第2章 語の書き表し方

その1 仮名遣い

1 基本的な仮名遣い

1.p16 1.直音・拗音・促音・撥音など

用例「ぴょこり」を取り上げた理由は?見出し語に採用しない辞書が多く、普遍性に乏しいのではないでしょうか。

【A】

この箇所の用例は、語としての普遍性よりも、清音・濁音・半濁音・拗音・拗濁音・拗半濁音などの文字をできるだけ多く取り上げることを重視しました。拗半濁音「ピャ」「ピュ」「ピョ」を含み、これより後の項目で扱う長音などの要素を含まない語は大変少なく、苦慮したところです。点訳では、辞書に載っていない言葉にも少なからず出会いますので、用例の選択に当たっては、実例をできるだけ幅広く採用するように心がけました。

2.p17 2.ア列・イ列・エ列の長音

「ふるさと」を歌っています。
うぅさぁぎおぉいし、かのやまぁ、こぶなつぅりし、かのかわぁ
ゆぅめはいぃまもめぇぐぅりぃて
わすれがぁたきふるさと
これは、どのように書けばよいでしょうか。

【A】

ウーサアギ■オオイシ、■カノ■ヤマア、■コブナ■ツーリシ、■
カノ■カワア
ユーメワ■イイマモ■メエグーリイテ
ワスレガアタキ■フルサト
「う」と書かれているウ列の長音は、長音符を用い、そのほかは、仮名で書かれている発音の通りに書いてよいと思います。

3.p18 3.現代仮名遣いとの相違点 【備考1】 [参考]

「思ひて」の例から活用語尾が「ひ」の変化はわかるが、「び」、「み」の例にはどんなものがありますか。

【A】

現代の共通語の音韻には見当たらないようですが、文語表現には多く存在したようです。
呼びて → 呼うで    賜びて → 賜うで  喜びて → 喜うで
読みて・詠みて → 読うで・詠うで   たのみて → たのうで
また、活用語尾ではありませんが、
頭(かみべ) → かうべ → こうべ
まれびと →  まらうど → まろうど
などもあるようです。
「日本語文法がわかる事典」(東京堂出版)、「古典基礎語辞典」(角川学芸出版)などを参考にしています。

4.p19 3.現代仮名遣いとの相違点 【備考2】

用例「閏年」「稀有」「未曾有」について、ここに掲載した理由や注意点を説明してください。

【A】

長音にせずに「ウ」と書くことを注意する【備考】の用例として、3版では動詞の語尾だけをあげていましたが、間違えやすい例として取り上げました。「閏年」は、歴史的仮名遣いとの関係から現代の音韻を読み解くのが論理的な説明になります。「指導者ハンドブック2章編」p24コラムを参照の上、「現代仮名遣い」付表から現代の音韻で「う」となることを確認してください。「ハンドブック」ポイント解説の、「閏う」という動詞に「年」がついたと考えると分かりやすいという補助的なアドバイスと合わせて、参考にしてください。「稀有」「未曾有」は「有る」という字を「う」と読んでいますので、長音になりません。

