第4章 記号類の使い方(2)

その2 囲みの記号

1.p104 1.カギ類

同じ人が続けて話している場面で段落が変わると開きカギがあるのですが、それに対する閉じカギがないのです。
上下巻の翻訳もので上巻に6ヵ所あります。
点訳担当者は前にも同じような経験があり、その当時、調べてみたところでは原書にも閉じカギがなかったそうです。翻訳小説にはありがちなのでしょうか。
閉じカギがないのは触読される方には混乱のもとなのでしょうか。原本にはなくても閉じカギを追加したり、不要と思われる開きカギを削除したりして良いのでしょうか

【A】

英語では、複数の段落にわたる一人のセリフ、あるいはひとまとまりの引用文をコーテーションで囲む場合、各段落の始まりに開き記号を書き、最後の段落の終わりにだけ閉じ記号を書くことが多くあります。
翻訳物で、これをそのまま日本文にあてはめて、カギを用いている場合がありますが、日本文ではこのようなカギの用い方はしませんので、点訳では、始めと終わりのカギだけを書きます。
なお、補足ですが、英語点訳では、原文の通りに点訳しますが、日本語では、カギの開き記号だけがあって閉じ記号がないのは、日本語の文としてはあり得ないので非常に気になると思います。

2.p104 1.カギ類

1.原本で通常の会話文は「 」で囲まれ、電話の相手の会話は『 』で囲まれています。『 』内部には「 」で囲んだ語句もあるのですが、原本通り『 』にふたえカギを用いてよいでしょうか。または別の処理をした方がよいのでしょうか。
2.原本では一貫して〈 〉で囲まれている語句がありますが、点訳上、地の文に出てくる場合と、会話カギの中に出てくる場合で、異なる囲み記号になってもよいのでしょうか。

【A】

1.ふたえカギは、カギの中にカギが必要な場合と「てびき」p106【備考】の場合に用いますので、会話文に『・・・』が用いられている場合は第1カギに置き換えるのがよいと思います。文脈上、特殊な場合に『・・・』が用いられるなど、区別の必要があれば、第2カギを用います。その場合は、内部の「~」をふたえカギに点訳するのがよいと思います。
2.一般に会話文に第1カギを用いた場合、そのほかの強調には第2カギを用いるのが自然ですが、原文に使われているカギの種類が多い場合は、会話文以外の強調に第1カギと第2カギを振り分けて用いることもできます。
〈・・・〉に第2カギを用いた場合、第1カギの中でも第2カギを用いることができますので、ほかに支障がなければ、地の文でも、第1カギの中でも第2カギを用いるのが最もよいと思います。
〈・・・〉に第1カギを用いた場合は、第1カギの中ではふたえカギを用いるのが
最も基本的な点訳方法ですので、異なる囲み記号を用いることになります。

3.p104 1.カギ類

「てびき」では、「基本的には第1カギを用いる」、「第1カギ、二重カギと区別して他のカギが必要なときは、第2カギを用いる」となっています。
この「区別して他のカギが必要なとき」とは、どのようなときなのでしょうか。
「てびき」p105 5番目の例《将来の“夢”を~》では、第2カギが使われていますが、「~」以外のカギ“~”〈~〉などが使われている箇所は、全て「区別して他のカギが必要なとき」になるのでしょうか。
原文で、特に区別が必要と思われる箇所ではなく「~」“~”〈~〉が取り混ぜて書かれているような場合も、第1カギと第2カギを使うべきでしょうか。
例 電話口の会話で、こちらは「~」、相手は〈~〉
会話は「~」、メールの文面は《~》
現在の会話は「~」、回想シーンでのセリフは“~”
会話は「~」を使った上で、地の文で商品名に〈~〉
言葉を強調する際の“~”は、上記てびきの“夢”と同じ用法かもしれませんが、今ひとつわかりません

【A】

第1カギは会話に使われることが多いので、会話文と区別して語句の強調などには第2カギが用いられることが多いと思いますが、原文によっても異なりますし、会話以外にも第1カギを用いることがありますので、それぞれの原文に応じて使い分けることになります。
厳密な使い分けのルールは決まっていませんので、第1カギでは足りないときに第2カギを用いるという基本的な考え方で判断してください。
挙げられた例で考えてみますと
電話口の会話で、こちらは「~」、相手は〈~〉 ⇒ 文脈で分かりますし、特に区別する必要が無ければ、ともに第1カギでいいと思います。
会話は「~」、メールの文面は《~》 ⇒ これも文脈で分かれば、ともに第1カギでいいと思います。もし、メールの文面が長く、行頭を下げて書いてあれば、引用文の書き方で、インデントを用い、カギを省略する方法もあると思います。
現在の会話は「~」、回想シーンでのセリフは“~”⇒ これも、文脈で分かれば第1カギでいいと思います。
会話は「~」を使った上で、地の文で商品名に〈~〉⇒ 商品名などを強調する場合は会話文とは異なりますので、一般的に第2カギを用います。
言葉を強調する際の“~”⇒ これも会話などに第1カギを使用していれば、第2カギを用いることが多いと思います。会話文が無い場合など、第1カギを用いる場合もあります。

4.p104 1.カギ類 (1)

第3版にあった「第2カギは“~”・<~>などに対応させる」という記述がなくなりました。
①原本で使われている“~”・<~>をあえて第1カギを用いて書くことはありますか。それは具体的にどのような場合でしょうか。『てびき』には、そのような用例が見当たりません。
②例えば、p111【処理】の用例“wine”と“酒”のコーテーションマークを第2カギを使わずに第1カギに置き換えることはできますか。
③原文で強意・強調のため“~”または<~>で囲まれた言葉があります。
・原文中に「~」が使われておらず、“~”または<~>のみが使われていた場合は、“~”または<~>をすべて第1カギに置き換える。
・原文中に「~」が使われていて、さらに“~”や<~>が使われている場合は、これらのカギ類を第1カギ・第2カギ・ふたえカギのいずれかで使い分けるということでしょうか。
④『てびき』の「第1カギ・ふたえカギと区別して他のカギを必要とする場合に、第2カギを用いる」の部分を「原本で“~”・<~>などが使われている場合は、第1カギ・ふたえカギと区別して他のカギを必要とする場合」と考えてよいでしょうか。逆に区別する必要がないときは、“~”や<~>が使われていても、第1カギを用いるということなのでしょうか。
⑤実際に点訳を進めていくと複数のカギ類が混在し、特に強意・強調のための墨字のカギ類“~”・<~>はその処理が複雑になってきます。講習会受講生に第2カギの用法を説明するときに、混乱を与えないためのキーポイント(キーワード)はありますか。

【A】

④ ⑤ 点字のカギ類は、墨字のカギ類より数が少ないですから、墨字のこの記号には点字のこの記号と1対1では考えないようにした方がよいと思います。ですから、墨字の「~」、『~』、“~”、<~>、に点字のどの記号を対応させるのかを最初に考えるのではなく、墨字の形にとらわれず、点字では
(1) 基本的に第1カギを用いる。
(2) カギの中に更にカギが必要なときには、基本的にふたえカギを用いる。
(3) それ以外のカギが必要なときは、第2カギを用いる。第2カギは、地の文にも、カギの中にも用いることができる。
という点を押さえればよいのではないでしょうか。
ただ、「てびき」では、墨字の「~」は、墨字でも基本的に用いられるカギなので、ほぼ第1カギ、墨字の『~』はカギ類の中に用いることが多いので、ほぼふたえカギを対応させる。としています。
① 会話文などをすべて“~”で囲んで書いてある場合は、そこに第1カギを用いてよいと思います。資料類などで、カギ類が<~>だけしかない場合は、第1カギを用います。
② 置き換えることができます。
③ 上に書きましたように、原文中に「~」が使われていなければ、“~”<~>などに第1カギを用いてよいと思います。原文中で、“~”が会話に、<~>が語の強調に用いられていれば、“~”に第1カギ、<~>に第2カギを用いることになると思います。
原文中に「~」が使われていて、さらに“~”や<~>が使用されている場合は、地の文に用いる場合は第2カギかまたは第1カギ、“~”や<~>がカギの中に用いられている場合は、第2カギかふたえカギになります。

5.p104 1.カギ類

第2カギの中に第2カギを書くことはできるでしょうか。
<うん。“感受性を高めるため”って言われてた>
<“ほらね”って、どういう意味で言ったの?>
のように<~>の中に“~”がある場合です。
1タイトルの中で、第1カギ、第2カギ、二重カギをすべて使用していて、上記の、中と外の囲み記号を両方第2カギに当てているのですが、もしこの書き方がよくない場合、どのような書き方が望ましいのでしょうか。

【A】

第2カギの中に第2カギを用いることを禁止するルールはありませんが、読みやすさの点から、お勧めはできません。ご質問の場合、外の〈~〉は会話文のようですので、外を第1カギにするのが自然ではないかと思います。原本の文脈から第1カギを用いることができない場合は、外を第2カギにして中の“~”をふたえカギにすることもできます。

6.p104 1.カギ類

ふたえカギについてお尋ねします。
「てびき3版」ではふたえカギは墨字の『~』に対応していました。
ところが4版では、第1カギ・第2カギの中でカギ類が必要となった場合しか使えなくなり、カギ類の中以外で使えるのは書名など限定的となりました。
3版からの変更点である墨字の形に対応しなくなった理由を教えてください。

【A】

「てびき3版」では、《第1カギ・ふたえカギは、墨字の「~」・『~』にほぼ対応させ~》となっていました。「完全に対応させ」とは書かれていません。それは、「3版」発行当時は、墨字でも、ほぼ、正しいカギの使われ方がなされているという前提だったからです。
墨字でも、「~」は地の文に用いられ、『~』は「~」の中に用いられるのが基本的なカギの使い方です。墨字の原稿用紙の用い方や、各新聞社の規則では、『~』はタイトルなど以外は、「~」の中にのみ用いることになっています。
ところが、近年は「てびき」の「ほぼ」の表現が忘れられ、完全に対応するかのように解釈されるようになってしまっていました。
日本の点字の規則を決定している「日本点字表記法」でも、《会話文または引用する文や語句は、前後ろを第1カギで囲んで書き表す。それらの中に更にカギ類が必要であればふたえカギで囲んで書き表す。・・・第1カギと区別して他のカギを必要とする場合には第2カギを用いる。・・・》となっています。
最近の墨字の印刷物は、カギが本来の用法で用いられていなかったり、「~」『~』だけでなく、“~”や《~》〈~〉など多様な囲み記号が用いられ、点字のカギ類と形の上で対応させて用いることはできない状態になっています。
このようなことから、「てびき4版」では点字の記号を書き表すルールとして、「日本点字表記法 2018年版」に準じることとしました。
もともと、点字の記号類は、墨字とは形の上で対応させることはできません。これはカギ類だけでなく中点や波線などでもそうです。形の上での対応ではなく、用法・機能を考慮して対応させることになります。

