第3章 分かち書き(2)

その2 複合語

1 短い複合語・接頭語・接尾語など

1.p63 1.短い複合語・略語

江戸時代の時刻に関する質問です。「てびき」p38 2.(1)の用例に「明け六つ」がありますが、「暮れ六つ」「夕七つ」など他の言い方の分かち書きはどうなりますか。

【A】

「明け六つ」「暮れ六つ」は辞書の見出し語にもありますが、これに比べ、他の言い方は、一語として熟しているとはいいにくいので、点訳ナビゲーターでは「アケムツ」「クレムツ」だけを一続きにしています。「夕七つ」「宵五つ」「夜九つ」「暁七つ」「朝五つ」「昼四つ」など、他の言い方は区切って書きます。

2.p63 1.短い複合語・略語 【備考】

点訳ナビゲーターにある「火の玉となって戦う(ヒノ■タマト■ナッテ■タタカウ)」、「墓地で火の玉を見た(ボチデ■ヒノ■タマヲ■ミタ)」の「火の玉」は続けて書くのではないでしょうか。辞書の見出し語にもなっています。

【A】

「内部に助詞などを含んでいても、1語として熟している短い複合語は一続きに書く」に該当するかどうかがポイントです。分かち書きの本則にあたるか、p63 1.の【備考】にあたるかの区別は、p63の[参考]を参照していただきたいのですが、その上で、できるだけ本則のルールに従う方をお勧めしています。
「虎の巻」や「息の根」などと異なり、この場合の「火の玉」は「火」の「玉」のことを指していますので、区切って書くと判断しました。しかし、「火の玉投手」のように全体で複合語になっている場合は続けて書きます。
なお、辞書に見出し語としてあっても、必ずしも一続きに書くとはかぎりません。「木(き)の葉」「世の常」なども、辞書によっては見出し語としてありますが、区切って書いています。

3.p63 1.短い複合語・略語 【備考】

p223「古文の分かち書き」に「老ノ坂」をひと続きに書く例が挙げられていますが、現代文の中でも同様に考えてよいでしょうか。辞書には、「老年になるのを上り坂にたとえた語」などとあります。

【A】

「老いの坂をのぼる」というときの「老いの坂」は「オイノ■サカ」と書きます。p223の例は固有名詞(京都府にある峠)ですので続けて書きます。

4.p63 1.短い複合語・略語 【備考】

「コーヒーの木」を一続きに書くのか、区切って書くのか判断の基準が分かりません。「ゴムの木、蛸の木」などは、「ゴム」「タコ」だけでは木と分からないために続けていると考えていいでしょうか。

【A】

「コーヒーノ■キ」と書きます。
「~の木」を一続きに書くかどうかは、p63【備考】の「内部に助詞を含んでいても1語として熟している短い複合語は一続きに書く」に当てはまるかどうかで判断します。ここは、基本的に「短い複合語」ですので、もともと3拍以上ある、「コーヒーの木」「イランイランの木」「幸福の木」などは、基本的な規則に従って区切って書きます。
続けるか区切るかの判断をするのは、「ゴムの木」「柿の木」「科の木」「樫の木」のような場合で、「の木」を付けなくても植物の木の名前であることが分かる場合は、区切って書き、「の木」までを含めて木の名前となっている場合は一続きに書きます。点訳フォーラムの語例集では、
続くのは、ゴムノキ、シナノキ、タコノキ、タラノキ、トチノキ、ハンノキ、ムクノキ、モチノキ
区切るのは、カキノ■キ、カシノ■キ、カバノ■キ、シイノ■キ、スギノ■キ、ブナノ■キ、ホオノ■キ、マツノ■キ、モミノ■キとなります。

5.p63 1.短い複合語・略語 【備考】

「クコの実紅茶」は「麻の■葉■模様」と同じく「クコノ■ミ■コーチャ」としてよいでしょうか。実や木は1拍でもマスあけすると考えてよろしいですか。

【A】

「クコの実紅茶」は「クコノ■ミ■コーチャ」と書きます。
もともと、「クコノ■ミ」とマスあけする語のうしろに「コーチャ」という3拍の区切る成分が付いていますので、元のマスあけは変わりません。
後ろに「漬け」「茶」「紋」などの2拍以下の語が付いて、しかも、区切ると元の意味がわかりにくくなる場合にだけ続けて書きます。「シソノ■ミ」「シソノミヅケ」、「カキノ■ハ」「カキノハチャ」、「アサノ■ハ」「アサノハモン」となります。

6.p63 1.短い複合語・略語

次のような場合の切れ続きについてお尋ねします。
「びわの実学校」
びわの実 →  ビワノ■ミ
びわの実学校 → ① ビワノミ■ガッコー でしょうか、
② ビワノ■ミ■ガッコー でしょうか。
「点字表記の語例」に
椎の実 →  シイノ■ミ  (植物名)
しいのみ学園 → シイノミ■ガクエン  (組織名)
とありますので ①の ビワノミ■ガッコー  でしょうか。
助詞「の」のあと マスあけするかしないかの違いはどう考えたらいいのでしょうか。びわの実・椎の実は普通名詞、びわの実学校・しいの実学園の びわの実・椎の実は固有名詞だからでしょうか。
また、
桜宮(サクラノ■ミヤ)
桜宮 巌(サクラノミヤ■イワオ)
桜宮市、桜宮病院、桜宮警察署、桜宮署、桜宮海岸、
などはどのように書くのでしょうか。

【A】

「の」の後ろが1拍で、その後ろに言葉が続く場合は、1拍の語だけを切り離して書くと、全体として不安定で、落ち着かない感じがしますので、全体的な意味のまとまりを考えて、1拍の語を「の」に続けて書く場合が多くなります。
特に固有名詞の場合に当てはまります。
これは、厳密なルールではなく、読みやすさや意味のまとまりのわかりやすさなどを考慮したもので、すっきりと分かち書きのルール通りの説明が付かないところです。
シイノ■ミ ⇒ シイノミ■ガクエン
ビワノ■ミ ⇒ ビワノミ■ガッコー
「~の~」だけで無く、マスあけを含む短い語の後ろにさらに2拍の語が続く場合なども、まとまりを考えて一続きに書くことがあります。
ビワノ■ミ ⇒ ビワノミカイ(びわの実会)
アオイ■トリ ⇒ アオイトリエン(青い鳥園)
カキノ■ハ ⇒ カキノハズシ(柿の葉寿司)
のようになります。

固有名詞の場合だけでなく、後ろに2拍の語が続くと
クモノ■ス ⇒ クモノスジョー(蜘蛛の巣状)
アサノ■ハ ⇒ アサノハモン(麻の葉紋)
のように書きます。
しかし、普通名詞の場合は、後ろに自立可能な意味のまとまりが来ると
カラノ■ス■ショーコーグン(空の巣症候群)
アサノ■ハ■モヨー(麻の葉模様)
のように区切って書きます。
このように、1拍の語、ごく短い拍数の語が続く場合、「てびき」p63の1.の規則や【備考】などを参考に、全体的なまとまりを考えてマスあけをすることになります。

「桜の宮」については、地名であれば区切って書きますし、姓であれば続けて書きます。ですから、「桜の宮学園」「桜の宮病院」などの場合、地名であれば「サクラノ■ミヤ■ガクエン」「サクラノ■ミヤ■ビョーイン」となりますが、理事長や院長の名字から命名されたのであれば、「サクラノミヤ■ガクエン」「サクラノミヤ■ビョーイン」となります。

7.p63 1.短い複合語・略語

「アオイ■トリ」「アオイトリエン(青い鳥園)」とあります。しかし、語例に「キンノ■ホシシャ」があります。「青い鳥」の考え方からすると、「キンノホシシャ(金の星社)」となりませんか。違いはなんでしょうか。
また、青い鳥学級、青い鳥文庫のマスあけはどうなりますか。「学級・文庫」は自立しているので、「アオイ■トリ■ガッキュー」となりますか。

【A】

「青い鳥」と「金の星」の一語としての結びつきの違いになります。
「金の星」は明らかに文節分かち書きをする語であり、後ろに造語要素等が付いても「キンノ■ホシ」というマスあけに変化はありません。
それに対して、「青い鳥」「蜘蛛の巣」「麻の葉」「柿の葉」などは、後ろに造語要素が付いて新たな語を作ったり、後ろの語と複合語を作ったりすることが多い語と言えます。後ろの語と結びつくことによって、「てびき」p63の「短い複合語」の【備考】や、p82「慣用句」にあてはまるとも言えるような語になります。
1語では、「クモノ■ス」ですが、「蜘蛛の巣状の」となれば「クモノスジョー」、「アサノ■ハ」ですが、家紋の「麻の葉紋」は「アサノハモン」と書くということになります。「柿の葉」もそれだけでは「カキノ■ハ」ですが、「柿の葉寿司」になると「カキノハズシ」となります。
「学級」のように区切る成分が後ろに付く場合は、本来の分かち書きで「アオイ■トリ■ガッキュー」「アサノ■ハ■モヨー」のようになります。
ただ、このように助詞などをはさんでも1語としての結びつきが強い語の方が数は少なく、ほとんどは「金の星社」のように分かち書き・切れ続きの原則に従って書くことになります。
金の■星社、主婦の■友社、山田■氏がらみの■疑惑、あはき師■等法、・・・
などとなります。

8.p64 2.接頭語・接尾語など

「足らず」は接尾語と理解していますが、「言葉■足らず」を区切って書くのは、全体がひとまとまりではなく、「言葉」の後ろに「足る(動詞)」+「ず(助動詞)」が付いたものと考えるからでしょうか。

【A】

「足らず」は基本的には数詞に付く接尾語で、「十日足らず」「10人足らず」などと使われ、そこから派生して「舌足らず」「月足らず」などの使い方があります。
「言葉足らず」は、おっしゃるように 「言葉」の後ろに「足る(動詞)」+「ず(助動詞)」が付いたと判断しました。「意■余って■言葉■足らず」「勘定■合って■銭■足らず」のように区切って書いてよいと思います。

9.p64 2.接頭語・接尾語など

「洞窟の中が蜘蛛の巣でいっぱい」という文があります。
点訳ナビゲーターで「クモノ■ス」「クモノスジョー」「クモノ■ス■ジョータイ」となっていますが、「クモノ■ス」に接尾語「だらけ」が付いたとき、「クモノ■スダラケ」となるのか、あるいは「クモノスダラケ」と変化するのでしょうか?

【A】

蜘蛛の巣は、「クモノ■ス」と書くのが、分かち書きの原則にそった書き方ですので、「クモノ■ス■ジョータイ」「クモノ■スノヨーナ」となります。「蜘蛛の巣だらけ」も「クモノ■スダラケ」でよいと思います。
「蜘蛛の巣状」「蜂の巣状」「網の目状」「碁盤の目状」などは、慣用的に用いられなじみ深い語ですので、一続きに書いた方が分かりやすいと判断して続けています。「~状」でも「雨の■しずく状」「桜の■花状」となれば区切って書きます。

10.p64 2.接頭語・接尾語など

「要介護」「要介護者」「要支援」「要支援者」「要援護」「要援護者」の分かち書きについてお尋ねします。点訳ナビゲーターでは、「ヨーカイゴ」「ヨー■カイゴシャ」「ヨーシエン」「ヨー■シエンシャ」「ヨー■エンゴ」「ヨー■エンゴシャ」となっています。しかし、要介護者は「介護者が必要」という意味ではなく「要介護の状態にある人」という意味ですから、ヨーカイゴシャと続けて書いてよいのではないでしょうか。要支援者も同様に続けて書いてよいと思います。

【A】

語頭に付く1字漢語の造語要素の中で「要」は基本的に自立性が高いと考えられますが、「要介護」「要支援」は介護保険の開始により「要支援1」「要介護5」のように、介護度の尺度として用いられるので続けることにしました。しかし、それを、「要保護」「要援護」などにまで広げることは避けたいと考えています。
2点目の問題として、「要■援護」に「者」がついた場合のマスあけについてですが、考え方として、マスあけを含む複合語の語尾に接尾語、造語要素がついても、元のマスあけは原則として変わりません。これは、複合名詞の切れ続きの原則「複合名詞の内部に3拍以上の自立可能な意味のまとまりが二つ以上あればその境目で区切って書き、2拍以下の意味のまとまりは続けて書くことを原則とする」によります。
「てびき」のこれに該当する用例として、「身体障害者手帳」や「事故報告書」「ビル管理人」などがあります。「者」「書」「人」などは、直前の「障害」「報告」「管理」だけにかかっているわけではなく、「身体■障害」+「者」、「事故■報告」+「書」、「ビル■管理」+「人」なのですが、これによって、前のマスあけの部分を続けたり、または「者」「書」「人」の前を区切ったりすることはありません。接頭語や語頭に付く造語要素には、「てびき」p68【備考2】の例外規定がありますが、接尾語や語尾に付く造語要素にはこの例外規定がありません。そのため「悪い■子ぶる」「森■さんたち」のように不自然な感じがすることもあります。短い語で、あまりに不自然な場合や一語として感じられるような場合(「いい子ぶる」「蜘蛛の巣状」など)はひと続きに書いている場合もありますが、原則はこのようになります。
ですから、
要■冷蔵 → 要■冷蔵品  冷蔵品が要ではなく、要冷蔵の品
要■入院 → 要■入院児  入院児が要ではなく、要入院の児
要■援護 → 要■援護者、要■保護 → 要■保護者となります。
「要介護者」「要支援者」は異論もあるとは思いますが、上に書いたように、「要」は、「要望、要約、要人」などは別として、後ろが自立する語の場合は区切ることを原則とし、その上で、「要注意」「要介護」「要支援」は、使われ方から1語性が強いとして続けていますので、点訳ナビゲーターでは、「要■介護者」「要■支援者」となった場合は、元々の「要」の自立性を考えて区切って書くことにしています。

11.p64 2.接頭語・接尾語など

接頭語「反」についてお尋ねします。
フォーラムの点字表記の語例の中に「反社会/勢力」と「反/保守/勢力」の例があります。この違いは何でしょうか。「てびき第4版」のp64・65では発音上の切れ目ということになるのでしょうか。

【A】

どちらも、「反社会」の勢力、「反保守」の勢力ですので、「反社会」「反保守」の切れ続きの違いになります。
「反」は、語頭に付く造語要素ですので、p64の規則に従って一続きに書くことが原則になりますが、語頭に付く1字漢語の造語要素は、後ろの語の語種や語の長さなどで切れ続きが異なってきます。
後ろの語が外来語や、固有名詞の場合はほとんどが区切ることになります。反■ユダヤ、反■テロ、反■ロヒンギャなどです。
後ろの語が、2字漢語+造語要素の場合もほとんど区切って書きます。反■社会的、反■道徳的、反■理性的、反■体制派、反■政府軍などです。
問題となるのは、「反」+2字漢語の時です。これは原則として続けて書きますが、1語としての意味のまとまりが弱い場合は区切ることになります。それが発音上の区切り目や日本語の標準的なアクセントによる判断ということになります。一語としての意味のまとまりが強い語は、一語として国語辞典の見出し語になっている場合も多く、反革命、反作用、反社会、反体制、などは、すべての国語辞典に掲載されている訳ではありませんが、一語としての意味のまとまりが強いといえます。
それに比べて、反原発、反腐敗、反保守などは、社会的な背景や時代によってはよく使われるかもしれませんが、一語としての意味のまとまりとして熟していないので、発音上の切れ目が生じることになります。

12.p64 2.接頭語・接尾語など

「点字表記の語例」で、「心身共の」について「シンシントモノ」と一続きになっていました。他の語例を見ると主に切る場合が多いようです。「心身共の」を続けるのがなぜかはっきり分からなくて、質問させていただきます。
例:質量共に シツ■リョー■トモニ
自他共に許す ジタ■トモニ■ユルス
名実共に メイジツ■トモニ
心身共の休養 シンシントモノ■キューヨー
また、ある文章中に「1・2とも千円」という文がでてきて(1・2の内容は前記されている)、「数1・■数2とも」と点訳されていて、「全部」の意味だからそれでOKかなと思って校正で指摘しませんでした。
たまたま「てびき」p127を見ましたら、《M/Lともお値段は・・・》という【処理】の文で、
外大M・■外大L■トモ■オネダンワ・・・
とありました。
外大M・■外大L=トモ■
とはならないんだということは、「数1・■数2■とも」と校正で指摘すべきだったかと思いました。
どう考えればよいでしょうか。

【A】

「共」が体言について「それら全部」を表す場合は、接尾語的に働き、前の語に続けて書きます。「5人共合格」「男女とも優勝」などです。それに「の」や「が」が付く場合もあります。「両方共の操作が必要だ」「心身共の休養」「5軒共が休みだった」などとなり、この場合も続けて書きます。
「共」に「に」が付いて、「共に」となると、副詞として働き、「と同時に」や「いっしょに」の意味になります。副詞ですので後ろの用言(動詞など)を説明・修飾します。副詞ですので自立語になります。
「心身■共に■疲れた」「名実■共に■日本を代表する作家」「自他■共に■許す」などとなります。
「てびき」p127の例の「とも」は、格助詞「と」に係助詞「も」がついたもので、全体として助詞であると判断し、アルファベットの後ろを、一マスあけにしました。
「1・2とも千円」の「とも」も助詞とも言えますので、助詞と判断しても、数字の後ろですから一続きに書きます。
助詞か接尾語か、判断が難しい場合がありますが、仮名や数字の場合はどちらも前の語に続けて書くことになります。

13.p64 2.接頭語・接尾語など

語例集に「ドッチトモニ■アイサツ■シタ」というのがあります。
「共に」は、副詞として働き、「と同時に」や「いっしょに」の意味になり、区切って書くとのことですが、この例が続いているのはどうしてでしょうか。この語例は「共に」と漢字で書けないから続くという解釈でよいでしょうか。最近、「お二人ともに見事である」のような「お二人とも見事である」にあえて「に」をつけたような表現をよく見かけますが、切ってよいのでしょうか。「3人ともに来ない」のような場合です。

【A】

「共に」は副詞として、「~と一緒に」「~と同時に」のような意味を持ちますが、「共」だけが名詞の下に付くと、接尾語的に働いて「~のどれ(どちら)も」のような意味になります。どちらも「共」ですので、漢字で書かないことが多いのですが、漢字で書けないということはないと思います。
「質量ともに」「朝昼ともに」のような場合は、「質・量がともに」「朝・昼がともに」のように主語を表す「が」を補うことができ、「ともに」は副詞(自立語)として用いられています。「お二人ともに見事だ」「3人ともに来ない」はこれと同様に考えられますので区切ってよいと思います。
オフタリトモ■ミゴトダ  オフタリ■トモニ■ミゴトダ
数3ニントモ■コナイ  数3ニン■トモニ■コナイ

「どっちともに挨拶した」は「どっち」の直後に「が」を補うことができず、「どっちとも」に対して挨拶した、という文の構造です。「二人とも来ない」のように名詞に添えて「その両方」とか「全部」の意を添える「とも」に助詞の「に」が接続したものとなります。「とも」は2拍の成分ですので区切ることはできず、助詞の「に」まで前に続けて書くことになります。

14.p64 2.接頭語・接尾語など

人名につく「大」「小」の切れ続きについて、桶狭間の戦いを描いた話の中で登場する「大今川」「小織田」はどのように書くとよいでしょうか。「大■デュマ」「小■デュマ」のように区切りますか。

【A】

外国人名に「大」「小」が付く場合は、「ダイ」「ショー」と読み、固有名詞の前は区切って書きますが、日本人名や氏に「大」「小」が付くと、「おお」「こ」と読み、「おお」の方は「おおだんな」「おおきみ」「おおせんせい」のように尊敬・賛美の意味が込められ、「こ」の方は「こせがれ」「こやくにん」「こぼうず」のように大したものではない、少し卑しめるような言い方になると思います。和語の接頭語ですので、続けて書いてよいと思います。
オオイマガワ、コオダとなります。

15.p64 2.接頭語・接尾語など

原本に『モノ・者との対話を楽しむ「双方向性」を促す』とあります。この「双方向性」について迷っています。「熱効率」の「Q&A」を読み、「双方向」を辞書で調査しました。すると「明鏡国語辞典」・「新明解国語辞典」等に、見出し語で掲載してありました。見出し語になっているかいないかだけでは判断できないということですので、「語例集」も見てみましたが、「双方向」は「全方向」と同じように考え、続けるのでしょうか。
「双方向」に「性」が付いているので「双■方向性」となるのでしょうか。「合目的性」「無矛盾性」は一続きになっています。「性」が語尾にあっても一続きのものもあります。その違いの考え方を教えてください。

【A】

「双方向性」は、「双方向」に「性」が付いた言葉ですので、一続きに「ソーホーコーセイ」と書きます。
「熱効率」は、「てびき」p69【備考】の規則で判断する語ですが、「双方向・双方向性」の「双」は1字漢語の造語要素ですので、p64「接頭語・接尾語など」に当てはまります。
【備考】にあるように、1字漢語の造語要素の中にも、後ろの語に連体詞的に働く語や、後ろに拍数の多い語が付くと区切って書いた方が分かりやすい場合が多い語もあります。「新・反・超・非・現・要」などはそれに当たります。
それに対して「全・半・被・未・無・最」などは、後ろの語と結びつきが強く、後ろが長くても一続きに書くことが多い語といえます。
「半強制的」は、「半強制」に「的」が付いたと考えられますが、「非人道的」となると「人道的」全体に「非」が付いたと考えられます。
「合目的性」も「合目的」に接尾語の「性」が付いていますし、「無矛盾性」も「無矛盾」に「性」が付いたので、一続きになります。
「非合理性」「非人道性」は、「合理性」「人道性」全体を「非」で否定していますので、「非」の自立性が強く、「ヒ■ゴーリセイ」「ヒ■ジンドーセイ」となります。
このように、語頭に付く1字漢語の造語要素の場合は、語全体の成り立ちと、その造語要素の自立性の双方から判断することになります。