5.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

中央競馬会の重賞レース「菊花賞」、勲章の「菊花大綬章」は、「きくか」「きっか」どちらの読みがよいのでしょうか。

【A】

「菊花賞」は「キクカショー」、「菊花大綬章」は「キクカ■ダイジュショー」といずれも「キクカ」と書きます。
点訳フォーラムでは「菊花」は、点字では「キクカ」と書くとしてきましたが、この二つは固有名詞ではないかとのご質問やご意見をいただいたため、中央競馬会と内閣府に文書で問い合わせ、正式に文書で回答をいただきました。ここにその経過を記します。
内閣府の回答は、
《ご照会をいただきました「菊花大綬章」の仮名表記につきましては、根拠となるべき規定において、表記は漢字のみとなっており、仮名表記を示すものは特に定められていないところとなっております。「菊花大綬章」を仮名表記するにあたり、内閣府賞勲局としては、一般的な日本語における表記を用いていくこととなりますが、そのうち「菊花」については、「きっか」、「きくか」ともに表記されてきているものと認識しており、その中で「きっか」を使用し、「きっかだいじゅしょう」とホームページ、パンフレット等においてご案内している状況となっております。》
ということでした。この回答を受けて、点訳フォーラムでは、回答のお礼とともに以下のように記して、点字では「キクカ」と書くことを内閣府に報告しました。
《この記述を受けて、当フォーラムの関係者で協議した結果、点字表記の以下の規則に該当するので、点字では「きくか」と表記するとの結論に至りましたことをご報告させていただきます。(以下、「てびき」p20 (2)の規則を引用)
※ 菊花大綬章 ⇒ キクカ■ダイジュショー》
中央競馬会の回答は以下の通りでした。
《菊花賞は国営競馬時代の1948年から現在の名称となっております。弊会の周年史等を確認しましたが、あいにく典拠となる文書等はなく、表記は漢字のみで、仮名表記も見つけられませんでした。しかしながら、弊会が海外向けに作成している印刷物等では従来より kikuka sho としており、現在の英語版WEBサイト(Horse Racing in Japan) においても同様の記載を行っています。
なお、ご指摘のURL 表記については、一般的に発せられている「kikka」を使用しているものの、これはWEB 上の場所を示す記号であり、正式な仮名表記は「きくかしょう」とご理解いただいて差し支えありません。
典拠をお示しできず恐縮ですが、ご賢察いただけると幸いです。》

これらのことから、点訳フォーラムのこれまでの書き方を変更することはなく、すべて「キクカ」と書くことといたします。

6.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

「国公立」の読みは大辞林、広辞苑ともに「コッコーリツ」ですが、「コクコーリツ」と書く方がよいのでしょうか。

【A】

「てびき」p20(2) のような規定は、点字独特のものです。国語辞典で判断が揺れているような語は、漢字の表意性や意味の理解のしやすさを考慮して、点字では促音符を用いない方を選択することが原則となります。「刻々」「極寒」「鉄拳」「活気」のように、2字漢語で促音化することが広く定着している語は、促音符を用いないと不自然になりますが、「国立」と「公立」を一つにした「国公立」は、[参考]に説明している、「漢字2字の語と他の語のつなぎ目は促音化しないで書く」という考え方から言っても、その境目が分かりやすいように、「コクコーリツ」とした方がよいでしょう。

7.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

「刻刻」と「逆光」について質問します。
促音符を使わないで書く空見出しがある場合は、促音符を使わないとのことですね。両方ともに空見出しがあるために「コクコク、ギャクコー」とすると教えられました。点訳フォーラムの「語例集」では「コッコク」となっています。
他のグループでも「コッコク、ギャッコー」と書いている所があるのですが、どのように理解したらいいでしょうか。全国的には統一されていなくて各グループで決めていいということでしょうか。

【A】

「てびき」p20で、促音化しない方を選択することを特に強調しているのは、語が複合している場合のつなぎ目についてです。【参考】にある「劇作+家」「著作+権」「活+火山」のような場合になります。
漢字2字のような短い語の場合、促音化して読むことが明らかな語もたくさんありますので、必ず促音化しないで読まなければならないと言っているのではありません。
たとえば、ある辞書では促音化しない方が空見出しになっていて、別の辞書では促音化している方が空見出しになっているというように辞書によって判断が揺れる場合は、促音化しない方を選ぶことをお勧めします。「菊花」(キクカ)、「敵機」(テキキ)のような場合です。
「刻刻」「逆光」などは、促音化しない読みが空見出しにもない小型辞典もあり、殆どの辞書で「コッコク」「ギャッコー」の方に語義が書いてありますので、「コッコク」「ギャッコー」と読んでよいというのが、「てびき」、「点訳フォーラム」の判断です。
「逆効果」「逆光線」などは、「ギャクコーカ」「ギャクコーセン」と読みます。
漢字2字の語は無数にありますので、判断が揺れる場合も中にはあると思います。そのような場合は、上記の基準を基に、各施設・団体で判断してください。

8.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)[参考]

「足根管」に、原本で「そっこんかん」とルビがあります。
点訳フォーラム「点字表記の語例」で「足根」を調べると、
足根関節 ソクコン カンセツ
足根動脈 ソクコン ドーミャク
の語例があるので、「ソクコンカン」と思い、校正にあげましたが、「ルビに『そっこん』とあるので、『ソッコンカン』ではないでしょうか」と言われました。
「てびき」p20[参考]によると、促音化しない読みがあるときは促音化しない方を優先とありますが、ここでも当てはまるでしょうか。
また、「ソッコンカン」にこだわる場合、校正でどこまでお勧めしてよいものか、迷っています。