7.p104 1.カギ類

小説を点訳中なのですが、
「~」・・・ただの会話のカギ
〈~〉・・・名称・場所・ネット内での会話(リプライ・いいね)等の強調
《~》・・・テレビの中の会話文
『~』・・・「~」や《~》内の会話や強調

点訳者は、会話文では第1カギを使い、それ以外の〈~〉《~》は第2カギとしました。『~』はそのまま、第2カギや第1カギ内の囲み記号なのでそのままふたえカギを使用しています。
そして、〈〇〇事件〉と名称など〈~〉で囲まれたものが《~》内に書かれてある場合は『〇〇事件』とふたえカギに置き換えられています。
(第2カギの中に第2カギはおすすめではない、と質問集に記載されていたからだと思います)

そして、校正者より、
“夢”についての質問集で、直前に地の文で“~”を第2カギで囲んだなら、カギの中で同じ語句が出てきた場合は第2カギで囲むのが自然です、とありました。なのでここは〈~〉で囲まれているのを『~』に置き換えるのは違和感があります。異なるカギを用いてもよいのですか?と指摘されています。

やはり今回もこれに当てはまるのでしょうか。
〈〇〇事件〉や〈〇〇図書館〉など、名称に〈~〉が使われ複数でてきます。《~》のテレビ内の会話の中にもでてきます。
そのままふたえカギとしても問題はないでしょうか。
《~》で囲んだものを第1カギにし、その中の〈~〉はふたえカギでなく、第2カギにしたほうがよいでしょうか。

【A】

原本全体を通して統一した方法で点訳されていますので、点訳者のままがよいと思います。
確かに、地の文に第2カギを用いた語句が、カギの中にある場合、カギの中でも第2カギに統一するという方法もあり、「てびき」の例としても挙げていますが、それは、原文全体のカギの使われ方によって、判断するところです。
今回ご質問の例では、そのようにすると、第2カギの中に第2カギを用いることになって不自然ですので、点訳者の判断通りがよいと思います。
点訳フォーラムQ&Aにも書きましたが、「てびき」は少ないスペースのなかに全ての記号の用法を掲載するという制限がありますので、1冊の原本の中での判断までは示しきれないところがありますことをお分かりいただきたいと思います。

8.p104 1.カギ類

囲みの記号について、校正で指摘してよいのか迷っています。
原本で使われているカギ類は1か所だけ≪・・・≫が使われていますが、それ以外は「・・・」と『・・・』です。二重カギは第1カギの中、過去の会話、語句、店名などで使われています。点訳者はカギの中のカギ以外は全て第1カギにし、カギの中の二重カギを第2カギにしています。原本で使われているカギはほぼ2種類だけですし、著者も意図があって使い分けていると思います。第1カギの中の二重カギをわざわざ第2カギにしなくても原本通り二重カギでよいと思いますし、それ以外の二重カギは第2カギにして第1カギと使い分けてもよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。それとも基本的に第1カギを用いるということですし、明らかな間違いではないので、校正はしない方がよいのでしょうか。

【A】

カギの用い方については、お考えのように処理するのがよりよい点訳になると思います。また、点訳者の方法も間違いとは言えないこともおっしゃるとおりです。
1次校正か、2次校正か、また、施設・団体内での校正者のあり方などによっても異なってくると思いますが、少なくとも、「全体を通してこのように点訳したらどうでしょうか」という校正者の意見を付けておくと、これからの点訳にも役立たせていただけると思います。

9.p104 1.カギ類

「「「「したいに決まってんだろう!」」」」
この文面でカギが4個重なって書かれているのですが、点訳を「したいに■きまってんだろー!」としたのですが、「点訳挿入符」で説明が必要でしょうか。必要とすれば、どのように点訳すればよいでしょうか。「てびき」にもないので同じ記号を重ねることはできないと思います。

【A】

大勢の人が同時に発言したことを表しているのかもしれませんが、前後の文脈で理解できると思いますので、一つの第1カギで囲んで書いてよいと思います。
「シタイニ■キマッテンダロー!」

10.p104 1.カギ類(3)(4)

一つの文中であるかどうかの判断の仕方と、並列したカギ類の間のマスあけについてお尋ねします。
文頭に主語等がないと、一文中かどうかの判断に迷います。
① 「あなたはどこからきたの」「教えて!遠い国から?」「これからどこへいくの」と、それぞれが思い思いに問いかけた。
*複数の人の会話を「と」で受けている場合。「~」の並列の後、「と」で受けている場合は、複数の人の発言であっても一つの文と考え、閉じカギと開きカギの間は一マスあけと考えてよいでしょうか。
② 「あなたはどこからきたの」「教えて!遠い国から?」「これからどこへいくの」と、問いかけた。
*一人の発言の並列。「と」で受けている場合(第3版のような「やつぎばやに」の語句はない)。一人の発言で「~」はそれぞれ独立した文だが、「と」で受けているので、最初から最後までが一つの文と考え、閉じカギと開きカギの間は一マスあけと考えてもよいでしょうか。
③ 「あなたはどこからきたの」「教えて!遠い国から?」「これからどこへいくの」それぞれが思い思いに問いかけた。
④ 「あなたはどこからきたの」「教えて!遠い国から?」「これからどこへいくの」やつぎばやに問いかけた。
*複数人あるいは一人の発言の並列。いずれも「と」で受けていない場合。複数人・一人の発言であっても「~」はそれぞれ独立した文。カギを閉じた後に新しい文が始まると考え、すべて二マスあけ(従来通り)。
一人あるいは複数人の会話であることは、一つの文であるかどうかの判断に影響しますか。

【A】

一人の発話か複数の人の会話かは、一つの文かどうかの判断には影響しません。
一つの文の中に、いくつかのカギで囲まれた語句や文が含まれる場合にその間が一マスあけになります。
カギで囲まれた部分の前に主語があったり、後ろを助詞・助動詞で受けていれば分かりやすいのですが、そうでない場合に判断に迷うことがあるかもしれません。
①②は、全体が一つの文ですから、閉じカギと開きカギの間を一マスあけます。
③④は、閉じカギと開きカギの間も、最後の閉じカギの後ろも二マスあけになります。④の場合は、「やつぎばや」の直前に主語が省略されていると考えてよいと思います。

11.p104 1.カギ類 (3) (4)

次のような場合、閉じカギの後ろのマスあけはどうなりますか。
①地の文の途中、カギで囲んだ文の閉じカギの後に「と」などの助詞がない場合
a.批判もたくさんあったが、「感動した」「明日から頑張ろうと思えた」そんな書き込みが増えていた。
b.麻衣子は手を組んで、「がんばれ、がんばれ」心の中で叫び、祈った。
②カギで囲んだ会話文の途中に地の文が挿入されている場合
c.「最初、かけてくる方は」六十代の男性がいう。「相談することがなければいけないと思ってかけてくるから、介護のこととか、病気のこととか、何か質問を用意するんです」

【A】

b.は「がんばれ、がんばれ」の後ろに「と」があるのが自然な形で、あきらかに一つの文ですので、
麻衣子は、「がんばれ、がんばれ」■心の中で叫び、祈った。
と一マスあけになります。
a.は、
批判もたくさんあったが、《「感動した」「明日から頑張ろうと思えた」》そんな書き込みが増えていた。
と、「そんな」が前の《~》をまとめて受けていて、後ろだけでも独立した文の形になっています。ですので、「そんな」の前を二マスあけた方がよいと思います。
閉じカギの後、開きカギがくる場合は、カギがあるので文と文の間でも一マスあけでいいのですが、閉じカギで文が終わっている場合は、後ろを二マスあけるのが自然です。
「感動した」■「明日から頑張ろうと思えた」■■そんな書き込みが~。
c.は、閉じカギの後ろ、「六十代の男性がいう。」と文になっていますので、
「最初、かけてくる方は」■■六十代の男性がいう。

「4版」で p103 (3)のように規則を変更したのは、文の中に、文がある(重文、複文)ことも多いが、閉じカギと開きカギの間であれば、一マスあけでも読むのに支障がないと判断したからです。閉じカギの後ろに、助詞等がなく、後ろに文が始まっている場合は、二マスあけることになると思います。

12. p104~105 1.カギ類 (3) (4)

カギ類が続いたときのマスあけについて、伺います。カギ類が並んだ後に句点がある場合、カギ類の間は、それは1文として、一マスあけか、2文として二マスあけか、どちらでしょうか。
例:
(1)
「少年の面影を残しているけれど、本の選択はなかなかにハードだ」「彼は
今自分の中に潜む理由のない暴力と向き合っている・・・・・」(『犬の
しっぽを撫でながら』)。
(2)
全国5200校の高校長が参加する協会からも、延期を求める声が上がった。
「生徒は不安を募らせている」「校長も説明に苦慮している」。文部科学省に
出された要望書には切実な言葉が並ぶ。

【A】

1文の中に異なった要素(語句や文)が並んでいる場合、基本は「てびき」
p152 6.(2)に従い二マスあけになります。
しかし、それぞれがカギで囲んであれば、一マスでも誤読されないという
判断からくる、いわば機械的な処理です。
ですので、カギで囲まれた文が並んでいて、その最後の閉じカギの直後に
句点があれば、そこまでを一文と判断して、一マスあけにしてよいと思います。
ご質問の二つの例はいずれも一マスあけになります。

13.p105 1.カギ類

用例「ぼくは、はっきり『いやだ。』と言ったよ。」が、仮に原文で『ぼくは、はっきり「いやだ。」と言ったよ。』となっている場合も、外側のカギを第1カギ、内側のカギをふたえカギにするのでしょうか。
《A》
基本的にはそうなります。ただ、そこだけ機械的に、外側のカギと中のカギを入れ替えると不自然な場合もあると思いますので、原本全体の囲みの記号の使い方を検討した上で判断する必要があります。

14.p105 1.カギ類

「てびき」には、第1カギの中にカギが使われる場合はふたえカギを用いるのが基本とあります。
しかし「てびき」「カギ類」p105の中に次の例があります。
将来の”夢”を発表する時間に、「ぼくの”夢”は宇宙飛行士です」
この点訳として、第1カギのなかの、カギが必要なコーテーションマークのついた夢には第2カギが使われています。これはその前の文の夢に第2カギを用いているからなのでしょうか。それともコーテーションマークがついた語は第2カギでもよいのでしょうか(以前はこういう場合第2カギを用いていました)。

