第3章 分かち書き(3)

その3 固有名詞

1 人名

1.p87 1.名字と名前

リホーはなぜ区切る?

【A】

本則で、「人名の名字と名前の間は区切って書く」と言い切っています。続けるのは、中国・朝鮮の人名のうち、ごくごく限られた、短くて特になじみ深いと誰もが思うような人名に限っています。ですので、ここに挙げられた用例からあまり広がっていくことを考えていません。
「リ■ホー」は本則に従って区切って書きます。このほか、「李軌(リ■キ)」「馬良(バ■リョー)」などの短い人名も名字と名前の間で区切って書きます。

2.p87 1.名字と名前

中国の人名に関する質問です。
2字の中国名も原則、氏と名で区切って書くことになっていますが、郭隗、管仲、鮑叔、馬氏(女性の名)もマスあけして書くべきですか。そこに杜甫とか李白が混じっている場合、その二人だけは続けて書くのでしょうか。また、韓非子はカン■ピシ、カンピシどちらでしょうか。
車胤という人物に由来する「車胤聚蛍」という四字熟語がありますが、これも名前だけの時は「車■胤」で四字熟語になった場合は「車胤■聚蛍」とするのでしょうか。

【A】

郭隗、管仲、鮑叔なども氏と名で区切って書きます。
馬氏(女性)については氏と名ではなく、古い文献や小説で女性名は名前が記されることがまれなようで、馬氏、楊氏のように属する一族名で記されます。
個人を指していても敬称の氏ではなく一族を表すものですので、この氏は続けたほうがよいと思います。
これらの人名と並んでいても、杜甫と李白は一続きに書きます。ただし「李」姓の人名が並んでいるような場合、「李白」だけ続けて書くと不統一感がある場合は、本則に従って「リ■ハク」と区切って書くこともできます。
韓非子は、「非」が「ピ」になっていますが、氏と名は区切って書く規則ですのでカン■ピシとなります。
車胤もシャ■インと書きます。
人名由来の書物名や四字熟語でも、人名を含む場合は人名の切れ続きと同様になります。車胤聚蛍はシャ■イン■シューケイとなります。

3.p87 1.名字と名前

カンボジアの人名についてお伺いします。
カンボジアの名前は姓と名の区別がはっきりしないので「ポル・ポト」は「ぽるぽと」と続けるとありますが、同国の政治家「キュー・サムファン」の場合も中点があっても続けるのでしょうか。もしそうなら、カンボジア以外でもこのようなことはあるのでしょうか。

【A】

人名は、名字と名前の間を区切って書きますが、カンボジアやミャンマーなどでは、名字と名前の区別がないので、「アウン・サン・スー・チー」も「アウンサンスーチー」と一続きに書きます。新聞等でも中点を用いないで書く傾向にあるようです。
「キュー・サムファン」も「キューサムファン」と一続きに書きます。

4.p87 1 人名

翻訳物などに出てくる外国人名(ニックネーム)の分かち書きについてです。
外来語 6拍以上の語(うち3拍以上)は意味や語源で区切ると理解していました。
しかし、校正をしていて、点訳者の方が続けて書かれているので、人名やニックネームは分かち書きをしないというルールがあったのかな、分かち書きルールを間違えて覚えたかなと自信がなくなり、色々調べたのですが記載されている箇所を探すことができませんでした。
レディーバード (てんとう虫)Lady bird ⇒レディー□バード
コーンブレッド⇒コーン□ブレッド
ではありませんか?

【A】

ニックネームでしたら、「レディー■バード」「コーン■ブレッド」と書いてよいと思います。
ただ、人名でしたら、姓と名の間は区切りますが、その中は一続きになります。
たとえば、「てびき第3版Q&A」Q42にある「ローズマリー」ですが、人名の場合、「ローズマリー■サトクリフ」(作家)は一続きですが、「ローズ■マリー」(ハーブの名前)というニックネームの場合は、「ローズ■マリーチャン」となります。
ですから、「コーンブレッド」が名字だった場合は、たとえば「マリー■コーンブレッド」のようになります。
人名かニックネームかの判断は必要になります。

5.p88 1.名字と名前 【処理1】

レオナルド・ダ=ヴィンチが、本則では「=」もマスあけになりました。【処理1】で、原文に「=」などが用いられていることを特に書き表す必要がある場合には、つなぎ符を用いると記載されています。ここに述べられている「特に書き表す必要がある場合」とは、具体的には、どのような場合と考えたらいいでしょうか。
例えば、次のような人物が原本に出てきました。フランスの社会人類学者
クロード・レヴィ=ストロース、テニス選手 フェリックス・オジェ=アリアシム、オジェは母の姓、アリアシムは父の姓からとっているそうです。
このように、由来をもつものが=で繋がっている場合は、「てびき」で言うところの「特に書き表す必要がある場合」に相当するのでしょうか。判断基準のヒントを教えてください。

【A】

「レオナルド・ダ=ヴィンチ」の書き方が4版で変更になったわけではありません。これまでも、レオナルド■ダ■ヴィンチと本則に従って書くのが原則だったのですが、【処理】の第1つなぎ符を使う例だけが載っていたので、その用法だけが強調されているという心配の声があがり、4版では、本則にも例として掲載しました。
ですから、クロード・レヴィ=ストロース、フェリックス・オジェ=アリアシムなども、中点、ダブルハイフンのところをマスあけして書きます。
【処理】を適用する例としては、例えば
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
外国人名の表記にダブルハイフンが使われている場合があります。たとえば、クロード・レヴィ=ストロース、フェリックス・オジェ=アリアシムなどですが、これらは、姓の中に用い、母の姓と父の姓を示したり、氏族を表したりしています。姓の中だけでなく、ジャン=ジャック・ルソーのように、ファーストネームの中に用いられている場合もあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このような原文の場合、文脈上、ダブルハイフンの位置を示す必要があります。点訳挿入符で「ダブルハイフンを点訳では第1つなぎ符で表した」と断って、「クロード■レヴィ=ストロース、フェリックス■オジェ=アリアシム、ジャン=ジャック■ルソー」と点訳することになると思います。
このように、ダブルハイフンの位置を特に示す必要が無い限り、本則に従ってマスあけして点訳します。
「オジェは母の姓、アリアシムは父の姓からとっているそうです。」と由来だけが書かれている場合は、ダブルハイフンの位置や記号は特に問題になりませんのでマスあけでいいと思います。

6.p88 1.名字と名前 【処理1】

レオナルド■ダ■ヴィンチの墨字はレオナルド・ダ・ヴィンチもしくはレオナルド・ダ=ヴィンチという表記だと思いますが、墨字表記がダヴィンチと続いているときは続けてよいのでしょうか。ウサマ・ビン・ラディンだったりウサマ・ビンラディンだったりと表記が分かれているときは点字でもマスあけが違ってかまいませんか。

【A】

人名は、名字と名前のあいだは区切って書くというルールに基づいてマスあけし、基本的には墨字の表記に左右されるものではありません。ただ、墨字のハイフンやダブルハイフンを書き表す必要がある場合につなぎ符を用いることになっています。
レオナルド・ダヴィンチは、ハイフンが用いられていてもいなくても、レオナルド■ダ■ヴィンチとなります。
ウサマ・ビンラディンは、ビンラディン家のウサマという意味のようですので、中点やハイフンが用いられていても、いなくてもウサマ■ビンラディンと書いてよいと思います。
ただし、「ダビンチ没後500年を機に…」などのように、フルネームでなく、略称・通称のように用いられている場合は、「ダビンチ」と続けて書いてよいと思います。

7.p88 2.敬称・官位など

「源氏物語」の登場人物の切れ続きについて伺います。「Q&A集」のQ70にあるように、人名に官位・官職がついている場合は拍数によって判断し、職名の場合は区切って書くとあります。例えば、源少納言(源氏の流れをくむ源良清)は源が2拍であり、ゲンショーナゴンと続け、按察大納言(あぜちのだいなごん)は通称が、紅梅大納言(こうばいのだいなごん)で按察が官職名なので、アゼチノ■ダイナゴン、コーバイノ■ダイナゴンと考えてよいでしょうか。

【A】

ゲンショーナゴン、アゼチノ■ダイナゴン、コーバイノ■ダイナゴンの切れ続きは、書かれているとおりです。
ただ、ゲンショーナゴンやセイショーナゴン、サイショーニン、トーシキブなどが一続きなのは、固有名詞の部分の拍数ではなく、人名が省略されて、固有名詞部分に自立性がなくなったためです。
固有名詞の固有の部分は、2拍でも自立する成分ですので、
アボ■シンノー(阿保親王)のような場合は区切って書きます。

8.p88 2.敬称・官位など

源氏物語をテーマにした読み物で、紫式部・越後弁・中将の君・小式部・明石の上などが登場します。これらに「さん、様」が付いたときの切れ続きはどうなりますか。
また、「点字表記の語例」を見ると、「アカシノ■キミ」「ムラサキノウエ」となっていますが、「明石の上」は「アカシノ■ウエ」なのでしょうか、それとも「アカシノウエ」となるのでしょうか。「紫の上」は「ムラサキノウエ」と続けてありますが、「紫の君」・「若紫の君」は「紫の上」と同じ考えでよろしいでしょうか。そして、「明石の君」との違いはどのように考えたらよいでしょうか。

【A】

ムラサキ■シキブ、エチゴノベン、チュージョーノ■キミ、コシキブ、アカシノウエとなり、式部、弁、君、上などは、立場や役職などを示す普通名詞になりますので、「さん、様、」などは続けて書きます。「てびき」p90【備考1】に当てはまります。
越後弁殿(エチゴノベンドノ)、明石の君(アカシノ■キミ)、葵の上(アオイノウエ)などが、「点訳フォーラム」の「点字表記の語例」にありますので、参考になさってください。
「君(きみ)」、「上(うえ)」は、どちらも敬意を込めた言い方ですが、この場合は、語としての自立性が異なります。
「君」は、人名や役職名に付く尊敬語で、具体的な意味を持つ名詞ですので、「君」の前で区切って書きます。
「上」「方」などは、方向を示す言葉を用いて間接的に「夫人」「奥方」を示す使い方です。この場合の「上」「方」は接尾語的で、「~の上」「~方」までを含めて1語になっていますので、助詞の「の」も含めて一続きに書きます。