【A】

校正で指摘して、点訳者に修正していただくかどうか迷う場合が多いですが、今回は、以下の2点から校正で指摘したとおりに修正していただくのがよいと考えます。

1.促音を用いるかどうかの判断
「足根」は、多くの医学関係の辞典で「そくこん」と読まれていますが、中には、「そっこん」の読みもあります。点字では、促音かどうかに揺れがある場合は、意味の理解を容易にするために、促音でない方を選択します(「日本点字表記法」)。
促音かどうか迷った場合、辞書に促音を用いない読みがあれば、促音を用いない方を選択します(「点訳のてびき」)。
ここから、点字では、「足根」は「ソクコン」と読むことになります。

2.ルビがある場合、ルビに従うかどうかの判断
ルビには誤りが多いことは、点訳フォーラムの「点訳に関する質問にお答えします」(第5章、その5、4.「コラム36」)やブログ(校正雑感)でもご紹介してきました。また、誤りとは言えないまでも、ルビは、著者の意図ではなく、ほとんどが編集担当者が読者の読みの便宜のために付けていますので、適切でない場合が多くあります。
まして、点字で読むことまでを考慮したルビは皆無と言ってよいと思います。
「菊花大綬章」の内閣府の回答も参考になさってください。
もっと一般的な語、たとえば「的確」「三角形」に「てっかく」「さんかっけい」とルビが振ってあったら、校正で迷わず指摘し、点訳者に修正して貰うと思います。「足根」についても、ルビを根拠に「ソッコン」と読むことを決めるのではなく、1.の理由で「ソクコン」と読むか「ソッコン」と読むかを決めるように、点訳者に伝えるのがよいと思います。

9.p20 4.注意すべき仮名遣い (2)

原本に
名前の中に「っ」が入っていたような
とある場合の書き方について教えてください
活水(カッスイ)高校の名前を探すという状況です。促音符だけでの表示ができないので「かっ」とするか「つ」とするか、となるのでしょうか

【A】

第1カギの中に②の点を一つだけ書くと読み取りにくいので「ソクオン」と書くのがよいと思います。「ツマル■オン」「チイサナ■ツ」なども考えられます。

10.p23 4.注意すべき仮名遣い (5)

伏せ字のあとに(第1つなぎ符をはさんで)長音符を書くことはできますか。
例:いくつかの駅を過ぎて、「次は○○ー、○○ー」のアナウンス・・・

【A】

つなぎ符類の後ろに、長音符、促音符を単独で書くことはできません。
ですので、この場合も、長音符を省略して書くことになります。
駅のアナウンスということが書いてありますので、長音符を省略しても雰囲気は伝わると思います。

11.p23 4.注意すべき仮名遣い (5) 【処理】

「三郎~~~!」とある場合、どう点訳したらよいですか。
「サブロー」と長音符の後に、波線が数個付いています。

【A】

「てびき」p26【処理1】にあるように、長音符を用いて書きます。そして、p23【処理】により長音符は複数続けて用いることはできませんので、
「サブロー!」と書くことになります。
しかし、これでは、声をのばしていることがわかりませんので、それを表す必要がある場合は、発音を考慮して
「サブロオー!」
と書くことをお勧めします。

12.p23 4.注意すべき仮名遣い(5)【処理】ほか

原文に「NOッーーーーーーーーーーーーーーー」と書いてあります。
外国語引用符で囲みNOと書いた後に、つなぎ符でつないで、促音符、長音符を書いてよいのでしょうか。

【A】

点字では「ノーッ」と書く方法しかないと思います。
原文の表記を説明する必要がある場合は、点訳挿入符で、「原文はNOに続けて、小さな「ツ」そのあとに長音が15個付いている」のように説明します。
外国語引用符を閉じた後に促音符を書いても、促音とは分かりませんし、促音符の後長音を続けることはできませんし、長音符を複数書くこともできませんので、この方法以外にはありません。

13.p23 4.注意すべき仮名遣い (5)