【A】

これは、前の文の“夢”に第2カギを用い、第1カギの中の“夢”が、それと同じことを指しているので、このような場合は、第1カギの中でも第2カギを用いた方が自然であると考えられる例として示したものです。
「第1カギの中にカギが使われる場合はふたえカギを用いるのが基本」ですが、第2カギは、必要な場合は、カギの中でなくても、カギの中でも、どちらでも使用できる記号ですので、「てびき」の編集上、その例も示さなくてはならないために考えたものです。
コーテーションマークには第2カギを対応させることを示した例ではありません。
一冊の本を点訳する場合は、いろいろな場面が出てきますが、「てびき」の用例はごく限られたスペースに短い文の中で、規則に適した例を示すので、多少強引なところもあることも事実です。
ですので、そのようなことも考え合わせた上で、「てびき」の用例をご覧ください。

15.p104 1.カギ類

カギの使い方の質問です。

がんばれ、がんばれ ナナちゃんがんばれ (以下省略)

上記のような文が、一文字ごと(読点も)カギで囲まれており、色とりどりの画用紙に1文字ずつ書かれていることがそのあとに説明されています。
原本通りに「が」■「ん」■「ば」■「れ」と点訳した際、「、」の読点は誤読になるのではと思います。その際の処理はどうしたらいいでしょうか。
上記のように記されている箇所はほかにもあり、原本通り一文字ごとカギを使うとかなりの行数を使うことになります。例えば、文全体(行ごと)をカギで囲むような処理をしてもよいでしょうか。別に「がんばれ、がんばれ」とカギで囲まれた箇所も出てきます。

【A】

原本で説明があるのでしたら、「がんばれ、がんばれ ナナちゃんがんばれ」全体を一つのカギで囲んで書いてよいと思います。
必ず、その後に「一文字ずつカギで囲まれて、色とりどりの画用紙に一文字ずつ書いてある」ことの説明があるのでしたら、断わりなく全体を第1カギで囲んで書いてよいと思います。
そうではなくて、最初にだけ説明がある場合、その説明がその都度必要なのか、または必要ないのかを判断する必要があるかも知れません。
文脈上、とくに必要が無ければ、そのままの点訳でよいと思いますが、何らかの説明が必要な場合は、その都度、点訳挿入符で、「一文字ずつのカギ」などと断わるか、最初に、一文字ずつカギで囲まれている場合は、全体を第2カギで囲んだと説明して、第2カギにするかなどの工夫をすればよいのではないでしょうか。

16.p106 1.カギ類 【備考】

書名などが『~』で囲まれている場合は 墨字原本で『~』が使われている場合と解釈してもいいですか。

【A】

p106【備考】の「など」は、「書名に限定せず、作品名や映画のタイトルなどまで」ということを指しています。そのほかの文や語句まで広げているわけではありません。

17.p106 1.カギ類 【備考】

次のような語句が原文で『~』で囲まれていた場合、ふたえカギを用いてもよいでしょうか。
『X JAPAN』『氣志團』などのグループ名
『木乃婦』(京料理の店)
『GYOZA OHSHO』(餃子の王将)
『岩戸山』町名
『鳳条』(表札に書かれている姓

【A】

グループ名、店名、町名、名字などは、タイトルとはいえませんので、地の文に書かれているときには、第1カギ、または第2カギを用いるのがよいと思います。

18.p106 1.カギ類 【備考】

一般に、初出・著者紹介などでは、<シリーズ名>『書名』「作品名」と囲み記号で区別さていることが多いようです。本文等で、それぞれが違う形の囲み記号を使われていても、シリーズ名は第2カギ・書名はふたえカギ・作品名は第1カギと統一して考えてよいでしょうか。

【A】

統一するという考え方もあると思いますが、原文と大きく異なった書き方をする場合は、書き方を点訳書凡例などで説明すればよいと思います。

19.p106 1.カギ類【備考】

『幕末―その常識のうそ』の中で『日記』は『薩州御用録 巻の一』、『遠征記』は『ペリー提督日本遠征記』を指しています。
『日記』と『遠征記』はタイトルとは言えず他のカギに変えた方がいいのでしょうか。

【A】

この本の中で、『薩州御用録 巻の一』『ペリー提督日本遠征記』という正式なタイトルが一度書かれていて、その後に『日記』や『遠征記』が、『~』で囲まれているのであれば、書名を限定できるので、ふたえカギを用いて良いと思います。
ただ、一般には、『日記』や『遠征記』だけでは、元のタイトルを想起させるような略称からは離れていますので、正式なタイトル名が提示されていない場合は、第2カギまたは第1カギで囲むのがよいと思います。

20.p106 1.カギ類 【備考】

《愛の妙薬》《人しれぬ涙》《春の夢》《冬の旅》など、原本で、曲名が《~》で囲まれています。点訳者は第2カッコで点訳しています。これをカギを使用するように校正したいと思いますが、第2カギ、ふたえカギ、第1カギのどれがよいでしょうか。
また、地の文で原本の『~』と対応してふたえカギを用いることができる例を具体的に教えてください。「てびき」では「書名など~」、点訳フォーラムでは「タイトル」と書かれていると思います。

【A】

ご質問の場合の《~》は、第2カギが一般的な書き方になると思います。他のカギとの関係で差し支えなければ第1カギを使用してもよいと思います。
ふたえカギを地の文で用いることができるのは、「てびき」の規則には「書名など」と書かれていますが、「など」の範囲について、点訳フォーラムでは、「書名に限定せず、作品名すなわち音楽や映画のタイトルなどまで」と考えています。これは、あくまでも原文で『~』が用いられているときになります。

21.p106 1.カギ類 【備考】

『「サピエ図書館」登録点字文書製作基準』のように、原文で『~』の開き記号に続けて「~」がある場合、ふたえカギと第1カギを入れ替えたほうがいいでしょうか。著者紹介の書名でも『「~」~』のように使われていますが、外側を第1カギ、なかをふたえカギにしてもいいのでしょうか。それとも中のカギを第2カギにするのでしょうか。

【A】

この場合、外側の『~』はタイトルを囲んでいると考え、ふたえカギを用い、中のカギを第2カギにするのが、自然な点訳と思います。
ただ、「製作基準」は、『点訳のてびき』『坊っちゃん』といった図書ではなく、資料集であるという判断で、外側を第1カギ、中をふたえカギにすることもできます。図書と資料集などを厳密に区別する必要がある場合は、このような点訳方法もありますが、一般書では、タイトルが『~』で囲まれていれば、ふたえカギを用いてよいと思います。

22.p106 1.カギ類 【処理1】

「カギ類の内側に同じカギ類を用いてあって、誤読の恐れがある場合には、他のカギ類におきかえる」とあります。誤読の恐れがある場合とは、例えば、どのような場合でしょうか。原本の以下の文の場合は、いかがでしょうか。
「依存症をその人個人の病気の問題と捉えたら、ペナルティは意味を持ちません。ペナルティによる「孤立」は孤独感を生みます。孤独感を持ったまま、人は生きていけないんです。・・・」と、施設長の高田さんは話します。

【A】

ご質問の文の場合は、「孤立」をふたえカギ、または第2カギにします。
カギ類の規則では、最初に、p104 (1)で、「~、その中にさらにカギ類が必要であれば、ふたえカギを用いる。~ 第2カギを用いる。」とあり、これが大原則となります。ですから、【処理1】では、ほとんどの場合が誤読のおそれがあると解釈してください。誤読のおそれがない場合として、【処理2】を掲げています。

23.p106 2.カッコ類

彼は動揺していた。(1984年(私は)それを届けるかどうか迷っていたのだが)
上記の文章のように、第1カッコの中の開きカッコの前をマスあけする場合、マスあけが生じることで、閉じカッコと誤読のおそれがない、ということで、第1カッコの中でも第1カッコを使ってもよいのでしょうか?

【A】

カッコの中のカッコは二重カッコで書くことが原則ですので、この場合は二重カッコにします。

24.p106 2.カッコ類 (1)

第1カッコ内にさらにカッコが必要であれば二重カッコを用いる。これらは墨字の( )・(( ))にほぼ対応する、とありますが、墨字原文で( )内に(( ))以外のカッコが用いられている場合は二重カッコにしない方がよいのでしょうか?

【A】

墨字で本来(( ))はカッコ内のカッコに使われる記号でしたが、パソコン上ではこの形が出てこないことから、カッコ内のカッコに〔 〕や< >など、異なる形の記号が使われることが多くなっています。p109コラム23の用例にありますように、墨字で異なる形であっても、カッコ内のカッコであれば、点字では二重カッコを用いるのが適切です。

25.p106 2.カッコ類

第1カッコ中の説明のカッコを、二重カッコにした場合、二重カッコが二つ続いてもよいのでしょうか。
(原文)
運用基準案(特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案))を見ていても、・・・

【A】

二重カッコを続けて書いても誤読の恐れはありませんので、原文の通りに、(仮称)と(案)を二重カッコで続けて書くことができます。
キジュン に続けて、キジュン((カショー))((アン))と書き、続けて第1カッコの閉じ記号を書きます。
文脈によっては、「てびき」p135やp192のように、カッコの使用の仕方を工夫することができますが、この場合は、原文通りに点訳するのがよいと思います。

26.p106 2.カッコ類

ある質疑応答集を点訳しています。質問に① ②と書かれている箇所があり、第1カッコを用いようと思いました。
ところが回答の方に「頒布する者(①の場合は甲、②の場合はテレビ局(基幹放送事業者))に」という表現が出てきました。前も後ろも第1カッコが2つ続くことになります。(基幹放送~)の部分は2重カッコにするとしても、①の方は問いの部分との書き方が違うことになってしまいます。
こういう場合はどのように考えればいいのでしょうか。

【A】

1.差し支えなければ、質問集全体の①②・・・を1.2.にするのが、もっともよい方法と思います。
2.または、第1カッコで囲んだ数字がカッコの中にある場合も、カッコの中のカッコですので、二重カッコで囲むのが原則になります。ご質問の場合も、カッコの中では二重カッコで囲みます。
1.2.どちらかの方法を採ることになります。
「てびき3版Q&A」Q115に「カッコも含んだ形で意味があり、点訳上どうしても避けられない場合」は第1カッコの中に、第1カッコで囲んで書いてもよいとありますが、これは「どうしても避けられない場合」になります。
カッコの開きと開き、閉じと閉じが連続する場合も「避けられない場合」はやむを得ないと書いてありますが、これは、法律の条文を専門書の中に書く場合や試験問題番号で変えられない場合などに限られると考えます。
今回のご質問では工夫によって変えられますので、やはり、最初に述べた1.か2.の方法を採るのがよいと思います。

27.p106 2.カッコ類

第2カッコは、語句や文の説明の時に使うとあります。実際に使うことがないのですが、【 】は、第2カッコとして使うことができますか。
第2カッコの例は、「てびき」p107に一つだけありますが、これだけではよくわかりません。語頭に【品目例】と書いて 後ろに品目が羅列してある場合、第2カッコを使って書いてもおかしくないですか。

