチとして点訳してよいと思いますが、説明を加えるなら、初出のときに「オーチ(レキシテキ■カナヅカイデワ■「アフチ」)と入れてはいかがでしょうか。

27.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

漢文の書き下し文の中で、助動詞「む」を「ん」と書いてもよいでしょうか?「如何にせむ」の「せん」は理解できますが、「如何にかせむ」というときは、「か」の係り結びがあるので、「せむ」の方が連体形であることがはっきりしてよいように思います。原文で「む」と書いてあったとき、「む」を「ん」にすることは、現代仮名遣いにすることになるのでしょうか?

(原文)
言語は殊(こと)にすと雖(いえど)も藻思(しそう)は同じ
才名(さいめい)は昔の揚雄((ようゆう)に其奈(いかに)かせむ
(中略)
嬰児(えいじ)生長し母兄老いにけむ
両地(りょうち)何(いずれ)の時にか意緒(いしょ)を通ぜむ

【A】

イカニカ■セン
オイニケン
ツーゼン
となります。
助動詞の「けむ」「む」などは、現代仮名遣いでは「ん」「けん」となります。辞典によると、平安後期以降はすでに「ん」とも書かれるようになったとのことです。

28.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

「得」の読み方について、「得」を文語的に読めば、終止形は「う」で、已然形は「うれば」になります。これを現代仮名遣いで読むという場合、送り仮名がなくとも「える」と読んでいいのでしょうか。
また已然形は「えれば」または「えんば」と読んで差し支えないでしょうか?
(原文)・・・『往生要集』の中の1節です。
人天交接(にんでんきょうしつ)して、両(とも)に相見ることを得。
(中略)
我もし道を得ば、願わくは彼を引摂(いんじょう)せん。
彼もし道を得ば、願わくは我を引摂(いんじょう)せん。

【A】

両(とも)に相見ることを得 ⇒ トモニ■アイミル■コトヲ■ウ
我もし道を得ば ⇒ ワレ■モシ■ミチヲ■エバ
彼もし道を得ば ⇒ カレ■モシ■ミチヲ■エバ
となります。
「得」は文語の動詞では え え う うる うれ えよ と活用しますので、終止形は「ウ」、未然形は「エ」になります。
この場合の「得ば」は、「もし得たならば」という順接の「ば」と思いますので、未然形になります。
古文を現代仮名遣いで点訳するということは、「給ふ」をタマウ、「やうなり」をヨーナリのように、仮名遣いを直して書くことです。「得(う)」をエルのように
語そのものを現代の言い方に直すことではありません。

29.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

万葉集を現代仮名遣いにする場合について伺います。
濁音は原本通りにしています。
蘆辺(あしへ)、黄葉(もみち)、道の辺(みちのへ)・・・
ここで「生死の二つの海を~偲(しの)ひつるかな」という歌が出てきました。
偲ひつるかなは、「偲びつるかな」とした方が自然だと思いますが、「偲いつるかな」とした方がよいのでしょうか。
上代語では濁らない言葉が多いのですが、点訳で現代仮名遣いにするには前の蘆辺なども「あしべ」と濁音に変えた方がよいのでしょうか。

【A】

上代・古代の語は、濁音・促音を使用しないで書いてありますが、現代文の仮名遣いに直して点訳する場合は、現代語の音韻に直して書きます。
「蘆辺」はアシベ、「黄葉」はモミジ、「道の辺」はミチノベとなります。
「偲ひつるかな」は、シノビツルカナとなります。

30.p24 4.注意すべき仮名遣い (9)

「天馬翔雲上  聖雨潤天下」のマスアケがわかりません。
本文中に以下の説明がついています。
「天馬、雲上を翔け、聖雨、天下を潤す」(てんばうんじょうをかけ、しょううてんかをうるおす」
テンバ ショー ウンジョー
ショーウ ジュンテンカ
と考えてみました。

【A】

「てびき」p24 (9)にありますように、漢文の白文は、書き下し文に直して点訳することが原則になります。
この原文の場合、「天馬翔雲上 聖雨潤天下」の説明が付いていますので、「テンバ■ウンジョーヲ■カケ、■ショーウ■テンカヲ■ウルオス」だけを点訳します。
白文を省略すると文脈が乱れるような場合は、(白文省略)などと点訳挿入符で断ります。

31.p24 4.注意すべき仮名遣い (9)

原本に以下のような部分があります。
良寛の愛唱した言葉として「君看雙眼色 不語似無憂」というのがある。「君看よや雙眼の色、語らざれば憂い無きに似たり」(ルビで きみみよや そうがんの)と読む。
この様な場合は、最初の漢文はどう点訳したらいいでしょうか。

【A】

原本に漢文がある場合は現代文の仮名遣いによる書き下し文で点訳することになりますので、原本の白文は省略します。
原文の流れから、書き下し文だけを書いて、不自然な流れにならなければ特に断らなくてもよいのですが、白文を省略すると、原文の流れが不自然になる場合は、「白文は省略した」ことを断ります。
ご質問の文の場合は、
良寛の愛唱した言葉として「点挿漢文の白文省略点挿」というのがある。
「キミ■ミヨヤ■ソーガンノ■~」と読む。
と書くか、または、
良寛の愛唱した言葉として「キミ■ミヨヤ■ソーガンノ■~」というのがある。■■点挿白文は省略し読みだけを書いた。点挿
として、《「君見よや~」と読む。》の文を省略してもよいと思います。