長音符から始められますか。
「かーごめかごめ」の歌が眠気のなかで聞こえてくる場面が「ーごめ…め」で始まります。3マス目に長音符から書いていいでしょうか。

【A】

長音は前の音を伸ばして発音する音ですので、3マス目から長音で始めることはできません。省略して「ゴメ」から書くか、発音を考慮して「アーゴメ」と書くかどちらかがよいと思います。

14.p23 4.注意すべき仮名遣い (7)

(7)の用例の「そのとうり」「ほおっておく」のように、「う→お」「お→う(長音)」と仮名遣いを直す場合の基準をもう少し詳しく教えてください。
「おまちどうさま」というセリフの「う」は「お」に直して書けますか。
「お好きにどおぞ」「どおしたの?」「こおいうふうに」「そおなんですけどお」「よぉし、行くぞ」などの「お」は、そのまま「お」を使えるでしょうか。

【A】

ここでは、現代仮名遣いとして誤った表記になっている場合に、正しい点字の仮名遣いにすることをいっています。
擬声語・擬態語や、セリフなどで、意図的に発音を変えているような場合は、原文通りに点訳します。
「おまちどうさま」は、発音を意図的に変えたとは判断しにくいので仮名遣いの誤りと思います。
「お好きにどおぞ」「どおしたの?」「こおいうふうに」「そおなんですけどお」「よぉし、行くぞ」などの「お」は、そのまま「オ」と書いてよいと思います。
「オマチドオサマ」「オスキニ■ドオゾ」「ドオ■シタノ?」
「コオ■イウ■フーニ」「ソオナンデスケドオ」「ヨオシ、■イクゾ」

15.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

現代文中の古文点訳について、現代文の表記に従う場合、次の語の表記はどのようにしますか?
原本の清音通り、或は現代語の濁音に変えるか。よろしくお願いいたします。
一例として
1.なつかしけれはとて 2.花をみすや
3.みやことり 4.きこえぬれと
5.誰たれ 6.耀くかかやく

【A】

現代文の仮名遣いに直して書く場合は、濁点、半濁点、促音なども含めて、現代文の仮名遣いに直して書くことになります。
1.ナツカシケレバトテ
2.ハナヲ■ミズヤ
3.ミヤコドリ
4.キコエヌレド
5.「誰」は漢字で書いてあれば「ダレ」でよいと思いますが、仮名で「たれ」とあった場合は、現代でも、「タレ」を用いることはありますので、その文脈に適切な方を選んでよいと思います。
6.カガヤク
となると思います。

16.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

《現代文の中に歴史的仮名遣いの語句や文が挿入されているときは、現代文の仮名遣いに直して書くことを原則とする。ただし、原文の種類や文脈によっては、①~③の方法で書くことができる。
①現代文の仮名遣いで書いたあとに、古文の仮名遣いをカッコ類で囲んで書く
②古文の仮名遣いで書いたあとに、現代文の仮名遣いをカッコ類で囲んで書く》
とあります。
①あるいは②を選ぶ場合の考え方を教えてください。
また、文脈によって、上記の②でなく①を使う場合、以下の文はどのようにしたらよいでしょうか?旧仮名遣いのみの1字をカッコで囲んで書くのでしょうか?

古文の授業で、「竜胆」は現代仮名遣いでは「りんどう」、旧仮名遣いでは「りんだう」と書く、と教えられた。

【A】

ご質問の
古文の授業で、「竜胆」は現代仮名遣いでは「りんどう」、旧仮名遣いでは「りんだう」と書く、と教えられた。
を点訳する場合、「現代仮名遣いでは~、旧仮名遣いでは~」と原文に書いてありますので、「竜胆」「りんどう」「りんだう」をそれぞれ
「リンドー点挿カンジデ■リュー■タン点挿」~
「リンドー」
「リンダウ」
と書いてよいと思います。

なお、「竜胆」は漢語ですので、点字では、古文の点字表記の場合も「リンドー」となります。
「古文の点字表記」と墨字の旧仮名遣いは異なりますのでご注意ください。(「てびき」p211~p216参照)
「てびき」p23(8)については、殆どの場合原則に従って、現代仮名遣いで書きます。
ただ、原文の文脈の中で、古文の仮名遣いの説明がある場合や、短歌の鑑賞などで、仮名遣いを説明したいときなどには、①や②を用います。カッコ内は読み飛ばす可能性もあることを考慮し、原文の文脈にあわせて、書き方を選びます。