【A】

第2カッコは、第1カッコ以外のカッコ類が必要な場合に用いますが、2種類のカッコ類が必要なことは、ほとんどありませんので、第2カッコはあまり使用する機会はありません。
カギ類もそうですが、カッコ類は墨字のこの記号に対応すると言うことはありません。「てびき」p109「コラム23」にありますように「機械的に形で対応」させることはありません。
p107は、すべての記号の使用例を入れる必要から、この例をいれたもので、
(視覚障害者のための触読文字)のあと、一マスあけて、第1カッコで囲んで(名詞)と書くこともできます。p108 【備考】と同じ用法です。
【品目例】の場合は、点訳では、カッコ類を使わずに、品目例の後ろに第1小見出し符を用いることもできますし、棒線や、二マスあけにすることもできます。カッコ類を用いる場合は、第1カッコがよいと思います。
第2カッコを用いる例としては、翻訳物などで、原著者の注と訳者の注に異なるカッコが用いられていて、原本にそのような凡例があり、点訳で文中注記符を用いないで書く場合などでしょうか。

28.p106 2.カッコ類

一般の文の中に(笑い)があり、実際に笑っている状況ではなく、心の中の思いを説明しているような時は続けていいのでしょうか。
例:しらーっとした冷ややかな空気が流れていく時間は、何とも耐え難いものだ(笑い)。

【A】

(笑い)については、前の語の補足説明というわけではなく、戯曲などでのト書きと同じ用法ですので、一般文章中でも、(笑い)(笑)は前を一マスあけます。

29.p106 2.カッコ類

(笑い)ですが、p169の(2)に「ト書きは第1カッコで囲んで書き、前後ろを一マスあるいは二マスあけて書く」とあります。一般の小説の場合、p106 (3)が判断の基準になるのでしょうが、第1カッコの前を一マスあけるか続けるかで迷います。注釈的説明とそうでない場合を見極める、明確な判断の基準になるものがあるでしょうか。
(事例 著者によるあとがき)
このあとがきを書き始めてから一時間以上。何しているんでしょうかね、私は(笑)
長谷川さんみたいな彼氏。私だったら嫌だなあ(笑)
この作品を読んで少しでも泣いてしまいそうになった人は私と好みが一緒です。おめでとうございます(笑)

【A】

(笑)は、戯曲や対談に限定せず、ほかの文章中でも、前をあけます。
カッコは、原則として注釈的説明に用いられるものですので、ほとんどの場合、前に続けて書きます。
前をあけるのは、p106 (3)に書かれているように、独語や回想以外は、(略)(中略)(後略)(続く)(終)(了)(完)(株)(社福)(一社)など、編集上の注意書きや略語などです。(笑)(泣)など人物の表情や動作を示す場合も同様になります。p194 「2.マーク類の書き方」【処理2】にある絵文字・顔文字の(ニコニコ)(プンプン)なども、(笑)と同じであると判断しています。

30.p106 2.カッコ類

(中略)の 前後のマスあけについての質問です。
白い襟付きシャツをノータイにし、革ジャンパーを引っかける。(中略)アランドロンのは背広型になっている。
この場合 句点の後は二マスあけ。(中略)後のアランドロンの前も二マスでよいでしょうか?
文中は一マスの意味が分かりません。どの様な時を言うのでしょうか?

【A】

ご質問の文の場合は、(中略)の前後ろ共に二マスあけでいいと思います。
句点の後は二マスあけですし、後ろは「アランドロンのは~」と
新たな文が始まっていますので、二マスあけでいいと思います。
(中略)で前後一マスあけになるのは、「てびき」p107の6番目の例のように、
明らかに一つの文の中に用いられているときです。
「てびき」の例のほか、読点や点線の後に(中略)があって、後ろに文が続いている場合は、一マスあけになると思います。

31.p106 2.カッコ類

二重カッコについてお尋ねします。
「てびき」には第1カッコの中にさらにカッコ類が必要であれば二重カッコを用いるとありますが、それ以外の使い方をしてはいけないのでしょうか。
原本に「駅名の次のカッコは開業年、末尾の〔 〕内が現在の所在地」とあり駅名が並んでいます。
〔 〕は訳者註の時くらいしか使わず、カッコやカギに置き換えると習いました。このような時〔 〕の代わりに二重カッコを使ってはいけないでしょうか。

【A】

この場合、二重カッコは適切な使いかたではありません。
二重カッコは「てびき」p106にあるようにカッコの中にさらにカッコが必要なときに用い、一般にはそれ以外には用いられません。
ご質問の例の場合は、「末尾の〔 〕内」と言っているのですから、駅名の次のカッコと同じ第1カッコを用いても誤解はないと思います。説明も「マツビノ■カッコナイガ■ゲンザイノ■ショザイチ」と書けばよいと思います。
もし、他の文脈との関係から、同じカッコでは具合が悪い場合は、第2カッコを用いる方法もあると思います。

32.p106 2.カッコ類

本文中の空白について、教えてください。
会話とは別に、夢の中での思いが〈~〉山カッコで書かれています。
〈   〉
〈   〉
〈  それで私が…やっぱり  どこへ〉
上記のように囲みの中が空白だったり、点線とは別に空白があったりします。
本文中には点線も多く使われており、空白をどのように表記したらいいのか、迷います。
点挿で空白と入れるか、凡例で断って3マス程度のマスあけにするのでしょうか。

【A】

空白の部分を点線にするのが最も一般的な方法です。
第1カッコの開き記号だけを書いて、マスあけをして閉じ記号を書くのは、読みにくくわかりにくいので、避けるようにしてください。
原文のスペースを表すためにマスあけを入れても意図が伝わりませんし、囲み記号の内側をマスあけすることや、1行の中に3マス以上の空白を入れることは規則上も誤った方法となります。
原文で、(  )と(・・・)に特にはっきりした使い分けがなく、ともに無言や間を表すのでしたら、どちらもカッコの中を点線にするのがよいと思います。

33.p106 2.カッコ類

(前略)(中略)(後略)について、「てびき」には、(中略)の例が一つだけ載っています。それだけでは、判断しにくいので、確認させてください。
1.■■--■(前略)もとより竜馬はひとかどの一人物なれども、・・・
2.兄弟の結びをなし(中略)、錦旗一たび揚らば・・・
3.■■(前略)草莽の志士・・・とても策無之事(中略)乍失敬、・・・これなきか。(後略)
4.賛成せり。(中略)老坂に至る
5.■■「(前略)大平通り御嶽・・・
以上のマスあけはどうなりますか。

【A】

(前略)(中略)(後略)の前後のマスあけについては、文脈の中で判断するしかなく、機械的なルールはありません。判断の目安としては、
1.(前略)(中略)(後略)が記号類と隣接している場合は、記号間の優先順位に従う。
2.(前略)(中略)(後略)の前で、明らかに文が終わっていれば、カッコの前を二マスあける。
3.(前略)(中略)(後略)の後ろに新しい文が始まっていると推測できる場合はカッコの後二マスあける。
以上から判断してください。

1.■■--■(前略)■もとより竜馬はひとかどの一人物なれども、・・・
2.兄弟の結びをなし■(中略)、錦旗一たび揚らば・・・
3.■■(前略)■草莽の志士・・・とても策無之事■(中略)■乍失敬、・・・これなきか。■■(後略)
4.賛成せり。■■(中略)■老坂に至る
5.■■「(前略)■大平通り御嶽・・・

1.は、段落で棒線から新たな文が始まっていると考えれば、(前略)の後ろ一マスあけ、
2.は、(中略)の後ろに読点があるので、文の途中と考え、(中略)の前は一マスあけ、
3.段落で文が始まっていると考え、(前略)の後ろ一マスあけ、(中略)の前後は、「とても無策(策無き)こと、(中略)失敬ながら、」となっているので、もしかしたら返り点で上に返るところかも知れないので、文中と考え、前後一マスあけ、
4.は、「老坂に至る」の後がどうなっているのか、判断がしにくいのですが(中略)のところから文が始まっていると考えれば、一マスあけ、
5.カギで文が始まると考えて、(前略)の後ろは一マスあけでよいのでは無いかと思います。

ただ、1.5.の(前略)や、4.の(中略)がまとまった文と思われる場合は、後ろ二マスあけになることもあります。文脈によって判断する必要があります。
この原本については分かりませんが、元の資料にあたることが可能であればより明確になると思います。

34.p106 2.カッコ類

以下の文章でのカッコについてです。

では、その仕事ぶりの評価という意味では、トランプ政権の公約達成率はどの程度の状況となっているだろうか。トランプ大統領の公約達成状況を精査する「PolitiFact」によると、2019年11月現在「公約達成(17.6%)」「妥協(10.8%)」「作業中(27・5%)」「停滞中(27・5%)」「不履行(16・7%)」となっている。

この文章での(~)は説明カッコと思います。しかし、文章の流れで(~)内のパーセントの値がないと文として成立しないので説明カッコではないという意見が出ました。説明カッコは(~)の部分がなくても文章として成立し、(~)の部分がないと文章として成立しないのは挿入カッコではありませんかと意見が出ました。
どう判断するのでしょうか。

【A】

この場合は、前の語句の注釈的説明として、前の語に続けて書きます。
「てびき」p106のカッコ類の規則の記述では、まず(1)で「カッコ類は原則として注釈的説明の語句を囲む場合に用いる」として、(3)で「~明らかに注釈的説明と異なる場合は~」と述べています。また、p108の[参考]でも1文目に「カッコ類の基本的な用法は~前の語に続けて書きます」と述べ、最後にも「~迷った場合は基本的な用法を選び、前の語に続けて書きます」と念を押して説明しています。
前を一マスあけるのは、ごく限られた独語や回想、注記・略語ですので、明らかにそれと分かる場合だけ、前を一マスあけます。
ご質問の原文は、確かにカッコを用いないで書く形がより正確かと思います。ですが、文意は正確には伝わりませんが、カッコを省略しても文の形は成り立ちますので、原文にカッコが用いられている以上、カッコは注釈的説明として前に続けて書きます。
「てびき」p108の[参考]は、例外についての説明ですので、カッコの用法の原則を確認した上で読んでいただきたいと思います。

【新規】p106 2.カッコ類

「北大天塩研究林(宗谷管内幌延町)内」という表記の時、説明カッコとマスあけはどのようにしたらよいでしょうか。「林内」は意味のまとまりがあると判断して、「林内」の前で切るつもりでいます。