9.p88 2.敬称・官位など

「師」についてご質問です。尊称でも「氏」のようにマス開けしないことが点訳フォーラムに記してあります。ですが、例えば小説の登場人物の学者の名がエドモンド・トンプソン師という場合、「エドモンド■トンプソン■シ」としてはいけませんか。ほかに「〇〇氏」の表記の登場人物はなく、この場合「氏」と同様の意味で「師」を用いてると思われるのですが。2拍の敬称としてやはり続けるほうがいいでしょうか。

【A】

人名に続く「さん・様・君・殿・氏(し・うじ)」は、接尾語ですが、人名を明らかにするために区切って書いているのは、例外的な処理になります。同じような意味でも、これ以外には広げることはしていません。方言の「どん、はん、さあ」なども続けて書きます。「師」も接尾語としての尊称で、1拍ですので続けて書きます。
エドモンド■トンプソンシと書いて、区切って書くよりも誤読されるということはないと思います。

10.p88 2.敬称・官位など

「姉」(読みは シ)という キリスト教の呼称か敬称があって、たとえば「佐藤昌」や「鈴木タカ」どちらも女性だとして「姉」という敬称がついている場合、続けると「サトー■マサシ」「スズキ■タカシ」となってしまうので、区切って書いてよいでしょうか。語例集には、「姉」はなく、「山田兄」(ヤマダ■ケイ)というのがあったので、キリスト教の呼び方で「兄」に対して「姉」(ブラザー、シスターのような意味)と考えたのです。

【A】

人名に続く官位・敬称などが2拍以下の場合は人名に続けて書きますので、「師」も「姉」も人名に続けて書きます。点字は仮名文字体系ですので、「シ」と書いてあっても「氏・師・姉」など多くの場合が想定されます。前後を読んでも「佐藤昌姉」や「トンプソン師」であることが推測できず、それが分からないとその文章を理解するのに支障が出る場合は、点訳挿入符で補うことになります。そこで「マサ■シ」とマスあけしても「姉」であることは分かりません。切れ続きの規則に準じた上で、漢字や意味を補う方法を採る方が適切だと思います。
「兄(けい)」は、文語的な言い方で、男性が手紙などで先輩や同輩の氏名に付けて敬意を表すのにも用いますし、同じく自分の名前の下に用いる「拝(はい)」とも同様に用いますので、自立していて意味の理解を助けると判断しました。「てびき」p89 【備考2】に当てはまると思います。「兄」だけでも「兄(けい)のご意見をお聞かせください」「兄たりがたく弟たりがたし」のようにも自立した語として用いられますので、区切って書いた方が分かりやすいと判断しています。「姉(し)」は接尾語としての用法しかありませんので、区切ることが難しいと思います。
ただ、ご質問を読ませていただいて、キリスト教の教会内の会報などで、お互いの名前に「姉」「兄」を付けて親しみを込めて書かれているときもあると思いました。そのような文書を点訳する場合は、「姉」の方に第1つなぎ符を用いて書けば、「兄」との違和感も少ないのではないかと思います。「てびき」p89【処理】はあまりお勧めではありませんが、やむを得ない場合に当てはまるかもしれません。

11.p88 2.敬称・官位など

大津市歴史博物館が発行した「よみがえる大津京」の点訳をしています。
当時の冠位で「直大壱位」に「じきだいいちい」のルビがふられています。「じきだいいちい」は一続きになりますか。また、「壱」(他に、弐、参、肆もある)は数字で書きますか。
「志賀旧趾碑」、「金殿井(中臣連金にちなむ井戸)」の「碑」「井」は自立する名詞と思いますが、前で区切って書いてよいでしょうか。

【A】

正一位、従三位などの大宝律令による冠位より前の天武天皇代の冠位四十八階の上から九番目の位階のようです。
「正・直・勤・務・追・進」の分類ごとに服の色が決まっていて、その中にそれぞれ大壱・広壱、大弐・広弐、大参・広参、大肆・広肆に分かれていて、計四十八階になっています。二つの分類で冠位が示されていますので
ジキ■ダイ数1=イ
と書いてよいと思います。
「志賀旧趾碑」は「しがきゅうしひ」と読めば、「碑」は1拍の名詞ですので前の語に続け「シガ■キューシヒ」となりますが、「しがきゅうしのひ」と読めば、間に助詞の「の」が入りますので、「シガ■キューシノ■ヒ」となります。
「金殿井(中臣連金にちなむ井戸)は「かねどののい」と読むようです。助詞の「の」を含んでいますので、「カネ■ドノノ■イ」となります。

12.p88 2.敬称・官位など

花子姉(ハナコネエ)と吾作じい(ゴサク■ジイ)の分かちの違いはどう考えたらよいでしょうか。「松じい」は「松」が本名でないから続けて書き、「吾作」は本名だからマスあけすると考えると、「ハナコ■ネエ」でしょうか。また「健兄(ケンニイ)」は健が本名でも続けると書いてあります。ネエ・ニイとジイはどのように考えたら良いでしょうか。

【A】

「てびき」p88 2.の、固有名詞の後ろに続く敬称が3拍以上なのか、または、p89【備考2】の2拍でも自立性が強く意味の理解を助けるのかによって、判断することになります。
ネエサン、ニイサン、オジ、オバ、アネ、アニなどは、自立性が強いといえます。ジイ・ジジ・バア・ババもこれらの語と同じように自立性が強いと判断しました。
ただ、「姉さん、兄さん、伯父(叔父)、伯母(叔母)、兄、姉」などに較べ、「ジジ・ジイ・ババ・バア」は全体で愛称として用いられることもありますので、前の語が省略形の愛称であれば「マツジイ」「ゲンジジ」と一続きに書くこととしています。
一方、ネエ、ニイは、あまり単独では使われず人名などの後ろにつけて使われることが多いので、続ける成分となります。前が本名でも愛称でも続けて書きます。
なお、「てびき3版Q&A第2集」Q56にもありますので、参照してください。

13.p89 2.敬称・官位など 【備考2】

上田敏訳の訳や記、著、編などは前を区切って書きますが、(訳)(著)などのように( )でくくられた場合も一マスあけるのでしょうか?

【A】

カッコは前の語の注釈的説明にあたる場合は続けて書きますので、この点を考慮することになります。
たとえば、参考文献などで、
海潮音 上田敏(訳) 1952 新潮文庫
などのように列挙してある場合は、ウエダ■ビン■(ヤク)と書きますが、
「海潮音」は、上田敏(訳)の代表作です。
などのように、文の形で書かれて、(訳)が前の語の注釈的説明となっている場合は、ウエダ■ビン(ヤク) と続けて書きます。
前後の文脈で、(訳)が独立して用いられているか、前の語の説明として用いられているかを判断することが必要になります。

14.p89 2.敬称・官位など 【備考2】

1.「記・纂」の書き方について
藤原師通の記した日記『後二条師通記』、広橋兼顕の日記『兼顕卿記』、藤原為隆の日記『永唱記』別名『為隆卿記』。それぞれ日記です。この場合の「記」は続けて書くのでしょうか。それとも一マスあけで書くのでしょうか。
『京都大学古文書纂』の「纂」の書き方もお教えください。
2.《天平5(733)年の「下野国薬師寺造司工」の銘のある瓦が出土して、その「造薬師寺司」所属の瓦工の・・・》や「造下野国薬師寺別当」の表現があります。
【造寺司】(ぞうじ‐し)は、「古代、官営寺院の造営や修理のために臨時に置いた官庁。」(広辞苑・ 大辞林)とありますが、「  」箇所の読み方とマス開けを教えてください。

【A】

1.『ゴニジョー■モロミチキ』『カネアキキョーキ』『エイショーキ』と一続きに書きます。
「正岡■子規■記」のように前を区切る場合は、「正岡子規が記した」の意味になりますが、ご質問の例はすべて書名で、点訳フォーラムの語例集にある、「出エジプト記」「信長公記」「将門記」などと同じ用法になります。
京都大学古文書纂 キョート■ダイガク■コモンジョサン
「纂」は「たくさんのものを集めて整理し、まとめる」という意味で、京都大学の古文書をまとめたという意味のようです。このほかにも「尊経閣■古文書纂」という書名もあります。
2.「造寺司」は寺を作るごとに、寺単位で臨時に置かれた役職のようで、「造○○寺司」と書かれたり、位として、「工」が付いたり、時代が下がると「造寺司」が廃止され別当になったりしたようです。
意味のまとまりを考慮すると以下のようになると思います。
下野国薬師寺造司工 シモツケノ■クニ■ヤクシジ■ゾーシコー
造下野国薬師寺別当 ゾー■シモツケノ■クニ■ヤクシジ■ベットー
造薬師寺司 ゾー■ヤクシジシ

15.p89 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」

「さん」が略されたり、方言の一種として「太郎さ」「太郎さあ」と使われている時、「タロー■サ、タロー■サア」としていいでしょうか。

【A】

「タローサ、タローサア」と続けて書いてよいと思います。
「さん、様、殿」が変化した「はん」「さあ」「どん」などは続けて書くことをお勧めしています。「点字表記の語例」で、前方一致で「山田」で検索すると「山田さあ」「山田しゃん」「山田どん」「山田はん」などが方言で続く例としてヒットします。
「てびき」p89の「さん・様・君・殿・氏」は接尾語であっても、人名を明確にするための例外的なルールですので、この範囲を広げない方がよいと考えています。

16.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考1】

普通名詞の後ろに「様」が続く場合に続けて書く【備考1】の用例に、「和宮様」がありますが、「和宮様」は固有名詞ではないのでしょうか?

【A】

全体としては固有名詞ですが、「宮」が普通名詞で、その直後に「様」が続くことから続けて書きます。同様に「千姫様」も続けて書きます。固有名詞は、内部に固有の成分と普通名詞成分を持つ場合がありますので注意してください。

17.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考1】

歌舞伎の登場人物の斧九太夫(家老)や原郷右衛門などは、由良之助良兼のように役職名と思いますが「様・殿」をどう判断したらよいでしょうか?
吉良様・吉良殿など吉良上野之介本人ではなく、そのお屋敷ととれる場合は続けて[キラサマ]と区別すべきでしょうか?