17.p23 4.注意すべき仮名遣い (8)

タイトルに旧仮名遣いが使われていた場合について教えてください。
サピエの書誌は
副書名 月の人の一人とならむ
副書名読み1 ツキ ノ ヒト ノ ヒトリ ト ナラム
です。
短編集で、一般小説です。本文中の旧仮名遣いは、現代仮名遣いに直して点訳しています。書名は、旧仮名遣いのままがいいのでしょうか。現代仮名遣いに直すと、検索してもヒットしないということにもなってしまいそうです。
タイトルのみ、旧仮名にした場合は、凡例等が必要でしょうか。

【A】

本文中は現代の基本的な仮名遣いで点訳しているのでしたら、標題紙・奥付も現代仮名遣いにするのが一般的な処理だと思います。
もし、標題紙・奥付だけを古文の仮名遣いで点訳されるのでしたら、点訳書凡例で「標題紙・奥付は、原本の仮名遣いのまま、古文の点字表記で点訳した」ことを、一言断るのがよいと思いますが、規則というわけではなく配慮事項に入る部分だと思います。
標題紙を、古文の仮名遣いで点訳された理由が、TRCの読みに併せてということですが、点字印刷した標題紙を見てから、サピエを検索する方は非常に少ないでしょうし、これは書名ではなく副書名なので、更に少ないのではないかと思われます。

18.p24 4.注意すべき仮名遣い (9)

「天馬翔雲上  聖雨潤天下」のマスアケがわかりません。
本文中に以下の説明がついています。
「天馬、雲上を翔け、聖雨、天下を潤す」(てんばうんじょうをかけ、しょううてんかをうるおす」
テンバ ショー ウンジョー
ショーウ ジュンテンカ
と考えてみました。

【A】

「てびき」p24 (9)にありますように、漢文の白文は、書き下し文に直して点訳することが原則になります。
この原文の場合、「天馬翔雲上 聖雨潤天下」の説明が付いていますので、「テンバ■ウンジョーヲ■カケ、■ショーウ■テンカヲ■ウルオス」だけを点訳します。
白文を省略すると文脈が乱れるような場合は、(白文省略)などと点訳挿入符で断ります。

2 その他の仮名遣い

1.p25 1.外来語・外国語の書き方

芥川龍之介の引用文が出てきます。『侏儒の言葉』に「人生は狂人の主催に成ったオリムピック大会に似たものである。」
『或旧友へ送る手記』に「僕はエムペドクレスの伝を読み」と引用文があり、続いて著者の「エムペドクレスとは古代ギリシャの哲学者・エンペドクレスのことだ。」
「ム」は歴史的仮名遣いと思いますが、外来語と固有名詞なので、原文通りオリムピック、エムペドクレスと点訳していいのでしょうか。

【A】

外来語は、「てびき」p25【処理2】やp29 5.、p30「コラム4」に該当する文字以外は、原文の表記に従って書きますので、この場合も、原文通りオリムピック、エムペドクレスと点訳してよいと思います。

2.p25 1.外来語・外国語の書き方 【処理2】

カタカナで、ベイヅミャオ(貝子廟)、映画俳優 ナ・ダギーランヅ(N.Dagiirannz)と書かれていたとき、「ヅ」は「ズ」にしてよいのでしょうか。固有名詞ですが、「てびき」p29の【処理4】には当てはまらないと考えてよいのでしょうか。

【A】

外来語は、「てびき」p25の「1.外来語・外国語の書き方」に準じて書きますので、【処理2】によって、「ジ・ズ・ジャ・ジュ・ジョ」を用いて書きます。
ベイズミャオ
ナ■ダギーランズ
と書きます。
p29 【処理4】は日本の法人や商品名に意図的に用いた場合ですので、この場合には当てはまりません。

3.p26 1.外来語・外国語の書き方 【処理4】

「餃子」「如雨露」に、ひらがなで「ぎょうざ」「じょうろ」とルビがある場合、説明文の「~示される仮名の表記に従って書く。」に沿うと、「う」は長音符ではなく「う」になるのでしょうか。