【A】

「北大天塩研究林(宗谷管内幌延町)内」は
ホクダイ■テシオ■ケンキューリン(ソーヤ■カンナイ■ホロノベチョー)ナイ
と書いてよいと思います。
「研究林内」は、お考えのように区切って書いてよいと思いますが、ご質問の場合は「研究林」に説明カッコがついていますので、説明カッコを続けて書き、その後ろの「内」は、カッコの閉じ記号に続けて書くことになると思います。

35.p107 2.カッコ類 (4)

「SF(の)」という時は、外大大SF(ノ)でしょうか、外大大SF■(ノ)でしょうか。p107(4)の最初の文言からすると、カッコ類の開き記号との間はマスあけなしと解釈してよろしいでしょうか。カッコの中が説明ならマスアケなしでよいと思いますが。

【A】

外大大SF(ノ)
と続けて書きます。
「てびき」p107 (4)の規則に従います。
前の語の注釈的説明ではありませんが、助詞・助動詞は本来前に続けて書くものですので、外字符の後であってもカッコで囲むことによって、アルファベットと間違うことがなくなれば、続けて書くことができます。
例えば、文中注記符なども同じことが言えます。
《SF*の》 の*に文中注記符を用いる場合
外大大SF⑤⑥②③ノ
と続けて書きます。

36.p108 2.カッコ類 [参考]

(原文)
原則として決裁・供覧文書以外を公文書としないというこれまでの定義は・・・
ガイドラインでは、検証が可能となるように、決裁(起案)・供覧文書に必要な情報を「記入または別紙を作成して添付」する・・・

後半の「決裁(起案)・」ですが、起案は決裁の説明とは思えず、「あるいは」の意味の、補足として、挿入カッコ、ケッサイ■(キアン)・ となると思いますが、よいでしょうか。

【A】

このような場合も、ケッサイ(キアン)と続けて書きます。
カッコは、前に続けて書くのが原則であり、前でマスあけするのには、独語、回想、略語など特殊な場合で、この部分は独立していますので、省略すると文脈に齟齬が生じます。(「てびき」p108 [参考])
決裁(起案)の場合は、カッコ内がなくても、文章は成り立ちます。
このように、前の語の言い換え・置き換えのような働きの場合は、カッコの前はマスあけしないで書くことになります。
彼(彼女)は学生です
のような場合も、カッコは前の語に続けて書きます。

37.p108 2.カッコ類 [参考]

カッコが大変多い本です。文章の途中をカッコで囲んでいるような使い方がされています。
1.理学的研究では、一夫一妻制社会では(一夫多妻制社会とは異なり)男性は51歳以上生きる意味がないと、かなりピンポイント的な値を算出して結論されているくらいです(やっぱりツライ)。
2.乳がん、卵巣がん、白血病、肺がん、すい臓がん・・・、等々(やっぱり多い)。
3.こうした感染症は(他の身体的疾患も)本書の後半で強調している「普通の生活(食を含む)」で(無意識にも)十分に対応できますから、やっぱり本文を普通に読んでください。

(やっぱりツライ)(やっぱり多い)は独語と考えてカッコの前はひとマスあけでしょうか。それ以外のカッコは前の言葉を説明しているわけではありませんが、カッコの部分を省略しても文章が成立するので注釈的説明として前に続けて書いてよいでしょうか。

【A】

1.理学的研究では、一夫一妻制社会では■(一夫多妻制社会とは異なり)■男性は51歳以上生きる意味がないと、かなりピンポイント的な値を算出して結論されているくらいです(やっぱりツライ)。
2.乳がん、卵巣がん、白血病、肺がん、すい臓がん・・・、等々(やっぱり多い)。
3.こうした感染症は■(他の身体的疾患も)■本書の後半で強調している「普通の生活(食を含む)」で■(無意識にも)■十分に対応できますから、やっぱり本文を普通に読んでください。
となり、■を入れた箇所以外は前に続けて書きます。
「てびき」p108[参考]にありますように、カッコ類は基本的に前の語句の注釈的説明で、迷った場合は前の語句に続けて書きます。
ただ、[参考]には、前を区切って書く場合として、「独語と、前の語句の説明ではなく後ろの文脈にかかること」が挙げられています。
1.の(一夫多妻制社会とは異なり)、3.の(他の身体的疾患も)、(無意識にも)は、後ろの語にかかっています。後ろの語の説明のようになっていますので、前を一マスあけます。
そのほかは、原則通り、前に続けて書いてよいと思います。

38.p106 2.カッコ類

【例】 スマイルプランナー登録制度など
という原文の【例】の【 】を第1カッコに替えて点訳した場合、(例)のあとのマス開けは二マスあけでいいでしょうか。
このQ&Aの中では、第1カッコで囲まなくて二マスあけにすることもできるとあります。ところが、「てびき」第4版点訳版では、墨字版の「備考」や「処理」を第1カッコで囲んで、そのあと一マスあけとなっています。
そうすると、(例)のあとは一マスあけなのでしょうか。カッコ類のあとのマスあけは分かち書きの規則に従うとありますが、「てびき」の点訳版の書き方はどうなのでしょうか。

【A】

【例】【備考】のような、小さな見出しのような語は、いろいろな工夫の方法があります。
多く用いられるのが、レイやビコーを第1カッコで囲む方法です。この場合は3マス目から書き、後ろを一マスあけします。
囲み記号を用いず、レイやビコーだけを書く方法もありますが、その場合はうしろを二マスあけにするか、小見出し符類や棒線などを付けるかの工夫を要します。これは、囲みの記号を用いないで語だけを後ろ一マスあけで書くと複合語の一部のような誤解を受ける恐れがあるためです。ですから、二マスあけにしますが、カッコで囲むとその恐れがないため、通常一マスあけにしています。
「てびき」p106の(2)の規則は、一般的な文の中での規則ですので、ご質問の場合は、少し条件が異なり、特殊な例になります。

39.p106 2.カッコ類

図が数点ある本です。
福音派は・・・35%近くを占めるという。([図1])
次の[図5]は、・・・。
といった書き方がされています。
この[ ]は第2カギでよいでしょうか。またこのようにカギに囲まれているときは、図を囲む枠線上にズ■数○と入れることはできないのでしょうか。その方がすっきりした書き方になると思うのですが、枠線内に<ズ■数○>■■見出し としなければいけないのでしょうか。

【A】

[ ]で囲まれていても、図や表、資料などを示すこのような場合は、第1カッコで囲みます。
福音派は・・・35%近くを占めるという。([図1])
この場合は、([図1])全体で、第1カッコで囲めばよいと思います。
([図1]を参照)のように、他の語句と共にカッコで囲まれている場合は、中のカッコを二重カッコにします。
図を囲む枠線上にズ■数○と入れる場合は、カッコを付ける必要はありません。この場合も、図を囲む枠線上に ズ■数○ と書いてよいと思います。

40.p106 2.カッコ類

翻訳ものを点訳しています。
原文にある説明が( )、訳者による補足が[ ]を使って書かれているので、前者を第1カッコ、後者を第2カッコとしました。
後者の訳者による補足で、
[スペイン風の中庭patio(パティオ)にちなんでいる]
という箇所があります。
(パティオ)の部分に、第1カッコ、二重カッコのどちらを使えばよいのか迷っています。
第2カッコの中に第1カッコがある場合は、「カッコの中にさらにカッコ類が必要な場合」と考えて二重カッコを使うのか、誤読の恐れがないので、第1カッコでよいのか、どちらで考えたらよいのでしょう40か。

【A】

誤読の恐れはありませんので、第1カッコを用いてよいと思います。
第2カッコの開き記号の直後に第1カッコが来たり、第1カッコの閉じ記号の直後に第2カッコの閉じ記号が続く場合は、第1カッコを用いることはできません。

41.p106 2.カッコ類

次の例文のカッコについて質問します。
(例文)その動作[行為]が達成できなかった場合・・・
[行為]は角カッコだが、説明カッコと考え、第1カッコにしました。これに対し、これは置き換えの角カッコなので、第2カッコを使うとの校正を受けました。英語参考書やワードリストでも使うとのこと。
説明と置き換えの区別も難しいですが、私は「てびき」の説明ではここまで読み取れませんでした。それとも英語参考書などと、一般書では別のやり方があると考えてよいでしょうか。

【A】

日本語点字ではこのような場合も第1カッコを用い、前に続けて書きます。
英語点字では原文通り角カッコを用いますが、英語では、どのカッコでも前を一マスあけますので、角カッコだから、前を一マスあけるわけではありません。
英語の参考書の点訳をする場合も、英語は英語点字の規則で、日本語は日本語規則の点字で点訳することになります。
ただ、学習のために、点訳書凡例などで書き方を断れば、日本語にも第2カッコを用い、前を一マスあけて書く書き方もできると思います。

42.p106 2.カッコ類

『~』はふたえカギ、((~))は二重カッコとなっています。二重カッコは「にじゅうかっこ」でいいのでしょうか。

【A】

点字の記号としては、カギ類の中に用いる、⑤⑥③⑥~③⑥②③のカギを「フタエカギ」、カッコ類の中に用いる⑤⑥②③⑤⑥~②③⑤⑥②③のカッコを「数2ジュー■カッコ」といいます。これらは、墨字の『~』、((~))と対応して用いられることが多いのですが、墨字の記号と全く同じ名称ではありませんので、注意する必要があります。
墨字の記号は、記号名が定まっていませんので、音訳などで用いられる一般的な読み方を以下に示します。
墨字の『~』は「ふたえかぎ」とも言われますが、一般には「にじゅうかぎ」と言われることが多いと思います。
墨字の((~))は、「にじゅうかっこ」または「にじゅうまるかっこ」と言われます。
墨字の〈~〉は、「やまがたかっこ」と読みます。
文化庁の「記号類の使ひ方」には、『~』は、「フタエカギ」、((~))は「フタエガッコ」と書かれています。(「てびき3版指導者ハンドブック」4章編巻末参照)

43.p109 「コラム23」

『[現代版]絵本 御伽草子 木幡狐』『ピエタとトランジ<完全版>』の[~]<~>は第2カギを使いますか。またそれぞれ本の名前と一マスあけでよいですか。

【A】

『[現代版]絵本 御伽草子 木幡狐』『ピエタとトランジ<完全版>』のように版次や巻次などを示す場合は、墨字で[~]や<~>が用いられていても、点字では通常第1カッコを使用します。カギは強調の役目をしますので、版次や巻次に用いると書名とのバランスを欠き、違和感が生じます。カッコの前後の文字との間は一マスあけします。

44.p109 「コラム23」

【 】の扱いについて質問します。原本はドキュメンタリーです。
会話文、強調は第1カギを使っています。
①引用文の部分は下がっています。
(原文)一二月二九日の朝日新聞は次のように伝えた。
【モスクワ=駒木明義】ロシアのプーチン大統領は二七日、・・・