【新規】p64 2.接頭語・接尾語など

接頭語のマスあけについて、「反革命」は一語としての意味のまとまりが強いとして続けて書きますが、これに「的」が付いた場合は連体詞的に働くものとして反■革命的と区切ってよいでしょうか。
また、旧制度下の場合も同様に旧■制度下と区切ってよいでしょうか。

【A】

反革命的は、お考えの通り、ハン■カクメイテキと書きます。
ただ、「~上(じょう)・下(か)・内・後(ご)・間」などは、複合名詞を構成するというよりも前の語に意味を添える役割が主で、接尾語的に働きますので、前の語のマスあけに影響を及ぼさず、そのまま後ろに続けて書きます。
「旧制度下」は、「旧制度」のもとでということですので、キューセイドカと一続きに書きます。「旧制度上」もキューセイドジョーとなります。

16.p64 2.接頭語・接尾語など 【備考】

接頭語を含む複合名詞のマスあけについて質問いたします。
超高速鉄道、超自然現象、超党派決議、超弩級作品は超高速、超自然、超党派、超弩級、がひと続きであるので超は後ろと続くと理解しています。超■国家■主義を超の後ろでマス開けするのは超国家が超■国家とマスあけするからでしょうか。

【A】

語頭にある造語要素はそれに続く自立語との間を続けて書くことが原則ですが、「要・各・前」などのように、後ろの語と区切って書くことが多い語もあります。「超」もその中に入ります。一語としてのまとまりが強い場合は続けて書きますが、発音上の切れ目などを考慮して区切って書く語も多くあります。
「超高速」「超自然」「超党派」「超弩級」などは、一語としてのまとまりが強く、それだけでも用いますし、後ろにいろいろな言葉が付くことが可能ですが、「超国家」や「超現実」などは、発音上の切れ目もあり、一語としての結びつきが弱い語です。
超■国家■主義、超■国家■機構、超■現実■主義、超■現実的などのように書くのがよいと思います。

17.p64 2.接頭語・接尾語など

この項に《「新住所地」の「新」は切るのですか》という質問があります。答えは、「シン■ジューショチ」と書きますとあって、最後に「新」も含めて一語としてのまとまりがある語は続けています。となっています。「まとまりがある語」がよくわかりません。「新社会人、新一年生、新入学生」は、どうでしょうか。

【A】

《「新」も含めて一語としてのまとまりがある語》とは、「新仮名遣い」「新政府軍」「新古典派」「新御茶ノ水駅」「新横浜駅」「新日本髪」のように、「新」が単に「新しい~」という意味を添えているだけではない語を指しています。
「新仮名遣い」といえば、「新しい仮名遣い」という意味だけではなく、「夕べ」を「ゆふべ」と書く仮名遣いに対して、「ゆうべ」と書く現代の仮名遣いを指しています。「新政府軍」と言えば、「新しい政府軍」だけではなく明治新政府の軍という意味を持ちます。「新古典派」も単に古典派を引き継ぐ学説ではない、新学説を唱えた学派を指しますし、「新横浜駅」も「新御茶ノ水駅」も、それぞれ横浜駅、御茶ノ水駅とは異なる駅です。「新日本髪」も日本髪ではなく、日本髪風にアレンジしたヘアスタイルを言います。このように、「新」も含めて新たな一語としてのまとまりを作っている語を指していて、このような語は「新」の後ろを続けて書きます。
新小学生、新一年生、新社会人、新入学生は、すべて、新住所地や新時刻表と同じ語の成り立ちと考えられますので、区切って書きます。
上記の説明は、《「新」は原則として、後ろの語と続けて書きますが、このように、後ろに付く語に接尾語や1字漢語の造語要素が付くと、拍数が増えることもあって、区切って書いた方が分かりやすくなります。》をお読みいただいているという前提で書きました。「新発明」「新開拓」「新校長」「新空港」などは、接頭語・接尾語の原則に従って一続きに書きます。

18.p64 2.接頭語・接尾語など

接頭語(造語要素)「旧」の切れ続きの考え方について、教えてください。
「旧住所」は続くのでしょうか、区切った方がよいのでしょうか。
例えば、「旧軽井沢」は「旧」がついている状態で一つの地名を指しているので区切ることができない。「旧正月」「旧大陸」などは一語として馴染みがあるのでひと続きといったあたりはなんとなくわかるのですが、その他が、うまく説明できない状態です。
造語要素「反」の解説のところで《語頭に付く1字漢語の造語要素は、後ろの語の語種や語の長さなどで切れ続き異なってきます。後ろの語が外来語や固有名詞の場合はほとんどが区切ることになります。後ろの語が、2字漢語+造語要素の場合もほとんど区切って書きます。》とありますが、これは他の1字漢語造語要素にも当てはまる傾向でしょうか。

【A】

語頭に付く1字漢語は、続けて書くことが原則で、ただ、発音上の切れ目がある場合は区切って書くというのが全体としてのルールですが、その「発音上の切れ目」が一語一語微妙に異なるので、すべての造語要素に共通の判断基準を決めることは困難だと思います。
点訳フォーラムの「点訳に関する質問にお答えします」に掲載している「要」「反」「超」「新」なども、原則は同じですが、一語一語検討すると発音の切れ目やアクセントによる判断の基準が異なってきます。
「旧」については、点訳フォーラムとして以下のように検討し、語例集の収載語も現在のように見直しています。
接頭語は続けて書くという原則から、「旧正月」「旧大陸」「旧石器」のように辞書の見出し語にも採用されて、一語として熟している語は続けて書きます。
一方、固有名詞の前に付く場合は、固有名詞を明確にする意味から区切って書きます。ただ、旧軽井沢は例外で、お考えの通り、「旧」がついている状態で一つの地名を指しているので区切らないことにしています。
そして、上記以外の語については、発音の切れ目があれば区切って書きますが、「旧」については、発音上の切れ目があるかどうか曖昧な場合は、後ろに続く語の意味の理解を助ける意味からも、区切って書いた方が分かりやすいということにしました。
これらのことから、「旧住所」は「旧■住所」と区切った方がよいと思います。
「新」は、接頭語としての働きが、「旧」より強く、p64の原則に従って書く方が多くなります。他の1字漢語より外来語に付く例も多いと思います。
新シリーズ、新リーダー、新エネルギー、新プラン、新ドラマなど、すべて一続きに書いてよいと思います。

19.p64 2.接頭語・接尾語など

「在住」・「在勤」などの「在」は1語漢字で自立する意味のまとまりではないので一続き、「団体」は3拍以上の意味のまとまりで、「在」との間に発音上の切れ目があるので 「ザイ■ダンタイ」と考えるのでしょうか。
「在」と「全」との違いについて、よく理解できません。
「全市町村」「全公民館」は、「全」が接頭語なので一続きに書き、「在団体」は発音の切れ目があるので離す。全公民館の「全」は接頭語ですが、「在」は、文法的にはどの範疇なのでしょうか。

【A】

漢字1字の漢語の中には、語頭について接頭語的役割をする語と、名詞として連体詞的働きをする語があります。
「新」「非」「被」「無」「総」「最」「再」などは、接頭語としての働きが強いのですが、「要」「在」「満」「各」「同」「本」(同・本は「その」の意味のとき)などは、接頭語としてではなく、連体詞の働きをして後ろの語にかかっています。接頭語の働きをする語と異なり、自立した意味のまとまりとなります。
このようなことから
「新校長」「非人情」「被選挙権」「無国籍」「総選挙」「最優秀賞」「再出発」などは続けて書きますが、「要■冷蔵」「在■団体」「満■3年」「各■施設」などは区切って書きます。
ただ、これらの分類の境目は曖昧で、どちらともいえないような場合もありますので、語頭に付く1字漢語は判断がむずかしいところです。

20.p65 2.接頭語・接尾語など 【備考】

「新住所地」の「新」は切るのですか。理由も教えてください。

【A】

シン■ジューショチ と書きます。
新住所でしたら、シンジューショと続けますが、新住所地はあまり一般的でない表現ですし、後ろの「住所地」は、「住所」に「地」という1字漢語がプラスされた形です。
「てびき」p65の「新■時刻表」と同じ成り立ちになっています。「時刻表」は「時刻」に「表」がプラスされた形です。
「新」は原則として、後ろの語と続けて書きますが、このように、後ろに付く語に接尾語や1字漢語の造語要素が付くと、拍数が増えることもあって、区切って書いた方が分かりやすくなります。
「新発明」は一続きですが、「新発明家」であれば「シン■ハツメイカ」、「新開拓」は一続きですが「新■開拓地」のようになります。
ただ、「新仮名遣い」「新政府軍」「新古典派」のように長くても、「新」も含めて一語としてのまとまりがある語は続けて書いています。

21.p65 2.接頭語・接尾語など 【備考】

「副本部長」は造語要素が二つあるので「フク■ホンブチョー」と区切ってよいでしょうか

【A】

フクホンブチョー と一続きに書きます。
造語要素が二つ付いているというのは、次のような場合です。
(理事+長)+ 副 ⇒ 副理事長 + 名 ⇒ 名■副理事長
(部会+長)+ 副 ⇒ 副部会長 + 新 ⇒ 新■副部会長
ご質問の語は、「本部」という言葉があり、その「長」である「本部長」に造語要素が一つ付いた形ですので、「副」と「本部」の間は続けて書きます。

22.p65 2.接頭語・接尾語など 【備考】

【備考】にある「長い接尾語」の意味と判断基準は何でしょうか。

【A】

p65「長い接尾語」の例として「かたがた」「こっきり」をあげています。
接尾語は、3拍以下の短い語が殆どですが、なかには、4拍以上で、区切って書いた方が分かりやすい語がありますので、そのような語は接尾語でも区切って書くことを表しています。また、漢語で「加減、次第、同士」などは、接尾語のように働きますが、3拍以上の漢語は語の下についても自立した意味のまとまりとなります。ただし、「はれがましい、ながったらしい、ふるめかしい」の「がましい、たらしい、めかしい」などのように長い接尾語でも区切ると意味の理解を損なう場合は続けて書きます。

23.p65 2.接頭語・接尾語など [参考]

「音楽フェス」についての文で、「1981年に現在のグラストンベリーフェスティバルにイベント名を変更し、何回かの休催年をはさみながら現在まで継続している50周年となる2020年の同フェスには・・・」とあります。
最後の方の『同フェス』についてです。
てびきp65の「参考」の、下から6行目からの説明により、点訳では同フェスを切らなかったのですが、1校では「その」の意により切ります(点訳フォーラム『同/会場』参照)と校正されました。どのようにしたらよいでしょうか。

【A】

「てびき」p65[参考]には、「後に続く語が2拍以下の場合は、続けて書いてよいでしょう。2拍以下の語は、相手の語に続けて書くことが原則だからです」と書いています。
「点字表記の語例」では、「同会場」と「同地域」を、「同」が「同じ」の意味の場合は続けて書き、「その」の意味の場合は区切って書くことを示しています。そして、「同市」を「その」の意味で続けて書く例として挙げています。
「市」が2拍以下で、「会場、地域」が3拍以上だからです。
今回ご質問の「フェス」は2拍ですが、「フェスティバル」の略語の外来語です。外来語の場合は、相手が和語や漢語の場合、2拍でも自立可能な意味のまとまりとなりますので、「てびき」p65の[参考]でいっている、「2拍以下の語は、相手の語に続けて書くことが原則だからです」にそのまま当てはまらないことになります。
ですから、校正された方の指摘の意図とは、少し異なりますが、結果的に、「ドー■フェス」と区切って書いた方がよいと思います。
「同県、同市、同会」などは、「その」の意味でも続けて書きます。

24.p65 2.接頭語・接尾語など 【備考】[参考]

「同」「本」の後に続く語が2拍以下の場合は、続けて書いてもよいとあります。下のような場合、「ホンムラ」「キュームラ」になりますか。
1.四年前の春、本村でも飲料メーカーに~
2.市町村合併の記念に旧村の村史をまとめることになった云々。

【A】

1.同・本・当などの後ろに2拍以下の語が続く場合は、一続きに書いてよいというのは、2拍の漢語であることを想定しています。ほとんどの場合は音読みをするのが自然だからです。
「本村」も「ホンソン」という言い方もあると思いますが、「あさひむら」という村名の場合は「ほんむらでも~」と読みます。その場合は、「むら」の自立性から「ホン■ムラ」と区切って書いた方がよいと思います。「本町」も「ほんまち」と読めば、「ホン■マチ」となります。
2.旧村は「きゅうそん」と読めば「キューソン」、「きゅうむら」と読めば、やはり「キュー■ムラ」になります。「市町村合併」(シチョーソン)、「村史」(ソンシ)ですので、一般には「キューソン」がよいと思いますが、「~むら」という固有名詞が想定される場合は、「キュー■ムラ」でよいと思います。

25.p65 2.接頭語・接尾語など [参考]

「同」の切れ続きについて「てびき」p65[参考]を読みましたが、以下の原文の「同」は「その」とも「同じ」ともいえるように思え、切れ続きに悩んでいます。
『京都大学医学部卒業、同大学院医学研究科修士課程修了。』

【A】

この場合は、「その」の意味で「ドー■ダイガクイン」となります。
「その」の場合は、前に「その」を示す内容が一度提示されていることが特徴です。ただ、明確に判断ができない場合もあります。「同じ」とも解釈できる場合もありますが、前に「その」の具体的事柄が示されている場合は、「その」の方を取ります。
「同じ」の意味の場合は、「~と」と格助詞を伴うか、少なくともその言い方を含んだ表現になります。
「彼とは同大学の出身だ。」 ドーダイガク
「私は、○○大学出身です。かれも同大学の出身です」 ドー■ダイガク

26.p65 2.接頭語・接尾語など 【備考】[参考]

「同」について、[参考]で、「連体詞の働きをしている場合、原則として後ろを区切って書きますが、後に続く語が2拍以下の場合は続けて書いてもよいでしょう」とあります。
「同地区」を「ドー■チク」と点訳されているものがありますが、2拍以下なので続けた方がよいのか、それとも「続けてもよい」なので切ってもよいのでしょうか。
「地区」は2拍でも、漢語2字2拍なので、そのような場合は「同県」等とは違うのでしょうか。

【A】

ドー■チク
となります。
p65【備考】の[参考]で、「後に続く語が2拍以下の場合は続けて書いてもよいでしょう」としているのは、自立していない続ける成分の場合を指しています。2字2拍の漢語は、3拍以上の語と同じように区切って書く成分ですので、
同地区は「ドー■チク」となります。
前に掲載している「同フェス」「本村(むら)」に関する質問でも、2拍の外来語や和語の場合について説明していますので参考になさってください。
p65でこのように中途半端な説明になっているのは、「てびき」での位置づけが、講習会等で、まだ複合名詞について詳しく学ぶ前になっているためです。複合名詞の切れ続きについてはp66以降に学ぶことになっていますので、このように曖昧な説明になってしまいました。このことを考慮してお読みください。

27.p65 2.接頭語・接尾語など 【備考】[参考]

「同」について、「同じ」の意である用法で、それが、名前の場合も続けるものですか。
清岡 道之助、同治之助 とある場合などです。

【A】

この場合の「同」は、造語要素や連体詞的な働きとは異なり、前に出てきた語句を繰り返し書く代わりに用いる用法で、マスあけは、「清岡 治之助」と書いた場合と同じ扱いになります。
同■治之助
となります・
昭和60年入学
同 63年卒業
などとも用います。この場合も
昭和■60年■入学
同■63年■卒業
となります。

2 複合名詞

1.p66 複合名詞

複合名詞の書き方の決まりについて質問です。「漢字2字2拍の漢語は自立可能な意味のまとまりとして区切る」に対して「漢字2字2拍の和語は(通常のルール通り)続ける」ということについて、なぜそうなっているのか教えて下さい。視覚障害の方は漢字を見ているわけではないのに漢語・和語の区別をつけて切れ続きをするのは何故なのかという疑問です。漢語だと、和語よりも意味の想像がし難いなどの理由で分けるのでしょうか。
(点訳講座にて質問を受け、今まで最初から決まり事として当たり前にやっていたため、ちゃんとした答えがみつけられずにいます。)

【A】

点字は仮名で構成されているので、日本語を仮名だけで書いたときにも必要な、文節分かち書きを用いて書きます。ただ、それだけでは、長い複合語などはマス数が多くなり、意味を読み取りにくくなります。
そこで、複合語内部の切れ続きが必要になってきます。歴史的にみると、最初は複合語を構成する要素の意味の関係で切れ続きを決めていたのですが、それだけでは長くなりすぎることが多く、中途で視覚障害になるかたが増加したことも鑑みて、拍数と意味のまとまりという二つの要素で切れ続きを決定する規則に変わりました。
点字の触読の特徴から、長く続いているものを頭の中で区切って読んでいくより、短いものをつないで読んでいくほうが分かりやすいからです。
この拍数と意味のまとまりについて検討した結果、現在のルールになったのですが、「てびき第3版指導者ハンドブック第3章編」p29の「コラム」に拍数と意味のまとまりについて書かれていますのでお読みください。
漢語と和語は語の成り立ち上、同じ拍数で区切るルールにはそぐわないわけです。
「シカイシ」「フカカチ」「ジコショリ」と続けて書くより、「シカ■イシ」「フカ■カチ」「ジコ■ショリ」の方が意味を理解しながら読みやすいということになります。

つまり、点字触読の早い方も読みの遅い方も意味の理解をしながら読んでいくのには3拍で区切るのが分かりやすいのですが、2字で2拍の漢語は、そこで区切った方が理解しやすいのです。

これらのことについては、「日本点字表記法2001年版」p143~p160「点字の表記に関するキーワードの解説」に述べられています。「表記法1990年版」にも同じ内容が掲載されています。この部分が「表記法2018年版」からは削除されてしまいましたので、日本語文法と点字の書き表し方・分かち書きの規則の成り立ちを知りたい場合には、ぜひ2001年版をお読みください。
点字は仮名だけで表しますが、漢語・和語・外来語からできている日本語の学校文法に従って、合理的に、読みやすく、分かりやすく書き表すためにはどのように規則を構成するかについて検討された経緯が書かれています。

2.p66 コラム17

①「自立性が強い」とはどのような語をいうのでしょうか。それは辞典とかで分かりますか。
②「語例集」の空港横、屋敷跡などの備考欄に「複合名詞とは言えない」とありますが、これらは名詞+名詞なので複合名詞だと思うのですが、「言えない」というのは何故ですか。

【A】

① 「点訳のてびき」第3章は、墨字の漢字仮名交じり文にはない点字独自の「分かち書き」「切れ続き」について述べているところですので、日本語の文法用語も用いられていますが、独自の用語も多く用いられています。
「自立した意味のまとまり」「自立性が強い」などは、点字独自の用語となります。「自立する」とは、分かち書き・切れ続きを考えたときに、それだけで区切って書くことができることを意味します。「自立性が強い」も区切って書いた方がよいという意味になります。
②「複合名詞」は、日本語文法の用語です。「てびき」p66「コラム17」にもキーワードの説明がありますが、「複合語」は、「単独で用いることができる語が二つ以上組み合わされて新たに一語としての意味・機能を持つようになった語」です。例えば「水草」といえば、「水」だけの意味でも「草」だけの意味でも無い、「水中に生える草や藻」というあらたな意味を表します。それに比べて「水自体」は、単に、「水、それ自体」を表しており、水以上の新たな意味はありません。このように、名詞と名詞が並んでいれば必ず複合名詞を作るとは限りません。「空港税」は「空港」だけでも「税」だけでもない、「出国時空港で徴収される税金」という新たな意味を持ちますが、「空港横」は「空港の横」以外の意味はありません。このような語を「複合名詞とは言えない」と表現しています。

3.p66 コラム17

熟字訓の扱いがよく解りません。語例集には「雑魚」の読みが「ザコ」「ジャコ」とカタカナで書かれています。「ザコ」は熟字訓で訓読みということにはならないのでしょうか。「雑魚炒め」が「ジャコ■イタメ」と区切っていますので、「雑魚役人」の場合も「ザコ■ヤクニン」と区切るのでしょうか。

【A】

「雑魚」は、「新潮国語辞典」によると漢語に分類されていますので、点訳フォーラムでは漢語の扱いをしています。
常用漢字表では熟字訓の例として挙げられている語でも、「雑魚」のほか、「砂利」「数珠」「居士」なども、「新潮国語辞典」では漢語と判断していますので、点訳フォーラムでは漢語に分類しています。
漢語か和語かの判断は、ほとんどは漢字の音読み、訓読みで判断できますが、もともとは別の漢字表記であったものが、現在は別の当て字になったりしている語もあり、考え方によって、漢語・和語の判断に揺れがあるものもありますので、点訳フォーラムでは、「新潮国語辞典」の判断を根拠としています。
「雑魚」も「雑喉」(ざっこう)が変化した語とのことで、漢語扱いの考え方もあります。「砂利」は、他の辞典でも漢語と判断されています。このように漢語か和語かの判断が揺れている語に付いては、点訳では「新潮国語辞典」を根拠にする方法が多く採られています。
雑魚役人も「ザコ■ヤクニン」となります。