【A】

外来語を原音で記す場合は、片仮名で書くのが一般的で、ひらがなで書いてあるのは、読みを示したルビと考えた方が妥当ではないかと思います。
「ギョーザ」「ジョーロ」の読みをひらがなで示すと「ぎょうざ」「じょうろ」となるのが自然で、ひらがなの中に「ー」を入れるのは不自然です。あえて何かを主張する場合と思われます。(コンビ名の「くりいむしちゅー」など)
読みのルビとしてひらがなで「ぎょうざ」「じょうろ」「かんがるう」などとあれば、「ギョーザ」「ジョーロ」「カンガルー」と書くのが自然ではないかと思います。
「かんがるう」の例は、「てびき」p25 【処理3】にあります。

4.p26 2.擬声語・擬態語・嘆声

蕎麦を食べる時の表現が原文で「ヅルヅル」になっていました。点字では、「ヅルヅル」「ズルズル」どちらですか。
「ううーん」「ふぅーむ」「ううーむ」の表記はそれぞれどうなりますか。
うめき声の「ううっ」は「ウウッ」ですが、うめき声の「うううっ」「うう」「ううう」「ううー」「うううー」「あうううっ」はどう書けばよいでしょうか。

【A】

擬声語・擬態語・嘆声なども「基本的な仮名遣い」に準じて書きますので、原文で「ヅルヅル」とあっても、「ズルズル」と書きます。
「ううーん」は、「ウウーン」、「ふぅーむ」は、「フーム」、「ううーむ」は「ウウーム」と書いてよいと思います。
「ふぅーむ」は、「マァー」のように、「フウーム」と書いてもよいかもしれません。
うめき声の場合、「う」が連続していれば、「てびき」p26【処理2】を用いてよいと思います。ただ、【処理2】では、最後の「う」を長音符で書く、としていますが、「がおうううう」のように吠える声の場合と異なり、うめき声の「ううう」は「う」の音の連続と思われますので、「うううっ」「うう」「ううう」「ううー」「うううー」「あうううっ」すべての「う」を「ウ」と書いてよいと思います。
「ウウウッ」「ウウ」「ウウウ」「ウウー」「ウウウー」「アウウウッ」となります。

5.p27  2.擬声語・擬態語・嘆声 【処理2】[参考]

連続する語が行末近くに数個しか入らない場合、数個書いただけでは原文の雰囲気が伝わりづらいので、前の行に余白が多くなっても次行に10個程度書いてもよいでしょうか。また、「やめて」や「とまれ」などの語句が連続していて、行末には数個しか入らない場合は2行に渡って書いてもいいでしょうか。

【A】

たとえば、[参考]にある「があああああああああああん」のような場合でしたら、おっしゃるように次の行に移して構わないと思います。「やめて」や「とまれ」の場合は、当然マスあけして書きますから、繰り返し言葉でも2行にわたることはあります。それが3個、4個あった場合、2行にわたることは何も問題ありません。

6.p27 2.擬声語・擬態語 [参考]

鶏の鳴きまねの表記ですが、
「ケエコオ」
「ケエエエコオオオオ」
「ケエエエエエエエエコオオオオオオオオオオオオ」
と3パターンが出てきます。
長いので「ケエエエ□コオオオオ」
「ケエエエエエエエエ□コオオオオオオオオオオオオ」と切りたくなるのですが、やはり行末に収まる程度であれば、続けて書く方がよいのでしょうか。

【A】

「ケエエエ■コオオオオ」
「ケエエエエエエエエ■コオオオオオオオオオオオオ」
と、「コ」の前で区切って書くのがよいと思います。お考えの通りです。
「てびき」p27[参考]では同じ音の連続について言っています。実際の鶏の鳴き声を考えても、「ケエエエエ、コオオオオ」のように途中で、途切れたり、トーンが変わったりしていると思います。

7.p27 2.擬声語・擬態語・嘆声 【処理3】

促音が以下の場合はどのようになりますか。
①文頭から促音で始まる。カギはない。
例1 っと、そうだ。
②カギ内で、促音から始まる
例2 「っと、言ってるうちにきたみたいだ」
例3 「っ、やめろよ」→ 促音と読点を省略。「やめろよ」
③句点や読点、感嘆符、疑問符の後に促音
例4 「いく、っ」→ 読点を省略。「いくっ」
例5 「よし、っと」
例6 「まってください。っと、金あつめるので」
例7  英雄になる!って言ってた。
例3と例4以外は、例文通り、促音等を省略をせずに点訳した方がよいかなと思います。いかがでしょうか。