【A】

役職名の判断の仕方ですが、「長官(かみ)」「次官(すけ)」「判官(じょう)」「主典(さかん)」などと、その別字「~頭、~守、~介、~助、~佐、~納言、~弁」などの官位・官職を、江戸時代までの日本の役職名と判断するのがよいと思います。
その家代々の名前や通称などまで考えていくと判断が難しくなります。
ですので、吉良上野介、大石内蔵助などは、役職名(普通名詞)と判断しても、斧九太夫、原郷右衛門、由良之助良兼などは固有名詞として、「様・殿」は区切って書いてよいと思います。
「吉良様、吉良殿」は「固有名詞+様・殿」ですので、「キラ■サマ」となります。
一族を表す場合に続けるのは「氏」だけです。点訳フォーラム「点訳に関する質問にお答えします」第3章 その3 固有名詞 1.人名の4.も参考にしてください。

18.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考1】

「名無しの権兵衛さん」の切れ続きについてお伺いします。ハンドルネームの場合は「名無しの■権兵衛■さん」と切れると思いますが、名前の不明な人を指していう場合、「名無しの■権兵衛さん」と続けるのでしょうか、それとも、仮名と捉えて「名無しの■権兵衛■さん」と切れるのでしょうか。
【A】
「権兵衛」だけでも「名無しの権兵衛」でも、名前の分からない人を仮に言う場合に用いる定まった言い方ですので、普通名詞ととらえていいと思います。
「ナナシノ■ゴンベエサン」と書いてよいと思います。
ハンドルネームが「名無しの権兵衛」の場合は、「ナナシノ■ゴンベエ■サン」になります。

19.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

時代小説等で、町人や民衆が「徳川様の時代」とか、「水戸様」などと様付けで呼んでいますが、「様」は区切ってよいでしょうか。
《A》
「てびき」p90【備考2】にありますように、一族を表す場合に続けるのは、「氏」が付くものだけですので、「トクガワ■サマ」「ミト■サマ」と区切って書きます。

20.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

「氏(し)」の切れ続きについて。
① 北条早雲が相模の小田原城を元の城主・大森氏を討って手に入れたのが1495年。それから約百年、小田原城が北条氏の居城となる。
② 島原の乱。幕府は板倉重昌らを討伐にむかわせる。しかし、なかなか動きがないことに、幕府側は「板倉氏だけではダメだ」と判断し、松平信綱に援軍を命じる。

①の大森氏、北条氏は一族の意味合いもあるようにも思われるので続けるのでしょうか。それとも名前と区別するということで切るのでしょうか。
②の板倉氏は、重昌という人物を指しているので、これは切っていいように思われるのですが。

【A】

①の大森氏、北条氏、②の板倉氏、共に一族を表していると判断したほうがよいと思います。
この場合の幕府側の発言にしても板倉氏は板倉重昌だけを指しているのではないと思います。板倉重昌は幕府にとって配下の大名なので、個人名に敬称を付けて言うことは不自然で、板倉の一族郎党を指しての「氏」だと思います。
このように、昔の氏族名で、姓だけを指している場合は、ほとんど「氏」を続けて書くことになると思います。

21.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

「およし、おりん」など、名前の前に“お”がつくと、「てびき」p90【備考2】により、「さん」「殿」を続けて書くとされていますが、時代小説の場合、その違いがよく分かりません。愛称の“お”か、名前としての“お”か、深く考えずに全て愛称と考えて良いでしょうか。

【A】

判断に迷うところですが、原本で、本名が「およし」「おりん」などと「お」を含んだ名前であることがはっきりと書かれていない場合、愛称として「オヨシサン」「オリンサン」と続けて書く方がよいと思います。
本人が自分の名前をどう呼んでいるか、地の文でどう書いてあるかなどが参考になると思います。

22.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

外国人名の愛称についておたずねいたします。外国人の愛称は判断しにくいですが文脈から愛称であることが分かった場合、例えばレーガン元大統領の愛称「ロン」に「さん」が付いていた場合は「ロンさん」と書いて良いでしょうか。また愛称らしくても判断できない場合は区切って書いて良いでしょうか。

【A】

外国人名でも、愛称の場合は、「さん」を続けて書き、愛称でない人名の場合は、「さん」を区切って書きます。判断しにくい場合も、どちらかに判断して書くことになります。ロンが愛称であれば「ロンサン」と続けて書きます。
ただ、トムやベティーなど一般には名前と考えられているものでも実際には愛称や短縮形の場合も多くありますので、判断に迷った場合は、固有名詞を浮き出させるという意味で区切って書くほうがよいと思います。

23.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

原文では登場人物の本名は「古鷹 恵太郎」(こたか けいたろう)ですが、「与太郎」というあだ名があります。
その場合、「与太郎様」となっていたら、与太郎はあだ名なので「よたろーさま」となると思うのですが、作中、途中から、御家老として「古鷹 与太郎」に改名します。
その場合、どの時点から「ヨタロー■サマ」となりますか。最初からでしょうか。それとも、改名した以降でしょうか。また、「恵太郎様」は、本名なのでずっと「ケイタロー■サマ」としていいのでしょうか。

【A】

恵太郎は本名ですので、物語全体を通して、ケイタロー■サマになります。
与太郎は一般的には楽天的で愚かな男性を指して用いることが多く、その場合あだ名として扱いますが、この小説ではある時点以降、正式な名前として用いられることから、芸名など本名に準じて扱うものと同様に考えて、一貫して「様」を区切って書いてよいのではないかと思います。
この場合の与太郎は普通名詞や役職名を用いた呼び方でもありませんので、「与太さま」のように短縮した場合は別ですが、そうでなければ「様」を区切って、人名に準じる呼称部分を明らかにすることが意味の理解を助ける事例に該当すると思います。
ですから、与太郎も物語を通して、ヨタロー■サマとなります。

24.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

「蔦」さんが、日常「アイビー」と呼ばれている場合は「アイビーさん」と続けますが、「アイビー」をハンドルネームとしても使っている場合は、どうなりますか。
本名の前に何かつけたようなニックネーム、例えば、プロレス好きの柚木さんが「アントニオ猪木」をもじって「アントニオ柚木」と呼ばれている場合、「アントニオ■ユノキさん」となりますか。

【A】

ニックネームとしての「アイビー」の方が主に使われていると思いますので、全体として、ニックネームの「アイビーサン」を主としてよいと思います。
明らかにハンドルネームとしての「アイビー」だけしか知らない人が、丁寧に(よそよそしく)「アイビー■サン」と呼ぶ場合のみ区切って書いてはどうでしょうか。
ハンドルネームとして用いられる場面でも、人名に模したようなものでなく普通名詞を用いたものなので、「さん」が続いていても違和感がないのに対し、ハンドルネームとしても用いられることを知る前に単なるニックネームとして出てきたときに「さん」が切ってあると違和感があると思います。
「アントニオ柚木」さんの場合、名字の「柚木」が、「ユノキ」なのかもしれませんし、猪木になぞらえての「ユノキ」かもしれませんが、どちらにせよニックネームとしてアレンジされていても人名(名字)の後ろに「さん」が続いている場合は区切った方が分かりやすいと思います。「人名を明らかにするために」というルール本来の意図を活かし、
「アントニオ■ユノキ■さん」と書いた方がよいと思います。

25.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【備考2】

語例集には組織名として、「トヨタさん、東芝さん、富士通さん」などが挙げられていますが、個人名をそのまま屋号としているような場合はどうなりますか。
例えば、「鈴木さん」が、「スズキ雑貨店」を営んでいて、店主としての「鈴木さん」個人のことを話している場面と、「スズキさんの商品は安い」などと店名として言及している場面が混在しているような文章についてです。
点字にすれば同じ「すずきさん」なので、場合によってマスあけを変えると妙な感じもしますが、変えた方が個人の話か店の話かはっきりしていいのでしょうか。
それとも、個人名の屋号なので、すべて「スズキ■サン」とマスあけした方がいいでしょうか。

【A】

個人商店などで、名字がそのまま商店名になっている場合などは、個人名か店名かの区別がしにくいので、すべて、スズキ■サンと書いてよいと思います。
ただ、大企業でも、「スズキ」「マツダ」「ホンダ」など名字が由来の社名がありますが、このような場合は、トヨタさん、東芝さんと同様に扱います。

26.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【処理1】

ダンサーの名前はダンサーネームとして「ヒロ」とか「タク」などというように呼ばれています。これは愛称扱いになって続けるのでしょうか。

【A】

このQ&Aに、ハンドルネーム、タレント名、芸名、源氏名などを人名に準じて区切って書くとしています。ダンサーネーム・ステージネームはタレント名・芸名と区別が難しいものなので、この仲間になると思われます。
ただ、ダンサーネームでも、本名が「裕之」さん、「拓也」さんなどと明らかに分かっていて、「ヒロ」などがニックネームとしても用いられ、どちらとして呼んでいるのか判然としない場合も多いと思います。
ダンサーネーム自体が愛称的な感じのものは迷った場合、愛称の扱いでよいと思いますし、本名がわかっていて、その愛称がダンサーネームになっている場合は、愛称として処理するのがよいと思います。
「ヒロサン」「タクサン」となります。

27.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【処理1】

本名は不明ですがあだ名で「朱美さん」と呼ばれている女性登場人物がいます。
「アケミサン」「アケミ■サン」のどちらでしょうか。

【A】

「あだ名」ということですが、「朱美」は女性の名前として使われるものですので、愛称・短縮形というより、ペンネームや職業上の名前のような扱いで、「てびき」p90【処理1】に準じて、「アケミ■サン」と書くのがよいと思います。

28.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」 【処理1】

原則として、「てびき」にあるもののほか、ハンドルネーム、タレント名、芸名、源氏名、キャラクター名、ゆるキャラ名、マスコット名などは区切って書き、あだ名、ニックネームなどは続けて書くようにしていますが、最近は変わった命名も多く、悩むことが多いです。
ニックネームなども、別名・通称として、名前を浮き立たせるために区切って書いてよい場合があるのか、普通名詞であっても固有名詞として使われている場合はどうか、物語の中での著者の命名の仕方にもよるのか、等々。
・本名「新屋(しんや)」で「新ちゃん」と呼ばれている人物が、新人に「新ちゃんさん」と呼ばれた場合は?
・随筆の中で「ヒマラヤ山系」「山系」「山系くん」「山系様」としか呼ばれない登場人物は? (実際のモデルの本名は「平山三郎」)
・有象くん、無象くんという登場人物は? (その他に登場するのは、温厚教授、八年さん〈8年留年している〉、小悪魔ちゃんなど)
本によるかもしれませんが、迷うとき、原則と違う判断もあっていいのか、考え方をアドバイスしていただけるとありがたいです。
なお、「親称」という語は、親しみを込めた名称という意味で使われているかと思いますが、辞典にこの意味はないようです。一部の言語で、敬称二人称・親称二人称のように二人称代名詞に用いられる語であるため、「表記法」2018年版では省かれたのでしょうか。