4.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

自立性とか、区切る成分、前の語の意味を強調するとかが判断出来ません。理解するにはなにかよい方法がありますでしょうか。
旅雑誌、旅気分、奥深く、奥深い、右半分、右半身など。名詞で2拍+3拍なのに、マス開けだったり続けたりなのが分かりません
「歩き易く」は、名詞+形容詞で1語でよいですか。調べると「歩き易さ」は、名詞+名詞なのに一続きなのですがそれはどうしてでしょうか。

【A】

「旅雑誌」「旅気分」など、複合名詞内部の切れ続きの基本は、「3拍以上の意味のまとまりが二つ以上ある」ことです。
この「3拍以上の意味のまとまり」を「区切る成分」といい、相手も「区切る成分」であればマスあけします。「桜並木」は「さくら」も「なみき」も区切る成分ですから、「サクラ■ナミキ」となります。それに対して「松並木」は、「まつ」が2拍で「3拍以上の意味のまとまり」ではないので、「なみき」が区切る成分でも、マスあけすることはできません。「マツナミキ」と一続きになります。
「てびき4版」p68の「参考」にありますので確認してください。
ただ、「区切る成分」は「3拍以上の意味のまとまり」だけではなく「2字2拍の漢語」や「ある条件下での2拍の外来語」なども含まれますのでそれらも確認していただくことが必要になります。
「奥深い」「歩きやすい」は「深い」「やすい」が形容詞ですので、複合形容詞となり、一続きに書きます。この「複合形容詞」の語尾が変化して名詞になった語は一続きに書きます。「奥深さ」「歩きやすさ」などです。
「てびき」p67の【備考1】になります。「複合形容詞」については、点訳フォーラムの「用語解説」の「複合語」などで確認してください。
「旅雑誌」「旅気分」「右半身」などは、上の基本にしたがって「2拍+3拍」
で一続きに書いてよいと思います。
「右半分」については、「てびき」p69【備考】で説明しています。この【備考】にはいろいろな要素が含まれていて迷いやすいところですが、1語としての結びつきが強いかどうか、発音上の切れ目がないか、「2拍」の相手の拍数が多いかなどを考えて判断します。「半分・自身・自体・全体・平均」などは、相手の語と複合語を作らずに、ほとんどの場合区切って書きます。点訳フォーラムの語例集で「半分」「自身」
「自体」などと入れて検索をし、相手が2拍でも区切って書いてあるかなども参考にしながら判断してください。

5.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

分かち書きをおたずねいたします。
ただ力任せに振っているだけに見えた。
例文中の「力任せに」は形容動詞で「振っている」を修飾しているのではないかと思うのですが如何でしょうか。それとも、「ちから■まかせに」でしょうか。

【A】

「力任せ」は、確かに「に」を伴って形容動詞の働きをしていますが、点字では「力任せ」の部分は、複合名詞内部の切れ続きのルールに従います。
ですから「チカラ■マカセニ」となります。
国語辞典を引くと、〔名・ナノ〕「名・形動」などと書かれていて、「な、だ」を付ければ形容動詞ですが、その語幹部分は名詞として働く語です。これらの語幹部分は複合名詞の切れ続きのルールに従います。
「波瀾万丈な人生を送る」なども「波瀾万丈な」が形容動詞の働きをしますが、「波瀾万丈」の部分は、複合名詞の切れ続きに従い「波瀾■万丈な」とします。
「一心不乱に勉強に打ち込む」の「一心■不乱」、「涙混じりに話す」の「涙■混じり」なども同じです。

6.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

「~次第」について、「点字表記の語例」では、「敵次第、腕次第、運次第」等は続いていますが、「式次第」は区切っています。どうしてでしょうか。
また、「すみ次第、でき次第」の切れ続きはどうなりますか。

【A】

敵次第、腕次第、運次第の「次第」は接尾語です。名詞や動詞の後ろについて、「そのことがなるがままにしておく」とか「~するとすぐ」などの意味を表します。接尾語ですが、「同士」「加減」と同様、漢語で3拍なので、3拍以上の自立可能な意味のまとまりとの間は区切って書きます。腕次第、運次第は一続きですが、あなた■次第、手当たり■次第などは区切って書きます。
「式次第」の「次第」は名詞で「物事の順序、経過、成り行き」などを表します。
「式次第」は「式の順序」の意味で、複合名詞とはいえないので、「式■次第」と区切って書いています。「事の■次第を■話す」「事と■次第に■よっては」などのような使われ方をします。
「物事が済み次第」や「でき次第」は接尾語ですので、「スミシダイ」「デキシダイ」と続けて書きます。

7.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

「次第」の切れ続きに迷います。
「念を押しておくけど、採用するかどうかは何ともいえませんよ。あくまで作品の出来次第だからね」
「点訳に関する質問にお答えします」 第3章 その2 複合語 「p67 1.」「p68 2.」などがありましたが、品詞や文の成り立ちが理解できませんでした。

【A】

サクヒンノ■デキ■シダイ となります。
この場合、「出来」に連体修飾語「作品の」がつき、「作品の■出来」全体を受けての「次第」ですので、区切って書きます。
後ろが自立しない造語要素の場合は、「課長宛」でも「佐藤課長宛」でも「カチョーアテ」の部分の切れ続きは変わりませんが、
自立する意味のまとまりの場合は、連体修飾語も含めた全体の切れ続きを考えますので、前を区切ることになります。
「点訳に関する質問にお答えします」の「p68 2.」に「親同士」「客同士」を取り上げていますので参照してください。

8.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

「高崎-横川駅間」「長野-篠ノ井駅間」のマスあけはどうなりますか。
「駅間」は辞書にないようですが。

【A】

「駅間」は辞書にはありませんが、「駅間の距離が長い」など自立する意味のまとまりとして用いられます。ご質問の場合は、「高崎と横川の駅間」「長野と篠ノ井の駅間」の意味ですので、
タカサキ③⑥③⑥ヨコカワ■エキカン
ナガノ③⑥③⑥シノノイ■エキカン
と書くのがよいと思います。
なお、高崎駅-横川駅間、長野駅-篠ノ井駅間となった場合は、高崎駅と横川駅の間、長野駅と篠ノ井駅の間ということになり、「間(かん)」は、接尾辞的なはたらきとなりますので、
タカサキエキ③⑥③⑥ヨコカワエキカン
ナガノエキ③⑥③⑥シノノイエキカン
となります。

9.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

「未来を舞台にしたSF仕立ての作品」という文章の校正で、点訳者は“SF仕立て”を“SF■したて”と読みました。私は“SF③⑥じたて”と校正したところ、「点訳フォーラムの語例で、『洗濯仕立て』が『せんたく■したて』になっている」と言ってきました。私の考えでは、『洗濯仕立て』と『SF仕立て』は違う意味の『仕立て』と思っています。
仮に読み方が『じたて』だった場合、どの様に説明すれば相手は理解してくれるでしょうか。

【A】

「SF仕立て」は、「SF+仕立て」で、この場合の「仕立て」は「そのように作り上げる」という意味で、動詞「仕立てる」が転成した名詞です。「じたて」と連濁して用いることが多いと思いますので、「外大大SF=ジタテ」と校正してよいと思います。点訳フォーラムの語例集には、「一物仕立て 数1ブツジタテ」の例があります。
一方、「洗濯し立て」は「洗濯する」+「立て」で、この「立て」は「立つ」の連用形ですが、動詞の連用形について接尾語的に「焼きたて、洗いたて」のように用いられます。
「し」は動詞「する」の連用形ですので、「洗濯■し」となりそれに接尾語が付いて、センタク■シタテとなります。

10.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

「ひやしあめ」が「ひやしーあめー」になった場合も一続きに書いてよいですか。

【A】

「ひやしーあめー」は「ヒヤシー」が4拍、「アメー」が3拍になりますので、「ヒヤシー■アメー」と書きます。

11.p67 1.3拍以上の意味のまとまり

お茶坊主の分かち書きについて質問します。
混種語は漢語と同様に扱うとあります。お茶は和語と漢語の混種語ではないかと思います。とすると、お茶坊主は区切るのではないかと思いますが続いている理由が分かりません。お茶セットの分かち書きはどのようになりますか。

【A】

お茶の「お」は和語ですが、接頭語としての働きもある語です。
お茶道具やお茶セットなどの「お茶」は、複合語の中の自立した意味のまとまりとしての働きがあり、「お茶」の「道具」であり、「お茶」の「セット」になります。
ただ、「茶坊主」についた「お」は、「お茶」として自立した意味のまとまりとはいえず、接頭語としての働きをしていると思います。「お茶」の「坊主」ではなく、あくまでも「茶坊主」に丁寧語を示す「お」がついていると判断します。
お茶セットは「オチャ■セット」となります。

12.p67 1.3拍以上の意味のまとまり【備考1】

「気持ちよさ」は、余り耳にしないことばですが、著者の口癖なのか、現在点訳している本に相当数出てきて、続けていいのかマスあけするのか迷っています。
「気持ちいい」「気持ちよい」は名詞と形容詞なので、マスあけしていると思いますが、これは名詞+名詞で5拍なので続けていいという意見と、「気持ち良い」がマスあけしているから区切って書くという意見があります。 どう判断すればいいでしょうか?

【A】

「気持ちよい」は、「キモチ■ヨイ」と書くことから、複合形容詞ではなく、名詞「気持ち」+形容詞「よい」で、2語になります。「よい」が「よさ」という名詞に変わっても、「気持ち」+「良さ」の2語と考えます。3拍+2拍という複合名詞のルールに当てはめずに、「キモチ■ヨサ」となります。
同様に「申し訳■ない」は名詞+形容詞の2語と考えるので、「申し訳なさ」と形を変えても1語として続けて書かず、「申し訳■なさ」と区切って書きます。

13.p67 1.3拍以上の意味のまとまり【備考1】

「隣合わせ」「隣り合わせた」の切れ続きについて、点訳フォーラムの語例の中で、「隣合わせ」は「トナリ■アワセ」、「隣合わせた」は「トナリアワセタ」となっています。
複合動詞から転成した複合名詞の切れ続きについて、これまで『点訳のてびき第3版指導者ハンドブック「第3章 分かち書き」編』p42を参考に、「複合動詞から転成した複合名詞は、動詞の形にすると動詞終止形を作り、複合動詞からの転成でない語は、動詞の形にするときは「~する」となる」を参考に判断して来ました。
「隣合わせる」のような「名詞+動詞」の複合動詞が複合名詞に転成した場合には、上の目安によらず、最初の名詞部分は(拍数が許せば)区切るのでしょうか。
他に似たような語の例が思いつかないのですが、考え方を教えてください。

【A】

複合動詞からの転成名詞の切れ続きの原則は、これまでのお考えの通りです。
ただ、「隣あわせ」「背中あわせ」は、「隣あわせになる」「背中あわせに座る」などとはいいますが、複合動詞としてはあまり使用されないことから、「トナリ■アワセ」「セナカ■アワセ」と区切った方が分かりやすいとして、区切って書くことにしています。
もちろん「隣り合わせた」とあれば一続きに書きます。
「そぞろ■歩き」と「そぞろ歩く」などもそうですが、複合動詞から転成した名詞というより、複合名詞から類推して用いられるようになった複合動詞と考えられるケースがあり、そうであっても複合動詞の形で用いられていれば一続きに書きます。

14.p67 1.3拍以上の意味のまとまり【備考1】

「心躍る」の切れ続きについて教えてください。
語例集を見ると、「こころ」を含む語は切る場合と続ける場合があり、点字の表記がもうひとつ理解できません。
「心躍る」は一部の辞書に「心躍り」という転成名詞が載ってて、複合動詞と考えるかどうか迷っています。

【A】

「心躍る」は複合動詞と言うより、「心■躍る■出来事」のように後ろに名詞を伴う表現が多く、「心(が)躍る」という成り立ちではないかと思います。
「心躍り」の動詞形は「心躍りする」になります。
ですから、ココロ■オドリ、ココロ■オドルになります。
「心」は3拍の名詞ですので、後ろに3拍以上の名詞(2字2拍の漢語も含め)が続く場合は区切って書きます。語例集で見ると、ココロ■アタリ、ココロ■イキ、ココロ■ウツリ、ココロ■クバリ、ココロ■ノコリなどです。
後ろに形容詞が付くと、複合名詞ではなく形容詞になりますので続けて書きます。ココロナイ、ココロヤスイ、ココロヨワイなどです。
複合語にならない場合や、形容詞が長い場合なども区切って書くことになります。

15.p68 1.3拍以上の意味のまとまり 【備考2】

「非」について質問します。
非加熱□製剤、非課税□所得、
非□政府□組織、非□営利□組織となっていますが、考え方を教えてください。
「非弾性衝突」はどう考えれば良いのでしょうか?

【A】

「非」についてまとめると以下のようになります。
1.「非」は語頭につく接頭語的な1字の漢語ですので、直後の語と続けて書くのが原則です。
非加熱や非課税は、後ろに「製剤」や「所得」が付いても、付かなくても一続きに書きます。
非加熱■製剤、非加熱■殺菌、非課税■所得、非課税■貯蓄などとなります。
2.「非」がマスあけを含む複合語の全体にかかっている場合は、「非」の後ろで区切って書きます。
政府■組織 に対する 非■政府■組織
営利■組織 に対する 非■営利■組織
もともと「非政府」「非営利」という語のまとまりではなく、政府組織、営利組織ではないという意味の「非」なので、区切って書きます。
「非弾性衝突」の意味は、「弾性衝突とは対照的に、内部摩擦のために運動エネルギーが保存しない衝突」ということですので、「非」が「弾性■衝突」というマスあけを含む複合語全体にかかっています。
ですから「てびき」p68 【備考2】により、「非■弾性■衝突」となります。

「非」では、1.と2.の明らかな区別は分かりにくいかもしれませんが。
参考までに、「被」について考えてみますと、
「被」は、直後の語とほとんど例外なく続けて書きます。
被保護も続けて書きますので、「被保護■世帯」も続けて書きます。これは1.の例になります。
しかし、「被生活保護世帯」となると、「被」は「生活保護」というマスあけを含む複合語にかかっていますので、「被■生活■保護■世帯」となります。
「てびき」p68【備考2】が示す内容は以上のようになります。

16.p68 2.2拍以下の意味のまとまり

固有名詞(人名)に「いぬ」「ネコ」など2拍の動物名が付いたときは区切って書くでしょうか。続けて書くでしょうか。原本では主人公実弥子を「ミヤコネコ」と呼ぶところがあります。「てびき」のどこを根拠とするか教えてください。また、「ごんぎつね」は続けると思いますが、「ごんきつね」は切っていいのでしょうか。

【A】

2拍以下の語は自立した意味のまとまりではありませんので、切れ続きの原則に従い、人名の後ろでも続けて書きます。「ミヤコネコ」と続けて書きます。
イヌやネコのような動物だけでなく、たとえば「キンタローアメ」なども一続きに書きます。「イヌ」が後ろに付く場合でも同じです。「きつね」は3拍なので、区切って書きます。

17.p68 2.2拍以下の意味のまとまり

「働く親同士で助け合う ハタラク■オヤ■ドーシデ■タスケアウ」が語例集にありますが、親は2拍の和語で続ける成分なのに「オヤドーシ」と続けないのはどうしてでしょうか。
「一人で来た客同士が言葉を交わしたり…」という原文があります。「客」は、1字漢語で続ける成分なので「キャクドーシ」となるのでしょうか。語例集には「客」で始まる語句はほとんど続いていますが「客本人 キャク■ホンニン」はどうしてマスあけするのでしょうか。

【A】

「親同士」は「オヤドーシ」と続けて書きますが、「親」に連体修飾語が付いた形の「働く■親」+「同士」となると、「ハタラク■オヤ■ドーシ」となります。
これは「同士」だけがこうなるのではなく、「人次第」は「ヒトシダイ」ですが、「使う■人」+「次第」となると「ツカウ■ヒト■シダイ」となります。
親同士のコミュニケーションが必要だ ⇒ オヤドーシ
働く親同士のコミュニケーションが必要だ ⇒ ハタラク■オヤ■ドーシ
その製品が便利かどうかは人次第だ ⇒ ヒトシダイ
その製品が便利かどうかは使う人次第だ ⇒ ツカウ■ヒト■シダイ
このように、連体修飾語が付いた場合はマスあけに注意します。
「客同士」も、「親同士」と同じ考え方になります。
一人で来た客同士が言葉を交わしたり… ⇒ ヒトリデ■キタ■キャク■ドーシ
「客■本人」の場合は、「本人」の方に区切る理由があります。「本人」は「客」を強調する働きがあり、複合語とは言えないので区切って書きます。
「彼■本人」「子■本人」となります。
「自身」「自体」なども同じです。

18.p68 2.2拍以下の意味のまとまり

「母譲り」は一続きになりますが、「あの方譲り」の場合も、「あの■かたゆずり」となりますか。

【A】

アノ■カタ■ユズリとなります。
造語要素や接尾語など自立性のない語が後ろに付く場合は、不自然になっても
ワルイ■コブル(悪い子ぶる)
タナカ■シアテ(田中氏宛)
などのように、造語要素や接尾語との間を続けて書きますが、
後ろに、3拍以上の自立する意味のまとまりがつき、全体としてまとまった語句になる場合は、その中のまとまりごとに区切って書きます。
「部屋探し」は一続きですが「住む■部屋■探し」、
「人集め」は一続きですが「やって■くれる■人■集め」、
「宮参り」は一続きですが「丑の■刻■参り」になると区切る
のようになります。

19.p68 2.2拍以下の意味のまとまり

「跡」の切れ続きについて、「キャタピラ跡」「破壊跡」の処理の際、最初は切ると思ったのですが、「タイヤ跡」でわからなくなりました。
1)基地■跡、関所■跡、屋敷■跡、練兵場■跡
2)城跡、焼け跡、タイヤ跡、タイヤ痕、手術痕
これらの切れ続きの違いはどのように考えるとよいでしょうか。

【A】

タイヤ跡、タイヤ痕、キャタピラ跡、手術痕、破壊跡はすべて続けて書きます。
「跡(あと)」には、
「痕」とも書くことができる「足でふんだところや車の通り過ぎた所に残る印」など、前にある名詞が作用を及ぼした結果の痕跡を指す場合は、複合語の中の2拍の成分として続けて書き、
「址」であらわされるような「あることが行われた、あるいは存在したことを示す証拠、またはその場所」である遺跡・遺構などを意味する場合は、発音上の切れ目もあり、前の名詞をはっきりさせるために、区切って書く事にしています。
ただし「城跡」のように相手が続ける成分であれば続けて書きます。

20.p68 2.2拍以下の意味のまとまり

「萌え」「推し」について質問します。

「萌え」について
原本より抜粋
その頃、カンボジアの地雷撤去のNPO活動の取材で、カメラマンとして現地に同行したことがある。そこは息詰まるほど蒸し暑く、土の匂いがして・・・地雷で片足、両足をなくした子供や大人たちが数えきれないほどいた。「あなたってさぁ、欠損萌えなんじゃない?」

上記のように「○○萌え」と後ろについた場合はどのように考えるとよいでしょうか。

「推し」について
原本より抜粋
不安に駆られた男に、婆さんはあっさり「猪の脂」と種明かしした。「傷によう効くけん」神社、猪、生活、脂・・・今日聞いた話が現実的な線で繋がる。「猪の脂かあ。ここって猪推しが凄いですね」

語例集に「大谷■推し」、「スタッフ■推し」はマスあけしていますが、「二次元押し」が一続きになっています。切れ続きをどのように考えればよいでしょうか。

【A】

「萌え」は2拍の和語ですので、特に後ろに付いた場合は、続く要素と考えてよいと思います。 欠損萌えは、ケッソンモエと続けて書いてよいと思います。

「推し」は「推す」という動詞から転成した2拍の名詞ですが、「推す」対象をはっきりさせる意味で区切った方がわかりやすいと判断しました。
ですから、「オオタニ■オシ」「オシ■ナカマ」「スタッフ■オシ」と区切って書きます。「イノシシ■オシ」となります。
ただ、「二次元推し」「三次元推し」は、一般的な意味合いの「二次元を推す」ではなく、「三次元推し」は、実在のアイドルや俳優を推すこと、「二次元推し」はアニメのキャラクターや物語の登場人物などを推すという特別な意味を生じていますので、続けると判断しています。

「萌え」と「推し」は若者言葉から広まった似たような意味の語ですが、
「萌え」は、対象に対するさまざまな好意感情を表し、使われ方によって、強い愛着心・情熱・欲望・憐憫・慈愛などさまざまなニュアンスを喚起する言葉のようです。相手との結びつきが強い複合語と言えます。
これに対して「推し」は、「推しが~」のように自立した名詞(主語)としても用いられますし、「~を推す」と、目的語を伴った意味で用いられ、相手によって意味が異なったりしません。むしろ推す相手をはっきりさせる意味で区切って書いた方がよいと思います。

21.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

「体重■増」「資産■減」の例がありますが、「人口増」「負担増」のように、「増」「減」が名詞の後ろに付くときは、基本的に独立していると考えてよいのでしょうか。

【A】

「増」「減」が名詞の後ろに付くときは、一般に区切って書きます。しかし、それも含めて1語としての意味合いが強い場合は、発音なども考慮して、例外的に一続きに書きます。 一続きに書くのは極めて限定的で、社会学関係の用語として定着している「自然増」「自然減」「社会増」「社会減」などに絞られます。「人口■増」「体重■増」などと異なり、自然が増える、減る、社会が増える、減るわけではなく、自然に増える、社会的な減少といった意味合いですので、一続きに書きます。
「負担増」は、「負担増が強いられる」のように、文脈上複合語的に使うことが多い言葉ですが、上記の判断基準から、区切って書いた方がよいと思われます。

22.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

相撲の「西前頭」はマスあけが必要でしょうか?
右・西・北、2拍の方向を表わす言葉の切れ続きに迷います。区切る場合は発音上の切れ目以外の判断基準がありますか?