【モスクワ=駒木明義】の部分をカギなし小見出し符をつけると、二マス下がっていても大丈夫でしょうか。
また、モスクワ=駒木明義の=は棒線でよいでしょうか。

②【写真1】【写真2】と示され、キャプションがついています。本文中に、【写真1】と【写真2】を見てみよう。など解説が書いてあります。
写真、本文中の【 】は何の記号を使うのが適切でしょうか。

【A】

① 「モスクワ支局員の駒木明義が発信」のような意味になると思いますので、小見出し符ではなく、第1カッコで囲んで書くのがよいと思います。
(モスクワ■■駒木■明義)■■ロシアの~
となります。
小見出し符類は、引用文を、行頭二マス下げで書く場合は、用いることができません。「てびき」p121 (2)に「3マス目から見出しを書き・・・」とありますので、5マス目から書き出すことはできません。
また、「=」を棒線にすると、対等な関係の「イコール」のようにも思われますし、4マスも必要になりますので、ここは意味の上からも、二マスあけの方が適していると思います。

②写真1、写真2の点訳方法にもよると思いますが、キャプションを書くときに、各見出しの最後にまとめて、シャシンと見出しを立て、1、2の番号順にキャプションを入れていく場合は、本文の【~】は無視して、記号を用いずに書くこともできます。
【写真1】【写真2】をカッコ類で囲んで、キャプションを書く場合は、本文でも同じ記号を用いてもよいと思います。

45.p109 「コラム23」

カギの使い方についてお願いします。新聞の見出しです。
【ご病床  鏡に映す十三夜(ここで改行)
―「少し欠けてるね」と陛下】
とあります。
【~】は第2カギにして、第1カギはそのまま第1カギのままでいいでしょうか。それとも反対にした方がいいでしょうか。2行のままでいいでしょうか。

【A】

新聞の見出しは、その記事そのものの点訳でも、読み物などに引用されている場合でも、行頭5マス目、7マス目などから書き出します。このように見出し全体が囲みの記号で囲まれている場合は、行頭を下げたことによって見出しと分かりますので、囲みの記号は点訳しません。また、原文のレイアウトによって途中で行を替えて書いてあっても、点字の書き方で点訳して良いと思います。例えば
■■■■■■ゴビョーショー■■カガミニ■ウツス■数13ヤ(改行)
■■■■■■■■--■「スコシ■カケテルネ」ト■ヘイカ
行頭7マス目から書いた場合は、このようになります。
ただ、この見出しが、原文の本文中に、行を替えずに引用されている場合は、本文と区別するために、全体をカギで囲みます。その場合は、第2カギで囲んで良いと思います。第2カギの中の第1カギは、第1カギのままで構いません。

46.p109 「コラム23」

コラムではカギ類を用いるか、カッコ類を用いるかは、機械的に形に対応させるのではなく、意味・用法を考えて決めるとあります。
「サピエ図書館」登録点字文書 製作基準の 3目次の【例2】の中で、【世のなか食のなか】 【買い物案内】など見出し語の頭に【亀甲カッコ】で囲まれた語句があります。これらは、語句の強調のために使われている囲み記号だと判断しました。
しかし、次ページの点訳例では 第1カッコで囲んでいます。
カッコ類を使うのは、どのような理由なのでしょうか。
また、用途から判断してカギ類を使うことは、好ましくないのでしょうか。
現在点訳中の本では見出し語として、【石原式基本食】のススメ、【梅醤番茶】の作り方 という使い方をしています。カギ類・カッコ類のどちらを用いるとよいでしょうか。

【A】

「製作基準」の例は、小さな見出しを囲むカッコの例になります。「てびき」の【備考】や【処理】も点字版では、第1カッコで囲んでいます。第1カッコには慣習的にこのような用法があります。点訳フォーラムの「点訳に関する質問にお答えします」の「コラム23」の項にも、このような例を取り上げていますので参考になさってください。
ご質問の【石原式基本食】のススメ、【梅醤番茶】の作り方 は見出しそのものでは無く、見出しの一部を強調する用法ですので、カギ類(第1カギまたは第2カギ)を用います。

47.p109 「コラム23」

原本で見出しが「~」で囲まれています。点訳者は「~」で囲んで原本に従い点訳をしています。見出しが「~」で囲まれていて装飾的な意味合いの時は省略して書くことが多く、それ以外では「~」で原本通りに点訳をしてよいとの考えがあるようですが、点訳者によって取り方が違うのではないかと思います。
見出しは行頭のあけ幅から本文とは違う事がわかるので「~」を外して点訳をした方が良いと、校正で指摘して良いでしょうか?
校正では明らかな間違いを指摘することと言われますが、よい点訳本を作るために考えを出し合った方がよいのか。そこのバランスで迷っています。

【A】

その原本の見出しが全て「~」で囲まれているのであれば、省略して点訳してよいと思いますが、「~」で囲まれている見出しと囲まれていない見出しが混在している場合は、原本通りに「~」も含めて点訳することになります。
この点に関しては、校正で指摘するかどうかの基準ははっきりしていると思われます。
校正は明らかな間違いを指摘するものですが、読者の立場に立って、点訳処理が適切で読み取りやすいものであるかを考える役割も求められます。
墨字ではレイアウトや字体などとの兼ね合いからカギで囲むことによって見出しであることを示す場合も多いのですが、点字では書き出し位置の違いで表すことになっています。その上に語全体に強調の囲みが用いられることは意味合いが重複し、その分触読マス数が増えることになります。触読文字である点字ではシンプルに読み取れることも大切ですので、その点を含めて再考いただくことを提案されてはいかがでしょうか。

48.p109 「コラム23」

囲みの記号の使い方とマスあけについて、校正してよいのか迷っています。
各見出しの最後に同じ形式で出典が書かれています。
(<マイ・ヒーロー&ヒロイン> 坂田靖子『バジル氏の優雅な生活』「読売新聞」2004年8月25日)
(<私を変えたこの1冊>「小説トリッパー」2004年4月冬季号)
といった書き方です。
<・・・>の部分はどのような囲み記号を使うのが適切でしょうか。点訳者は二重カッコを使用しています。原本通り第2カギでもよいような気もします。
また、点訳者は要素間を次のようにマスあけしています。
(<マイ・ヒーロー&ヒロイン>■■坂田靖子■『バジル氏の優雅な生活』■■「読売新聞」■■2004年8月25日)
これで問題ないでしょうか。

【A】

原本に『~』が用いられていないので、この場合は、<~>をふたえカギにすることは間違いになります。
第1カギか第2カギになりますが、「読売新聞」「小説トリッパー」と新聞・雑誌名に第1カギが用いられているので、第2カギでよいと思います。
他の要素間はカギ類が用いられていても二マスあけで、著者と書名の間だけ一マスあけになっているのは、間違いとは言えなくてもバランスが悪いと思います。すべて二マスあけにするか、囲みの記号が用いられているところは一マスあけで統一するかどちらかにすればよいと思います。
ただ、この場合は、2004年8月25日付けの「読売新聞」のようにどちらかといえば一マスあけでよい所も含まれていますので、一マスあけの方がよいかもしれません。

49.p109 「コラム23」

本文中に太字で書かれた【相談】【回答】【Ⅰ】【Ⅱ】【問】【答】【事例1】などが出てきます。いずれも第2カギを使い、カギを閉じたあと一マスあけにしました。
「コラム23」のQ&Aを読み、第1カッコを使った方がよいのかまよっています。本文中に出てくる(1)①は、第一カッコを使っています。

【A】

このような小さい見出し的な語句に囲みの記号を用いる場合は、第1カッコが適しています。
ただ、原文で囲み記号が用いられていても、【相談】【回答】などは、囲み記号を省略して小見出し符を用いたり、場合によっては(相談の文章が長い場合など)5マス目からの見出しにすることもあります。
また、ローマ数字【Ⅰ】【Ⅱ】はカッコを用いず、ローマ数字にピリオドを付けて、後ろを一マスあけにすることもできます。
【~】はすべて機械的に第1カッコに置き換えるのではなく、分かりやすく、スッキリしたレイアウトを心がけるのがよいと思います。

50.p109 3.指示符類

「てびき」や「指導者ハンドブック」に、語句の指示として指示符を用いる例はありますが、一般書では強調の表現で使われることが多くあります。
「ハンドブック 4章編」p23には、「(強調表現の使用は)必要最小限度に」とありますが、どういう場合に使えますか?
強調や引用の傍点で、指示符の使える例を教えて下さい。

【A】

「指導者ハンドブック」のp23の表現は、「日本点字表記法」からの引用で、指示符類が日本の点字の記号として作られたときから、変わらない表現です。つまり、学術書や試験問題などで、語句や文の指示にどうしても必要になったので、「表記法」で記号として定めたものです。
ですから、一般書でも語句の指示には第1指示符を用いることはありますが、強調には、まず使用しないと考えてよいと思います。
一般書では、「ハンドブック第4章編」p21の練習1のように「傍点筆者」とある場合などで、傍点を囲む場合に使用できます。2番目の練習は、指示符の練習の所なので使用していますが、ここに指示符がなくても、あとの文脈で分かりますので、使用しなくても構いません。
「どの強調に用いるか」と考えていくと、墨字には非常に多くの強調表現がありますから、どれにも必要な感じがしてきます。しかし、指示符類を使用すると点字では読みやすさを損なう恐れが大きくなります。まずは、「一般書の強調表現には指示符は用いない」という方針で点訳に臨んだ方がよいと思います。
その上で、傍点などが、その本の中で、明確なルールで強調に使われていて、文脈上、点字での煩雑さを考慮しても、どうしても必要と思われる場合などに、使用を検討されたらいかがでしょうか?
例えば、大阪という地名がその箇所だけオオザカと濁音の読みになっていて重要な意味があり、原文に傍点がある場合、指示符があればうっかりよみとばさず着目できると思います。また推理小説で、手紙やメッセージの中のある言葉に傍点があって、後からそれが大きな意味を持って来るような場合には、点字でも指示符を用いてもよいと思います。いずれにしても、ごく限られた場合と言えます。

51.p109 3.指示符類

指示符で囲んだ文の中に、第1カギ 促音 と続く文章が入った場合です。
一般書では指示符を使わないという考え方をするとのことでしたが、このエッセイでは、ハイライト+太字と強調された箇所は、著者が伝えたい箇所と判断して、第1指示符を使いました。
原文の、以下の部分を第1指示符で囲みました。

両親は仏壇で目があって、「元気ー? 私は元気ー!」って報告する存在。

この中の《「私は元気ー!」って報告する》のところが、第1カギの閉じ記号と促音符が続き、第1指示符の閉じ記号の形になります。
誤読されてしまう恐れがあると考えるべきでしょうか。それとも、文章の流れから判断できると考えていいでしょうか?