2 その他の仮名遣い

1.p25 1.外来語・外国語の書き方

芥川龍之介の引用文が出てきます。『侏儒の言葉』に「人生は狂人の主催に成ったオリムピック大会に似たものである。」
『或旧友へ送る手記』に「僕はエムペドクレスの伝を読み」と引用文があり、続いて著者の「エムペドクレスとは古代ギリシャの哲学者・エンペドクレスのことだ。」
「ム」は歴史的仮名遣いと思いますが、外来語と固有名詞なので、原文通りオリムピック、エムペドクレスと点訳していいのでしょうか。

【A】

外来語は、「てびき」p25【処理2】やp29 5.、p30「コラム4」に該当する文字以外は、原文の表記に従って書きますので、この場合も、原文通りオリムピック、エムペドクレスと点訳してよいと思います。

2.p25 1.外来語・外国語の書き方

本文で、日本人に外国人が「コクサイレンゴウ」と言う場面があります。カタカナで書いてあり外国人の発言でもあるので、あえて長音は使わずに「コクサイ■レンゴウ」とするのは誤りなのでしょうか。

【A】

この前後に「ウ」の発音について取り上げているところがなければ、「コクサイ■レンゴー」と書く方がよいと思います。
たとえば、本文中に「最後を伸さないで《ウ》と発音している」のような説明があれば、「レンゴウ」と書いてもよいかもしれませんが、単に外国人の流暢でない話し方を表しているだけでしたら、「レンゴー」と書きます。

3.p25 1.外来語・外国語の書き方

日系アメリカ人名について、原文中には、ロサンゼルスで探偵業を営んでいるロバート・サトウ、アメリカで生まれ育った日系三世・・・と書かれています。この場合、「サトウ」「サトー」どちらの表記になりますか?

【A】

アメリカで生まれ育ったので、「佐藤」という漢字は使われていないと思いますので、全てアルファベット表記する人名でしたら外国人名と判断して、
ロバート■サトウ
と書いてよいと思います。

4.p25 1.外来語・外国語の書き方 【処理2】

カタカナで、ベイヅミャオ(貝子廟)、映画俳優 ナ・ダギーランヅ(N.Dagiirannz)と書かれていたとき、「ヅ」は「ズ」にしてよいのでしょうか。固有名詞ですが、「てびき」p29の【処理4】には当てはまらないと考えてよいのでしょうか。

【A】

外来語は、「てびき」p25の「1.外来語・外国語の書き方」に準じて書きますので、【処理2】によって、「ジ・ズ・ジャ・ジュ・ジョ」を用いて書きます。
ベイズミャオ
ナ■ダギーランズ
と書きます。
p29 【処理4】は日本の法人や商品名に意図的に用いた場合ですので、この場合には当てはまりません。

5.p26 1.外来語・外国語の書き方 【処理4】

「餃子」「如雨露」に、ひらがなで「ぎょうざ」「じょうろ」とルビがある場合、説明文の「~示される仮名の表記に従って書く。」に沿うと、「う」は長音符ではなく「う」になるのでしょうか。

【A】

外来語を原音で記す場合は、片仮名で書くのが一般的で、ひらがなで書いてあるのは、読みを示したルビと考えた方が妥当ではないかと思います。
「ギョーザ」「ジョーロ」の読みをひらがなで示すと「ぎょうざ」「じょうろ」となるのが自然で、ひらがなの中に「ー」を入れるのは不自然です。あえて何かを主張する場合と思われます。(コンビ名の「くりいむしちゅー」など)
読みのルビとしてひらがなで「ぎょうざ」「じょうろ」「かんがるう」などとあれば、「ギョーザ」「ジョーロ」「カンガルー」と書くのが自然ではないかと思います。
「かんがるう」の例は、「てびき」p25 【処理3】にあります。
なお「如雨露」については語例集も参照してください。ポルトガル語由来の語ですが、漢語として扱います。

6.p26 1.外来語・外国語の書き方 【処理4】

中国語に関して、悟字輩、通字輩の切れ続きを質問したところ、
ゴ■ジハイ   ツー■ジハイ
との回答でした。
この場合の「通」は「つう」と読むので、外国の言葉の場合、長音にならずに、ツウ■ジハイになるのではないでしょうか。
原本に地名の「虹口」に「ほんきゅう」とルビがついていたので、「ホンキュウ」と書きましたが。

【A】

ここの【処理4】は漢字で書かれた外来語や外国語を原音で書く場合の処理です。
「通」は日本での漢字の音読みですので、長音を用いて書きます。「ツー」となります。
「虹口」を「ホンキュウ」と読むのは、原音の読みですので、ルビの通り「ホンキュウ」と書くことになります。「虹口」を音読みで「こうこう」と読めば「コーコー」となります。

7.p26 2.擬声語・擬態語・嘆声

蕎麦を食べる時の表現が原文で「ヅルヅル」になっていました。点字では、「ヅルヅル」「ズルズル」どちらですか。
「ううーん」「ふぅーむ」「ううーむ」の表記はそれぞれどうなりますか。
うめき声の「ううっ」は「ウウッ」ですが、うめき声の「うううっ」「うう」「ううう」「ううー」「うううー」「あうううっ」はどう書けばよいでしょうか。