【A】

「さん」は接尾語ですので、特別な理由がない限り前に続けて書くことを基本としています。
この場合、人名を浮きだたせるのが目的ですから、その目的が曖昧な場合は「さん、様、君、殿、氏、氏」は続けて書くことが優先されると思います。
・シンチャンサン(「サカナクン■サン」は、「サカナクン」でタレント名と考えて、区切った)
・サンケイクン、サンケイサン
・ウゾークン、ムゾークン(有象、無象が本名であれば区切って書く)
・数8ネンサン、コアクマチャン
「親称」については、広く使われている用法ではないため、「表記法」では2018年版からその言葉を削除しています。
しかし、「てびき」では,独自の造語ですが、2版から用いられている言葉ですので、用語解説p249で説明を加えた上で、これまで通りに用いています。

29.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【処理1】

洗礼名の後ろに「様」が付いたとき、例えば「ジュスト様(高山右近)」は、続けるのでしょうか、区切って書くのでしょうか。

【A】

洗礼名は、「てびき」p90【処理1】に従い、人名に準じて区切って書いてよいと思います。
ジュスト■サマ

30.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【処理1】

「奥村のぞみ」という名前です。 施設でのニックネームは「しずかさん」と呼ばれています。「しずかさん」と続けてよいでしょうか。また、他の入所者の本名を知らず、ニックネームで呼び合うルールになっています。その場合も続けて書いてよいでしょうか。

【A】

ご質問の場合、施設での呼び名は、愛称と言うより、「てびき」p90【処理1】に該当すると思います。ペンネームや四股名、または、本名以外のタレント名などと同じ扱いで、施設での呼び名も人名を明らかにするために区切って書いてよいと思います。
シズカ■サン
ただし、たとえば、いつも居眠りをしているから「いねむりさん」、いつも静かなので「しずかさん」、ニコニコしているので「にこにこさん」のようなニックネームでしたら続けて書きます。

31.p90 3.「さん」「様」「君」「殿」「氏(し・うじ)」【処理1】

「Aさん」は区切る、「甲さん」は人名に変えた符牒的な呼び方として続けるとなっていますが、「アさん」はどちらになりますか。

【A】

「アさん」が、Aさんや伏せ字のように、ある個人を表す代わりに用いられた場合は、ア■サンになります。
一般に、「この人を仮にアさん、この人をイさんとします。」のような場合は、原本にはなくてもア、イにピリオドをつけます。
ア.■サンとなります。

2 地名

1.p91 1.地名

住所だけの例は手引きにあるのですが、所属部署が複数ある例がなく、迷います。
〒300-1511 椚木15藤代スポーツセンター「スポーツ振興課取手市民ペタンク大会係」宛て
ユー■数300‐1511■■クヌギ■数15■■フジシロ■スポーツ■センター■「スポーツ■シンコーカ■トリデ■シミン■ペタンク■タイカイガカリ」アテ
でしょうか。
クヌギ■数15■フジシロ■スポーツ■センター■■「スポーツ■シンコーカ■■トリデ■シミン■ペタンク■タイカイガカリ」アテ
でしょうか。

【A】

住所を「〒300-1511 椚木15」までと考えるか、「〒300-1511 椚木15藤代スポーツセンター」までと考えるかによって異なると思いますが、ネットで取手市の組織図を見ると、スポーツ振興課は、藤代スポーツセンターの組織ではなく、取手市教育委員会内の組織のようです。
ですから、この場合は「〒300-1511 椚木15藤代スポーツセンター」までが住所と考え、
ユー■数300=数1511■■クヌギ■数15■フジシロ■スポーツ■センター■■「スポーツ■シンコーカ■■トリデ■シミン■ペタンク■タイカイガカリ」アテ
と、書くのがよいのではないでしょうか。

2.p91 1.地名

住所の書き方について教えてください。
語例集に 北一条一丁目 キタ数1ジョー■数1チョーメ がありますが、
北海道の 東川町東3号北12 という住所の場合
ヒガシカワチョー■ヒガシ■数3ゴー■キタ数12 と北12は続けてよいでしょうか。

【A】

北一条は、通りの名称ですので、続けて書きますが、ご質問の、北12の12は番地を表しますので数字だけを離して書きます。
ヒガシカワチョー■ヒガシ■数3ゴー■キタ■数12

3.p92 1.地名 【処理3】

外国地名「オックスフォード」は、語源を調べると「雄牛(オックス)が渡ることのできる浅瀬(フォード)の意」とありますが、続けて書いた方がよいのでしょうか。

【A】

外国地名中に、「タウン(町)」「ランド(土地)」「セント(聖)」など、3拍以上で意味の分かりやすい成分を含む地名は、複合する相手の成分の拍数や自立性に問題がなければ区切って書くのが分かりやすいと思います。
また日本人になじみのある語ではなくても、「クアラ■ルンプール」「ウラン■バートル」など英語表記で綴りが区切られ、KL、UBのように略されたり、カタカナで書くとき中点入りの表記も見られるような地名は、読みやすさも考えて、長く一続きにするよりも、区切ることをお勧めしています。
「オックスフォード」の場合、現在の地名としては「浅瀬・渡場」の意味合いが「タウン」や「ランド」のように明確・具体的でなく、語源を意識せずにひとまとまりの感覚で捉えられることが多いようです。綴りも一続きで、中点入りの書き方をすることもありませんし、極端に長いわけでもありませんので、どちらかといえば一続きに書いた方がよいでしょう。

4.p92 1.地名 【処理3】「コラム21」

外国地名の切れ続きについて
(1)サン・ジェルマン・デ・プレ
(2)ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア
(1)「デプレ」、(2)「デ■グラン」となるのは、「デ」に続く単語が2拍か3拍かの違いと考えてよいでしょうか。

【A】

そうではありません。
外国地名は、「コラム21」の最初にお断りしているように、p92【処理3】に従って書きます。ですから「リオ・デ・ジャネイロ」は「デ」の後ろに4拍「ジャネイロ」がありますが、3拍以上の意味のまとまりが二つ以上ないので「リオデジャネイロ」と続けて書きます。
「コラム21」では、3段落目の「しかし~」以降に書いてある条件の場合に限って、やむを得ず、原音の区切り目やカタカナで書いたときに中点のあるところで、区切って書く方法を示しています。これは、「間に前置詞や冠詞が続き、後ろの語に続けると非常に長くなる場合や、地名の意味のまとまりの判断ができない場合」にやむを得ず採る方法を示しているのであって、安易にこの方法を採用することをお勧めしているのではありません。
そして、「サン・ジェルマン・デ・プレ」は、意味のまとまりが判断できますので、「サンジェルマン■デプレ」と書きます。「ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア」は、意味のまとまりの判断が難しく、長くなるので、中点のあるところで機械的に区切り「ラス■パルマス■デ■グラン■カナリア」としています。

5.p92 1.地名 【処理3】「コラム21」

「コラム」に、スペイン語の「サン・クリストバル」は「サンクリストバル」と一続きになる用例があります。恐らくガラパゴス諸島の「サンクリストバル島」の例だと思いますが、メキシコにもよく似た名前の「サン・クリストバル・デ・ラス・カサス」という都市があります。後半の「デ・ラス・カサス」は人名(司祭名)由来のようです。用例にあるスペイン語の「ラス■パルマス■デ■グラン■カナリア」に倣って、「サンクリストバル■デ■ラス■カサス」となりますか。
また、一般になじみがなく長い外国地名は、原綴りを調べることはできても原音の区切り目を調べることは難しいことが多いようです。この場合、原綴りをもとに切れ続きを判断してもよいでしょうか。

【A】

外国地名の切れ続きの規則は、p92【処理3】ですので、3拍以上の意味のまとまりが二つ以上あればその境目で区切って書き、2拍以下の意味のまとまりはそのどちらかに続けて書きます。「サン・クリストバル・デ・ラス・カサス」は、非常に長いわけでも、意味のまとまりが判断できないわけでもありませんので、規則に従って「サンクリストバル■デラスカサス」でよいと思います。
規則と「コラム21」の書き方を混同してしまうと、混乱しますので、まずは、規則に従って書くことを考えてください。
そして、「コラム」に書いてあるような理由で、規則に従って書くことができない場合に、原音の区切り目か、カタカナで書いたときに中点のあるところで区切って書くようにしてください。

6.p92 1.地名 【処理3】「コラム21」

外国地名は、「てびき」3版から「2拍以下の意味のまとまりはそのどちらかに続けて書く」という、例外を認めない規則が加わりました。4版で、なじみのない外国地名の場合は、やむをえず中点のあるところで区切って書いてよいと例外が認められました。ただ、どう処理すべきか悩む地名は今後も出てくると思います。3版の規則が作られた理由や、外国地名の切れ続きの規則が作られた経緯について理解できれば、中点にとらわれすぎることなく、より適切に判断できるのではないかと思います。
なお、「コラム」の中の例ですが、調べて分かれば、「ヴァイン(=ワイン)■シュトラーセ(ストリート)」として構わないですか?