【A】

「右」「左」は、迷うことも多いのですが、拍数から判断して、「ミギ」は後ろの語と続け、「ヒダリ」は区切って書くのが原則になります。ただし医学用語は異なった判断をすることも多いので、点訳ナビゲーターを参考にしてください。
方角を表す「東・西・南・北」も原則に従い、2拍は続け、3拍は区切って書きます。
西前頭は「ニシマエガシラ」と続け、東前頭は「ヒガシ■マエガシラ」となります。
さらに、「右前身頃」「右後ろ足」など、「右・左」と「前・後ろ」などが重なると、拍数の判断の他に、「右前」や「右後ろ」でないことを明らかにするために、「ミギ■マエミゴロ」「ミギ■ウシロアシ」と区切って書くことになります。けれども「前頭」の前は方向を表すわけではないので、これには該当しません。

23.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

点訳ナビゲーターで2拍の和語でも区切って書いてある、「和風だし」「冷え対策」などは、区切る理由をどのように考えたらよいでしょうか。

【A】

p69【備考】に該当すると判断しました。この部分は、「ハンドブック3章編」p31で、少し詳しく説明をしていますが、複合名詞を作る相手との関係で切れ続きを考えることになります。
「だし」は2拍の和語ですが、「和風」は「和」に「風」という造語要素が付いて、後ろの語の連体修飾語のような働きをしていますので、「中華風」「西洋風」などと同様に、区切って書きます。「中華風■出汁」「西洋風■出汁」「和風■出汁」となります。同じような語としては、「事業系■ごみ」「広告用■びら」などがあります。「今風■ネタ」も切って書きます。
「冷え対策」も「冷え」は2拍の動詞転成名詞ですので、「冷え■対策」「揺れ■対策」「荒れ■対策」の方が分かりやすいと判断しました。これも「呆け■症状」などと同じだと思います。ただ、「汗対策」「風対策」「雨対策」「冬対策」など、2拍の和語名詞の場合は、続けた方がよいと思います。

24.p69 2.2拍以下の意味のまとまり【備考】

”核○○”の分かち書きの基準を教えてください。

【A】

「核」は、1字で2拍の漢語ですので、小型の国語辞典にも見出し語として掲載されているような一語として結びつきが強い語であれば、続けて書きます。
「核実験」「核戦争」などは、小型の国語辞典にも載っていて、一語としての結びつきの強い複合名詞と判断できますし、一語として結びつくことによって特定の意味が生じ、一般にそれが了解されているようなものですので、複合語の原則に従って扱います。
語例集には、続けて書く例として、「核家族、核攻撃、核実験、核戦争、核戦略、核戦力、核弾頭、核蛋白質、核燃料、核爆発、核反応、核武装、核武装論、核物質、核分裂、核兵器」などを収載しています。また、「核」プラス外来語も原則にしたがって続けて書きます。「核エネルギー、核シェルター、核バッグ、核ボタン、核ミサイル」などは続けて書きます。
これに対して、「核合意」「核開発」などは、一語としての結びつきがそれほど強くない語なので区切って書いた方がよいと判断しています。「核の合意」「核の開発」のように「の」を入れて考えた方が分かりやすい語になります。また、「性」「核」などのように漢字で書くとすぐに分かりますが、「セイ」「カク」と点字で書いたときには、どちらかと言えば区切った方が、その意味が伝わりやすい語でもあります。このことも切れ続きの判断に影響を及ぼしています。
語例集には、区切って書く例として「核■開発、核■軍縮、核■合意、核■査察、核■施設、核■時代、核■独占、核■廃棄物、核■廃絶、核■配備、核■保有国、核■問題、核■抑止、核■産業」などを収載しています。
また、「核■アレルギー」は区切って書くことにしていますが、「核アレルギー」は、「猫アレルギー」(ネコ■アレルギー)、「鯖アレルギー」(サバ■アレルギー)など病気のアレルギーも区切るのと同様に、比喩的な拒絶反応を示す場合も区切って書いた方がよいと判断しました。
その他、「核」がマスあけを含む複合語全体にかかる場合は、「てびき」p68【備考2】に従い、「核」のうしろでマスあけをします。「核■開発■競争、核■拡散■防止■条約、核■関連■施設」のようになります。
マスあけに迷う場合もありますが、語例集にも数多く収載していますので参考になさってください。

25.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

「性交渉」の切れ続きについてお尋ねします。
語例集で「性」を調べると沢山の事例があり、それぞれの理由を「てびき」p69の【備考】を基に考えてみましたが良く分かりません。「性交渉」を切る理由を教えて下さい。
「咳エチケット」のマスあけが変更になりましたが、最初に「セキ■エチケット」とした理由が分かりません。「てびき」p73にあるように「2拍以下の和語は、外来語が長くても一続きに書く」ので、一続きではないでしょうか。

【A】

漢字1字2拍以下の語と漢字2字の組み合わせの語の切れ続きはそれが複合名詞になっているのかどうかの判断にとても迷うところです。
一般には、複合名詞と判断されれば一続きに書きますが、間に発音上の切れ目がある場合は、区切って書くことになります。
「発音上の切れ目」「日本語のアクセント」については、「点訳フォーラム」の
「点字・点訳の用語解説」(https://tenyaku.jp/commentary/)を参照してください。

また、「性」「核」などのように漢字で書くとすぐに分かりますが、「セイ」「カク」と点字で書いたときには、どちらかと言えば区切った方が、その意味が伝わりやすい語もあります。このことも切れ続きの判断に影響を及ぼしています。
「性行為」「性生活」「性教育」のように結びつくことによって特定の意味が生じ、一般にそれが了解されているようなものは、複合語の原則に従って扱っています。
「性交渉」は特に迷う例ですが、上記のように、続けて読むよりも「セイ」で区切った方が意味が理解しやすいと判断し、区切って書くこととしました。

「咳エチケット」については、点訳フォーラムのブログ(4月29日付け)に書きましたが、「咳エチケット」は新しい言葉で、この言葉が使われ始めた頃は「てびき」p73(3)にある「胸ポケット」「コンクリート壁」のように、1語としての結びつきの強い複合名詞としてではなく、「咳のエチケット」というとらえ方で、「咳」を切り離した方が意味が分かりやすいと考え区切って書くと判断していました。
その後、急速に広く使われるようになり、言外に含まれるニュアンス(マスクをかけ、飛沫を拡散させないという意味合いなど)まで認知されるようになったので、複合語として熟したと考え、p73(3)のルールに従うこととしました。
同じような例に「要介護」「要支援」があります。もとは「ヨー■カイゴ」「ヨー■シエン」と区切って書いていましたが、介護保険が導入されたときに「要介護3」「要支援2」などと、広く使われるようになりましたので、今は「ヨーカイゴ」「ヨーシエン」と一続きに書いています。
新しく出来た言葉にはこのようなことがありますので、常に注意していく必要があると思います。

26.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

分かち書きについて質問いたします。次の語の分かち書きは正しいでしょうか。
横展開 → ヨコ■テンカイ
基盤校費 → キバン■コーヒ
利用客数 → リヨー■キャクスー

【A】

「横展開」は、《もともとはトヨタ用語で、ある部署で決まった内容を隣の部署等、直接の指揮系統に入っていない組織にも水平方向(横方向)に伝えていき、事実の共有や手法の共有をはかっていくことで、現在はトヨタ以外の会社でもよく使われる用語》だそうで、「横展開する・横展する」などと用いるそうですので、このような意味で用いられている場合は、「ヨコテンカイ」と一続きに書きます。
「基盤校費」は、「教育研究基盤校費」のように使用されるようです。
これは、「基盤+校+費」ではなく、「教育研究基盤」の「校費」と解釈できますので、複合名詞の本則のp67 1.「社会福祉、栄養満点」などと同じ成り立ちで、「キバン■コーヒ」と書きます。
「利用客数」は、やはり、p67 1.の「点字用紙、経済学者、会計課長、結婚式場」などと、同じ例となります。

27.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

「犬猫」の切れ続きに迷います。
語例集に「犬■猫の■飼い方」「犬猫■病院」があります。
続けて書くか区切って書くかは、複合語と捉えているか、○と○と捉えているかの違いと考えていいでしょうか。
辞書を調べますと「犬猫」には「犬と猫」のほかに「犬や猫」「本能にまかせて行動するものを軽蔑していうことば」「とるにたりないもののたとえ」といった意味が載っていました。動物全般をさしたり、「とるにたりないもの」的な意味のときは「犬猫」と続くのでしょうか。
次のような場合はどうなりますか。
「自由が何より大事だというなら、犬猫のように生きるのがいちばんということになりますよ」
「犬猫のように生きるのがいちばんなのではないですか。それができないから、我々は不幸になる」
「犬と猫」と考えれば「犬■猫のように」となるのか、動物全般あるいは取るに足りないものと考えるなら「犬猫」となるのか…
少し似ているものに「鍋釜が賑わう」というのがあるかと思います。「鍋と釜」から離れて別の意味「炊事道具」を指しているときは一続き。
「犬猫」もこれと同じように考えるのかなと思いました。
また、
禁止区域に取り残された犬猫がたくさんいる。
犬猫への給餌と保護をし始めた。
自分が重度の犬猫アレルギーであることがわかった。
エッセイ本『犬猫太平記』を発表した。
犬猫入荷情報
犬猫グッズ
犬猫飼養アドバイザー
どれも「犬と猫」の意味で用いられているもの、他の語と複合語となっているものです。どのように考えればいいでしょうか

【A】

「犬猫」「鍋釜」「秋冬」などの切れ続きは、大変迷うところですが、基本的には、以下のように考えます。

1.○と○という、それぞれ自立した意味のまとまりとして区切って書く
犬■猫の■飼い方
取り残された■犬■猫が■たくさん■いる
犬■猫■グッズ
犬■猫■アレルギー(犬アレルギーと猫アレルギー)
犬■猫■入荷■情報
犬■猫■みなしご■救援隊(NPO法人)
犬■猫■太平記
犬■猫■里親
犬■猫■殺処分
鍋■釜を■洗う

2.複合語として新たな意味がある場合は続けて書く
犬猫■病院 (動物病院の意)
鍋釜が■賑わう (生活が豊かだ)

上記1.2.のどちらに該当するかで判断します。
次に、「犬猫」で「本能にまかせて行動するものを軽蔑していうことば」「とるにたりないもののたとえ」という新たな意味があるとして取り上げている辞書がどの程度あるかを見てみると、
取り上げているのは、「三省堂国語辞典」「日本国語大辞典」です。「広辞苑」「大辞林」「岩波国語辞典」「新明解国語辞典」「大辞泉」「新潮国語辞典」などには見出し語として扱われていません。
このことから、「犬猫」だけで新たな意味を生じるとまではいえず、うしろに「のように」「みたいな」などを伴って、「犬、猫」に「とるにたりないもの」を代表させていると考えられます。
そこで、そのような場合は、切れ続きの原則に従い
犬■猫のように
犬■猫みたいに
と区切って書いてよいと思います。

ただし、短いまとまりで区切ると不自然なものは、続けて書きます
秋冬物 犬猫物
犬猫用 鍋釜用

以上のように、1.2の切れ続きの原則を基に判断することとなりますが、判断に迷う語は多く、語によって、判断にある程度の幅やゆれがでてくることも仕方の無いところと思います。

28.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

「ごみ」の切れ続きについて質問します。
あくショリ 灰汁処理 アクショリ
ごみショリ ごみ処理;ゴミ処理 ゴミ■ショリ
この2つの用例の違いは、どのように説明できるのでしょうか。
「意味の理解」を助ける、ということになるでしょうか。
また、「てびき」p69の「相手の拍数が長く」というケースは、混種語でも同じように考えていいでしょうか。
コンクリート壁 コンクリートカベ (「てびき」p73の用例)
プラスチックごみ → プラスチックゴミ(?)
コンクリートもプラスチックも6拍なので、「相手の拍数が長い」ということにも該当するかなと思いました。
プラスチック■ゴミ でいいのではないかとも思ったのですが、「コンリートカベ」が続いているので、ここでうまく説明できませんでした。
コンクリートカベを切ってしまったら、余計理解しにくいだろうとも思います。
拍数だけで判断することではないということは理解していても、きちんと説明するのは難しいです。

【A】

「ごみ」は2拍の和語ですが、普通の和語と少し異なるところがあると思います。
もともとは、小さな塵・あくたや泥などを指す言葉ですが、現代社会ではもっぱら様々な廃棄物を指して使い、「ゴミ」とカタカナで書いたり、「護美箱」などと当て字が用いられたりして、本来の和語の意識が薄れがちなようです。
「種」を逆にした「ネタ」のように特殊な和語とまではいえませんが、どちらかと言えば切り離した方が分かりやすい場合もあると考えています。

「ごみ」のこのような性質を考慮した上で、切れ続きを考える場面では、結びつく相手の語との関係で考えることになります。
「ごみ容器」「ごみ捨て場」「ごみ拾い」「ごみ屋敷」など複合名詞として熟した語は、2拍の和語の原則通り続けて書きます。
「プラスチックごみ」も拍数は長いのですが、ごみ分別の1種別として熟して使われますので、p73 (3)のルールに即して一続きに書きます。
これに対して、「ごみ■問題」「ごみ■処理」の「問題」や「処理」は、様々な語と結びつく言葉で、相手の語を切り離して明確にした方がわかりやすい場合があると考えられます。
これらのことを考慮して、「ごみ■処理」は、区切って書いた方がよいと判断しました。
「灰汁処理」は「あく」を一般的な2拍の和語と捉えて続けて書いてよいと判断しましたが、判断に幅が出てもやむを得ないところだと思います。

29.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

「熱効率」は、広辞苑の見出し語には記載がありましたが、見出し語にあっても「熱■硬化」となっている語句がありますので、見出し語の有無は判断基準にはならないのでしょうか。
「てびき」p69【備考】の「1字漢語や和語が相手の語に対して自立性が強い場合区切る」の解釈に苦慮しています。

【A】

「熱」は1字の漢語ですから、基本的には後ろの語と一続きに書きます。
点訳フォーラムの語例集に収載されている「熱」が語頭にくる語について見てみますと、
熱核反応、熱可塑性、熱硬化性、熱交換器、熱伝導率は、熱の後ろの語の前や後ろに造語要素が付いていますので熱の後ろで区切って書くと判断しています。核+反応、可塑+性、硬化+性、交換+器、伝導+率のようになっています。
そのほかの、熱+2字漢語は、「熱解離・熱機関・熱気球・熱産生・熱処理・熱設計・熱対流」など殆どが原則通り続けて書いていますが、
熱拡散 ネツ■カクサン
熱供給 ネツ■キョーキュー
熱放散 ネツ■ホーサン
は、区切って書くこととしています。
これは、「熱」と1語としての結びつきが弱いだけでなく、例えば「核■拡散」のようにほかの語とも複合語を作りにくい性質を持っているといえます。
「熱効率」は、原則通りに続けて書いてよいと思います。
ただ、「熱効率性」などとなれば「熱■効率性」となります。
国語辞書に1語として掲載されているかどうかは、ある程度の目安にはなりますが、それと、点字の分かち書き・切れ続きの規則とを照らし合わせて判断することになります。

30.p69 2.2拍以下の意味のまとまり【備考】

このページの「3拍以上の意味のまとまり」の回答に「半分、自身、自体、全体、平均などは、相手の語と複合語を作らずに、ほとんどの場合区切って書きます。…」とあります。これについて簡単に説明してください。
例えば「足■全体」では、修飾語が前から修飾せずに、「全体」が後ろから「足」を修飾して制限しているように思えるし、また「足」「全体」ともに自立性が強いようにも思えるのですが。さらに、なぜ複合語を作らないのか解りません。

【A】

「半分、自身、自体、全体、平均」などについては、p69【備考】に当てはまるところです。
複合名詞は、二つ以上の語が合わさって、もともとそれぞれが持つ意味とは異なる新たな一語としての意味を持つようになった語を指します。
「足」と「首」が複合して「足首」になれば、元々の「足」でも「首」でもない別のもの(「足首」)になっています。
ところが「全体、自体・・・」などは、前の語を強調したり、意味を明らかにしたりするだけの語です。「足全体」とあっても、「足」に変わりはない、ただ足を強調して「足全部」ということを言っているので、複合語になっているとは言えないのです。ご質問にある「半分、自身、自体」などは、「全体」と同じ働きをしているので、複合語にはなりません。
「足」は2拍の語で、複合名詞の中で区切って書くことのできる意味のまとまりではありませんが、「足全体」は複合名詞ではありませんので、それぞれ別の語として区切って書くことになります。
ただ、p69の【備考】には、ほかのことも書いてありますのでそれだけではないのですが、ご質問の語についてはこのような考え方になります。

31.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

「牛ハラミ」のマスあけはどうなりますか。「牛タン、牛ヒレ、牛もも」は続いています。「牛すね肉、牛ヒレ肉、牛もも肉」は区切っています。「牛そぼろのせ」は続いています。
「牛ハラミ」の場合、「そぼろ」と同様に続けるのか、「すね肉」などと同様に区切るのか、考え方の基準は何でしょうか。

【A】

「ギュー■ハラミ」と書くのがよいと思います。
「牛(ぎゅう)」「豚」「鶏(とり)」が「すね肉」「もも肉」「バラ肉」のように部位名を含む複合語と結びつく場合は、食材を明確にする意味もあり区切って書きますが、「タン」「ヒレ」「もも」「ロース」など単独の部位名と結びつく場合や、「牛そぼろ」「鶏団子」「鶏つくね」のように結びつきの強い料理名になっている場合は、複合語の切れ続きの原則に従って、続けて書きます。
ただ「タン」「ヒレ」「もも」「ロース」などは部位そのものを指す語であるのに対し、「ハラミ(腹身)」「ささみ(笹身)」などの和語は、「腹側の脂の多い肉」とか「笹の葉の形の上質肉」といったようなイメージを持つ複合語であることから、さらに牛とか鶏とかの語が複合した場合は区切った方が分かりやすいですし、「牛ヒレ」や「豚ロース」は一語的な発音ですが、「鶏ささみ」や「牛ハラミ」は「トリ■ササミ」「ギュー■ハラミ」のように発音の切れ目があるように思います。

32.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

育児鬱と産後鬱のマスあけの違いは何ですか?