【A】

例1、2、5、6、7は、促音符が単独ではないので原文通りに書くことに、問題はありません。
促音符や疑問符、感嘆符は、単独でそれだけが書いてあると、読みにくくわかりにくいので何らかの工夫が必要になります。
また促音符は、点線や棒線と続けて単独で書いてあると、これも読みにくく、わかりにくいので省略したり、位置を考える必要があります。
例3の場合は、第1カギと読点が前後にあります。発音はできないものの、ニュアンスは分かりますので、読みにくさはありますが、そのまま用いてもよいと思います。
例4も同じですが、この場合は、発音を考えると「イクッ」の方が自然だと思いますので、「イクッ」と書いた方がよいと思います。

8.p28 3.方言

方言について、あいづ、こいづはアイズ、コイズと書くように語例集で検索すると出てきます。「指導者ハンドブック」第5章編のルビの例題12に越路吹雪に「こすづふんぶき」のルビがついている問題の解答は「ヅ」ですが、固有名詞は特別扱いということでしょうか?
「いづ帰る?」「どっちづかず」「一づ」「勉強したづーごと」など「づ」は「ズ」と考えるのでしょうか?
また「落ぢた」「心待ぢ」「気持ぢ」「うぢら」などの「ぢ」は「ジ」にするのでしょうか?
一つ二つではなくてほぼ方言の会話なので「ジ」「ズ」に置き換わっていると違和感があります。

【A】

「てびき」では、方言であっても基本的な仮名遣いに従って書くことになりますので、語例集では、「こいづ」を「コイズ」としました。しかし、方言では、タ行で濁る音が多く、これを原則に従って、サ行の「ジ・ズ・ジャ・ジュ・ジョ」にすると元の仮名から離れてしまい「ヒトズ」が「ひとつ」の濁った音であることが想像がつきにくくなります。
ご質問の原本のような場合は、点訳書凡例で、「方言でタ行の音を濁って発音している場合は原本通りに点訳した」と断って、「イヅ」「ヒトヅ」「オヂタ」「ココロマヂ」などと点訳した方がよいと思います。
ハンドブックの用例は、点訳書凡例で断った上での処理と判断してお読みください。

9.p28 3.方言など

方言で「くだらない」の意味で「しょおもない」とある場合は、どう書けばよいでしょうか。

【A】

原文が仮名で「しょおもない」と書いてあれば、p28「3.方言」のルールに従い、「ショオモナイ」と書きます。

10.p28 4.固有名詞の仮名遣い

「づ」と「ず」について、次の場合はどうなりますか。ルビがある場合の取り扱いに迷ってます。
「伝通院」「安曇野市」に「でんづういん」「あづみのし」とルビがあった場合も「デンズーイン」「アズミノシ」。
福島県の「吾妻山」に「あづまやま」とルビがある場合や、仮名で「あづまやま」と記載されている場合、どちらも「アズマヤマ」でいいのでしょうか。