【A】

外国地名は、2版までは一続きに書くことになっていましたので、「サウジアラビア、オスマントルコ」などもすべて一続きでした。
「てびき3版」編集に当たって、「外国地名には長いものが多いので3拍以上の意味のまとまりが二つ以上あれば区切って書いてよい」というルールを提案し、賛成が得られたので「てびき」では外国地名のルールを設けたのですが、「表記法」では議論がそこまでいきませんでしたので、「表記法2001年版」には外国地名のルールはなく、日本の地名も外国地名も同じルールで扱われています。「一つの段階の内部に自立可能な意味の成分が二つ以上あればその境目で区切り、2拍以下の副次的な意味の成分はそのどちらかに続けて書き表すことを原則とする」となっています。3版の編集委員会でも「サンフランシスコ、リオデジャネイロ、ニュージーランド」まで区切ることは考えていませんでした。
4版の編集に当たっても、この部分は同じ判断です。「サンフランシスコ、ニュージーランド」などは一続きに書きたいと思います。
ですが、世界の地名には、これだけで一律に判断することが難しいものも多いので、「コラム21」という形で踏み込んだ判断をしました。
ですから、外国地名を書く場合は、まずは、【処理3】に従って切れ続きを判断し、それができない場合は、「コラム21」の書き方で書いてください。
「ノイシュタット・アン・デア・ヴァインシュトラーセ」の「ヴァインシュトラーセ」は、カタカナで書いても中点を入れて書かれていませんし、原語でも一続きに書かれていますので、「コラム21」の書き方で書く場合には、一続きに書きます。

7.p93 2.自然名 【備考】

「鳶の湯、鳥の湯、熊の湯、谷の湯、熱の湯、上熱の湯(かみねつのゆ)、田中の湯」など、「~の湯」が付く場合、発音上の切れ目がなければ続けてもよいのでしょうか。
また、「蔦の湯温泉、鳥の湯温泉、熊の湯温泉、谷の湯温泉、熱の湯温泉、上熱の湯温泉、田中の湯温泉」というように後ろに温泉が付く場合はいかがでしょうか。

【A】

「~の湯」は、この【備考】の規則で考え、意味のまとまりがあるかどうかについては、「てびきQ&A」のQ80も参考になります。ここから考えると「ツタノユ、トリノユ、クマノユ、タニノユ、ネツノユ」と続けて書いてよいと思います。また、「田中の湯」は「田中」が3拍ですので、「タナカノ■ユ」になると思います。「上熱の湯」は「カミ■ネツノユ」と区切った方が良いと思います。
それに温泉が付いた場合は、「ツタノユ■オンセン」「タナカノ■ユ■オンセン」のように、「オンセン」の前でマスあけします。後ろに「オンセン」が付くことによって、前の部分のマスあけが変わることはありません。

8.p93 2.自然名 【備考】

時代小説の中に、橋の名前で、「二ノ橋」というのが出てきます。霊岸島の新川河岸にかかる橋のようです。調べてみると、新川には西から「一ノ橋」「二ノ橋(新川橋)」「三ノ橋」という橋があるということです。数字でいいかと思いますが、切れ続きはどうなりますか。
建造物は固有名詞の切れ続きと同じと考えるということですが、語例の「1の■もん」と同じと考えて「2の■はし」にするか、「2のまる」と同じで「2のはし」と続けるのか悩んでいます。
他にも竪川に架かる橋で隅田川から順に「一之橋」「二之橋」…「五之橋」というのもあります。

【A】

川にかかる橋の順番を示しますので、数字で書いてよいと思います。
「橋」は2拍でも自立性の高い名詞ですので、区切って書いた方がよいと思います。
二の丸、三の丸の場合は、一般的によく用いられている語であると同時に、この場合の「丸」はそれだけでは自立しない用い方ですので、続けて書きます。

9.p94 3.地名・自然名に続く言葉 【処理】

地名や自然名の普通名詞部分の外来語が2拍以上であれば区切って書くとあります。アルプスの「モンブラン(Mont Blanc)」の場合、山を表すフランス語の「モン(Mont)」が2拍なので、「モン■ブラン」と区切るのでしょうか。それとも、用例にあるような英語由来の「シティ」「ベイ」と違い、フランス語の「モン」は日本語として定着していない(自立していない)、あるいは一般的に広く「モンブラン」と一続きの読みで定着していると考え「モンブラン」と続けるのでしょうか。
関連して、自然名ではありませんが、点ナビにある建造物名「モンサンミッシェル(Mont Saint-Michel)」「モン■サン■ミッシェル」についても説明していただけますか。

【A】

この処理は、用例にあるようなごく一般的な普通名詞で、日本語としてなじみの深い外来語を想定しています。フランス語やイタリア語などの原語まで遡って考えるのではありません。「モンブラン」は一続きに書きます。
「モン■サン■ミッシェル」は建造物名ですので、「その他の固有名詞」に入ります。「Mont Saint-Michel」は、「山」と大天使「サン■ミッシェル」から成っていますので、それぞれに区切って書くと思います。

10.p94 3.地名・自然名に続く言葉 【処理】

外国地名の分かち書きについてですが、原本に「フロリダ州の、カーティス・ベイ」とありまして、点訳者は中点のところで区切りました。1校の校正者は、「てびき」に載っている「トーキョーベイ」は区切ることができるけれど、外国の地名の場合は、2拍以下のまとまりは続けて書くとしました。
「トーキョーベイ」はベイを区切りますが、外国の地名のベイも区切ってよろしいのでしょうか。

【A】

カーティス・ベイは湾の名前のようですので、カーティス■ベイとなります。
「3拍以上の意味のまとまりが二つ以上あれば、その境目で区切る」のは「地名」です。湾の名前は、川、峠、岬などと同様に「自然名」になります。「てびき」p93以降を参照して、この場合は、p94【処理】に準じてよいと思います。ここには日本か外国かの区別はありません。

3 その他の固有名詞

1.p94 1.その他の固有名詞

用例で「サッポロ一番」は、数1バンとなっています。固有名詞ですが数字で書く理由をお尋ねします。

【A】

商品名の由来を見ても、「一番初めに開発され、一番おいしい」など「一番」という数的な順番の意味合いが強いですし、分かりやすいと思いますので、商品名であっても、数符を使って表した方がよいと判断しました。

2.p94 1.その他の固有名詞

用例の「ストーンヘンジ」は、「ストーン」と「ヘンジ」の拍数や意味のまとまりからいって、区切ることはできないのでしょうか。

【A】

ストーンヘンジ(Stonehenge)は、語源から見ると「ストーン」と「ヘンジ」には分けにくい言葉のようです。英語に「ヘンジ」という語はありますが、これは「ストーンヘンジ」から逆成された語で、「土塁、周溝」を指し、「ストーンヘンジ」の「ヘンジ」は、古英語の「張り出したもの」という意味で、もともとはスペルも異なります。ですから「ストーンヘンジ」は一続きに書きます。

3.p94 1.その他の固有名詞

オックスフォード大学とケンブリッジ大学を合わせた呼称、オックスブリッジは一続きに書いてよいでしょうか?

【A】

確かに迷いますが、イギリスのオックスフォード・ケンブリッジ両大学の併称のようですので、オックス■ブリッジと区切って書いた方がよいと思います。オックスフォード生地のことを略してオックス生地ともいい、オックスはオックスフォードを略した語として自立性があると考えていいと思います。このことからも、区切って書いた方が分かりやすいと思います。

4.p94 1.その他の固有名詞

「プレクストーク PLEXTALK」は、商標名なので、一続きに書くのでしょうか? 「パワーポイント PowerPoint」や「メディアプレイヤー MediaPlayer」など、パソコン関係のソフト名の切れ続きはどうなりますか。

【A】

商品名ですので、p94の本則にあるように、この場合は複合名詞の切れ続きの規則に従って書きます。
プレクストーク(3拍以上の意味のまとまりが二つ以上ないので一続き)
パワー■ポイント
メディア■プレイヤー
となります。

5.p94 1.その他の固有名詞

会社や芸能事務所を表すプロダクション名のマスあけ、プロダクションを略してプロとなった場合のマスあけをお尋ねします。
勝プロダクション 勝プロ
虫プロダクション 虫プロ
ホリプロダクション ホリプロ

【A】

「勝」「虫」「ホリ」は、この場合、固有名詞の固有の部分になります。「固有名詞」の項の前文(p87)にありますように、「勝プロダクション」「虫プロダクション」「ホリプロダクション」は、全体として固有名詞ですが、固有の部分と「プロダクション」という普通名詞の部分から成り立っています。そのうちの固有の部分は拍数にかかわらず、自立した意味の成分(区切る成分)になります。
カツ■プロダクション
ムシ■プロダクション
ホリ■プロダクション
となります。
「プロ」は2拍ですが、外来語の略語は「アナ」なども前に固有名詞が付いても区切って書きますので、「カツ■プロ」「ムシ■プロ」「ホリ■プロ」と書いてよいと思います。

6.p94 1.その他の固有名詞

「ラ・サール高校」は、ラ・サールの部分が人名由来なので、「シャルル・ド・ゴール空港」のように、「ラ■サール■コーコー」と書くのか、「モナリザ」のように一般的に続けて発音しているので「ラサール■コーコー」と続けて書くのか、どちらがよいでしょうか。

【A】

「ジャン・パディスト・ド・ラ・サール」という名前の一部をとって学園名にしてありますので、「ラ■サール■コーコー」と書くのがよいと思います。

7.p94 1.その他の固有名詞

「ミキハウス」「タマホーム」「ドンキホーテ」「セガ・サミー」などの会社名は、どのように分かち書きを判断したらよいでしょうか。

【A】

「ミキハウス」「タマホーム」は2拍プラス3拍の語ですが、「ミキ」「タマ」が固有名詞の固有の部分で、「ハウス」「ホーム」が普通名詞の部分になります。固有名詞の固有の部分は1拍でも自立可能な成分であり、普通名詞の部分が3拍以上ですので、「ミキ■ハウス」「タマ■ホーム」と区切って書きます。「ミキハウス」は、三起商行株式会社の「三起」を取ったブランド名。「タマホーム」 は、創業者の名字「玉木」から取ったもので、「タマホーム」のほか、「タマファイナンス」「タマアパレル」「タマリビング」などの関連会社があるようです。
「セガ・サミー」は、セガとサミーという二つの会社が統合してできたグループ会社です。一体化して「セガサミー」とも表示されているようですが、現在はもとの固有名詞がはっきりしているので、「セガ■サミー」と区切って書いた方がよいのではないでしょうか。カタカナで表記する会社で、合併して、もとの会社名が並べてあるものとして、「タカラ■トミー」「マルハ■ニチロ」「バンダイ■ナムコ」などがあるようです。
「ドンキホーテ」は、セルバンテスの名作「ドン・キホーテ」に由来しているので、「ド ン■キホーテ」でよいと思います。