【A】

「鬱」は、1字漢語ですが、自立して用いられることの多い語ですので、相手の語によって複合語となる場合もありますが、「てびき」p69【備考】に該当して区切って書く場合も多い語であると考えています。

育児鬱・コロナ鬱・定年鬱などは、育児と鬱、コロナと鬱、定年と鬱のように、二つの言葉が複合して複合名詞を形成しています。育児や定年はそれ自体も複合語ですが結びつきの強い2字漢語(熟語)です。
それに対し、新型鬱・産後鬱・社内鬱の新型・産後・社内は二つの漢語が対等に結びついた熟語とは異なり、語の主要な意味は前の語にあって、後ろはそれに意味を添える造語要素となっています。「新しい鬱」「出産にまつわる鬱」「会社における鬱」が主要な意味で、結果として前の語につく造語要素が3字の漢語の真ん中に来ている形です。これらの造語要素は語の末尾に来る形が多く語の中に入り込む形は安定が悪くなります。
「鬱」は単独でもよく使われる語であることと、上記のような全体の語の成り立ちを考え併せ、新型■鬱、産後■鬱、社内■鬱などは区切って書くのがよいと考えています。

33.p69 2.2拍以下の意味のまとまり 【備考】

奥、横、裏について、点字表記の語例を見てみると
ヤマガタエキ■ヨコ  カウンター■オク  ゴールウラ  ロジウラ
となっています。
奥、横は切り、裏は、続けると考えてよいのでしょうか。

【A】

横、傍、奥など位置を表す2拍の語は、相手との位置関係を明らかにするため、原則として、前を区切って書きます。
裏は位置を表すというより、表に対する「裏」で、「路地裏」「楽屋裏」「天井裏」「ネット裏」「舞台裏」「屋根裏」など、あるイメージを伴って複合語として用いられることも多く、前の語に付けて書くことが多いと思います。
また、「前」も、時間的な「前」と区別するため続けて書く事になっています。
ロジ■オク、ロジ■ヨコ、ロジウラとなります。

34.p69 3.2字以上の漢語

「けち」という言葉が付く複合名詞の場合、分かちはどうなるでしょうか。
「けち人間」「けちばあさん」など調べてみると、「けち」は「吝嗇(りんしょく)」という言葉を当てて書くこともあるようで、この当て字であるということが気にかかって区切って書くのではないかという人もいます。当て字は、本来の字ではありませんので、2拍以下の意味のまとまりとして考えてよいでしょうか。

【A】

「けち」は2拍の和語ですので、複合名詞を作る場合は相手の語について一続きに書くことになります。2字2拍の漢語は、当て字であっても、一拍に漢字1字が対応することになります。「ミソ」は「ミ」に「味」が対応し、「ソ」に「曽」が対応します。「けち」全体を「吝嗇」で当て字にする場合は、1字ずつに対応しているわけではありませんので、元の語は2字2拍の漢語ということにはなりません。

35.p69 3.2字以上の漢語 (1)

「ばかうさぎ」の切れ続きについて、語例には「バカ息子」という語があり、離れていますが、接頭語的働きで続けるという意見もあるのですがどちらでしょうか。

【A】

「馬鹿」は、2字2拍の漢語で、「うさぎ」は和語で3拍ですので、間を区切って「バカ■ウサギ」と書きます。
接頭語的働きの例としては、「馬鹿正直」「馬鹿丁寧」「馬鹿笑い」などがあり、「非常に」「度外れて」と後ろの語を修飾する働きがあります。
「うさぎ」「息子」などの上に付く「馬鹿」は、「馬鹿」の元々の意味で用いていますので、複合名詞の切れ続きの原則に従って書きます。

36.p69 3.2字以上の漢語

「指導者ハンドブック第3章編」p39に掲載されています「物理学的・インド人的」のコラムの内容で、「辞書に出ているから~」とあり形容動詞なので続けるとありました。「表記法 2018年版」では複合名詞の切れ続きに幅があったと考えています。
小型辞書に「学的」が見出しに掲載されていますが「社会学的」はどうなりますか。

【A】

「社会学的」は「シャカイガクテキ」と一続きに書きます。
『日本点字表記法 2018年版』が、『点訳のてびき第4版』より切れ続きに関して幅を認めているのは、「複合名詞」に関してです。
「~学的」は、複合名詞ではなく形容動詞ですので、「表記法」に照らしても、一続きに書くことに変わりはありません。
また、小型の国語辞典に見出しがあることは、「名詞」であることの根拠にはなりません。小型の国語辞典の見出しには、名詞だけでなく、形容詞、動詞、助詞、助動詞、連体詞など、全ての品詞がありますので、国語辞典の見出し=名詞にはなりません。

37.p70 3.2字以上の漢語

点訳ナビゲーターでは、「事務■所内」「格納■庫内」などは切っていますが、「飛行機内」「被災地内」「保健所内」は続いています。違いは何でしょうか。また、「飼育舎内」の場合はどうなりますか。

【A】

点訳ナビゲーターでは、「事務+所+内」の場合、後ろの「所内」という語に自立性があると判断して区切って書くようにしています 。「格納庫内」も同じです。
ですが、後ろの2字が1語として自立しているとは思われない場合や、最初の3文字が「2字+1字」とは分かちがたいような場合は、ひと続きに書いた方がよいという判断をしています。「てびき」p70 3.(2)を参照してください。
「被災地内」は、区切ると後ろが「地内」となります。これは単独では「ジナイ」の読みしかありませんし、別の意味になりますので、続けて書くと判断しました。「保健所内」は「ホケンジョ」と連濁していますので、区切って書くことができないと判断しました。同様に「収容所内」も「シューヨー■ショナイ」ですが、「シューヨージョナイ」と書くこともできます。「舎内」は、「飼育舎内」「寄宿舎内」などと使われて、「2字+1字+1字」の語と考えられますので、「シイク■シャナイ」「キシュク■シャナイ」と書いてよいと思います。
「飛行機」は、「自転車」「自動車」などと同じく分かちがたいと思いますので、「ヒコーキナイ」としました。ただ、「飛行機」については、判断に幅のあるところだと思います。

38.p70 3.2字以上の漢語

表記法(p45)では「幼稚園長」が一続きで記載されていますが、点訳ナビでは「幼稚■園児」と区切られています。この違いは何でしょうか。また、③の用例「自動車内」と点訳ナビの「格納■庫内」などの考え方はどこが違うのでしょうか。

【A】

「表記法2018年版」では、複合名詞の切れ続きに幅があります。また、漢語・和語などの語種についてもある程度言及しています。ですので、「てびき3版」までは、「表記法」の用例にも慎重に対処していましたが、このたびは、「表記法」のルールのうち幅のあるところは、「てびき」の立場で選択しています。
複合名詞の切れ続きの判断の基本(本則)は、「てびき」p67 1.「複合名詞の内部に3拍以上の意味のまとまりが二つ以上あれば、その境目で区切って書く」ことです。ここの「点字用紙、経済学者、会計課長、結婚式場、管弦楽団、同窓会長」が、該当する用例になります。
これらの語は、4字の漢語からなる語で漢字2字の名詞の後ろに1字ずつの語が付いてできていますが、後ろの2字が自立した意味のまとまり(区切る成分)になりますので、区切って書きます。
それに対して、後ろの2字に意味のまとまりがない場合が、p70 3.(2)①になります。
「2+1+1」の漢語からなる複合名詞の場合、以下のように考えます。
1.後ろの「1+1」で、「自立した意味のまとまり(区切る成分)」になる場合
この場合は、「2+(1+1)」→「2+2」となり、区切って書きます。
点字用紙 → 点字+(用+紙) → 点字+用紙 → 点字■用紙
同窓会長 → 同窓+(会+長) → 同窓+会長 → 同窓■会長
2.後ろの「1+1」に意味のまとまりがない場合
「てびき」p70 3.(2)①に当てはまり、この場合は一続きに書きます。
「作曲者名、女子大生、外国人客、消耗品費、自家用車、保護者会」の例になります。「者名、大生、人客、品費、用車、者会」は、「自立した意味のまとまり(区切る成分)」とは言えませんので、すべて一続きに書きます。
幼稚園児は、「幼稚+園+児」で後ろの「園児」に意味のまとまりがありますから、区切って書いてよいと考えます。「保育園児」「動物園長」「植物園長」などと同じ扱いになります。
「格納庫内」も「格納+庫+内」で後ろの「庫内」に意味のまとまりがありますので、区切って書きます。
「てびき」p70 ③にある「自転車道」「自動車内」などは、「自転車」「自動車」が語の成り立ちとして「自転+車」「自動+車」と分けられるかどうかに疑問があります。「自転車」「自動車」としてできた語で、「自転」と「車」、「自動」と「車」を切り離すと不安定な形になりますので、このような場合は、例外として一続きに書くこととしました。このような言葉は少なく、ここを広げて考えることは「てびき」のルールから外れてしまうと考えた方がよいと思います。

39.p70 3.2字以上の漢語

「師会」のつく言葉の切れ続きを教えて下さい。
鍼灸師会、別府師会(別府鍼灸マッサージ師会の略)、県師会、当師会
「師会」が辞書に掲載されていないので、自立性がないと思われるのですが、「師会」がつく言葉が沢山出てくると迷います。

【A】

「師会」は国語辞書には掲載されていませんが、「鍼・灸・按摩・マッサージ・指圧師会」の略称として、三療の業界では、単独でよく用いられています。「師会」だけで自立した3拍の語として扱ってよいと思います。 切れ続きの判断としては、「議会」と同じように考えてよいと思います。
別府■師会、大分県■師会、県師会、当■師会
ただ、鍼灸師会、マッサージ師会などとなった場合は、略称ではありませんので、
鍼灸師会 シンキューシカイ
マッサージ師会 マッサージシカイ
大分県■シンキュー■アンマ■マッサージ■シアツシカイ(ハリ■キュー■アンマ■マッサージ■シアツシカイ)
となります。

40.p70 3.2字以上の漢語

中国の歴史書『資治通鑑』のマスあけについてお尋ねします。辞書では通鑑にも資治通鑑の略称と記載があります。通鑑には他にも、『本朝通鑑』という日本の歴史書もあるようです。

【A】

「資治通鑑」はひと続きに書いてよいと思います。全体として「君主の政治に資する編年体の鑑」という意味です。「資治」と「通鑑」のそれぞれに自立性があれば区切って書く事ができますが、「資治」だけ独立して使われることはないようです。また、「通鑑」だけで「資治通鑑」の略として使われますが、それ以外の用法はないようです。
「本朝通鑑」は「本朝」が「我が国」と言う意味で、「我が国の資治通鑑」と言う意味になりますので、「ホンチョー■ツガン」と区切って書いてよいと思います。

41.p70 3.2字以上の漢語

「てびき」p102に「政・官・財界」の例がありますが、原文に中点がなく続けて書いてあっても、1字ずつマスあけして書きますか。

【A】

「セイ■カン■ザイカイ」と区切って書きます。複合語の中で、漢字1字の略称が二つ並ぶ場合、多くは4拍になるので短い略語として続けて書きますが、三つ並ぶ場合は、区切り目の分かりやすさを考えて、区切って書くのが一般的です。
点訳ナビゲーターでも「政財界」「産学協同」は「セイザイカイ」「サンガク■キョードー」で、「産学官」は「サン■ガク■カン」となっています。国名の場合も、「日米」「日韓」「日露」「日英」などはひと続きで、「日中韓」「日朝韓」などは「ニチ■チュー■カン」「ニチ■チョー■カン」と区切って示してあります。
ただし、「農山漁村」のように一語としての結びつきが強いと考えられる語は、一続きに書かれている場合もあります。

42.p69 3.2字以上の漢語 (1)(2)

語例集では、文学部長・農学部長は一続きになっていますが、「政治部長」「社会部長」も一続きに書いていいのでしょうか。「編集局長」はヘンシュー■キョクチョー、「事務局長」はジム■キョクチョー、この違いがわかりません。

【A】

成り立ちから言いますと、文学部長、農学部長は、「学部」の前に「文」「農」が付いて文学部、農学部となり、後ろに「長」が付いた形ですので、「てびき」p70 (2) ②に当たります。
「心理学部長」は、「学部」の前に「心理」という自立する意味のまとまりが付くので、心理■学部長となります。
「理学部」「医学部」「工学部」などはすべて、リガクブチョー、イガクブチョー、コーガクブチョーとなります。
「政治部長」「社会部長」「編集局長」「事務局長」はすべて、「政治」「社会」のうしろに「部」が、「編集」「事務」のうしろに「局」がつき、そのうしろに「長」が付いた形です。後ろの「部長」「局長」が自立する意味のまとまりですので、区切って書きます。

43.p71 3.2字以上の漢語 (3) [参考]

p71[参考]に取り上げられた、近年できた4字漢語の例「地産■地消」は2字ずつ切り離して使うことがありません。辞書にも2字ずつの形では出ていませんが、区切ってよいのでしょうか?

【A】

「臥薪嘗胆」のような4字漢語も、2字ずつの形で使われることはないのですが、「薪の上で臥し、肝を嘗める」の意味で、漢字2字ずつにまとまった意味を読み取ることができます。意味のまとまりごとに区切ってある方が読み取りやすいこともありますので、近年できた言葉も同じように考えて、まとまりごとに区切って書くこととしました。
これに対して「傍若無人」は、「傍らに人無きが若し」の読み下し文で「傍」と「若」は最初と最後に分かれますので、「傍若」・「無人」と分けることはできません。

44.p70 3.2字以上の漢語 (2) ③

4字、5字程度の漢語からなる複合名詞の分かちについてのお尋ねです。
小中高校 ショー■チュー■コーコー
小中高生 ショーチューコーセイ
と、あります。この考え方を教えてください。
また、「受験を前にした小中高校生」の場合は、「小中高校生」どのように考えたらよいのでしょうか?

【A】

小、中、高校はそれだけで、小学校、中学校、高等学校を表しますので、
「小中高校」の場合、「小学校・中学校・高等学校」の並列と考え、「小■中■高校」と書くことにしています。
「小中高校生」も「小■中■高校生」と書きます。
それに対して、小中高生の場合、「高生」という言葉はありませんので、全体で「小中高」の「生徒」となります。「てびき」p70 (2)③に当てはまるので、一続きに書いています。

45.p71 4.漢字1字ずつが対等な関係で並んでいる語

語例集に「三遠南信」(サン■エン■ナンシン)と「京阪神」(ケイハンシン)がありますが、この違いがわかりません。
たとえば「三遠信」の時は「サンエンシン」でいいのでしょうか。

【A】

「日■独■伊」のように、短い略語が3つ以上並ぶときはそれぞれを明らかにするために区切って書きます。ですから「三■遠■信」(三河、遠州、信州)も区切って書きます。
京阪神も確かに、内容は、京都、大阪、神戸ですが、1語として用いられることが多く、特に「阪神」は分けて書くことが不自然なほど結びつきの強い語ですので、《それぞれを明らかにするために》区切って書くと不自然になります。
ですから
京阪神大都市圏は、ケイハンシン■ダイトシケン
京阪神エリアパスは、京阪神エリアのパスですので、ケイハンシン■エリア■パス
と書いてよいと判断しました。
ケイハンシンが一続きであれば、それのうしろに言葉がついて複合名詞を作っても、ケイハンシンの切れ続きは原則として変わりません。
このように、「京阪神」が関西のエリアを表す場合は一続きで書いてよいと思います。
ほかに、「甲信越」も「甲(甲斐)」「信(信濃)」「越(越後)」を指しますが、1語としての結びつきが強く、その地域全体を指す語として、一般に用いられていますので、一続きに書きます。
「薩長土肥」は対等な4藩ですが、「薩」が促音化してることもあり、よくひとまとまりに称されるものですので、「サッチョードヒ」と一続きに書きます。
「関関同立」は4大学を指すことがわかりやすいように「カン■カン■ドー■リツ」と区切ります。
「早慶上智」の早慶は組み合わせてよく使われますが、上智と合わせて3校を称していることから、「ソー■ケイ■ジョーチ」とそれぞれを対等に扱って区切ります。
このように、漢字1・2字の略称の並列を、一続きにするかそれぞれ区切るかには種々の判断が必要になる場合もあります。

46.p71 4.漢字1字ずつが対等な関係で並んでいる語

「てびき」では生老病死は生■老■病■死と1語ごとに切り、花鳥風月は花鳥■風月で、春夏秋冬は一続きとなっております。語句のまとまりや発音などを考慮するとありますが判断の基準がよく分かりません。
仏画の色彩「紺丹緑紫」の切れ続きはどのようにすればよいのでしょうか?

【A】

「紺丹緑紫」は、仏像彩色の技法で、「青には赤、緑には紫という意味で色の対比を表し、青と赤、緑と紫を美しく対比させる配色方法で、寒色と暖色、光と影、色の対比によって奥行が生まれ、お互いを引き立たせる色使いの方法」とありました。紺丹と緑紫にまとまりがあると思われますので、コンタン■リョクシと書いてよいと思います。
「てびき」p71 4.は判断に迷う語も多くありますが、意味のまとまりと発音などを考慮して決めることになります。
「花鳥風月」は「花鳥」だけ「風月」だけで用いられることも多く、多くの辞書にも2字ずつの形で見出し語になっていますので、意味のまとまりと考えることができます。「春夏秋冬」は2字ずつ用いることは少なく対等な4字と捉えられますが、音読みの場合、漢字1字ずつ切り離すとそれぞれが同音異義語の多い短い漢語となり分かりにくくなります。単独で称する場合はシュンでなくハル、カでなくナツと和語を用いるのが一般的ですので、シュンカシュート―は続けて書きます。
「生老病死」は、「生ある者」「死をみつめる」などと単独の音読みでも用いる言葉で、「老人」「病気」のように音読みで使われる例を類推しやすい語でもあります。
漢字1字ずつに苦しみの概念を代表させた仏教用語でそれぞれのイメージが音読みした単独の語からでも読み取れますので、区切って書くことにしています。

47.p71 5.外来語 (1)

「ダージリンティー」の原本表記が「ダージリンティ」の場合の分かち書きを教えてください。外来語同士の複合語で、6拍ありますが、5拍+1拍です。

【A】

外来語同士の複合語の場合は、2拍+4拍、3拍+3拍以上になれば、間を区切って書くとしていて、1拍は区切る成分に入れていませんので、原則に従えば、「ダージリンティ」と続けて書くことになります。

48.p71 5.外来語 (1)

ステップについて「ツー■ステップ」「フォー■ステップ」「ステップ■5」と切りますが、数字が頭になると「2ステップ」となりますか。
例を見ると「2トップ」「2バウンド」などがあり、区別がわかりません。

【A】

数字が数量や順序を表す場合は、後ろの語と続けて書きますので、「数2トップ」「数2バウンド」は続けて書きます。
しかし、「ワン、ツー、スリー」となると、カタカナで書かれた外来語になりますので、切れ続きは拍数で決まります。
「ツー■ステップ」「フォー■ステップ」は、2拍+4拍になりますので、「てびき」p71 5.(1)に準じて、区切って書きます。
「ツートップ」は2拍+3拍で一続き、「ツー■バウンド」は、2拍+4拍で区切って書きます。

49.p71 5.外来語

原文に「キャンディコートナッツ入りコーヒーフラペチーノ」という表現がありました。この中の「キャンディコートナッツ入り」の部分についてお尋ねします。
英語にcandycoat という単語があるのでそこから来ているとすると「キャンディコート■ナッツイリ」となるのかと思うのですが、それとも「キャンディ■コート■ナッツイリ」なのでしょうか。
candycoat (アメがけするの意)の英単語から由来しているとすると、本来はcandycoatedとなるはずですが、スモークサーモンも正しくはsmoked であるのと同じで、日本語にするとき、よく「ed」が省かれて使われるのと同じ扱いなのかと思ったり、迷っています。

【A】

キャンディ、コート、ナッツ すべて3拍の意味のまとまりですから区切って書きます。キャンディ■コート■ナッツイリ となります。
本来は外国語であっても、日本語化した外来語としてカタカナで書かれている場合は、その中の意味のまとまりを日本語として考え、「てびき」p71 5.に準じて判断します。
「キャンディコートナッツ入り」の場合は、それぞれが日本語としてなじみのある語になっていますので、「キャンディ■コート■ナッツイリ」と書きます。「スモークサーモン」も「スモーク■サーモン」と書きます。
「インターネット」や「スーパーマーケット」も英語と捉えると「インター」や「スーパー」は英語では接辞(接頭語)ですので、区切って書くのはおかしいということになりますが、これらの語は日本語になっているとして、拍数で区切って書くことにしています。「グレープフルーツ」も、ブドウと果物ではないのだから区切って書いてはおかしいという議論も30年ほど前にはありましたが、今では「グレープ■フルーツ」で定着しています。
ただ、「日本語になっている外来語」とは言えない場合もありますので、「てびき」p74「コラム18」などもお読みいただいて判断してください。

50.p71 5.外来語

「オールマイティー」の切れ続きについてお尋ねします。「mighty」が日本語として定着していないこと、語源の「almighty」(全能の)から考えると区切りにくいのではないかと思いますが。

【A】

「almighty」は、英語本来の意味では「全能の神」を表すようですが、日本では、英語本来の意味ではなく、「なんでもできる人」という意味で使われています。和製英語的に、「オール」は「すべて」、「マイティー」は「力がある」のように解釈されて使われているように思います。ですので、片仮名で「オールマイティー」と書かれていれば「オール■マイティー」と区切って書いてよいのではないでしょうか。

51.p71 5.外来語

外来語の5拍は続くというので、「カムバック」は語例にも続くとして載っていますが、英語の台詞としてカタカナ書きしている場合はどうなるのでしょうか。「シェーン、カムバック」や「ユーカムバック」のときです。他にも「ギブアップ」なども同じと思いますが「ネバーギブアップ」が「ネバー■ギブアップ」でなく「ネバー■ギブ■アップ」になるのは、never give up を仮名書きしているからと思っていましたが違うのでしょうか。

【A】

「外来語同士の複合語」の切れ続きのルールは、日本語としてなじみの外来語が複合語として用いられている場合ですので、英語の言い回しをカタカナで示したような場合や複合語ではなく文になっている場合は、単語ごとに区切って書くことになります。
ハウ■マッチ、ネバー■ギブ■アップなどの例があります。
ご質問は英語の台詞がカタカナ書きされている場合ということですので、英語と考えて、基本的に単語ごとに区切って書くことになると思います。
ユー■カム■バック
シェーン、■カム■バック

52.p71 5.外来語

点訳フォーラムの語例に「グッジョブ」「グッド■ジョブ」「グッ■モーニン(グッドモーニング)」があります。
グッド■ジョブ(形容詞+名詞)は、あわせて5拍ですが、複合名詞ではないので区切ると理解しています。同じ意味の「グッジョブ」は、形容詞の「グッド」が「グッ」となり日本語(外来語)として自立しないので一続きということになりますか。
また、「グッ■モーニン」(グッドモーニング)は、「おはよう」というあいさつだから、「グッド■ジョブ」とは語の成り立ちが違うと考えるのでしょうか。「グッドモーニング」の「グッド」も形容詞であるなら「グッ」は「グッジョブ」と同様に自立しないと判断し「グッモーニン」と一続きになるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
また、外国語の挨拶で悩むものがあります。
フランス語ですが、原文で
「Bonne soiree(よい夜を)!」※ Bonneに「ボンヌ」soireeに「ソワレ」とルビ
と出てきました。「ボンヌソワレ」は一続きか、区切るのか悩みます。
「ca va?」※caに「サ」vaに「ヴァ」とルビ
の場合はどうでしょうか。
マスあけも含め、疑問符・感嘆符の位置もどうすればいいのか悩みます。
(フランス語の「ee」の前のeにアクサンテギュ、「ca」のcにはセディーユが付いている)