【A】

擬声語・擬態語・嘆声なども「基本的な仮名遣い」に準じて書きますので、原文で「ヅルヅル」とあっても、「ズルズル」と書きます。
「ううーん」は、「ウウーン」、「ふぅーむ」は、「フーム」、「ううーむ」は「ウウーム」と書いてよいと思います。
「ふぅーむ」は、「マァー」のように、「フウーム」と書いてもよいかもしれません。
うめき声の場合、「う」が連続していれば、「てびき」p26【処理2】を用いてよいと思います。ただ、【処理2】では、最後の「う」を長音符で書く、としていますが、「がおうううう」のように吠える声の場合と異なり、うめき声の「ううう」は「う」の音の連続と思われますので、「うううっ」「うう」「ううう」「ううー」「うううー」「あうううっ」すべての「う」を「ウ」と書いてよいと思います。
「ウウウッ」「ウウ」「ウウウ」「ウウー」「ウウウー」「アウウウッ」となります。

8.p26 2.擬声語・擬態語・嘆声

原本に以下の部分があります。
「なんや。義則も来てたんかあ。」
義則は「おうっ。」と私たちに片手をあげて見せる。

上記の「おうっ」の「う」は長音か、そのまま「う」かで意見が分かれています。
「う」をはっきり発音していると思うので「おーっ。」ではおかしいと思いますが。

【A】

「オーッ」と長音で書いてよいと思います。
「う」をはっきり発音しているとする特別な理由はないように思いますので、オ列の長音と考えた方がよいと思います。
実際の発音が「う」なのか長音なのかについては、主観的な領分になってしまい意見が分かれるように思います。
墨字でひらがな書きをする嘆声や掛け声・擬声語などは、音を伸ばすところにも通常長音符を用いず「う」と書くのが一般的で、「すうっと」「がおう」「ぐうぐう」「おう」などと書かれますが、「てびき」p26 2.にあるように、点字の「基本的仮名遣い」の考え方からこれらは「う」を長音に対応させて書くことになっています。「ううっ」のように「う」が連続する場合のみ、「う」音の連続なのか伸ばしているのかを考慮して判断する、と考えていただいた方がよいと思います。

9.p27 2.擬声語・擬態語・嘆声 【処理2】[参考]

連続する語が行末近くに数個しか入らない場合、数個書いただけでは原文の雰囲気が伝わりづらいので、前の行に余白が多くなっても次行に10個程度書いてもよいでしょうか。また、「やめて」や「とまれ」などの語句が連続していて、行末には数個しか入らない場合は2行に渡って書いてもいいでしょうか。

【A】

たとえば、[参考]にある「があああああああああああん」のような場合でしたら、おっしゃるように次の行に移して構わないと思います。「やめて」や「とまれ」の場合は、当然マスあけして書きますから、繰り返し言葉でも2行にわたることはあります。それが3個、4個あった場合、2行にわたることは何も問題ありません。

10.p27 2.擬声語・擬態語 [参考]

鶏の鳴きまねの表記ですが、
「ケエコオ」
「ケエエエコオオオオ」
「ケエエエエエエエエコオオオオオオオオオオオオ」
と3パターンが出てきます。
長いので「ケエエエ□コオオオオ」
「ケエエエエエエエエ□コオオオオオオオオオオオオ」と切りたくなるのですが、やはり行末に収まる程度であれば、続けて書く方がよいのでしょうか。

【A】

「ケエエエ■コオオオオ」
「ケエエエエエエエエ■コオオオオオオオオオオオオ」
と、「コ」の前で区切って書くのがよいと思います。お考えの通りです。
「てびき」p27[参考]では同じ音の連続について言っています。実際の鶏の鳴き声を考えても、「ケエエエエ、コオオオオ」のように途中で、途切れたり、トーンが変わったりしていると思います。

11.p27 2.擬声語・擬態語・嘆声 【処理3】

促音が以下の場合はどのようになりますか。
①文頭から促音で始まる。カギはない。
例1 っと、そうだ。
②カギ内で、促音から始まる
例2 「っと、言ってるうちにきたみたいだ」
例3 「っ、やめろよ」→ 促音と読点を省略。「やめろよ」
③句点や読点、感嘆符、疑問符の後に促音
例4 「いく、っ」→ 読点を省略。「いくっ」
例5 「よし、っと」
例6 「まってください。っと、金あつめるので」
例7  英雄になる!って言ってた。
例3と例4以外は、例文通り、促音等を省略をせずに点訳した方がよいかなと思います。いかがでしょうか。

【A】

例1、2、5、6、7は、促音符が単独ではないので原文通りに書くことに、問題はありません。
促音符や疑問符、感嘆符は、単独でそれだけが書いてあると、読みにくくわかりにくいので何らかの工夫が必要になります。
また促音符は、点線や棒線と続けて単独で書いてあると、これも読みにくく、わかりにくいので省略したり、位置を考える必要があります。
例3の場合は、促音符が単独ですので促音符と読点を省略して「ヤメロヨ」とするか、発音を考慮して「ウッ、■ヤメロヨ」のように書いてもよいと思います。
例4も、発音を考えると「イクッ」の方が自然だと思いますので、読点を省略して「イクッ」と書いた方がよいと思います。

12.p27「コラム3」

『牧野富太郎の植物学』を点訳しています。原本は、学名をカタカナで表記しているのですが、「ウ」の扱いに迷ったところがあります。
原本に、
バショウの学名「ムサ・バショウ・シーボルト・ツッカリーニ ex イイヌマ」が掲載されている。
との文章があるのですが、前の「バショウ」は、「バショー」とし、学名は、ラテン語の読みなので「バショウ」と思ったのですが、この判断でよいでしょうか。
学名(ラテン語)の読みというのに少しひっかかっているのですが。
また、リュウキュウマユミ(エウオニムス・ルウチュエンシス・イトウ)は、リューキュー■マユミ(エウオニムス■ルウチュエンシス■イトー)と著者(命名者)が日本人の場合は、長音符にしましたが、これでよいのでしょうか。