8.p94 1.その他の固有名詞

建造物名などは複合名詞や人名・地名などの固有名詞の切れ続きの規則に従って書くことが原則とありますが、「アブ・シンベル宮殿」「サン・マルコス大学」は、「アブシンベル」「サンマルコス」を続けて書きますか。

【A】

「サン・マルコス大学」は、外来語の場合2拍でも相手が4拍以上であれば区切って書きますので、「サン■マルコス■ダイガク」となると思います。
アブ・シンベル宮殿」は、「アブ・シンベル」にある宮殿のようです。「アブ・シンベル」は地名ですので、p92【処理3】の外国地名の書き方に従って、「アブシンベル」と続けた方がよいと思います。ですから「アブシンベル■キューデン」となります。

9.p94 1.その他の固有名詞

市立の施設に「生涯学習プラザ」があります。
市内に12カ所あり、「~(地区名)生涯学習プラザ」となっていますが、それぞれ愛称がつけられています。「梅プラザ」の場合、『てびき』p95の「森ホール」を参考にすると「ウメ■プラザ」となると思いますが、「うめぷらざ」で固有名詞として認識されています。やはり原則どおり、点字では区切るべきでしょうか。

【A】

「ウメ■プラザ」となります。
全体で固有名詞ですが、「プラザ」が3拍の普通名詞部分になっていますので、固有名詞の固有の部分である「ウメ」とは区切って書きます。
全体で固有名詞であっても、普通名詞部分の拍数によって切れ続きが異なってきます。
神奈川県に「たまプラーザ」という地名があり、「たまプラーザテラス」「たまプラーザ駅」なども省略して「たまプラーザ」といいますが、「プラーザ」は普通名詞部分ですので、「タマ■プラーザ」となります。「プラーザ」も省略されて「たまプラ」となれば一続きになります。
NHK教育テレビが「Eテレ」「Eテレビ」という略称を用いていますが、「Eテレ」であれば、つなぎ符をはさんで「E=テレ」と一続きに書きますが、同じ略称でも「E■テレビ」となります。

10.p94 1.その他の固有名詞

西消防署の西は固有の部分なのでマスあけとなっています。
西九条駅は続きます。これは地名とするのですか。
にし茶屋街、西茶屋資料館、西料亭組合 など「にし」は固有の部分となるのでしょうか。

【A】

「にし茶屋街」は、全体で固有名詞で、「にし茶屋」が固有名詞の固有の部分、「街」が固有名詞の普通名詞部分になります。「にし」は2拍ですので、「ニシチャヤ」は一続きになります。
「西茶屋資料館」も同じになります。「ニシチャヤ■シリョーカン」
「西料亭組合」という日本食のお店で、建物は、芸妓衆の稽古場兼管理事務所としても使用されているようです。全体で固有名詞の固有の部分ですので、全体を複合名詞の切れ続きの規則に従って書きます。「ニシ■リョーテイ■クミアイ」と書きます。
「西消防署」は、「消防署」が普通名詞で、固有の部分は「西」だけですので、「ニシ■ショーボーショ」となります。
「西郵便局」「西病院」なども「西消防署」と同じです。「北高校」も「高校」が普通名詞の部分、「北」が固有の部分ですので「キタ■コーコー」となります。
「西九条駅」は、「駅」が普通名詞で、「西九条」が固有の部分ですので、「ニシクジョー」となります。

11.p94 1.その他の固有名詞

新潟県知事選挙、新潟県議会議員選挙の分かちを教えてください。
「県」が新潟につくのか、後ろにつくのか点字表記の語例では判断できませんでした。

【A】

新潟県■知事■選挙  新潟県■議会■議員■選挙 となります。
県知事、県議会だけのときは一続きですが、前に県名が付いて新潟県知事、新潟県議会となった場合は、新潟県■知事、新潟県■議会と書きますので、後ろに「選挙」が付いても、その前のマスあけは変わりません。
東京都、大阪府、北海道の場合も、それぞれ、東京都の知事、大阪府の知事、北海道の知事ですので、東京都■知事、大阪府■知事、北海道■知事となります。
議会についても、それぞれ、「~県(都、府、道)の議会」ですので、「~県(都・府・道)■議会」となります。市の場合も、新潟市■議会 となります。
なお、「てびき第3版 ハンドブック3章編」p65「コラム 大阪市長vs東京都知事」も参照してください。

12.p94 1.その他の固有名詞

「中国の明清時代」の明清はどのように表記すればよいのでしょうか。
明も清も固有名詞ですから、ミン■シンと切ってよいのでしょうか。それとも「米英」は続けるが、「米英ロ」は切ると同じに考えて続けるのでしょうか。

【A】

「ミン■シン■ジダイ」と書くのがよいと思います。
明・清・唐・隋などは国名ですので、拍数に関係なく区切る成分になります。日・英も、「ニチエイ」は続けますが、「ニホン■イギリス」となれば区切って書きます。
語例集には、「呉■楚■七国の■乱」がありますので、そちらもご確認ください。
なお、「米英ロ」を区切るのは、要素が三つになるためです。「ベイエイ」「ベイロ」「エイロ」は続けますが、「ベイ■エイ■ロ」は区切って書きます。「日独伊」も「ニチ■ドク■イ」となります。

13.p94 1.その他の固有名詞

国名は固有名詞なので「日本■国軍」とマスあけするのかと思ったのですが、「明国軍」がひと続きになっています。拍数で判断するということなのでしょうか。
原本に「イタ国」「イタ国王」「イタ国軍」という言葉が出てきます。これは伊都国(イトコク)の外国語読みらしいのです。「イタ■コクオー」「イタ■コクグン」とするべきか続けるべきかどちらでしょうか。
他に、朝鮮半島のことを「韓半島」というらしいのですが、「カン■ハントー」と区切ってよいのか悩みます。フォーラムに「漢■王朝」「明■清■時代」「漢■民族」などありますが、2拍の国名の扱いについて教えてください。

【A】

イギリスやアメリカも、英、米と略記した場合、それだけでは、国を表していることも、言語などを表していることもありますので、国を表す場合は、英国、米国が一つのまとまりとなります。イギリス国王は、イギリス■コクオー、英国王は、
英国の王ですので、エイコクオーとなります。同じように、イギリス国軍はイギリス■コクグン、英国軍はエイコクグンとなります。
明は単独で明王朝を表し、「明■清■時代」のように区切りますが、「明国軍」は秀吉の朝鮮出兵に伴って敵対した中国軍に対する呼称で、日本では、当時の中国を明国と呼んでいたことから、「明国の軍」と捉えるのが自然だと思われます。
伊都国も、イタ、イトと単独で言うことは少なく、一般に「~国」を付けて呼んでいたようですので、「イタ国王」「イタ国軍」と続けるのがよいと思います。
韓半島は、「韓」が固有名詞で「半島」が3拍以上の普通名詞ですので、「韓■半島」となります。

14.p94 1.その他の固有名詞

競馬の本を点訳しています。馬名の表記はどのように考えればよいですか。
ダンシングブレーヴ、マエコーリニア、トウショウボーイなどは馬主や牧場名で判断してマスあけしましたが、シャーラスタニ、アカテナンゴなど判断できない場合はどうしたらよいでしょうか。

【A】

競走馬も複合語の切れ続きの規則に準じて書きますので、
ダンシング■ブレーヴ、マエコー■リニア、トーショー■ボーイ
と区切って書いてよいと思います。
「トウショウボーイ」の「トウショウ」は「藤正」から来ていますので、「トーショー」となります。
「マエコーリニア」は、競走馬データベースによると「マエコウリニア」ですが、「マエコウファーム」は「前田幸治」から来ていますので、「マエコー■リニア」と長音になります。
「シャーラスタニ」(Shahrastani)は、イギリスの競走馬、「アカテナンゴ 」(Acatenango)とは西ドイツの競走馬で、中に外来語としての意味のまとまりはありませんので、一続きに書いてよいと思います。

15.p94 1.その他の固有名詞

「バラ革命」(2003年にジョージア(グルジア)で起こったエドゥアルド・シュワルナゼ大統領を辞任に追い込んだ暴力を伴わない革命)の切れ続きはどうなりますか。
バラは2拍和語ですが、この事件名を固有名称とするなら、「バラ」を固有部分になるとして、「バラ■カクメイ」と区切ることはできるでしょうか。「ワニ■ブックス」や「うめ■プラザ」から判断しました。

【A】

「バラ革命」は一続きに書いてよいと思います。
「バラ革命」も「ワニブックス」「うめプラザ」も固有名詞です。ですが、それぞれ語のつながりに違いがあります。
「ワニブックス」「うめプラザ」の「ワニ」「ブックス」「うめ」「プラザ」は、普通名詞ですが、それぞれに命名自体に固有の意味が込められています。
「ブックス」「プラザ」も単に、書籍や広場の意味ではなく、出版社、生涯学習の場などの意味が込められていますし、「うめ」は植物の「梅」ではなく、地名の「梅ヶ丘」や廃校になった学校名(梅香小学校)から由来するものですので、「ワニ」「ブックス」「うめ」「プラザ」がそれぞれに自立する成分と言えます。
それに比して、「バラ革命」「バラ戦争」の「革命」「戦争」にはこのような要素がなくごく一般の普通名詞で、バラの花のエピソードから付けられたバラの愛称も日本語ではバラですが別の国ではその国の言葉になるもので、固有名詞ですが、一般の複合名詞の切れ続きの判断基準で判断してよいと思います。
「ワニブックス」や「うめプラザ」は英語に訳した文中でもWani、Umeとされるだろうと思います。

16.p94 1.その他の固有名詞

会津本郷焼の窯元「樹ノ音(きのおと)工房」です。名前の由来は、ご主人の名前「大寿(たいじゅ)」を「大樹」と書き換えて、その「樹」と奥さんの名前「朱音」の「音」から、「樹ノ音工房」としたとのことで、「金の星社」とちがい、「樹」と「音」のいずれにも語本来の意味がないと判断し、「キノオト」と続けてよいでしょうか。
また、北海道石狩市に「飛ぶ鳥農場」というのがあり、奥さんの名前「飛鳥」から「飛ぶ鳥」としたとのこと、こちらも「トブトリ」と続けてよいでしょうか。