【A】

第1指示符の中に第1カギがあり、その閉じ記号の直後に促音がくるのは、読みにくく誤読の恐れがあります。
実際にはカギ閉じだったところで指示符の閉じと誤解してしまい、カギはまだ続いていると思って読んでしまう可能性があります。それが違っていたことに気付くのは文末まで何マスも読んだ後になってしまいますので、誤読の恐れがあるケースとなります。
どうしても指示符を用いなければならない場合は、第1カギの部分を第2カギに替えるなどの処理が必要になります。
一般書では、「傍点筆者」のような記載があってやむを得ない場合以外は、やはり極力指示符を用いないことをお勧めします。
墨字では太字であることと文字を同時に認識して読めますので、強調表現は多用されますが、点字では、第1指示符で囲んでもその意図は伝わりにくく、さらに今回のような読みにくさも生じますので、使用にあたっては十分に検討をしてください。

52.p109 3.指示符類

今認知症に関する本を点訳しています。
その中で、認知症の方の手記が書かれており、その一部に筆者が傍点を使って認知症の方の心の内を表しています。
傍点は語句についているため、読点、カギなどにはついていません。一つの文章と思われる時でも原文に従いついている語句だけを指示符で括って点訳した方がよいのでしょうか? 又は読点、カギに傍点がふられていなくても傍点がふられていると解釈して一度の指示符でまとめて括って点訳して良いのでしょうか?

【A】

一般的に、傍点は句読点や記号類には振られていない場合も多々あるようです。縦書きの場合、読点の横には振りにくい、また中にカッコで囲んで英文・単語などが入ると傍点を振るべき所でも振られていない場合もあります。
筆者がどの範囲を指摘しているのかを判断して指示符を使用することになると思います。
一連の心の内であれば、指示符を閉じたり、開いたりを繰り返すよりは、一つの指示符で囲んだ方がよいと思います。重要な語句を区切って傍点を振っているのであれば、語句だけを一つの指示符で囲むことになると思います。

53.p109 3.指示符類

原本では、本文で太字が多用されています。普通は太字を無視して点訳しますが、冒頭の「はじめに」の中で「解説の主なポイントを太字にしていただいた。言葉とともに解説の太字もじっくり読んでほしい。ビジネスにも、生きる上でヒントになるはずだ。」と言う一文があります。この文章がなければ迷わないのですが、この場合、指示符を使った方がよいのでしょうか。個人的には使用する必要はないと思っているのですが、どう対応すべきでしょうか。

【A】

太字が多ければ読みにくくなりますので、太字であることを無視する点訳方法も十分に考えられると思います。
そのような場合は、「はじめに」の「解説の主なポイントを太字にしていただいた。言葉とともに解説の太字もじっくり読んでほしい。ビジネスにも、生きる上でヒントになるはずだ。」の文の後に点訳挿入符で《点訳では太字に記号類は用いず、そのままにした》または、《点字では記号類の多用が文脈理解を妨げるおそれがありますので、そのまま点訳します》のように、断ればよいと思います。

54.p109 3.指示符類

「原稿用紙なんてものはありません…」(傍点は筆者による)
「なんてもの」に強調の点が付けてあり、そのあと、説明がありますので第1指示符を付けて点訳してあります。ただ、あとのカッコの中は
(ボーテンワ■ヒッシャニ■ヨル)とだけ点訳してあります。
ボーテンのあとの「指示符メメ指示符」は省略してもいいのでしょうか。

【A】

「てびき」p110の例にありますように、一般には、指示符の形も付けた方がよいと思いますが、点訳書凡例で《筆者による傍点には、第1指示符を用いた》と断ったり、原本の凡例で、傍点筆者について説明があり、その際に点訳では第1指示符を用いたことを書き添えていたりすれば、(ボーテンワ■ヒッシャニ■ヨル)だけでよいと思います。また、学習書などで、傍点・傍線に指示符類が使われていることが、明らかであれば、指示符の形を付けなくてよい場合もありますし、指示符の形だけを書く場合もあります。
原本によって、どの方法が良いかを判断してください。

55.p109 3.指示符類

(傍点は筆者)の書き方ですが、用例があり、その下に「*原文によっては、以下のような書き方もある」と2種類の書き方が示されています。
「原文によっては」というのは具体的にどんな場合のことをいうのでしょうか。

【A】

墨字の傍点 イコール 点字の第1指示符ではありません。
第1指示符は、傍点だけでなく、他の場合にも用いますので、この場合の第1指示符は、原本の傍点に対応していることを、読む方に何らかの形で知らせなくてはなりません。
傍点に第1指示符を用いた箇所が多い場合は、点訳書凡例で、「原本で筆者が傍点を用いた部分には第1指示符を用いた」(第1指示符の形を示す)と断れば、原本の該当箇所には(傍点は筆者)とだけ書けばよいと思います。
そうでなければ、例文に示した書き方をするのがよいと思います。
第1指示符の形だけを示しても、それは筆者が付けたことがわかりますので、その書き方でもよいと思います。

56.p109 3.指示符類

話し方について書いている本で、文字の大きさや太さを変えて、話し方をあらわしている箇所があります。本文にも「強く発音する箇所は太字で表現」とあるので、指示符を用いようと考えました。しかし、指示符で囲む範囲が1文字~二文字で短く、なおかつ量も多くて、読みづらくないかと懸念しています。
【例】
こ「と」しのなつ「は」つ「ゆ」あけがはやす「ぎ」あついひが「つづ」き、ね「ぐ」るしいよる「も」あります「が」、
さくやはまど「を」あけてねたら、ねぐるしくもな「く」、あさがたはさ「むく」てまどをしめたくらい「で」した。
「よく」ねむれ、5じまえに「めが」さめたの「で」いちねんほっきし「て」にわのくさむしり「を」しました。
※実際には「~」の部分が太字で表現されています。

指示符は一回に4マス使いますので、上記のような書き方の場合に用いると文章の量も多くなり、読みづらくならないでしょうか。
このような場合、指示符でなく他の囲み記号(第1カギなど)に置き換えても大丈夫なものでしょうか。
本文では会話や強調でも「~」、『~』、“~”が多用に使われているため(点字では第1、第2カギを用いる予定です)、
やはり他の囲みと区別するためには指示符の方がよいのでしょうか。
ちなみにですが、別の箇所でも指示符を用いなければならない箇所があります。
その箇所に関しては、通常通り指示符を用いる予定です。

【A】

ご質問の太字の箇所を表す場合、指示符では読みにくいと思います。使用するとしたら第1カギがよいと思います。
他の会話などとは区別がつきますので、混乱することはないと思います。
《強く発音する箇所は太字で表現》のところに、点訳挿入符で「点字では第1カギ」のように断わって書きます。何度も出てくる場合は点訳書凡例でもよいと思います。

ただ、すべて書く必要があるかどうかは、本の内容、文脈によって判断してください。
例えば
例の中の、《こ「と」しのなつ「は」つ「ゆ」あけがはやす「ぎ」の「ト」「ワ」「ユ」「ギ」が太字になっている》
ぐらいを書いて、そのあとを省略しても、文意を理解するのに影響がない場合もあるかもしれません。正しい強弱とは思えないので、方言や発音のくせの一例のようなものかなと思いました。

57.p109 3.指示符類

和歌に傍線がひいてあり、また、その横に番号が振ってあったりします。
本文は以下の通りです。

和歌の技法の一つに「折り句」があります。仮名書きにした場合、五文字の語句を各句の頭に一字ずつ詠み込む技法で、『伊勢物語』(10世紀前半頃)にある「かきつばた」を折り句にした歌が有名です。
からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ
『伊勢物語』第九段

「折り句」の技法をさらに高度にした技法に「沓冠(くつかぶり)」があります。「沓冠」はある語句を各句の始めと終わりに一音ずつ計10音を詠み込んだものです。『栄花物語』(11世紀)に、「あはせたきものすこし(合わせ薫き物少し)」を沓冠にした歌があります。
あふさかも はてはゆききの せきもゐず たづねてとひこ きなばかへさじ
『栄花物語』巻第一「月の宴」

上の和歌の「かきつはた」の文字にところに傍線が引いてあります。
また、下の和歌の中には傍線の横に番号が1から10まであり、①あ ⑥も ②は ⑦の ③せ ⑧ず ④た ⑨こ ⑤き ⑩じ
となっています。
この傍線の処理と番号が付いた傍線の処理をどのようにしたらいいでしょうか?
傍線に指示符を用いて書いていいのでしょうか。

【A】

和歌の技法の説明も、「かきつばた」や「あはせたきものすこし」も取り出してありますので、傍線や番号は無視して、和歌だけをそのまま書くだけでもよいと思います。
原本の記号を表す場合は、その部分を第1カギで囲みます。
③⑥カ③⑥ラコロモ■③⑥キ③⑥ツツ■ナレニシ■③⑥ツ③⑥マシ■アレバ■
③⑥ハ③⑥ルバル■キヌル■③⑥タ③⑥ビヲシゾ■オモフ

ただ、下の和歌の番号までは和歌の中に入れることはできませんので、番号は無視して、上と同じように、第1カギで囲んでよいと思います。
③⑥ア③⑥フサカ③⑥モ③⑥■③⑥ハ③⑥テハ■ユキキ③⑥ノ③⑥■③⑥セ③⑥キモ■ヰ③⑥ズ③⑥■③⑥タ③⑥ヅネテ■トヒ③⑥コ③⑥■③⑥キ③⑥ナバ■カヘサ③⑥ジ③⑥
《各句の初めを読んでから、初句に戻り、各句の最後を読んでいく》のように説明を付け加えてもよいと思います。

なお、技法の説明の都合上、古文の点字表記で書く必要がありますので、点訳書凡例か点訳挿入符で、古文の点字表記で点訳したことを断ります。

58.p110 4.外国語引用符

一般書の中で、「Part1~3」という表現があります。
その前には Part1 Part2 Part3 とあります。
パートワン から スリー と読むのが一般的と思いますが、これを点字ではどう表現したらいいでしょうか?
4パターン考えられると思いますが、どれも問題があるように感じます。
他に表現する方法があれば教えてください。
① Part1だけを外国語引用符で囲み、その後ろに波線 数3と書く。
パートワンから3(さん)となってしまい、意味も変わってしまうのでは?
② 全体を外国語引用符で囲む
全体を外国語引用符というのも、少々違うような気がします。
原本で日本語記号の波線が使われています。
③ Part1~Part3
3の前にPartを補う。これが一番誤解はないように思いますが、ここまで補っていいのかどうか?
④ Partだけを外国語引用符で囲み、その後ろに数1~数3と書く
パート いち ~ さん となってしまう。