【A】

カタカナで書いてあっても、漢語・和語に由来する場合は長音になります。
学名であっても「バショウ」はバショーと書きます。
「イトウ」も「イトー」となります。

13.p27「コラム3」

現在小学生が読まれる「ポケモン大図鑑」を入力中です。ポケモンに出てくる名前です。カタカナ語が長音か「ウ」なのか結論がでません。
原文は下記の通りです。なお、アルファベット表記は点字にせず、カタカナだけを点訳します。
①アズマオウ   AZUMAO
②アップリュー  APPRYU
③ウデッポウ   UDEPPOU
④エンブオー   ENBUOH
⑤カイリュー   KAIRYU
⑥ダイオウドウ  DAIOUDOU
⑦キュウコン   KYUKON
上記のような例です。原文どおりでよいのではとの意見が多くありますが、①③⑥⑦の「ウ」は長音にするのではないかとの意見もあります。スペルで判断して長音にしたり「ウ」にしたりするのでしょうか。

【A】

カタカナで書いてあっても、名前の由来を調べて、書くことになります。
①アズマオウ ⇒金魚の品種 東錦+王 ⇒ アズマオー
②アップリュー ⇒ アップル+竜 ⇒ アップリュー
③ウデッポウ ⇒ 腕+鉄砲エビ ⇒ ウデッポー
④エンブオー ⇒ 炎+武+王 ⇒ エンブオー
⑤カイリュー ⇒ 海竜 ⇒ カイリュー
⑥ダイオウドウ ⇒ 大王+銅像 ⇒ ダイオードー
⑦キュウコン 九尾のキツネ+コン(狐の鳴き声)⇒ キューコン

となります。
なお、クサイハナ、マダツボミなどの登場人物もいるようですが、これも、「くさい花」「まだ蕾」という意味のようですので、複合語の切れ続きに従って、「クサイ■ハナ」「マダ■ツボミ」と書きます。

14.p28 3.方言

方言について、あいづ、こいづはアイズ、コイズと書くように語例集で検索すると出てきます。「指導者ハンドブック」第5章編のルビの例題12に越路吹雪に「こすづふんぶき」のルビがついている問題の解答は「ヅ」ですが、固有名詞は特別扱いということでしょうか?
「いづ帰る?」「どっちづかず」「一づ」「勉強したづーごと」など「づ」は「ズ」と考えるのでしょうか?
また「落ぢた」「心待ぢ」「気持ぢ」「うぢら」などの「ぢ」は「ジ」にするのでしょうか?
一つ二つではなくてほぼ方言の会話なので「ジ」「ズ」に置き換わっていると違和感があります。

【A】

「てびき」では、方言であっても基本的な仮名遣いに従って書くことになりますので、語例集では、「こいづ」を「コイズ」としました。しかし、方言では、タ行で濁る音が多く、これを原則に従って、サ行の「ジ・ズ・ジャ・ジュ・ジョ」にすると元の仮名から離れてしまい「ヒトズ」が「ひとつ」の濁った音であることが想像がつきにくくなります。
ご質問の原本のような場合は、点訳書凡例で、「方言でタ行の音を濁って発音している場合は原本通りに点訳した」と断って、「イヅ」「ヒトヅ」「オヂタ」「ココロマヂ」などと点訳した方がよいと思います。
ハンドブックの用例は、点訳書凡例で断った上での処理と判断してお読みください。

15.p28 3.方言など

方言で「くだらない」の意味で「しょおもない」とある場合は、どう書けばよいでしょうか。

【A】

原文が仮名で「しょおもない」と書いてあれば、p28「3.方言」のルールに従い、「ショオモナイ」と書きます。

16.p28 3.方言 【処理】

「わたしぁ・それぁ・昔ぁ・あの家ぁ(うちぁ)」などや、擬声語「ひぁっ!?」と「なぁお」の小さい「ぁ」が付いている場合はどう点訳したらいいでしょうか

【A】

「てびき」p23 (6)、p28 3.の【処理】を参考にして、発音に近い点字を用いて書きます。小書きの「ぁ」を「あ」にするのが一般的ですが、「てびき」の「俺ァ」に例に倣って「シャ」や「リャア」にしてもよいと思います。
わたしぁ  ワタシア  ワタシャ
それぁ   ソレア   ソリャア
昔ぁ    ムカシア  ムカシャ
あの 家ぁ(うち)   ウチア
「ヒアッ!?」「ヒャアッ!?」
「ナアオ」「ニャアオ」
などが考えられます。

17.p28 3.方言

土佐弁の書き表し方について、質問します。
次の語句は、「う」ですか、長音符ですか。
○○ゆうがは(○○は名詞)
ねらいゆう
いいゆうがは

【A】

土佐弁の「ゆう」は、標準語の「てる」に該当するそうです。
例えば標準語の「してる」「やってる」は土佐弁で「しゆう」「やりゆう」となります。現在進行形を表し「雨が降っていますか?」の問いに、土佐弁の場合「雨が降りゆう」と「雨が降っちゅう」の答え方があるとのことです。
これらから「ゆう」は長音で書いてよいと思います。
ネライユーワ(狙ってる)、イイユーガワ(言っている)ということになります。