【A】

固有名詞の仮名遣いは、「てびき」p28 4.に従い、漢字で書かれた固有名詞は基本的な仮名遣いに準じて書きます。
ふりがなは正しい場合も間違っている場合もありますので、ふりがなに惑わされず、漢字を仮名にしたときの正しい書き方に従います。
仮名で書かれた固有名詞(ふりがなではなく、仮名が正式名称の場合)は、(2)に従って書きます。
また、地名の仮名遣いに「現代かなづかい」の法則を適用するに当たって、昭和24年4月に閣議了解された「公用文の改善」という取り決めがあり、そのなかに、
・地名を仮名書きするときは現代かなづかいを基準とする
・特に、ジ・ヂ・ズ・ヅについては区別の根拠の付けにくいものはジ・ズに統一する
という項目があります。
そのほか、駅名の書き表し方についても、当時の運輸省・建設省・文部省の取り決め事項があり、現代の地名の書き方のよりどころとなっています。
これらのことから判断すると
伝通院・神通川・安曇野市などは、2語の連合によって「つ」が濁ったとの根拠が曖昧なので、「でんずういん」「じんずうがわ」「あずみのし」となり、点字では「デンズーイン」「ジンズーガワ」「アズミノシ」と書きます。
「吾妻山」も、現在では「吾が妻」の意味合いがなくなっているので、現代仮名遣いでは「あずま」と書きます。国語辞典を引いても、すべて「あずま」で「吾妻下駄」「吾妻コート」なども「アズマ」となっています。
ただ、「あづま総合運動公園」は固有名詞の正式名称がひらがなですので、「てびき」p28の用例にあるように、「アヅマ」と書きます。
なお、上記の取り決めから、「会津」「焼津」「柳津」「舞鶴」などは、「つ」が濁ったものとしてふりがなが振ってあってもなくても、ふりがなが間違っていても「ヅ」となります。
「伊豆」「出雲」「和泉」などは現代仮名遣いでは「ず」と書きますので、点字でも「ズ」と書きます。

11.p28 4.固有名詞の仮名遣い

俳優・松坂桃李は、「トオリ」でしょうか?「トーリ」でしょうか?

【A】

漢字で書かれた固有名詞は、「基本的な仮名遣い」に従います。墨字で「とうり」と書くものは「トーリ」と点訳し、「とおり」と書くものは「トオリ」と点訳するのが「基本的な仮名遣い」です。「桃」の音読みは墨字の現代仮名遣いで「とう」と書きますので、点字表記は「トーリ」となります。p20にありますように「トオ」の仮名遣いとなるのは和語に限られ、漢字の音読み(漢語)はこの仮名遣いになりません。

12.p28 4.固有名詞の仮名遣い

漢字で書かれた固有名詞は「基本的な仮名遣い」に従いますが、中国・朝鮮人名などが漢字で書かれている場合も同様でしょうか。

【A】

「毛沢東」を「モー■タクトー」、「金大中事件」を「キン■ダイチュー■ジケン」のように、日本語の漢字音読みにする場合は、p28(1)の規則に従い、墨字で「う」と書く伸びる音に長音符を用います。けれども漢字で書かれた名前に現地音のルビが付されている場合は、外国語の仮名書きですのでp26【処理4】にありますように、ルビの表記に従って書きます。
たとえば「杜」という人名に「ドウ」と現地音のルビがある場合は長音にせず「ドウ」と書きます。

13.p28 4.固有名詞の仮名遣い

「桐生(キリュー)」「柳生(ヤギュー)」の例がありますが、人名で本人が「きりう」とルビを振っていたり、KIRIUと名刺にローマ字を入れていたりする場合は、点字でも、ルビなどの仮名遣い通りに書きたいと感じますが、いかがでしょうか。

【A】

現代仮名遣いの付表では、「りう」は現代の音韻では「リュー」と発音されます。したがって、現代の音韻に基づいて「キリュー」と点訳することになります。(2)の仮名で書かれた固有名詞のルールは、ルビなどでなく、原文が漢字を用いずに仮名だけで書かれている場合に適用します。

14.p28 4.固有名詞の仮名遣い (2)

「てびき」p249「用語解説」で固有名詞の中に書名も含まれていますが、p28で扱われている固有名詞の仮名遣いのルールは書名にも適用するものでしょうか。
(「おもひで・思ひ出」のような歴史的仮名遣いで書かれた書名)

【A】

「てびき」3章では、固有名詞を「人名」「地名」「その他の固有名詞」に分類してマスあけの規則を説明してあります。「その他の固有名詞」も用語の上では固有名詞なのですが、p87に書かれているように、人名・地名などからなる固有の部分と普通名詞の組み合わせや、普通名詞同士の組み合わせでできています。
2章の「仮名遣い」では、主にその固有の部分(人名・地名など)の仮名遣いについて説明しています。
ですから、「その他の固有名詞」の普通名詞部分については、原則として現代仮名遣いで書くのがよいと思います。そして、その仮名遣いを説明する必要がある場合は点訳挿入符などで、原文の仮名遣いを入れるのがよいと思います。
「シクラメンのかほり」は「シクラメンノ■カオリ」、「おもひでぽろぽろ」は「オモイデ■ポロポロ」となります。