【A】

外来語は外国の言葉が日本語と同様に使われるようになった語を指しますので、外来語なのか、外国語をカタカナ書きしただけなのかの判断に少し幅が出てきます。
英語の単語や挨拶語などは日本語同様に使われているものが多いので、外来語の切れ続きの規則で判断できますが、英語でも「レッツ■ゴー」や「グッド■ジョブ」などのように明らかに複合名詞といえない場合は短くても区切って書きます。
また、外国語の発音や表記には幅がありますから、「グッド」を「グッ」「モーニング」を「モーニン」などと書いても、切れ続きは変わりません。
ただ、「グッジョブ」は短い語で、このように発音すると、日本語の会話の中でも1語として自然に使われるので、一続きに書くと判断しました。
一方、フランス語やドイツ語などになると、なじみのある外来語は限られてくるので、区切って書くことが多いと思いますが、ドイツ語はスペルが長くても一続きに書きますし、フランス語は、隣の語と連続して発音される場合もあって、なかなか規則的には行かないと思います。
Comment allez-vous?(コマンタレヴ)などは3語ですが、語同士が結びついているので途中で区切ることはできないと思います。
サヴァも2語ですが、「サヴァ」で「元気?」という意味で、「サ」(これ)、「ヴァ」(行く)、それぞれの意味とは全く異なるので、続けて書いた方がよいと思います。
「ボンヌ■ソワレ」はそれぞれ独立した単語として区切って書いてよいと思います。
感嘆符などの句読符は、カッコの後ろになります。

「サヴァ(引大④Ca■va引)?」
「ボンヌ■ソワレ(引大Bonne■soir④ee引)■(良い■夜を)!」
となります。

53.p71 5.外来語

『あなたの記念日ハウマッチ』や、『これいくらですか?ハウマッチ?』の「ハウマッチ」について、「てびき」p71の原則により5拍だから続けるという意見と、「てびき」p74「コラム18」の③により区切るという意見で分かれています。
似たような語で「グッドバイ」はどうでしょうか。「ノーサイド」は語例集で続いており、このように外来語扱いと英語(外国語)扱いの区別について悩みます。

【A】

ハウマッチは英語の表現をカタカナで書いたものですので、外来語のルールではなく、英語の単語ごとに区切って書きます。「ディス■イズ■ア■ペン」などと同様に、「ハウ■マッチ」と書きます。
外国語の片仮名書きか、外来語かの判断は難しいところですが、判断の目安の一つは、複合名詞になっているかということだと思います。「ノーサイド、ノーゲーム、ノウハウ」などは、名詞として一語化しているので、一続きでよいと思います。
一方、「ハウマッチ」は2語で副詞的、「グッドジョブ」は形容詞と名詞で一語とは言えませんので区切って書いた方がよいと思います。「ハウ■マッチ、グッド■ジョブ」となります。
ただ、「グッドバイ」は例外的で、とくに馴染み深く、グッドとバイから成ることを意識せずに1語として使われていますので、続けて書いています。「グッドバイ」となります。
グッジョブやグッバイのように略されていれば一続きに書きます。

54.p71 5.外来語 (1)

翻訳物の点訳に多く出てくる中点を含む語の分かち書きについて伺います。
1.スペシャル・キウイ・パフェ
2.バナナ・キャンディ・バー
3.スーパー・キャリア・レディ
4.ゴールド・ラテ・ショコラ
5.ショコラ・ラテ・キャンディ
上記のような場合、全て中点を外し、「5 外来語」に則って、3拍+2拍の部分は続けて書いてもよいでしょうか。
1.スペシャル■キウイパフェ
2.バナナ■キャンディバー
3.スーパー■キャリアレディ
4.ゴールド■ラテショコラ
5.ショコララテ■キャンディ
この場合、p102 (2)の②の用例にある「メイド■イン■ジャパン」のように区切ってよいのか、p103【備考】「本来一続きに書く語は、中点を省略し、一続きに書く」に則って続けて書けばよいのか迷います。

【A】

外来語の切れ続きの原則は、p71 5.(1)ですが、3個以上の要素がある場合は、どちらの語との結びつきが強いかによってマスあけを判断することになると思います。
1.スペシャル■キウイパフェ  スペシャルなキウイパフェ
2.バナナ■キャンディバー バナナ味のキャンディバー
3.スーパー■キャリア■レディ  スーパーキャリアなレディ
4.ゴールド■ラテ■ショコラ   ゴールドラテのショコラ
5.ショコララテ■キャンディ ショコララテのキャンディ

3.は、スーパーキャリアなレディの意味でよいのか、これだけでは判断できないのですが、そうであればすべて区切ることになると思います。
また、4.は、「ラテ」は、語の後ろに付いているようで、スターバックスに「ゴールドラテ」という商品があると書いてありましたので、それでよければ区切って書くことになります。

55.p71 5.外来語

「mRNA ワクチン」の「mRNA」の上部分に「メッセンジャーアールエヌエー」というルビがついている場合、点字では
メッセンジャー■アール■エヌ■エーという書き方になるのか、メッセンジャー■アールエヌエーとなるのか、どちらでしょうか。

【A】

メッセンジャー■アールエヌエーと書きます。
単にアルファベットが並んでいるのではなく、 アールエヌエーという物質名ですので 、アールエヌエーは一続きに書いて良いと思います。
JRやPTAなども、ジェイアール、ピーティーエーと書きます。しかし、ポルシェRX等の場合は、アールもエックスも3拍以上ですので、アール■エックスになります。

56.p71 5.外来語

「ピアノ■ソロ」、「ソロピアノ」で、なぜマスあけに違いがあるのかが分かりません。音楽雑誌をよく点訳するので、「××ソロ」「ソロ××」という単語はよく出てきますが、理由は分からないけど、とりあえず上記の例を参考にしています。

【A】

ソロが前に来ると「単独の、一人演奏の」のように、後ろの語を修飾して複合語を作る働きをしますので、「ソロピアノ」と続けて書きます。
「ソロ」が後ろに来たときは「ピアノ」と「独奏」という二つの名詞となり、アンサンブルやオーケストラの中での演奏形態を示す語となりますので、それを明確にする意味から、「ピアノ■ソロ」と区切った方が分かりやすいと思います。
「ソロギター」と「ギター■ソロ」なども同様になります。

57.p72 5.外来語 (1) 【備考1】

「フリーランス」free lance ⇒フリー(自由)と lance(槍騎兵)に分けられますが、1語として扱うのはなぜですか。元の意味と現在使われている意味合が違うからですか。
だとすれば、「雇い兵」の意味で使うときは「フリー■ランス」と区切りますか。

【A】

「フリーランス」は、もとをたどれば、「フリー」+「ランス」らしいのですが、そこから、新たな意味を生じた現在の使いかたでは、区切ることができないと判断しました。現代の用例としての自由契約者、自由論客、専属でない記者、俳優などは、「フリーランス」と続けて書きます。
厳密に中世の「雇い兵」を指す場合、「free(フリー) lance(槍騎兵)」と分けて書くという考えもあると思いますが、「ランス」がなじみのない、一般的でない語ですので、これも続けて書いた方がよいと思われます。

58.p72 5.外来語 (1) 【備考2】

例に「オン■ザ■マーク」がありますが、「オンザロック」も同じように区切ってよいですか。

【A】

「オン+ザ+ロック」の成り立ちですが、このような場合は、1拍や2拍の語をいつも区切って書くわけではなく、区切って書くか、一続きに書くかを判断することになります。「オンザマーク」は文字通りの意味ですが、「オンザロック」は熟した複合語として使われ、「オン」「ザ」の英単語としての意味は薄れているようですので、一続きに書きます。

59.p73 5.外来語 (3)

「2拍以下の和語は、外来語が長くても一続きに書く」とありますが、2拍以下の漢語は一続きに書かないのでしょうか。
例.新チャンピオン、猛スピード、昨シーズン、チェーン錠、金メダル、スカウト連、フィジカル面、ラガーマン像

【A】

これらの語はすべて一続きに書きます。2字2拍の漢語は自立した意味のまとまりになりますが、1字の漢語は、p64 2.p68 2.に「続けて書くことが原則」とありますので、ここであらためて取り上げることはしませんでした。
和語の場合は、1字や2字2拍でも、「胸、壁、海老、蕎麦、屋根」など、迷われる場合が多いので、ここに取り上げています。

60.p74 5.外来語 「コラム18」

点訳ナビゲーターに、「ノーヒット■ノーラン」と「ノー■ワーク■ノー■ペイ」があります。この違いをどう考えればよいのか悩んでいます。
例えば「ノーミュージック・ノーライフ」は複合語として拍数で考えれば「ノー■ミュージック・■ノーライフ」となるのかなと思いますが、これはこの切れ続きでよいのでしょうか?
また、点訳している本に「ノー家出・ノーライフ」というのがでてきたのですが、これなどはどう考えれば良いのでしょうか。

【A】

「ノーヒット、ノーラン、ノー残業デー、ノーゲーム」などは、後ろの語の表す状態が「無い」という意味の「no」ですので、複合名詞の切れ続きの原則に従って書きますが、「ノー ワーク ノー ペイ」は英語の表現をそのままカタカナにしたような使用法で、「働かなければ、支払わない」という意味ですので、単に日本語の複合名詞とは捉えにくいと考え、点訳ナビゲーターでは区切って書くことにしました。
「ノー■ミュージック・■ノーライフ」は、「音楽がなければ命を失うようなものだ」「音楽無くして人生無し」という意味でしょうか。そのような意味ならば、中点は使わないで「ノー■ミュージック■ノー■ライフ」となるのではないかと思います。
「ノー家出・ノーライフ」は、寺山修二の『家出のすすめ』という本に対する感想文としてこの表現がネットに出ていました。この作品は、若者は家を出てこそ自分を作り上げることができるという考えで書かれたようですので、「家出なくして人生なし」の意と捉えて「ノー■家出■ノー■ライフ」と書いてよいと思います。

61.p73 5.外来語 (4)

「セミノックダウン」の表記について伺います。
ノックダウンの意味は機械を解体するという意味です。
ノックダウンは「ノック■ダウン」とマスあけすると思いますが、それに自立性の弱い「セミ」が語頭に付いた場合、セミノックダウンと続けてよいでしょうか?
ワンボックスタイプは ワン■ボックス■タイプとマスあけするが、ワンボックスカーは一続きというフォーラムを参考にしました。

【A】

セミ■ノック■ダウン
と書くのがよいと思います。
「てびき」p73 (4)では、「セミ」は、語頭に付く自立性の弱い語に入っています。しかし、「セミ」は接頭語としての性質を持っていますので、後ろに続く語にマスあけがなければ、長くても続けて書きますが、マスあけを含む複合語全体にかかる場合は、p68【備考2】に準じて書くことになります。
「ノックダウン」は区切って書く語ですので、「セミ」が「ノックダウン」全体にかかる場合には区切って書きます。
「カー・マン・デー・ホン」のように語尾に付く語は、前の語の切れ続きにかかわらず続けて書きますが、語頭に来る語の場合は、p68【備考2】のルールも合わせて考えることになります。

62.p74 「コラム18」

最近よく使われている、「アイサポート」という言葉があります。眼科医さんが使われている言葉は、「アイサポート」、自治体等で使われている言葉は、「あいサポート」(愛情・出会い)とあります。意味が変わるとマスあけも異なるのでしょうか?

【A】

「アイ」が「愛」であれば1字漢語、「eye」の「アイ」であれば2拍の外来語になります。ですから「あいサポート(愛)」は「てびき」p68 2.のルール、内部の2拍以下の意味のまとまり(愛)は続けて書くことから、アイサポート、「アイサポート(eye)」はp71 5.(1)のルールから、アイ■サポートとなります。

63.p74 「コラム18」

英語の「This way」や「How much」などの文が、仮名書きで「ディスウェイ」「ハウマッチ」と書かれている場合、日本語の文節と同じように「ディス■ウェイ」「ハウ■マッチ」と区切ると考えてよいでしょうか?

【A】

お考えの通りです。英文が仮名書きされている場合は、元の英語の1単語ずつ区切って書くのが原則になります。ただ、「チェックイン」「インコース」「オンザロック」など、日本語の中で日常使われるようになった語は、外来語の切れ続きで判断しますので、そのどちらに属するかの判断が必要になります。

64.p74 「コラム18」

略された2拍の外来語についてお尋ねします。
プラ(プラスチック)…プラ素材、プラ鍼管、プラユニット、資源プラ、プラゴミ、プラマーク
ナビ(ナビゲーション)…ナビアプリ、ナビシステム、絵本ナビ、データナビ、
デリ(デリカテッセン・デリバリー)…デリ専門店、デリコーナー、こんがりデリ、和デリ、こめデリ
前後の語で切れ続きが変わりますが、上記の3語は自立していると判断してもよいのでしょうか。その基準は「辞書に見出し語として掲載されていること」でしょうか。

【A】

省略された外来語についても、その語が日本語の中で一語として使われているかどうかが判断基準となります。「辞書に見出し語として掲載されているかどうか」で判断するのがあくまでも基本ですが、外来語が省略されるスピードは早く、省略形が相当に広まっても、多くの辞書に載っているとは言えないことがありますので、表記には幅が出てくるのもやむを得ないと思います。「てびき」p73(2)の用例、「パラ■陸上」の「パラ」も、省略形で使われることが多くなった例といえます。
また、省略形の方が一般的な語もあります。「プラ」「ナビ」「デリ」は、省略形がよく用いられる、なじみのある語ですので、自立した成分として扱っていいと思います。
プラ■素材、プラ■鍼管、プラ■ユニット、資源■プラ、プラゴミ、プラマーク
ナビアプリ、ナビ■システム、絵本■ナビ、データナビ
デリ■専門店、デリ■コーナー、こんがり■デリ、和デリ、こめデリ
「てびき」p63 1.用例の「デパ地下」は、「デパ」が一語としてよく使われる語ではありませんので、続けて書いています。
p74 「コラム18」も参照してください。

65.p74 「コラム18」

英語の定冠詞「ザ」は、語例にザ■サンデー、ザ■商社、ザ■選挙と切れていますが、英語以外の言語の定冠詞は切るとわかりにくい場合が多いような気がします。エル・ニーニョ、ラ・ニーニャの様に、女性名詞と男性名詞で定冠詞が変わる言語も多いようです。この2語は日本語として1語に結びついているようなのでたぶん続けると思いますが、全く耳なじみのない言葉についている、フランス語の「ラ・~」「ル・~」「レ・~」スペイン語の「エル・~」「ラ・~」など、定冠詞の扱いにルール的なものはあるのでしょうか?

【A】

定冠詞は、基本的には区切って書きますが、外来語として日本語になっている、一般に馴染みのある短い語の場合は、続けて書きます。
エルニーニョやラニーニャなどは、エルやラが冠詞であるとの意識の方が低いと思います。
アラモードやアラカルト、ラテ、アラクレーム、ラフランス、オーデコロンなども日本語として馴染みがあり、短い語ですので、一続きに書くようになっています。
このような語以外は基本的に区切って書きます。語例集の例でも
ガトー■ア■ラ■ブロッシュ
ル■クルーゼ
シンコ■デ■マーヨ
のように、日本語として馴染みのない語や、全体として長くなる場合は区切って書きます。

66.p74 「コラム18」

フランス語の「ド」の切れ続きは、どう考えればよいでしょうか。
エコール・ド・パリ(パリ派・画家たち)
カレ・ド・ブルターニュ(白カビのチーズ)
ジュ・ド・ポーム印象派美術館(美術館名)
サン=レミ・ド・プロヴァンス(地名)
オーヴェール=シュル=オワーズ (地名)
イル=ド=フランス地域圏 (地名)

【A】

「ド」はフランス語の前置詞で、英語の「of」のような働きをしますので、原則として前後の語と区切って書きます。
ただ、省略されて短縮形になったり、短い語で全体として日本語になっているような場合は「オーデコロン」のように続けて書く場合もあります。
ご質問の語は、
エコール■ド■パリ(パリ派・画家たち)
カレ■ド■ブルターニュ(白カビのチーズ)
ジュ■ド■ポーム■印象派■美術館(美術館名)
のようになります。
以下の地名は、「てびき」p92「コラム21」を参考にして、前置詞のところで区切った方が分かりやすいと思います。
サンレミ■ド■プロヴァンス (「プロヴァンス地方の」の意味)
オーヴェール■シュル■オワーズ(surも前置詞で、「オワーズ川沿いのオーヴェール」の意味のようですので区切ってよいと思います。)
イル■ド■フランス■地域圏 (「フランスの島」という意味)

67.p75 6.アルファベットを含む複合語

NHKBS NHKBS1 NHKBSP NHKFMの書き方はどうなりますか。
NHKのBS放送、NHKのFM放送などのことなので、NHKのあとマスあけするのか、中点もスペースもハイフンもない墨字なのでマスあけする必要はないのかどちらでしょうか。

【A】

これらの語は、外字符を用いて書く日本語ですので、原本でスペースがなくても、語の区切り目でマスあけして書きます。
外大大NHK■外大大BS
のようになります。
語例集に「3DCG」数3外大D■外大大CGの例があります。

68.p76 7.数字を含む複合語 (2)

市の福祉センターの名前は「ぴあ216」と言います。住所が「東町2丁目1-6」からつけられたのだと思います。この時の「216」はどのように書けばよいでしょうか。各々の数字に数符をつけて「七五三」「六三三制」のように点訳しますか。
また、他に施設名で「カデル2・7」は「北2条西7」からついた施設名と思います。このカデルには「中点」がついて名称になっています。これもどのように点訳すればよいでしょうか。
「てびき」に「504会議室」(会議室の名称)とあります。5階にある4号室の意味と思います。これらの違いを教えて下さい。

【A】

「ぴあ216」は、由来にかかわらず、一つの数字で命名されていますので、「ピア■数216」と書いてよいと思います。
「カデル2・7」は、この施設名の場合は二つの数字として命名されていますので、中点を省略して続けて書いてよいと思います。「カデル■数2数7」となります。
504号室の場合は、5階に複数ある部屋の内の4番目の部屋の意味ですが、504という名前を付けています。「ぴあ216」も2丁目1番6号ですが216という名前を付けていますので、書き方は同じになります。

69.p76 7.数字を含む複合語 (2)

用例に「第195■国会」「第1■分科会」がありますが、数量や順序の意味があれば(1)に該当し、国会や分科会の名称であれば(2)に該当するのでしょうか。

【A】

「第195国会」や「第1分科会」は複合語ですので、3拍以上の自立可能な意味の成分が二つ以上あればその境目で区切って書きます。ですから、「ダイ195■コッカイ」「ダイ数1■ブンカカイ」となります。「第1人者」「第一声」などは、「人者」「声」が、自立可能な意味の成分ではないので、一続きになります。

70.p75 7.数字を含む複合語

「140万労働者」という語があります(140万人の労働者という意味です)。
「140万■労働者」か「140万労働者」と続けるかで意見が分かれています。続ける根拠として、「てびき」p75の7(1)、「数字の後ろに語が付いてできた複合語は、数量や順序の意味がある場合は数字で書き、後ろの語と続けて書く」があるのではないかと思います。
一方、点訳フォーラムの点字表記の語例に「一千万都民(1000マン■トミン)」があります。「140万労働者」はこれと同じ構造なので、「140万■労働者」と区切ると結論しましたが、7(1)に該当しながらそれに反して区切る理由が分かりません。
7(2)に従って区切るのは、例にある「504■会議室」のように数字部分に意味がある場合だと思いますが、これには該当しません。
「140万」と「万(マン)」が付くことにより、単なる数字ではなく自立した語と見なせるからということでしょうか。

【A】

数140マン■ロードーシャと区切って書きます。
数量や順序を表し、続けて書く場合は、後ろが助数詞の働きをします。
都民や労働者、国民などは、大きなまとまりの性質を表す言葉で、数字の後ろに付いて数や量を表す助数詞の働きをしません。「5都民が走った」「3労働者が歩いた」のようには用いず、「5人の都民が走った」「3人の労働者は歩いた」のように言います。
「一千万都民」は、「一千万」を象徴的に用いて、「1000万人もの都民」であることを表していますので、「数1000マン■トミン」と区切って書きます。「140万労働者」も同じで、140万人もの労働者という意味ですので「数140マン■ロードーシャ」となります。

なお、「一都民として発言します」「私は、一労働者ですが」のような表現はありますが、この場合の「一」は、単に数量を表すだけでなく、「取るに足らないもの、ある一人の者(無名の)」というような意味になります。この場合は、「数1トミン」「数1=ロードーシャ」となります。

3 複合動詞・複合形容詞など

1.p76 1.複合動詞

複合動詞は、動詞の連用形に動詞が続くと習いましたが、あまり聞きなれない言葉は迷います。
『広辞苑』の「聞く(聴く)」に「物事をためし調べる、かぎ試みる、味わい試みる」と出てくるのですが これらは全て複合動詞として続けて書くことでよろしいでしょうか。