【A】

ご質問の団体名は「キノ■オト」「トブ■トリ」と区切って書きます。
団体名などには地名や人名がそのまま使われる場合もありますが、ご質問のケースでは、人名を象徴する漢字と、それを組み合わせて作られた言葉の持つイメージなども名称の要素になっていると思います。
点字は表音文字ですので漢字を見て理解する部分を表現することはできませんが、読む人が「樹ノ音」「飛ぶ鳥」という言葉を正しく受け取れるように書くことが、名称に込められた意図を伝えることになります。文節分かち書きに従って「ノ」の後ろで区切ることによって助詞を含む言葉として読み取りますし、通常の分かち書きルールに従って「トブ■トリ」と区切ることで、語の成り立ちや意味をスムーズに理解することができます。一般に造語も含めて普通名詞を団体名などに用いている場合は、由来に関わらず、その言葉本来の分かち書きをします。
ただし、「青い■鳥」は区切りますが「青い鳥園」のように造語要素が続いて、区切ることによって一方が不安定な状態になり意味の理解を妨げるような場合は続けて書きますが、今回はこのケースには該当しません。また該当する場合でも、命名の由来によってマスあけを変えるわけではありません。

17.p94 1.その他の固有名詞

語句の後ろに「内」が続く場合についてです。「伝法院内」という語句が出てきます。
フォーラム語例を見ると、「図書■館内」「彰考■館内」とあります。「彰考館」は固有名詞です。同様に考えると「修道■院内」があり、「院内」は自立していると考え「伝法■院内」になるのかなと思う反面、「伝法院」は固有名詞なので、その中で区切ってもいいのかと迷うのですが。
「彰考■館内」も「彰考館内」と続けるのではと思うのですが。
その辺の考え方を教えていただけますでしょうか。

【A】

固有名詞の多くは、固有の部分と普通名詞の部分から成り立っています。「彰考館」の「彰考」、「伝法院」の「伝法」は固有名詞の固有の部分になりますが、「館」「院」が普通名詞で、後ろの「館内」や「院内」が自立する意味のまとまりであれば、前の語と後ろの語との結びつきにもよりますが、一般には、区切って書くことになります。
館内や院内、所内、市内、県内などは、自立する意味のまとまりとして、区切る成分と考えてよいと思います。

18.p96 1.その他の固有名詞 【備考3】

以下のような略語を含む語のマスあけについて教えてください。
①北海道米穀小売商連
②京都府米穀商組
③香川県丸亀市衣料品商組
④徳島県食糧卸組連
⑤東京毛皮商工協組
(「日本迷信集」今野圓輔・著 p152-153の部分)
「商連」は商業組合連合会・商工団体連合会・商店街連合会等いろいろな語の略で用いられ「商組」は商業(協同)組合・商工組合、「組連」は組合連合会、「協組」は協同組合、また、「協組」に関しては法人等略語一覧表に記載されていました。
それぞれの略語「商連」「商組」「組連」「協組」は前の語に続けるのでしょうか。
略語でも見出し語になっているなど自立した語であれば前を切るのだろうと思うのですが、法人等略語一覧に載っている「協組」の⑤は切っていいのでしょうか。
①~⑤は、それぞれどのようになるのでしょうか

【A】

これらの略語は、元の語句の意味を考慮して切れ続きを考えます。
株式会社の株、社会福祉法人の社福などと同じ考えになります。
「商連」「商組」「組連」「協組」すべて、前を区切って書いて良いと思います。

19.p92~95 2 地名、3 その他の固有名詞

固有名詞中の冠詞や前置詞はどのように考えたらよいでしょうか。レストランや通りの名称に使われる中点は、単に一マスあけにするという考えではいけませんか?
(店舗名)ラ・リュムリ ラ・ジュワ・ド・リル
(駅名)サン・ジェルマン駅
(通り名)ディエゴ・フェレ通り(Diego Ferre)
ホセ・パルド大通り(Av. Jos’e Pardo)
(島名)エル・フロント島 (El Flont’on)

【A】

建造物名や店舗名などは、複合名詞と同じように考えます。これらは外国語をカタカナ書きしたものとして、外国語での区切り目を意味のまとまりとみなしてよいと思います。
店舗名「ラ■リュムリ」「ラ■ジュワ■ド■リル」
駅名「サン■ジェルマンエキ」
通り名「ディエゴ■フェレドオリ」「ホセ■パルド■オオドオリ」
外国の地名・自然名は、3拍で区切るのが原則ですので、「エルフロントトー」と書くことになります。

20.p92~p95 2.地名、3.その他の固有名詞

以下の2拍の語は区切りますか?
リッツ・オーフスシティ (デンマーク・オーフスのホテル)
キャナルシティ (福岡の商業施設)
久留米シティプラザ
アミュプラザ (JRの商業施設)
シアヌークビル (カンボジア。ビルは仏語で街。)
コンポンソム (カンボジア)
シャーロッツビル (アメリカ。ビルは仏語で街。)
ジョホールバル (マレーシア)
スリジャヤワルダナプラコッテ (スリランカ。スリは聖なる、ジャヤワルダナは人名、 プラは街、コッテは元の街の名)
ウェーブヒル牧場 (オーストラリア)
ブロードウェイ (アメリカ。ブロードは広い、ウェイは道。)

【A】

p94【処理】は、地名や自然名の普通名詞部分が外来語で表されている場合を述べています。また、p94「3 その他の固有名詞」には団体名・建造物名について述べています。ご質問に挙げられている語は、種々の固有名詞を含んでいますので、それぞれに合わせて判断することになります。
挙げられている語のうち、「シアヌークビル、コンポンソム、シャーロッツビル、ジョホールバル、スリジャヤワルダナプラコッテ」は地名ですので、p92【処理3】に従って、3拍以上の意味のまとまりが二つ以上あれば区切って書き、2拍以下の意味のまとまりは続けて書きます。これらは、語のすべてが固有名詞部分で、「シティ」などの普通名詞が付いているわけではありません。
シアヌークビル(カンボジア 地名)
コンポンソム (カンボジア 地名)
シャーロッツビル(アメリカ 地名)
ジョホールバル (マレーシア 地名)
以上は一続きに書きます。
スリジャヤワルダナプラコッテは、「スリジャヤワルダナプラコッテ」と一続きに書くのが原則ですが、16マスも続き、長すぎて読みにくいので、中点の入る位置「スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ」に従って、「スリ■ジャヤワルダナプラ■コッテ」と書くこともできると思います。
残りは、ホテル名や商業施設、牧場名など「その他の固有名詞」に当てはまりますので、それぞれのルールに基づいて考えます。
リッツ■オーフス■シティ(デンマーク・オーフス市にあるホテル)
キャナルシティ■博多(福岡の商業施設、5拍なので一続き)
久留米■シティプラザ(久留米市総合文化施設)
アミュプラザ(JR九州系列のファッションビル)
ウェーブヒル■牧場(オーストラリア ノーザンテリトリーにある牧場)
「ブロードウェイ」については、「ブロードウェイ」で通りの名称、地名になっているので、一続きに書いてよいと思います。

21.p96 「コラム22」

韓国の固有名詞について、コラムでは、「人名・地名は原音で書くのが原則です。日本での読みが定着している場合は原音の後ろにカッコ類で囲んで日本での読みを書きます」とあります。
(1)「原音で書くのが原則」は人名・地名に限定されますか。組織名や建造物名などの扱いはどうなるでしょうか。
(2)ここの用例に、「李承晩ライン」の記載があります。李承晩は日本での読みが定着していると思われますので、コラムの書き方に従うと「イ■スンマン(リ■ショーバン)■ライン」となるはずです。しかし、後に平和線(ピョンファソン)と改称され、現在は歴史的な日本での読みのみが残っているための表記でしょうか。「李承晩」を書く場合、初出時は「イ■スンマン(リ■ショーバン)」、二回目以降は「イ■ スンマン」、李承晩ラインは「リ■ショーバン■ライン」と書き分けることになるでしょうか。
(3)この本の固有名詞は、韓国語のルビ、日本語のルビ(例:青瓦台 (セイガダイ)韓国の大統領府)、ルビなし(例:板門店)などと統一されていません。「Q&A」などでは「ルビを鵜呑みにせず調査することが望ましい」とあります。(1)と重複しますが、人名・地名に限らず出来るだけ調査し原音で書くという姿勢で良いでしょうか。

【A】

(1)原則としては、組織名や建造物名であっても原音で書くことになります。
(2)「李承晩」を「リ■ショーバン」と書くと言っているのではなく、「コラム22」の「歴史的な事件や原文の文脈上当時の読み方が適切な場合」の例としてあげています。「李承晩」は人名としては「イ■スンマン」と読みます。
(3)原則として原音で書くことになりますが、「青瓦台」、「板門店」を「チョンワデ」「パンムンジョム」と書かれているよりも「セイガダイ」「ハンモンテン」の方が日本人にはなじみがあって分かりやすいと思いますので、初出の時に原音の後に第1カッコで囲んで日本の読みを書くなどの工夫が必要と思います。
原本で韓国語のルビが付いている場合と日本語のルビが付いている場合とで、原本に意図がある場合は、点訳書凡例で断って、日本語のルビの場合は、その通りに書く方法もあるのかもしれません。
朝鮮の固有名詞の場合は、裁判などの影響もあって、教科書でも原音のルビも付くようになりましたが、日本読みの方がなじみのあることも多いので、点訳書凡例などを活用して読みやすい点訳を心がけることが必要だと思います。

22.p96 「コラム22」

台湾の人名・地名・建物名・組織名・書名などについて、「コラム22」には「中国の人名や地名は、漢字の音読みとするか、日本で定着している原音読みとします」とあります。
①台湾も中国に準ずると考えてよいですか?