名詞+「ゆうが」は、たとえば「改革ゆうがは、まっこと厄介ぜよ」のような感じでしょうか。この場合は、標準語では「~というもの」にあたります。
「てびき」p19「ゆう」のルールにより、「ゆうて」「ゆうた」は長音ですが、「そうゆうもの」と書いてある場合は動詞連体形で「ユウ」と書きます。
「ゆうがは」も、「~ということ(もの)は」というようなニュアンスですので、「ゆう」という動詞の連体形になります。
カイカク■ユウガワ、~のようになると思います。
「○○(名詞)ゆうがは」は、名詞の後ろをマスあけして「ユウガワ」となります

18.p28 4.固有名詞の仮名遣い

「づ」と「ず」について、次の場合はどうなりますか。ルビがある場合の取り扱いに迷ってます。
「伝通院」「安曇野市」に「でんづういん」「あづみのし」とルビがあった場合も「デンズーイン」「アズミノシ」。
福島県の「吾妻山」に「あづまやま」とルビがある場合や、仮名で「あづまやま」と記載されている場合、どちらも「アズマヤマ」でいいのでしょうか。

【A】

固有名詞の仮名遣いは、「てびき」p28 4.に従い、漢字で書かれた固有名詞は基本的な仮名遣いに準じて書きます。
ふりがなは正しい場合も間違っている場合もありますので、ふりがなに惑わされず、漢字を仮名にしたときの正しい書き方に従います。
仮名で書かれた固有名詞(ふりがなではなく、仮名が正式名称の場合)は、(2)に従って書きます。
また、地名の仮名遣いに「現代かなづかい」の法則を適用するに当たって、昭和24年4月に閣議了解された「公用文の改善」という取り決めがあり、そのなかに、
・地名を仮名書きするときは現代かなづかいを基準とする
・特に、ジ・ヂ・ズ・ヅについては区別の根拠の付けにくいものはジ・ズに統一する
という項目があります。
そのほか、駅名の書き表し方についても、当時の運輸省・建設省・文部省の取り決め事項があり、現代の地名の書き方のよりどころとなっています。
これらのことから判断すると
伝通院・神通川・安曇野市などは、2語の連合によって「つ」が濁ったとの根拠が曖昧なので、「でんずういん」「じんずうがわ」「あずみのし」となり、点字では「デンズーイン」「ジンズーガワ」「アズミノシ」と書きます。
「吾妻山」も、現在では「吾が妻」の意味合いがなくなっているので、現代仮名遣いでは「あずま」と書きます。国語辞典を引いても、すべて「あずま」で「吾妻下駄」「吾妻コート」なども「アズマ」となっています。
ただ、「あづま総合運動公園」は固有名詞の正式名称がひらがなですので、「てびき」p28の用例にあるように、「アヅマ」と書きます。
なお、上記の取り決めから、「会津」「焼津」「柳津」「舞鶴」などは、「つ」が濁ったものとしてふりがなが振ってあってもなくても、ふりがなが間違っていても「ヅ」となります。
「伊豆」「出雲」「和泉」などは現代仮名遣いでは「ず」と書きますので、点字でも「ズ」と書きます。

19.p28 4.固有名詞の仮名遣い

青梅・青海・近江・室生・能生などの点字表記について
青(「あお」が変化して「お」)梅(うめ)、青海(おうみ)、近江(淡いうみから転じたもの)のようで、いずれも「う」はウ列・オ列の長音ではないと考えますが、なぜ長音で表記するのでしょうか。
室生・能生駅(のうえき)も、色々調べたところ「室」を「むろ」、「生」を「う」、「能」を「の」、「生」を「う」と読むようです。Q&Aに、《未曾有は「有」という字を「う」と読んでいますので、長音になりません》とありますので、能生駅は「ノウ」と点訳しました。「室生」も「生」を(う)と読んでいるので長音ではなく「ウ」と点訳するのではないでしょうか。

【A】

「近江」は、歴史的仮名遣いでは「あふみ」と書き、現代仮名遣いでは「おうみ」、現代語の音韻では「オーミ」となります。
「歴史的仮名遣い」と「現代仮名遣い」と「現代語の音韻」については、「てびき3版指導者ハンドブック2章編」p24「コラム」を参照してください。
この一覧は「現代仮名遣い」の付表にありますが、点字で長音かどうかなどに迷ったとき、現代ではどう発音するか(現代語の音韻)で判断することができます。
「青梅」は、「あおうめ」の「あお」が「お」に変化したのではなく、「あおう」の部分が「おう」に転化したものですので、「オー」と長音で書きます。
「青海」を「おうみ」と読む場合も同じで、「あおうみ」の「あおう」が「おう」に転化したので「オーミ」と書きます。
「室生」は「ムロー」、能生駅は「ノーエキ」と書きます。
「生」が付く地名などの語句は、迷うことが多いのですが、「麻生」「稲生」「蒲生」など名字に使用されるようなア列の音は「あさふ」「いなふ」「がまふ」が現代仮名遣いでは「あそう」「いのう」「がもう」となり、現代の音韻では「アソー」「イノー」「ガモー」となります。
「桐生」「埴生」「瓜生」「丹生」などのイ列の音は、「きりふ」「はにふ」「うりふ」「にふ」が現代仮名遣いで「きりゅう」「はにゅう」「うりゅう」「にゅう」となり、現代の音韻では「キリュー」「ハニュー」「ウリュー」「ニュー」と書きます。
「室生」「能生」「御園生」などのオ列の音は「むろふ」「のふ」「みそのふ」が現代仮名遣いで「むろう」「のう」「みそのう」となり、現代の音韻では「ムロー」「ノー」「ミソノー」となります。
ただ、「葛生」「杉生」「蓬生」など、植物が生えているところを表すこれらの語は、「くずふ」「すぎふ」「よもぎふ」が、現代仮名遣いでも「くずう」「すぎう」「よもぎう」となり、「う」の音韻が残っていると感じられますので、長音ではなく 「クズウ」「スギウ」「ヨモギウ」と書くのがよいと思います。
以上の語は、熟字全体で「きりゅう」「のう」「にゅう」などと読む語で、「桐」と「生」、「能」と「生」、「丹」と「生」などに分けにくい語であると思います。
それに比べ「未曾有」は漢文の「未だ曾て有らず(「ず」は「未」の再読文字)」で、1字1字意味があって発音する文字ですので、「ミゾウ」と書きます。
点字は表音文字ですので、現代の音韻に従った表記となります。現代の音韻は現代仮名遣いの付表を基にします。個人や地方によって発音も変わることがありますので、付表などを参考に現代仮名遣いに準じた書き方をします。