【A】

「タメシシラベル」「カギココロミル」「アジワイココロミル」と複合動詞として、ひと続きに書いてよいと思います。
「てびき第3版指導者ハンドブック第3章編」p41にありますように、
二つの動詞が合わさって一つの動作・状態を表す
二つの動詞の主体が同じである
時間的にかけ離れていない
動作や状態の方向が一致している
二つの動詞が「~て(ながら)・・・する」のような一連の動作になっている
などが複合動詞かどうかの判断の目安になります。
ご質問の三つの言葉は上の条件を満たしていますので複合動詞と判断していいと思います。

2.p76 1.複合動詞

以下の①②③の文中の、「呆れ笑う」「歌い舞い踊る」「歌い踊り伝える」の切れ続きは、どうなるでしょうか。
① 「あ、こら!はしたない!」
ドタドタと階段をおりていく。
千代は呆れ笑う。
② その瞳に舞台上で歌い舞い踊る男女が映り込んでいる。
③ お雪は毎晩、観てきたオペラをみなに語った。
見様見真似で身振り手振り、自分が歌い踊り伝える。

【A】

このQ&Aに複合動詞の判断目安を載せていますが、
二つの動詞が合わさって一つの動作・状態を表す
二つの動詞の主体が同じである
時間的にかけ離れていない
動作や状態の方向が一致している
二つの動詞が「~て(ながら)・・・する」のような一連の動作になっている
などが複合動詞かどうかの判断の目安になります。
これと照らし合わせてみると
① 「呆れ笑う」は、上の条件に合っていますので、複合動詞として続けて書いてよいと思います。
② 「歌い舞い踊る」の場合は、二つの動作ですが、「歌いながら舞い踊る」とも解することができて迷います。どちらとも判断しかねる場合には、あまり長く続くと読みにくくなることも考慮して、ウタイ■マイオドルと書いてよいと思います。
③ 「歌い踊り伝える」は、②との比較で迷いますが、「歌い踊って、伝える」という状況だと思いますので、「ウタイオドリ■ツタエル」がよいと思います。

3.p76 1.複合動詞

点訳フォーラム語例集に「怖い夢見る コワイ■ユメ■ミル」「夢見る乙女 ユメミル■オトメ」「夜には猫も夢見る ヨルニワ■ネコモ■ユメミル」とあるのですが、「夜には猫も夢見る」はなぜ「ユメ■ミル」ではなく、「ユメミル」と続けるのでしょうか。

【A】

複合動詞「夢見る」は、1.夢を見る 2.空想する の二つの意味があります。
「夢見る乙女 ユメミル■オトメ」の例だけにすると、2.の意味の時だけ一続きと誤解される恐れがありますので、1.の時も続けますという意図で「夜には猫も夢見る ヨルニワ■ネコモ■ユメミル」の例を収載しました。
「夢見る」は、1.2.どちらの場合も続けます。
「怖い夢見る コワイ■ユメ■ミル」は複合動詞ではなく、「夢」に「怖い」という連体修飾語がついていますので、「コワイ■ユメ■ミル」となります。

4.p76 1.複合動詞

複合動詞について質問します。このQ&Aに、複合動詞かどうかの判断の目安が書いてあります。
忠実に「守り従って」きた。
夫を「支えはげまして」いるようだ。
上記の例は、「守りながら従ってきた」「支えながら励ましているようだ」のように理解できるのですが、「急ぎ」が前に付く時に複合動詞になるのかどうかが、わかりません。
「~が、急ぎ来た」「~は、急ぎ駆けつけた」「こちらも、急ぎやって来た」「~も、急ぎ戻ってきた」「時刻表を、急ぎ調べ出す」
上記の動作や時間・距離・方向の一致は複合動詞のように思えますが、「急ぎながら」とはなりません。これらは複合動詞でしょうか。

【A】

「守り従う、支えはげます」は複合動詞として続けて書いてよいと思います。
「急ぎ」は「急ぐ」の連用形でもありますが、副詞の用法もありますので、ご質問に挙げられた例の「急ぎ」は、動詞の連用形接続ではなく、副詞と判断して、区切って書いてよいと思います。
国語辞典で調べてみると、「急ぎ」の項に名詞ほか、「副詞」「副詞的に用いて」などの説明があります。「急ぎ引き返す」の例もあります。
イソギ■キタ イソギ■カケツケタ イソギ■ヤッテ■キタ イソギ■モドッテ■キタ

5.p76 1.複合動詞

原本に以下の語句があります。マスあけはどのように考えるとよいでしょうか。
①死に耐える
②死に絶える
③死に消える
①は、《精神の生とは、死を厭い世の汚濁から身を守る生ではなく、死に耐え死の真っ只中に自らをよく保つ生である。》
③は、《〈死に消えてひろごる君や夏の空〉、これは 三橋敏雄の高柳重信への追悼句であった。そうなのだ。三橋先生も死に消えて広がった。》
と書かれています。

【A】

②「死に絶える」は、一般的な複合動詞ですので、続けて書いてよいと思います。
①「死に耐える」は、示していただいた文から、「死に■耐え■死の■真っ只中に■~」となると思います。「死」が名詞で、「に」は助詞だと思います。
③「死に消える」は、
〈死に消えてひろごる君や夏の空〉の俳句は、「死んで煙となって消えて広がっていく君の姿よ、夏の青い空に広がっていく」という内容だそうですので、「シニキエテ」と続けて書いてよいと思います。

6.p77 2.「する」

江戸川乱歩全集に「印した」という言葉が出てきます。「印をする」と言わないので一続きでよいと思ったのですが、当時は「印をする」と言っていたのではないか、そうすると「イン■シタ」とマスあけをするのではないかとも思われ、迷っています。
また、点訳ナビゲーターで「倍する」が一続きになっています。この言葉も迷うことが多いので、説明してください。

【A】

「印する」も「倍する」も共に1字漢語に「する」が付いたものですから、一続きに書いてよいと思います。「てびき」では、1字漢語と「する」の間に、「を」をはさむことができれば区切って書くとしています。「倍をする」とは言いませんので、その点からも「倍する」はひと続きとなります。「印する」は、現在では「跡を残す」「印(しるし)を残す」「印刷する」「印(しるし)が付く」などの意味で用いられていて、「印をする」とは言いませんので、ひと続きでいいと思います。
ただ、「印する」も「倍する」も、連体修飾語が付く場合は区切って書きます。
この本は、彼が買った本の■倍■する。
ここに代表者の■印■してください。
なお、「てびきQ&A」Q55も参照してください。

7.p77 2.「する」

時代小説の表現で質問です。
語例集に「アリャ■セン」がありますが、「死んでやせんぜ」「死んでられやせんや」はどうでしょうか。
語例の場合は「ありはしない」という意味ですが、「死んでやせんぜ」「死んでられやせんや」は「死んでいません」「死んでられません」という意味なので「い」の省略となり一続きではないでしょうか。
「あっしにも何も語りやせん」「拐かしに関わっているとは思えやせん」なども「語りません」「思えません」の変化したもので「アッシニモ■ナニモ■カタリヤセン」「カドワカシニ■カカワッテ■イルトワ■オモエヤセン」となるように思えるのですが、これもやはり「カタリヤ■セン」「オモエヤ■セン」となるのでしょうか。

【A】

ご質問の場合の「せん」は「しない」の変化した形ですので
死んでや■せんぜ
死んでられや■せんや
となります。
「あっしにも■何も■語りや■せん」
「拐かしに■関わって■いるとは■思えや■せん」
となります。
「語りはしない」「思えはしない」という意味ですので、「せん」の前で区切って書きます。
「死んでやせんぜ」「死んでられやせんや」「語りやせん」「思えやせん」の「や」は、助詞「は」がなまったもので、助詞ですから、前の語に付き、後ろの「せん」(しない)の前で区切ります。
ただし、時代物などで、その人物が「語りやした」「分かりやした」という口調で話しており、その否定形として「語りやせん」と言っていることが明らかな場合は、「カタリヤシタ」「ワカリヤシタ」に揃えて「カタリヤセン」と続けて書く事もできると思います。このような例をお考えなのだと思いますが、これは限定的な用法になります。そのタイトルの中でこのような言い方が続いていて、明白に判断できる事例を除いては、前述のように「語りはしない」「思えはしない」と考えるのがよいと思います。いろいろな例に当たってみましたが、続けて書く場合の根拠が難しく、どの場合も区切って書いても差し支えないように思われました。

8.p77 2.「する」

「される」は続く語と離す場合と連続する婆と二通りありますが、その条件は何によるものでしょうかお教え下さい

【A】

「される」は、①サ変動詞「する」の未然形「さ」に助動詞「れる」が付いたものと、②全体で助動詞(助動詞「す」の未然形+助動詞「れる」)の場合があります。
①動詞「する」を含む「させる」は前を区切って書きます。
期待■される(期待する)、退職■される(退職する)、プレゼント■される(プレゼントする)、無視■される(無視する)のように、「される」の部分を「する」に置き換えても文が成立します。
ですからカッコ内の語を「する」の前で切るのと同様に、マスあけします。
②「させる」全体が助動詞の場合は、付属語ですので前に続けます。「働かされる、せかされる、見透かされる、味わわされる」など、「させる」を「する」に置き換えることができません。
「てびき」p79下の〔参考〕で説明している「させる」についても同様に考えることができますのでご参照ください。

9.p78 2.「する」【備考2】

「悱す」「斬す」「憤す」「啓す」「発す」の切れ続きについて質問します。
漢和辞典で調べてみると、以下のようにありました。
憤:フンス、啓:ケイス、発:ハッス
「悱す」「斬す」には上記のような記載を見つけることはできず、共に「を」はさむ事ができるような感覚があり、区切って書くのではないかと迷っています。

【A】

「悱す」も「斬す」も「憤す」「啓す」「発す」と同じ活用の語だと思います。
「楽をする」「得をする」のように「を」をはさんで「悱をする」「斬をする」とすることはできませんので一続きになります。
「憤」「啓」「発」「斬」「悱」などは、自立性の弱い1字漢語で、これに接尾語的な働きの「す(する)」を付けて、動詞として扱っていますので、続けて書く事になります。「楽(らく)」「得(とく)」「損(そん)」「番(ばん)」などは自立しますので「を」を付けて「する」と区切って書く事ができます。

【新規】p78 2.「する」【備考2】

語例集の「親に敵する」は、なぜ「テキ■スル」と切るのですか。

【A】

「敵する」は、「敵として抵抗する、敵対する」意味で、「敵」に広い意味を持たせた表現になります。「親に敵(敵対・抵抗)をする」という意味ですので、区切って書きます。
また、【備考2】には書いてありませんが、「~しない・~さない」の両方が可能な場合に続けて書きます。
愛する、愛さない、愛しない
反する、反さない、反しない
「得する、楽する」などは、「得しない、楽しない」とは言いますが、「得さない・楽さない」とは言いません。「敵する」も「敵さない」とはいいません。
「適さない」は言いますが。
ですから、
親に敵する  オヤニ■テキ■スル
年齢に適する服装  ネンレイニ■テキスル■フクソー
となります。

10.p78 2.「する」【備考3】

和語の自立性が弱い「与する・閲する・嘉する」などは続けて書くとありますが、和語の自立性が弱いかどうかはどう判断するのでしょうか?

【A】

訓読みの漢字1字(和語)+「する」の形をとる場合の多くは、「恋」「噂」「心」などの名詞に「する」が付いたものとして、「する」の前を切り離すことができます。例外はほぼ「与する・閲する・嘉する」の3語と考えてよいようで、これらはもっぱら「する」を付けた形で使われ、「与・閲・嘉」だけを単独で使うことはほとんどありません。切り離して単独で使うことがないことを、「自立性が弱い」と表現しています。

11.p78 2.「する」 【備考4】

「てびき」p78で「~にして」について説明されています。そして【処理1】では「して」が助詞かどうかの判断が難しい場合には前を区切って書くと書かれています。点訳フォーラムで語の検索をするとたくさんの「~にして」の「して」を助詞と考え、続けて点訳ができるように書かれています。
「して」が助詞かどうかの判断の方法がありましたら教えて下さい。また、次の文のような場合はどう考えればよいですか。
・プロティノスのいう無限にして永遠なる「一者」が顕現してくるのである。
・唯一にして志向なる神の謂いである。

【A】

「てびき」p79の上の[参考]にありますように、助詞の場合は、この部分を省略したり、「て」「で」に置き換えても意味が通じます。
また、動詞の場合は、「して」が「する」に変化しますので、「する」「すれば」などに置き換えることができます。
「今にして思えば」の場合は、「今思えば」でも意味が通じますし、「妹にしてライバル」であれば、「妹で、ライバル」と置き換えて意味が通じますので、続けて書きます。「妹にしてみれば、兄はライバルだ」の場合は、「妹にすれば、兄はライバルだ」と言い換えられますので、動詞として区切って書きます。
ご質問の文は
・プロティノスのいう無限にして永遠なる「一者」が顕現してくるのである。
⇒ 「無限で、永遠なる」と置き換えられますので、「ムゲンニシテ」となります。
・唯一にして志向なる神の謂いである。
⇒ 「唯一で、志向なる神~」と置き換えられますので、「ユイイツニシテ」となります。

12.p78 2.「する」 【備考4】

以下の2つの文章の「からして」の切れ続きですが、明らかに「する」という意味を持つもの以外は続くという意見と、これらの文では単なる強調の助詞「して」でなく、「推測すると」という意味を持つので切るべきという意見があり迷っています。
「近年、ベランダの手すりに、なにものかが毎朝のようにウン○をしていく。サイズからして下手人は鳥だと思われるが、蚊取り線香みたいな平べったい巻きウンなのだ。本当に鳥なのか?」
「どの本屋さんに、どんな新刊を何冊卸すかは、過去のデータに基づき、問屋さんが決める場合が多い。近所の本屋さんの規模からして、問屋さんが小説やノンフィクションの新刊をどんどん卸すとは考えにくい。」
これらの文では、どうすべきでしょうか?

【A】

ともに助詞の働きをしていますので「カラシテ」と続けて書きます。
「からして」は「から」を強調した意味合いで、「から」だけでも意味が通じます。
「サイズから下手人は鳥だと思われる」
「規模から~考えにくい」

「大掃除はまず窓拭きからして、次に浴室にかかる」のような場合は、「して」がないと文が成り立ちませんので、この場合は、動詞の「する」になります。

13.p78 2.「する」 【備考4】

語例集では「からして」は「する」という意味を持つ一例以外はすべて続いています。「彼の性格からしても」という文例は「から■しても」とマスあけされていますが、ここは「して」を除いて「彼の性格からも」と考えることはしないのでしょうか。
「Aの鬱陶しいばかりの忠誠ぶりからしても、そうした疑惑はいかにも生じにくそうだ。」という文章がありますが、「から」でマスあけしていいのかどうか迷っています。

【A】

「てびき」p78【備考4】に該当するのは、「にして」「ずして」「をして」「からして」など、「して」で終わる語で、「にしても」などは該当しません。
「からして」も「からして」だけで、「からしても」となると「して」は助詞の働きとは言えないので、区切って書きます。ここは、例外的な扱いで、文語的な表現で限られた語だけを取り上げていますので、ここから考えを広げないようにします。
ご質問の場合も
チューセイブリカラ■シテモ
となります。

14.p79 2.「する」 【処理2】

「主として」という言葉についです。辞書では、品詞は副詞となっており、「もっぱら」や「おもに」といった意味が書かれています。
フォーラムでは「シュト■シテ」と「シュトシテ」の両方の例が載っています。
この区別の仕方についてです。
副詞を辞書で引いてみると「用言を修飾する。また、程度副詞は他の体言や副詞を修飾することもある。」といった説明があります。
「エホバヲ■シュト■シテ■アガメル」の場合、「主として」が「崇める」という用言を修飾しているので、副詞の「シュトシテ」と考えられ、ひと続きになるのではないでしょうか。

【A】

「主として」は、「主として」を「おもに」という副詞に言い換えられるときに続けて書きます。
「客層は主として学生である」⇒ 「客層はおもに学生である」と言い換えられますので、「キャクソーワ■シュトシテ■ガクセイデ■アル」と続けて書きます。
点訳フォーラムの語例に、「客層は学生を主としている」の例がありますが、これは「主として」を「おもに」に言い換えると「客層は学生をおもにいる」となり、不自然になりますので、この場合は「キャクソーワ■ガクセイヲ■シュト■シテ■イル」と区切って書きます。
「エホバを主として崇める」は、「エホバを主(神、イエス・キリスト)として崇める」という意味です。上の方法で考えると、「エホバをおもに崇める」となり、元の文章の意味とは異なってしまいます。ですから、「主」が、キリスト教の「神、イエス・キリスト」を指す場合も区切って書くことになります。

15.p80 3.複合形容詞

「小気味よい」は辞書に形容詞として見出し語になっています。なのに「小気味■よい」と分けるのはなぜですか。

【A】

複合形容詞の場合は、小型の基本的な国語辞典でも形容詞として掲載されているかどうかで判断することが多いのですが、「小気味よい」は、掲載されている辞典もありますが掲載されていない辞典もあります。
また、「よい」は1語としての自立性も強く、前が名詞の場合、「~が■よい」と「が」をはさんでも同じ意味になります。「コキミ(ガ)■ヨイ」と言えるので、区切って書くと判断しています。「あきらめ(が)■よい」「いごこち(が)■よい」「形(が)■よい」「気持ち(が)■よい」となります。
「いさぎよい」「くらしよい」「ここちよい」「つかいよい」「みめよい」などは「が」をはさむと不自然になりますので、続けて書くようになります。

4 その他の注意すべき切れ続き

1.p81 1.接続詞句・副詞句

時代小説の会話の応酬の場面です。
「てことは、何だ、…」という会話文のはじまりの「てことは」の切れ続きを教えてください。
併せて、「ってことは」、「てこたあ」などなら、どのようになるでしょうか。

【A】

「テ■コトワ~」「ッテ■コトワ」「テ■コタア」となります。
話し言葉調で、「それってことは」の「それ」の部分が省略された形ですので、「てびき」p81 接続詞句の「というのは」「とはいえ」などと同じように考えます。

2.p81 2.連濁

「我が子」の場合、「ワガ■コ」となりますが、その後ろに連濁の「びいき」がつく場合も、「ワガ■コビイキ」となるのでしょうか。意味のまとまりを考えると、「ワガコビイキ」とすべて続けたくなるのですが。

【A】

「ワガ■コビイキ」となります。 後ろに連濁の語が続く場合もそうですが、接尾語や造語要素、2拍以下の自立性の弱い語が付く場合なども、そこだけを取り出すとなじまない言葉になる場合がありますが、多くは分かち書きの原則に従います。
ただ、短い語からなる慣用句や意味のまとまりが強い場合などは、すべて続けて書く場合もあります。「てびき」p82 3.の「ある時払い」「いいことずくめ」「その日ぐらし」などは、よく使われていて意味のまとまりが強い語と言えます。
「わが子びいき」「我が師頼り」「悪い子ぶる」などは、慣用的に使われている言葉ではないので、原則に従って区切って書くことになります。「ワガ■コビイキ」「ワガ■シダヨリ」「ワルイ■コブル」となります。

3.p81 2.連濁

「読本」をドクホンと読む場合は、連濁と考えるのでしょうか。小学館の『日本国語大辞典』第二版には、「とく」は漢音、「どく」は呉音という説明があります。「ジンセイ■トクホン」「ジンセイ■ドクホン」どちらでもいいと思いますが、いかがでしょうか。

【A】

「てびき」並びに点訳ナビゲーターでは、「読本」は「トクホン」が本来の読みであり、「ドクホン」の読みは、連濁という立場を取っています。『日本国語大辞典』には確かに、「とく」は漢音、「どく」は呉音と書かれていて、「補注」として語義説明の最後に、《「読書」「読者」など呉音読みの「どく」が一般的になったため、「読本」も近年、「どくほん」とも読まれる》とあります。ここから、『日本国語大辞典』も本来の読みは「とくほん」であることを認めていることが分かります。現在、殆どの辞書が、「とくほん」の読みに語義を載せていますので、「ジンセイドクホン」は一続きに書くことをお勧めします。

4.p81 2.連濁

「飼い殺される」は、連濁するのでしょうか。
「飼い殺し」は辞典で「かいごろし」と、書かれています。動詞と名詞の違いや和語、漢語の違いで変わるのでしょうか。

【A】

「飼い殺し」は名詞として連濁していると思いますが、「飼い殺される」は複合動詞で、あまりなじみのない表現です。
一般に、「動詞+動詞」の複合動詞は原則として連濁しないと言われています。
「切る」+「放す」=キリハナス
「着る」+「替える」=キカエル
「積む」+「重ねる」=ツミカサネル
「飼う」+「殺される」=カイコロサレル
と、連濁しない方がよいと思います。

5.p81 2.連濁

仙骨座りの読み方は、センコツ スワリ・ズワリと両方あります。
フォーラムにはオバアサン■スワリとありますが、ズワリとならないのは、なぜでしょうか。辞書に載っていない時の連濁にするかどうかの判断基準はありますか。