②原音ルビが「唐」という姓に「タン」とついていた場合はルビがついていない「唐」という姓はすべて「タン」で統一して良いでしょうか。

③なじみのない漢字、たとえば「杜奕瑾」は、中国語⇒カタカナ変換ツールでは「ドゥ イージン」となりますが、音読みでは「奕」は「ヤク・エキ」「瑾」は「キン・ゴン」となります。変換ツールで原音に変換した方が悩まなくていいのですが、いかがなものでしょうか。また台湾はボポモフォというピンインとは違う発音らしいですがこれは無視していいですか。

④台湾語の合言葉などはどう点訳すればよいでしょうか。
禦敵従厳(誰でも敵になる可能性がある。~以下 略)
中国語変換ツールで変換すると「ユーディツォンイェン」となります。音読みだと「ギョテキ ジュウゲン」でしょうか。
社名「資訊人出版社」やハンドルネーム「我愛大象大象我愛」なども原音読み(変換ツール)か音読みかどちらがいいでしょうか。

【A】

①台湾の人名・地名についても、中国の固有名詞の処理に準じてよいと思います。一般には、漢字の音読みとするか、日本で定着している原音読みとしますが、原音のルビが付いていれば、ルビの読みを取ります。また、現在活躍している人物で、原音読みの方がなじみがある場合は、原音読みをしてよいと思います。

② 中国・朝鮮姓として「唐」は「タン」と読むのが一般的のようですので、ルビがなくても姓としては「タン」と書いてよいと思います。

③ ネットで見ると、杜 奕瑾(トゥ・イーチン、プログラマー)とあります。原音読みでよいと思います。

④ 固有名詞と違い、慣用句や故事などは原音読みをしても、点字で読んで見当が付きませんので、文脈によって、原音を先に書いてカッコ内に日本語の音読みを添えるか、日本語の音読みを書くか、どちらかにするのがよいと思います。そして原文にその意味が書いていない場合は、点訳挿入符で囲んで、簡潔に意味を添えた方がよいと思います。
ご質問の語の場合も、漢字を音読みし、適宜まとまりを判断して点訳するのがよいと思います。
「ギョテキ■ジューゲン」として、原文にある「誰でも敵になる可能性がある」
を添えればよいと思います。原文に意味が書いてない場合は、「テキヲ■フセギ■イマシメニ■シタガウ」など、漢字から読み取れる意味を簡単に補うか、文脈によっては「カンジ■数4ジ」などの補足でもよいかもしれません。
会社名・ハンドル名などは、漢字の音読み、または現地音の方が処理しやすい場合はそれでもよいと思います。
ハンドルネーム「我愛大象大象我愛」は「象さん大好き」のような感じなのかもしれませんが、ハンドルネームに込めた意味が文脈上とくに意味を持つ場合を除いて、そこまで説明しなくてもよいと思います。
この場合「ウォ■アイ■ダーシアン■ダーシアン■ウォ■アイ」または、「ガ■アイ■ダイゾー■ダイゾー■ガ■アイ」などとし、必要であれば漢字の意味を補ってはいかがでしょうか。

なお、③で、「奕瑾」イージン、イーチンなどの違いがありますが、そもそも中国語で「ジ」と「チ」の中間の音ですので、カタカナで書く際には当然幅が出てくる部分になります。

23.p96 「コラム22」

常新港(チャン・シンガン)「オレのジタバタ記」を点訳しています。作者紹介の所で中国の文学賞や中国語の書名がでてきます。「てびき」の「コラム22」にあるように、「調査しても原音の正確な読みが分からない場合は、漢字の音読み」で書いてもよいでしょうか。

①莊重文文学賞「ソー□ジューブン□ブンガクショー」
②宋慶齢児童文学賞「ソー□ケイレイ□ブンガクショー」
③冰心図書賞「ヒョーシン□トショショー」

辞典やネットなどをいろいろ調べましたが、①の読みは探せませんでした。②、③は、県立図書館のレファレンスサービスで調べてもらった回答で『日本大百科全書』等に「ソンチンリン」「ピンシン」のカタカナ表記があったそうです。

②宋慶齢児童文学賞「ソン□チンリン□ブンガクショー」
③冰心図書賞「ピンシン□トショショー」
が、いいでしょうか。

また、書名ですが、
①「咬人的夏天」「コージンテキ□カテン」
②「風中的図景」「フーチューテキ□ズケイ」
③「逆光的魚」「ギャッコーテキ□ギョ」
で、いいでしょうか。

【A】

原音の読みが分からない場合、晴眼者も中国人名は一般に漢字の音読みをすると思われますので、人名を冠した文学賞の人名部分も、漢字音読みで点訳してよいと思います。
今回、ソン■チンリン、ピンシンの読みが判明していますので、現音読みで統一するのであれば、莊重文は、チュアン■チョンウェンが原音に近い読みになります。
チュアンとするかジュアンとするか、チョンウェンとするかジョンウェンとするかなどは、中国語を日本語のカタカナに置き換えるうえでの許容範囲内の相違になると思います。
①チュアン■チョンウェン■ブンガクショー
②ソン■チンリン■ジドー■ブンガクショー
③ピンシン■トショショー

書名も著者紹介に出てくるだけであれば、お書きになった処理で支障ないと思います。もし漢字から受け取れる直訳的な意味合いを伝えることが必要な文脈であれば
①は、ヒトニ■カミツク■ナツ
②は、カゼノ■ナカノ■フーケイ
③は、ギャッコーノ■ウオ
のような説明を点訳挿入符で補うことが考えられますが(中国語の「的」は、「~の」の意味で後ろの名詞にかかる働きで用いられることが多いようです)、今回はそこまでしなくてもよいのではないでしょうか。

24.p96 「コラム22」

韓国の地名、忠清南道、忠清北道などの切れ続きについて質問します。
広辞苑、日本国語大辞典などでは、忠清-南道となっていますが、韓国の地図では、Chunngchengnam-doとなっており、他にも〔忠清南〕道やチュンチョンナム-ドという表記も見られます。

【A】

韓国の地名は原音で書くことが原則になります。
韓国語の表記は漢字表記、ハングル表記、またローマ字的なアルファベット表記などがありますので、点訳では、漢字表記から意味のまとまりを考えてマスあけを決めるのが分かりやすいのではないかと思います。
チュンチョン■ナムド
チュンチョン■ブクド

25.p96 「コラム22」

中華料理名の「涼菜、熱菜、孔府家酒、神仙鴨子、白酒」などが出てきます。ルビがあるのは白酒(パイチュウ)だけです。ルビがないものは漢字の音読みで「リョーサイ」「ネツサイ」「コーフ■カシュ」「シンセン■オーシ」でよいでしょうか。本の中で原音読みと漢字の音読みが混じってしまってもよいでしょうか。

【A】

点訳書凡例で、「料理名で原語の読みが分からないものは、音読みにした」ことを断れば、原音読みと音読みが混じっても仕方がないと思いますが、中国料理名はネットなどで調査できるものも多いと思います。
涼菜(リャンツァイ)冷たい料理
熱菜(ルーツァイ) 温かい料理
孔府家酒 (ゴンフージャージュウ)白酒の一種
(孔府家秘蔵の酒とのことですので、一続きでよいと思います)
神仙鴨子 ( シェンシャン■ヤーズ)鴨の柔らか煮
などがネットに紹介されていますので、原音で点訳し、必要な文脈であれば「レイサイ」「オンサイ」「カモリョーリ」など、簡単な説明を補ってはいかがでしょうか。

26.p96 「コラム22」

韓国の人名です。原本に「沈寿官(ちんじゅかん)」と仮名がふってあります。
「伸守吟・金慶山・白考基・朴養真」などルビがないのは日本語読みで表してよいのでしょうか。
原本は、司馬遼太郎著「故郷忘じがたく候」です。

【A】

朝鮮人名は原音で書くことが原則なのですが、このことがマスコミなどでも徹底されたのは戦後しばらくたってからのことで、それ以前は、一般に漢字の音読みで読まれていたと思います。
ご質問の原本は、それ以前の内容で、沈寿官(ちんじゅかん)とルビが振ってあるとのことですので、漢字の音読みで統一してよいのではないかと思います。
「てびき」p96「コラム22」の最後の一文「歴史上の事件や、原文の文脈上当時の読みの方が適切な場合は、日本での読みを書いてよいでしょう」に当てはまると思います。

27.p96 「コラム22」

李恢成著『伽耶子のために』の朝鮮の地名についてお聞きします。
地名にはすべて朝鮮語のルビがありますが、その中で「済州島(ジェジュド)」「咸鏡北道(ハンギョンブッド)」と書かれたルビがあります。
大辞林には「チェジュド(済州島)」「ハムギョンブクト(咸鏡北道)」という見出し語があります。検索サイトでも、こちらの読みが優勢のように思われます。
微妙な発音の違いかもしれませんが、この場合、原文のルビでいいか、一般的なルビにした方がいいか、どのようにするといいでしょうか。

【A】

朝鮮の地名にはすべてルビがあるとのことですので、ルビの通りに書いてよいのではないでしょうか。
ジェとチェやブッドとブクドのような違いは、バイオリンとヴァイオリンのように、外国語をその発音に近いカタカナに置き換える上での書き手による違いとして、原文通りに書くことが原則になると思います。
韓国の地名は1980年代後半から現地音で書くようになりましたので、カタカナで書く場合の書き方も広く定着しましたが、この作品は1980年代のもののようですので、まだいろいろな表記がされていた頃だったのではないでしょうか。そうした時代的な事情もあると思いますので、現在定着している読み方に統一しなくてもよいと思いますし、それによって極端にわかりにくくなることもないと思います。

28.p96 「コラム22」

司馬遼太郎著『故郷忘じがたく候』の点訳について質問します。
豊臣秀吉に朝鮮から日本国内に連れて来られた朝鮮人陶工の後日譚です。
(原文)
彼らの故郷は全羅北道南原(ルビ:ぜんらほくどうナモン)城である。城の東に雲峰鳥嶺(ルビなし)をひかえ南に三浪大江をめぐらし、北東の天に蘆嶺(ルビ:ろれい)山脈を望んでいる。
全羅北道南原→チョルラ■ブクト■ナモン
鳥嶺→チョリン
蘆嶺→ノリョン
と表記してよいでしょうか。
また、三浪大江 は 数3ロー■タイコーでしょうか。

【A】

司馬遼太郎著『故郷忘じがたく候』は、16世紀末が舞台で、初版発行が1968年のようです。このころは、朝鮮の地名は原音ではなく日本語読みされていたと思います。示してくださったルビをみても「ぜんらほくどう」「ろれい」と振ってあるようですので、小説が書かれた当時の読みでよいのではないでしょうか。
全羅北道南原 → ゼンラ■ホクドー■ナモン
雲峰鳥嶺 → ウンポー■チョーレイ
蘆嶺 → ロレイ
三浪大江 → 数3ロー■タイコー
と書いてよいと思います。