20.p28 4.固有名詞の仮名遣い

俳優・松坂桃李は、「トオリ」でしょうか?「トーリ」でしょうか?

【A】

漢字で書かれた固有名詞は、「基本的な仮名遣い」に従います。墨字で「とうり」と書くものは「トーリ」と点訳し、「とおり」と書くものは「トオリ」と点訳するのが「基本的な仮名遣い」です。「桃」の音読みは墨字の現代仮名遣いで「とう」と書きますので、点字表記は「トーリ」となります。p20にありますように「トオ」の仮名遣いとなるのは和語に限られ、漢字の音読み(漢語)はこの仮名遣いになりません。

21.p28 4.固有名詞の仮名遣い

漢字で書かれた固有名詞は「基本的な仮名遣い」に従いますが、中国・朝鮮人名などが漢字で書かれている場合も同様でしょうか。

【A】

「毛沢東」を「モー■タクトー」、「金大中事件」を「キン■ダイチュー■ジケン」のように、日本語の漢字音読みにする場合は、p28(1)の規則に従い、墨字で「う」と書く伸びる音に長音符を用います。けれども漢字で書かれた名前に現地音のルビが付されている場合は、外国語の仮名書きですのでp26【処理4】にありますように、ルビの表記に従って書きます。
たとえば「杜」という人名に「ドウ」と現地音のルビがある場合は長音にせず「ドウ」と書きます。

22.p28 4.固有名詞の仮名遣い

「桐生(キリュー)」「柳生(ヤギュー)」の例がありますが、人名で本人が「きりう」とルビを振っていたり、KIRIUと名刺にローマ字を入れていたりする場合は、点字でも、ルビなどの仮名遣い通りに書きたいと感じますが、いかがでしょうか。

【A】

現代仮名遣いの付表では、「りう」は現代の音韻では「リュー」と発音されます。したがって、現代の音韻に基づいて「キリュー」と点訳することになります。(2)の仮名で書かれた固有名詞のルールは、ルビなどでなく、原文が漢字を用いずに仮名だけで書かれている場合に適用します。

23.p28 4.固有名詞の仮名遣い

人名についてお聞きします。ビジネス本の著者です。
奥付に「藤由達蔵」ルビでフヂヨシタツゾウとあるのですが、普通ならフジヨシと書きます。しかし、ルビがあるので、フヂヨシとして書きたいのです。ネットでもルビでフヂヨシとなっています。固有名詞の仮名遣いの規則では、漢字で書かれた固有名詞は基本的な仮名遣いとするとなってますが、いかがでしょうか。

【A】

フジヨシ■タツゾーと書きます。
名字は、漢字で書かれていますので、漢字で書かれた固有名詞の規則に準じて書きます。
この方の著書の書誌は、すべて「フジヨシ」になっていますし、サピエの書誌であるTRCも「フジヨシ」になっています。
ルビが「フヂヨシ」であることが本の中で触れられているような場合は、点訳挿入符などで説明することになります。

24.p28 4.固有名詞の仮名遣い

女性の名前「阿保良」に「おうら」とルビがありました。この場合、「オウラ」と書くのでしょうか、「オーラ」と書くのでしょうか。
小梅(こうめ)の場合は「コウメ」でしょうが、小梅(おうめ)と読ませる場合も「オウメ」と書くのでしょうか、「オーメ」でしょうか。

【A】

「出雲阿国」(いずものおくに)とか「阿千」(おせん)のように「阿」は女性名に愛称的な接頭語のような感じで冠して「お」と読ませる用法がありますので、保良に「阿」をつけて名前としたのかもしれません。
「おほうら」または「おほら」が音韻変化してウ音に変化しているウ音便となりますので「オーラ」と長音で書きます。
小梅を「おうめ」と読ませる場合も、「梅(うめ)」に「お」がついたものですので、「オウメ」となります。

25.p28 4.固有名詞の仮名遣い

「千鶴子」(ちづことルビ有)と言う人物名が出てきました。
「てびき」に「漢字で書かれた固有名詞は基本的な仮名遣いに準じて書く」とあります。また、フォーラムQ&Aでは、ふりがなは正しい場合も間違っている場合もあるので、ふりがなに惑わされず、ともあります。
漢字が「鶴」なので「ヅ」になるのかと思いましたが、辞書を調べたら「たず(田鶴)」と言う言葉を見つけました。
「田」に「鶴」が付いて「タズ」なら、千に鶴と子が付いて「チズコ」かと考えましたが、Q&Aには「舞鶴」はマイヅルとあります。
チズコかチヅコかどちらでしょうか。また、地名と人名では考え方に違いはあるのでしょうか。