【A】

連濁するかどうかは、ハッキリした規則はなく、一般に「普通は連濁しない場合」について、以下のように言われています。
① 後ろの部分がすでに濁音を含んでいる場合
例  焼きさば、焼きそば、紙くず
② 後ろの部分がすでに複合語である場合
例  焼きしらこ、焼きたらこ
③ 後ろの部分が外来語である場合
例  焼きトマト、ガラスケース、
④ 後ろの部分が漢語の場合
例  証明写真、入学試験
⑤ 意味的に、後ろの部分にとって、前の部分が『目的格』に相当する場合
例  明かり取り、音頭取り、すもう取り、ちり取り、手取り足取り
⑥ 前後の言葉が意味的に並列の場合
例  すききらい、山川(山と川の場合)、田畑
⑦ 動詞と動詞の複合動詞の場合
例  着替える、凍え死ぬ、

しかし、これらには例外が多いのが実情です。
たとえば、①の「縄ばしご」など、③には「雨合羽、いろは歌留多」など、④には、「株式会社、わさび醤油」など。
このように連濁についての、上記①~⑦は一応の目安とはなるものの、時代によって、地方によって、年代によって、混在し、混乱しています。NHKの読み方も、清音だった語が、連濁に変わったり、どちらでもよくなったりしています(ゼイヒキ → ゼイビキ、コーリカシ→コーリガシなど)。
「座り」は、連濁してもしなくてもよい語に分類されますから、「仙骨座り」も「センコツ■スワリ」「センコツズワリ」どちらもあると思います。
点訳フォーラムの語例集の「オバアサン■スワリ」は、点字では、連濁は全て続けるのでマスあけに迷うことはありませんから、連濁しない方の書き方を示しています。
ただ、点字では、連濁すると非常にマス数が多くなる場合もあり、また元の語を明らかにしたり、語と語の結びつきを明らかにする意味からも、どちらでもよい場合は、連濁しない方を選ぶことが多いのではないかと思います。

6.p82 3.慣用句

百人一首の一字札を表す「むすめふさほせ」の分かち書きを教えて下さい。
1.覚え方の俗な意味「娘 房 干せ」とマスあけ
2.一文字ずつ切る
3.一続き
で迷っています。どのように書くのがよいでしょうか。

【A】

文脈によって書き方に配慮が必要かと思いますが、基本的には、2.の「一文字ずつ区切る」ことになると思います。百人一首の札の最初の文字を並べただけですので、意味のある名詞や複合語にはなっていません。
「ム■ス■メ■フ■サ■ホ■セ」となります。
しかし、1度この7文字が紹介された後、「この7枚には覚えるコツがある」のように説明してあって、「娘 房 干せ」と書いてあったら
「ムスメ■フサ■ホセ」になります。
また、「この7文字を暗記するために〈むすめふさほせ、むすめふさほせ〉と呪文のように繰り返した」のような文であれば、
「ムスメフサホセ■ムスメフサホセ」となると思います。お経を唱える場合の点訳と同じような処理になります。

7.p82 3.慣用句

健康食の合い言葉「まごわやさしい」はひと続きに書いてよいのでしょうか。防犯の合言葉「いかのおすし」「はちみつじまん」「はさみとかみはおともだち」なども区切る所がわからないので全部続けていいでしょうか。

【A】

標語などを覚えやすいように短い文にしてありますので、切れ目のところで区切って書いた方が読みやすいと思います。
マゴワ■ヤサシイ イカノ■オスシ ハチミツ■ジマン
ただ、「ハサミト■カミハ■オトモダチ」のように、点字の表記と異なる場合は、点訳挿入符で説明が必要になってくる場合もあると思います。

8.p82 4.年月日や名数 【備考】

「下」の切れ続きについて、「階段下」「左下」「右下」「高架線下」のように前の語に続ける場合と「5m■下」「斜め■下」のようにマスあけをする場合の違いは何でしょうか。

【A】

「下」は2拍の和語ですので、基本的に前の語に続けて書きます。
「5m■下」は、「てびき」p82 【備考】の規則に従い、名数の後ろに2拍の語が続いているので区切って書きます。3階■下、6歳■下などとなります。
「斜め下」は、「斜め」という言葉の性質上、発音上の切れ目があるので、斜め■上、斜め■右、斜め■前、斜め■横などすべて区切って書く事にしています。

9.p83 5.繰り返し言葉

そうそうの切れ続きについての質問です。
・もちろんやりますとも。こんな経験そうそうできるものでない。
・一晩中、部屋中のバスタオルで床に染み込んだ水を吸い取り、ドライヤーで乾かした経験もある。あんなに焦ったことはそうそうない。
2文とも「そう」が一つでも読んでおかしくないと思いますが、続けて書くという意見もあり、説明に迷っています。このような場合の切れ続きの判断はどう考えればよいですか。

【A】

お考えの通りで、ソー■ソー と区切って書きます。
1.二つの意味のまとまりからなる繰り返し言葉は区切って書く事が原則である
2.2拍以下の繰り返しで区切ると意味の理解を妨げる場合は続けて書く
以上、2点がルールになります。
この場合の「そうそう」は、見出し語として収載されていない国語辞典が多く、「そう(然う)」だけが載っています。見出し語として載っている辞典のなかには《「そう」を重ねた言葉》と説明されているものもあります。後ろに否定を伴う「そう(然う)~ない」を繰り返して強調しただけですので区切って書きます。
語例集には
そうそう上手くはいかない ソー■ソー■ウマクワ■イカナイ
の例があります。

10.p83 5.繰り返し言葉

繰り返し言葉の「泣き泣き」ですが「泣く泣く」の意味で使われている時(例「泣き泣きあきらめる」)、続けてもいいのでしょうか。

【A】

「泣く泣く」と「泣き泣き」の用法を厳密に分けることはできないと思います。「泣き泣き」は、「手を■振り■振り」「汗を■かき■かき」「春よ■来い■来い」などと同様、動詞の連用形や命令形などの単純な繰り返し言葉として、本則にしたがって区切って書いていますが、「泣く泣く」「見え見え」などは、一語として区切ると意味の理解を妨げると判断しています。
「繰り返し言葉」という分類は、品詞や意味・用法の分類ではなく、形の上での区別ですので、「泣き■泣き■諦める」「泣く泣く■諦める」となります。

11.p83 5.繰り返し言葉

繰り返し言葉について、「Q&A」Q61に「『そも・もし・ゆめ』のように、現在は単独では用いないような語も続けて書いてよいでしょう」とありますが、単独で用いるか用いないかの判断が難しいです。「どれどれ」「やれやれ」は該当しますか。

【A】

「そも」「もし」「ゆめ」は文語的表現で、小型の国語辞典には掲載されていなかったり、または「文語表現」と断りがついていますので、現在では単独ではまず用いないと考え、「そもそも」「もしもし」「ゆめゆめ」は続けて書いてよいとしました。
「どれ」は、ほとんどの国語辞典に単独で感動詞として掲載されていますので、「どれ」の強調表現として「ドレ■ドレ」と区切って書いてよいでしょう。「やれ」も、ほとんどの国語辞典に掲載されていますが、幅広い意味に使われていて、単なる強調表現ではないので、「ヤレヤレ■ホット■シタ」と「モット■ヤレ■ヤレ」のように使い分けています。

12.p83 5.繰り返し言葉

繰り返し言葉「まだまだ」に、ついてです。
語例では、ますあけと一続きがありますが、その違いは何でしょうか?
「まだ■まだ■半人前だ」「この■調子では■まだまだだ」と、なっていますが、この違いを教えてください。

【A】

「まだまだ」「そうそう」「まあまあ」など繰り返される部分だけで成り立っている場合は、区切って書くことが原則で、「てびき4版」p83【備考2】に該当する場合にだけ続けて書きますが、
「まだまだだ」「そうそうに」「まあまあの」などのように後ろに自立しない付属語が付いて意味が異なってきたり、区切ると不自然な形になったりする場合は一続きに書きます。
「まだまだ」だけの場合は、「まだ■まだ■半人前だ」と区切って書き、後ろに付属語が付くと、「この■調子では■まだまだだ。」と続けて書きます。

13.p83 5.繰り返し言葉

「違和感ありありの仕上げだったら,無理だな」
この「ありあり」ですが,「ありありと目に浮かぶ」というのとは違った意味ですが,「あり■あり」と切るのとは意味が違うような気がします。どう考えればよいでしょうか。

【A】

イワカン■アリアリノ■シアゲと、アリアリを続けてよいと思います。
「違和感ありありの仕上げ」「まずまずの暮らし」「彼はまだまだだ」などと繰り返し言葉を助詞・助動詞で受ける言い方は、繰り返しの部分を区切って書くと後ろだけに「の」や「だ」がかかるように感じられてしまいますので、区切ると意味の理解を妨げる場合に該当すると思います。また区切って書くと語のリズムが損なわれる感じもします。
構文的にも繰り返してセットになった全体を助詞等で受けていることから、上記のような表記が自然だと考えられます。

14.p83 5.繰り返し言葉

「え? ええっ!? そそそれって!?」の分かち書きを教えてください。
「え?■■ええっ!?■■そそそれって!?」
「え?■■ええっ!?■■そそ■それって!?」
「え?■■ええっ!?■■そ■そ■それって!?」
同様に
「そそそんなことはありませんですよ!」
「それとも、すすすす好きですなんていってしまったりするのか。」
などのような文もあります。

【A】

1音が重なる場合は、「ええっ」「おおっ」のように1語になる場合を除き、マスあけして書きます。
「え?■■ええっ!?■■そ■そ■それって!?」
「そ■そ■そんな■ことは■ありませんですよ!」
「それとも、す■す■す■す■好きですなんて■いって■しまったり■するのか。」
となります。

15.p83 5.繰り返し言葉

会社員の場合、上司が酌をするのが接待だという気持ちでいるなら、それに合わせて、「まま、どうぞ」と酌をしないとならない。つらいことだろう。
左党の上司を持った下戸の部下は、酒でごきげんになった上司に肩に抱きつかれ、「ままま」と酒を強要されて本当に辛かったことだろう。
これらの「まま」、「ままま」はどう考えたらよいでしょうか。

【A】

「まま」は、「相手や自分の気持ちをなだめる」「相手にある行動をうながす気持ちを表す」副詞「まあ」の繰り返しを省略した形になります。
「ま」でも、「ま、一杯どうぞ」のように用いるので、「マ■マ」「マ■マ■マ」と書いてよいと思います。

16.p83 5.繰り返し言葉

繰り返し言葉の切り方について質問します。
点訳ナビゲーターや点訳フォーラムの語例で「ゴクゴクゴクト■ノム」があります。
「てびき」p84に「ズルズルズル」と「ズルズル■ズルズル■スベル」があります。
ゴクゴクゴクッ
ズルズルズルッ
のように、最後に促音がついた場合はどうなるか教えてください。
ゴクゴク■ゴクッ ズルズル■ズルッ
2拍が2回 +3拍 のように考えて切りますか?
ゴクゴクゴクッ ズルズルズルッ 2拍が3回 と考えて続けますか?

【A】

「ゴクゴクゴクッ」「ズルズルズルッ」という場合は、2拍の繰り返し+3拍と
考え、「ゴクゴク■ゴクッ」「ズルズル■ズルッ」とするのが自然な書き方と
思います。

17.p83 5.繰り返し言葉

老婆の祈りの言葉で次のような場合は、どこで区切るのでしょうか。
「んーんーんーんーんーんー・・・んんー・・・んーんーんーんー」
擬声語のように2拍の繰り返しと考えて区切るか、「んー」毎に区切るのがよいのか、歌のようなものだから一続きにするのがよいのか、意見が分かれています。

【A】

繰り返し言葉ではありませんので「んーんー」で機械的に区切ることは避けた方がよいと思います。この祈りの言葉が具体的に分かる場合は、マスあけもそれにあわせますが、この場合は文言が分からないので、原本の通りに続けるのがよいと思います。
「ンーンーンーンーンーンー■・・・■ンンー■・・・■ンーンーンーンー」

18.p84 5.繰り返し言葉 【備考3】

おもちゃの銃で「たったったったっなんて」撃ってくる。
この「たったったったっ」の切れ続きはどうなるのでしょうか。2拍の擬声語・擬態語の連続は「ズルズル■ズルズル」と同じ要領で区切りますか?

【A】

【備考3】では「2拍以下の繰り返しは続けて書く」のルールだけが示してありますが、2拍が4回繰り返してある場合は、2回の繰り返しが2回あると考えて、一般に、「ズルズル■ズルズル」と区切って書きます。ただ、リズムも考慮に入れると、銃の音は、「たったっ たったっ」という2回の繰り返しでは不自然に思われます。この場合は、「タッタッタッタッ」と続けた方がよいと思います。

19.p83 5.繰り返し言葉

次の分かち書きはどうなりますか。
(起きての意味で)
おおおおきいいてえええええ!!!
(ものすごく気まぐれであるという意味で)
ドドドドドドドドド気まぐれの私
(すごくただならないという意味で)
ただただただならぬ

【A】

基本的に1音が重なる場合や吃音のように1音ずつ発音する場合は、区切って書きますので
ド■ド■ド■ド■ド■ド■ド■ド■ド■キマグレノ■ワタシ
ただ、「おおおおきいいてえええええ!!!」の場合は、「お お お」のように発音しているのではなく、長音符ではありませんが、「お」「い」「え」を伸ばして発音していると考えられます。「起きて」を「おーきーてー」と言っているのを強調しているとも受け取れるので、
オオオオキイイテエエエエエ!!!
と書くのがよいと思います。
3番目の語は、2拍の繰り返しですので
タダ■タダ■タダナラヌ
と書いてよいと思います。
このように口をついて出ることばや悲鳴、嘆声などは、ルールが定まっているわけではありませんので、前後の文脈や状況などによって、続けて書いたり、区切って書いたりすることになると思います。

20.p83 5.繰り返し言葉

「ホーホホホ、そうかしら」の「ホーホホホ」(強がった時の笑い声)は繰り返し言葉の1音が重なる場合と同じように「ホー■ホ■ホ■ホ」と区切ってよいでしょうか。

【A】

笑い声は、擬声語になりますので、2拍以下の繰り返しは続けて書きそれ以上の場合はリズムも考慮して適宜区切って書きます。
ホーホホホ
と続けてよいと思います。
あははは、いひひひ、うふふふなどは、感動詞として一続きに書き、それ以上続く場合や促音が入る場合などはリズムを考慮して適宜区切って書く事になると思います。

5 動植物名・理化学用語・医学用語・漢字や仮名で書かれた単位

1.p84 2.理化学用語

点訳ナビゲーターの「硫酸塩泉(リューサンエンセン)」「炭酸水素塩泉(タンサン■スイソエンセン)」は、「硫酸」「水素」も「塩泉」も辞書の見出し語に掲載がありますが、この書き方になるのでしょうか。

【A】

「硫酸塩」「炭酸水素塩」(重炭酸塩)を主成分としている温泉ですので、「リューサンエンセン」「タンサン■スイソエンセン」となります。「塩泉」は塩類の含有量の多い鉱泉の総称ですので、それだけで自立性はありますが、「硫酸塩」「炭酸水素塩」は、一つの物質名として「塩」を続けて書きますので、後ろの「泉」もそれに続けて書きます。
泉質には、以下のようなものがあるようです。
炭酸■水素塩泉  硫酸塩泉  塩化物泉  二酸化■炭素泉  含鉄泉
単純■温泉  酸性泉  含よう素泉  硫黄泉  放射能泉  炭酸鉄泉
重炭酸■土類泉  単純■炭酸泉

2.p84 2.理化学用語

集英社インターナショナル新書『進化論の最前線』に、「デオキシリボ核酸」が出てきます。通常、一般書では、広辞苑の見出し語「デオキシ‐リボ核酸」などを参考に、「デオキシ■リボカクサン」でよいのかと思うのですが、略語DNAと併記されていることもあり、迷っています。
デオキシとリボ(リボース)の意味の結びつきが、リボと核酸より強いと判断して、「デオキシリボ■カクサン」とするか、あるいは前後に塩基配列などの詳解がありますので、専門書に準じて一続きに書くのが適当でしょうか。

【A】

「デオキシリボ核酸」は、「デオキシ」と「リボ(ース)」と「核酸」からなっている語のようです。専門書では、「点字理科記号解説暫定改訂版」p48を参照し、「デオキシ=リボカクサン」(=は第1つなぎ符)と書くのがよいと思います。
一般書では、「リボース」の「リボ」を自立可能な意味の成分と考えるかどうかで、切れ続きが異なってくると思いますが、専門用語ですので「リボ」だけを区切って書くのは、危ないような気がします。「リボ核酸」(RNA)は一続きに書いた方がいいのではないでしょうか。「デオキシ」は「酸素(オキシ)が欠落(デ)している」という意味のようですので、「デオキシ」で区切って書いてよいと思います。「リボ核酸」(RNA)に対して「デオキシ■リボカクサン」(DNA)と書くのが意味を理解する助けにもなるように思われます。集英社インターナショナル新書『進化論の最前線』は一般書と考えるのが妥当なように思いますので、「デオキシ■リボカクサン」と書く方をお勧めします。

3.p84 2.理化学用語

温泉の泉質の書き方について質問します。
酸性・含硫黄・鉄(Ⅱ)_ナトリウム_硫酸塩・塩化物泉
などを訳すとき、_は、第1つなぎ符でしょうか?波線ではおかしいと思うのです。
また、ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉 とある場合は、ナトリウム■炭酸■水素塩■塩化物泉となりますか。

【A】

温泉の泉質一覧などを基に考えてみました。
https://www.spa.or.jp/onsen/501/
http://onsen.life.coocan.jp/onsen/senshitsu2.html など
この長い泉質を分類別に分けてみると
《酸性》《含 硫黄・鉄(Ⅱ)》《ナトリウム-硫酸塩・塩化物》泉
となるようです。
墨字の中点、ハイフンと点字の中点、第1つなぎ符とでは、記号の用法が異な
りますので、墨字の記号をそのまま点訳すると
《酸性》《含硫黄》《鉄(Ⅱ)=ナトリウム=硫酸塩》《塩化物泉》
というふうに分けられ、意味が異なってしまいます。
ですので、中点やつなぎ符類をできるだけ使用しないで以下のように点訳しては
どうでしょうか。
サンセイ■■ガン■イオー■テツ(外大大II)■■ナトリウム■リューサン
エン■エンカブツセン
「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉」は、ナトリウム■炭酸■水素塩■塩化物泉と書いてよいと思います。

4.p84 2.理化学用語

「脱炭素社会」について、「語例集」に「ダツタンソ■シャカイ」と出ていました。
「ダツタンソ」と続く場合と、「脱都会 ダツ■トカイ」のように一マスあけになる場合の違いを教えてください。

【A】

「脱」は、脱原発(ダツ■ゲンパツ)、脱都会(ダツ■トカイ)、脱サラリーマン(ダツ■サラリーマン)など、1字漢語でも自立した意味のまとまりとしての働きが強い語といえます。「脱サラ」は、短い略語になります。
ただ、理化学用語・医学用語としては、「脱酸素剤(ダツサンソザイ)」、「脱炭素化(ダツタンソカ)」「脱感作(ダツカンサ)」「脱分極(ダツブンキョク)」など、一般に使われる「ある状態から抜け出す、逃れる」というような意味とは異なり、それぞれの特殊な機能・働きを表す言葉となりますので、一続きに書きます。
「脱炭素社会」は、「炭素社会」に「脱」が付いた語ではなく、「脱炭素」の「社会」を表しますので、「ダツタンソ■シャカイ」となります。

5.p85 3.医学用語

「高病原性鳥インフルエンザ」「低病原性鳥インフルエンザ」「高感染性○○」「低感染性○○」等々、医学用語に「高」「低」が付く場合、「高血圧」「低血圧」「高脂血症」「低脂血症」と同じように続けて書いてよいでしょうか。

【A】

医学用語については、一般の語より2拍で自立性があると判断することも多い(右、脳、心、肺などなど)のですが、「高・低」に関しては、医学用語と一般の語の違いは無いと思います。「高・低」とも後ろの語と続けて書くことが原則です。後ろにマスあけを含む複合語が来る場合は「高・低」の後ろを一マスあけます。
高■塩分■濃度  高■付加■価値  高■物価■水準  低■出生■体重児
高■中性■脂肪血症
などです。
「高病原性鳥インフルエンザ」も「低病原性鳥インフルエンザ」も、「コービョーゲンセイ」「テイビョーゲンセイ」と続けて書いてよいと思います。

6.p85 3.医学用語

フォーラムの語例で「脳神経」を「ノーシンケイ」と一続きに書き。「脳神経内科学」や「脳神経外科」を「ノー■シンケイ■ナイカガク」「ノー■シンケイ■ゲカ」と切っています。
次の場合の「脳神経」はどうなりますか。
「脳神経医学専攻博士課程修了」
これもやはり「ノー■シンケイ■イガク■センコー■ハクシ■カテイ■シューリョー」と切るのでしょうか

【A】

紛らわしいところですが、医学用語では、
「脳神経」は「脳から直接出ている末梢神経の総称」を指しますので、脳神経そのものを指す場合は、「ノーシンケイ」と一続きに書きます。
「脳神経内科学」や「脳神経外科」は、「脳、脊髄、末梢神経、脊椎、脳血管系などの障害に関しての内科的・外科的治療をおこなう臨床医学の分野」ということになり、脳神経そのものだけの治療を行うものではありませんので、脳と神経という意味で、「ノー■シンケイ」と区切って書きます。
「脳神経医学」は、脳と神経についての医学のようですので、区切って書いてよいと思います。
ノー■シンケイ■イガク■センコー