【A】

「チヅコ」と書きます。
地名と人名の考え方に違いはなく、沼津、舞鶴、石塚のように、2語の連合と考えられる場合はタ行の「ヂ・ヅ」を用います。沼津、舞鶴などは、沼と津、舞と鶴が連合してできた地名であるとの判断から、タ行が用いられています。千鶴子も、千の鶴という判断から、タ行を用います。
それに比して、出雲、伊豆、宍道などは、現代語としては二語の連合と判断できないので、サ行を用います。
「田鶴」は、「田鶴」で「鶴」を表す歌語で、決して田と鶴の二つには分けられないので「たず」となります。田鶴子さんは「タズコ」と書いてよいと思います。

26.p28 4.固有名詞の仮名遣い

「上野千鶴子」はWikipediaなどでは「ちづこ」と表記されていますが、国会図書館書誌情報では「ちずこ」となっています。「鶴」という漢字ですので「ちづこ」でよいと思うのですが、よく理解できません。また、ギタリストの「渡辺香津美」ですが、Wikipediaなどでは「かずみ」となっていて公式サイトも「KAZUMI」となっています。一方で他のネット情報では「かづみ」となっていてニックネームが「かずみ」と書かれているものもあります。人名の「ず」と「づ」がよくわかりません。漢字に沿った書き方でよいのでしょうか。考え方を教えてください。

【A】

漢字で書かれた固有名詞は「基本的な仮名遣い」に準じて書きます。
国立国会図書館の書誌情報の読みには独自の基本ルールがあり、読みに「ヂ・ヅ・ヂャ・ヂュ・ヂョ」は用いません。
「国立国会図書館読みの基準」(2021年1月版)の抜粋
https://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/characters/pdf/yomi_202101.pdf
6.「ヂ」、「ヅ」
「ヂ」、「ヅ」は、「ジ」、「ズ」と記録する。
ちかぢか チカジカ
磯づり イソズリ
仮名遣い カナズカイ
ちぢむ チジム
つづり方 ツズリカタ
ヅーフ ズーフ
と書かれています。
そのほか、
2.助詞「ハ」、「へ」、「ヲ」
助詞「ハ」、「へ」、「ヲ」は、「ワ」、「エ」、「オ」と記録する。
こんにちは コンニチワ
いずこへ イズコ△エ
字を書く ジ△オ△カク
のような、基準もあります。
この書誌の書き方は、サピエのTRCも同じ基準ですので、「サピエ」を検索して、書名や著者名の読みに疑問に思われることもあると思います。
このように、国語辞典と同様、書誌を読む場合もその書き方の基準に注意する必要があります。
また、ローマ字で書く場合も、好みで「du」は使わず「zu」と書く方も多いと思います。
点訳する場合は、点字の規則に従って書く事になります。

27.p28 4.固有名詞の仮名遣い

小学校の福祉体験で点字名刺の作成をしています。そのとき、名前の書き方で迷うことがあります。
ウ列、オ列の後の「う」は長音符を使いますが、漢字2字の名前、「優羽」(ゆう)や「夢生」(むう)も長音になりますか。

【A】

人名の表記は迷うことが多いですし、小学生に理解してもらうのは大変なのですが、ウ列、オ列の長音は長音符を用いて書くという原則をわかっていただき、
「優羽」は「ユー」、「夢歩」は「ムー」と書くと説明するのがよいと思います。
初めて点字に触れる小中学生は、佐藤や加藤の名字でも「サトー」「カトー」と書くことに抵抗を感じるようですので、点字の語の書き表し方を理解してもらうようにします。
「てびき」でも「由布子」は「ユーコ」と書くとしています。

28.p28 4.固有名詞の仮名遣い (2)

「てびき」p249「用語解説」で固有名詞の中に書名も含まれていますが、p28で扱われている固有名詞の仮名遣いのルールは書名にも適用するものでしょうか。
(「おもひで・思ひ出」のような歴史的仮名遣いで書かれた書名)

【A】

「てびき」3章では、固有名詞を「人名」「地名」「その他の固有名詞」に分類してマスあけの規則を説明してあります。「その他の固有名詞」も用語の上では固有名詞なのですが、p87に書かれているように、人名・地名などからなる固有の部分と普通名詞の組み合わせや、普通名詞同士の組み合わせでできています。
2章の「仮名遣い」では、主にその固有の部分(人名・地名など)の仮名遣いについて説明しています。
ですから、「その他の固有名詞」の普通名詞部分については、原則として現代仮名遣いで書くのがよいと思います。そして、その仮名遣いを説明する必要がある場合は点訳挿入符などで、原文の仮名遣いを入れるのがよいと思います。
「シクラメンのかほり」は「シクラメンノ■カオリ」、「おもひでぽろぽろ」は「オモイデ■ポロポロ」となります。

29.p28 4.固有名詞の仮名遣い (2)

原本の地の文に
『橿日宮(福岡市東区香椎)で信託をうける。』に「かしひのみや」とルビあり。
広辞苑第7版見出し語「香椎」の説明文中に【記紀伝承の橿日(かしい)宮のあとをいう。】
コトバンクの精選版 日本国語大辞典「香椎宮」の解説の末尾に【かしいのみや】とありました。どのようにしたらよいでしょうか。
また、原本で日本書紀の神話の本文の抜粋個所として、『私は国神で、名をアシナヅチ(脚摩乳)と申します。妻はテナヅチ(手摩乳)です。』とあります。
広辞苑の見出し語は「あしなずち」とあり、コトバンクの精選版 日本国語大辞典「奇稲田姫・櫛名田比売」の解説において、【出雲の国つ神、脚摩乳(あしなずち)、手摩乳(てなずち)の娘。】とありました。
この箇所はルビではないのですが、どうしたらよいでしょうか。
「てびき」p28(2)に「仮名で書かれた固有名詞は原文の仮名遣いに従って書く」とあります。
アシナヅチ(脚摩乳)、テナヅチ(手摩乳)は固有名詞だと思うのですが、原文に仮名で書かれている場合はどうすればいいでしょうか。

【A】

ご質問の「かしひ」「あしなづち」は、歴史的仮名遣いになります。
広辞苑の「あしなずち」の見出しの下にカタカナで「・・ヅチ」とあります。香椎「かしい」の下にも「・・シヒ」とあります。広辞苑では、現代仮名遣いと歴史的仮名遣いが異なる場合は、このように見出しの下に異なる部分をカタカナで小さく記しています。(「広辞苑」の凡例より)
ですから、点訳では、カシイノ■ミヤ、アシナズチ、テナズチと現代仮名遣いで点訳することになります。
p28(2)の「仮名で書かれた固有名詞」は、その固有名詞に、仮名以外の表記がない場合を指します。ここの例の「みさを」「かほる」「ちづ子」などは仮名だけで表し、それに相当する漢字がありません。そのような場合に原文の仮名遣いに従って書きます。
「あしなずち」は「脚摩乳」の漢字表記がありますので、それを仮名で書いた場合は、漢字の表記をもとに書きます。
「和泉式部」が「いづみ しきぶ」、「大津皇子」を「おほつの みこ」と仮名で書いてあった場合も、一般書の点訳では「いずみ しきぶ」「おおつの みこ」と書きます。

30.p29 5.特殊音点字を用いても書き表せない文字が使われている場合

原本に「渋谷『ジアンジアン』」と書かれています。調べたところそれは「小劇場 渋谷ジァン・ジァン」のことでした。この場合、「ジャンジャン」と点訳してもよいでしょうか。
また「○○・コレクシォン・ギャルリィ」(画廊の名称)を「コレクシオン■ギャルリイ」と点訳するという意見があるのですが、これも「コレクション■ギャルリー」にしてよいでしょうか。
「さまぁ~ず」を「サマアーズ」、「マルチィン・ルター」を「マルチイン■ルター」、「猫がミァーミァー、鴉がカァーカァー」を「ミアー■ミアー」「カアー■カアー」のように、小文字の母音字を機械的に清音に変えて点訳するという意見もあるのですが、「発音に近い点字を用いて」ということなら「サマーズ」、「マルティン」または「マルチン」、「ミャーミャー」「カーカー」としてはいけないのでしょうか。
拍数自体が変わってきて、マスあけも変わることがありますし、不自然な書き方ではないかと毎回悩みます。

【A】

「てびき」では「なるべくその発音に近い点字を用いて書く」ことをお勧めしています。
小書きの母音をそのまま書き表しても良い場合もありますが、不自然になる場合も多いと思われますので、「なるべく、発音に近い」書き方を工夫した方がよいと思います。
「さまぁ~ず」は「サマーズ」
「マルチィン・ルター」は「マルティン■ルター」、
「猫がミァーミァー」は「ミャーミャー」が自然に思われます。
「鴉がカァーカァー」は「カアー■カアー」でもよいと思います。
「渋谷ジァンジァン」「コレクシォン・ギャルリィ」についてもお考えの通り、「ジャンジャン」「コレクション」「ギャルリー」と書いてよいと思います。「ギャルリィ」については「ギャルリイ」も考えられます。

31.p29 5.特殊音点字を用いても書き表せない文字が使われている場合

サピエ登録の本です。アイヌ語の小さなカタカナで書かれている文字はどのように点訳をすればよいですか。読み手の方がアイヌ語の小文字がどのように書かれているかも知りたいとの要望があり、どのように点訳をすればよいか思案しています。
今、考えているのは小文字を第2カギで括って点訳をする。それを点訳書凡例に書く。
サピエの登録本でもアイヌ語の本が登録されています。どのように点訳されているかご指導ください。

【A】

アシクネプの「ク」と「プ」が小さく書いてあるような場合でしょうか。この小書きの部分を表す記号は、日本の点字表記法にはありませんので、表し方を工夫しなければならないことになります。
単語の中の一文字だけを第2カギで囲むのはマス数から見ても、とても読みにくいと思います。表記法にある小文字符(④⑤の点)も、特殊音と重なる部分があるので使用できません。考えられるのは、点訳書凡例で断った上で、⑤⑥の点を前置して表す方法で、これは他の仮名と重なりません。
ただ、ここまでして点訳する意味があるのかどうか、数ページをこの方法で点訳して読んでみていただいた方がよいと思います。
サピエに現在アップされているアイヌ語辞典は、
アリガトー■■(イヤイライケレ)■引iyayraykere引
のように、仮名とアルファベット表記が示してありますが、仮名の小書きは表示されていません。(イヤイライケレには小書きの部分はありませんが、外を見てもすべて小書きは示してありません)
このことも、依頼された方にお伝えして検討された方がよいと思います。