【A】

① は、不自然な形になりますので、この方法は避けた方がよいと思います。
②~④は、どの方法も考えられますが、
②の場合は、外国語引用符の中には波線は使用できませんので、範囲を表すハイフンに置き換えるのがよいと思います。
④の場合は、Part1などと単独で書かれているときと書き方が異なってしまうので、少し気になります。
③の書き方が、他と比較して、もっとも自然だと思われます。

59.p110 4.外国語引用符

テレビで「ドキュメント1DAY~緊急事態宣言下のある一日~」という番組名がありました。この「ドキュメント1DAY」は、ドキュメント■数1引大大DAY引 と書いていいでしょうか。

【A】

「ドキュメント1DAY~緊急事態宣言下のある一日~」は「ワンデイ」と読みますので、「てびき」p111の「Lesson 1」の例のように、「1DAY」を外国語引用符で囲みます。外国語引用符の中では英語の表記になりますので、単語ごとに区切り、「1」と「DAY」はマスあけします。
ドキュメント■引数1■大大DAY引■--■キンキュー~
となります。

60.p110 4.外国語引用符

英数字を使った事業所名の切れ続きについて、「YouTube」は一続きに書くと語例集にあります。ニュースサイト「Level7」はホームページでは、アルファベットと数字が一続きに見えます。読みは「レベルセブン」とあります。一続きに書くのでしょうか。「YouTube」のように英語の固有名詞を一続きに書く区別は何でしょうか。

【A】

外国語引用符の中は、英語の書き方になります。英語点字は墨字の英語の書き方に従います。日本語点字の表記の切れ続きやマスあけの規則はあてはまりませんのでご注意ください。
「YouTube」は、英語ではこのように二つ以上の単語が一続きに書いてあって一語としての意味を表す場合がありますので、原文のとおりに書きます。
「Level7」は、原発事故の放射性物質の総放出量のレベル7を表すようです。英語ではLesson1などと同様に、引大Level■数7引 と書きます。

61.p110 4.外国語引用符

英語と略称が書かれている文について質問します。
① ハビタット国際連合体(Habitat International Coalition HIC メキシコに本部をおく居住権擁護のNGO)は~
② ある本に製造物責任(Product Liability:PL)法に~
①、②とも略称である HIC・NGO・PLは縦書きに書かれています。
この時の英語と略称は続いていると考えて略称まで外国語引用符で囲んで書いていいのでしょうか。「てびき」p47のコラム内、p138の「Wanted:An~」の用例とは違うと思いますがどうでしょうか。また②での「:」も英文中のコロンの扱いで点訳するのでしょうか。①の「Coalition」と「HIC」の間のスペースはスペル間のスペースよりも幅広くなっています。

【A】

①②とも、外国語引用符を閉じたあとに、外字符を用いて略称を書くのがよいと思います。
「てびき」p47コラムは、「外字符で書くべき略称と外国語引用符で囲むべき外国語が複合した語」について述べていますので、この場合とは異なります。
また、p138の例は英文の中での点訳を示しています。
①②は、カッコ前の語を英語で示した場合の書き方と、その略称を並列して書いていますので、英語で示した部分だけを外国語引用符で囲み、「:」は日本語点字の適切な記号(読点や棒線など)に置き換えるか、マスあけに代えるのがよいと思います。
① ハビタット国際連合体(引大Habitat■大International■大Coalition引■外大大HIC■■メキシコに■~の■外大大NGO)は~
② ある本に製造物責任(引大Product■大Liability引■外大大PL)法に~
のようになります。

62.p110 4.外国語引用符

一般書の中に次のような記述があります。
GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)
このカッコの中の「・」はどの様に点訳すればよいのでしょうか。
カッコの中は全体を外国語引用符で囲もうと思いますが、外国語引用符の中では「・」は省略して1マスあけにしてよいのでしょうか。それともコンマかピリオドに替えた方がよいのでしょうか。または全体を囲むのではなく個別にした方がよいのでしょうか。

【A】

原文通りにそれぞれの単語を外国語引用符で囲んで、中点を用いても間違いではありませんが、マス数も多くなり、読みにくさもあると思いますので、
一つの外国語引用符で囲み、コンマを用いるのがすっきりしていると思います。
外大大GAFA(引大Google②■大Amazon②■大Facebook②■大Apple引)
となります。

63.p110 4.外国語引用符

ASAP(as soon as possible/大至急)
このフレーズの、外国語引用符・スラッシュ・カッコの点訳に迷います。
引ASAP(as soon as possible)引■(大至急)
と書いていいでしょうか。

【A】

このフレーズは、《ASAPは、as soon as possibleの略で、大至急という意味です》ということを表していますので、
外大大ASAP(引as■soon■as■possible引■大至急)
と書くのが、よいと思います。
ASAPは略語ですから、外字符を前置し、英語の部分を外国語引用符で囲み、外国語引用符の後ろは一マスあけて、日本語を入れます。

64.p110 4.外国語引用符

1.『How to Be Happy Tough Human』Beran Wolfe, Farrar &Rinehart Incorporated,1931. の文について
『引How to Be Happy Tough Human引』■引Beran Wolfe, Farrar & Rinehart Incorporated, 引■数1931でしょうか。
それとも数字の1931の後で外国語引用符を閉じるべきでしょうか。その際の数字の表し方は、日本語点字と同様に、数字の前に数符をつけて表してよいでしょうか。

2.『Songs From St.KILDA』(Anne Lorne Gillies)
と『曲名』(歌手名)が書いてあるのですが、
カギとカッコ内にそれぞれ外国語引用符で点訳してよいでしょうか。それともひとつの外国語引用符内で点訳することになるのですか。

【A】

1.これは、書名と著者名、出版社名、発行年ですので、一つの外国語引用符で囲むのがよいと思います。そのためには、日本の記号である『~』を英語の記号であるコーテーションマークにする方法があります。
外国語引用符の中でも、1931のような数字は数符を用いて日本文と同じように書きます。英語の書き方は、「てびき」p136~p140を参照してください。
1タイトルの中では、『~』の処理は統一しておいた方がよいと思います。日本の文献はふたえカギで囲みますが、英語の文献の『~』はコーテーションマークにして、書名・著者名・発行所・出版年をすべて一つの外国語引用符で囲んだ方がよいと思います。
なお、「てびき」p135【備考】にあるように、外国語引用符と英語のコーテーションマークは形が同じですが、外国語引用符の中にコーテーションマークを用いることができます。

2.『~』にふたえカギを用いて、それぞれに外国語引用符で囲んでもよいと思いますが、曲名・歌手名を一つの外国語引用符で囲み、『~』をコーテーションで点訳してもよいと思います。
引“Songs From St.KILDA”■(Anne Lorne Gillies)引
となります。
どちらも間違いではありませんが、英語の曲名と歌手名ですので、一つの外国語引用符で囲んだ方がすっきりすると思います。
ただ、多くの曲名と歌手名が書かれていて、日本語の曲名と歌手名も同じ記号で書いてある場合などは、書き方を揃えた方がよい場合もあると思います。

65.p110 4.外国語引用符

一般書の注部分に、下のような部分があります。

次の見出しを掲げたこちらの記事も参照されたい。“Nothing hits the planet as hard as rearing animals. Caring for it means cutting out meat, dairy and eggs”(畜産は最悪の環境破壊行為である――地球を守るために肉・乳製品・卵を断つ), https://www.theguardian.com/commentisfree/2016/aug/09/vegan-food-system-meat-dairy.

英文のあとにURLを書く際のQ&Aが載っていたので、それを参考に書こうと思いましたが、途中にカッコ書きで日本語の部分があります。
『初歩から学ぶ英語点訳』のp150には、「英文中に日本語が混じっているが、英語中心の書式で書きたいときも、日本語部分をカッコ類で囲むなどして、読みやすい形を工夫することができる。このような処理をしたときは、必ず凡例や点訳者注で説明をする」と書かれています。
上のようなときは、全体を外国語引用符で囲み、コーテーションマークを用いて“Nothing~eggs”を書いたあと、1マス開けて第1カッコで(畜産は~断つ)を書き、そのあと1マス開けてアドレス囲み符号でURLを書いた上で、外国語引用符を閉じるのでしょうか。また、断つ)のあとのコンマは、eggsの後に移動、最後のピリオドは省略するのでしょうか。

【A】

“Nothing hits the planet as hard as rearing animals. Caring for it means cutting out meat, dairy and eggs”を外国語引用符で囲み、引用符を閉じた後一マスあけて、(畜産は最悪の環境破壊行為である――地球を守るために肉・乳製品・卵を断つ)を第1カッコで囲んで書き、その後ろのコンマは読点にして、 https://www.theguardian.com/commentisfree/2016/aug/09/vegan-food-system-meat-dairyをアドレス囲み符号で囲んで書き、最後のピリオドを句点にすればよいと思います。
実際には、最後のピリオドまで英語が続くのでしょうが、点訳する場合は、英語、日本語、情報処理記号に分けて書いた方が分かりやすいと思います。

66.p110 4.外国語引用符

①つぎの英語の点訳は全体を外引符で囲んでカッコを丸カッコで使っています。
「国際的宗教の自由法、外引International Religious Freedom Act■(IRFA)外引」
International Religious Freedom Actのみを外引符で囲み、■(IRFA)を外字符で加える校正が必要ですか。

②「キリスト・神の教会(Church of God in Christ, COGIC)」の
(Church of God in Christ, COGIC)の部分は全体を外引符で囲み、コンマを使うことはできるでしょうか。
「キリスト・神の教会」の中点はどのように処理するとよいでしょうか。

【A】

① 日本語とその英語表記が書いてあって、その後ろに略記が示してある書き方ですので、略記まで外国語引用符で囲むより、カッコの前で外国語引用符を閉じて、カッコ内は外字符で書く書き方を勧めてよいと思います。校正で指摘してもよい箇所だと思います。

②「キリスト・神の教会(Church of God in Christ, COGIC)」は、カッコ内にコンマを使用して英語表記と略記を並べてあるので、全体を外国語引用符で囲むのが自然だと思われます。ただ、このような場合も、英語表記だけを外国語引用符で囲み、コンマを読点に変えて、略記は外字符で書いてもよいと思います。
キリスト・神の教会は、1語の中の区切りを明らかにしていますので、一マスあけで、キリスト■カミノ■キョーカイと書きます。

67.p110 4.外国語引用符

セミコロンの書き方をお教えください。
中村司著「渡り鳥の世界」四 氷河期説の文中にギュンツ(Gunz;100~50万年)、ミンデル(Mindel;40万年)、リス(Riss;20万年)・・・
と言う文があります。資料集「Q&A3」4章p21に、セミコロンはマスあけで書くとなっています。ギュンツ、ミンデル、リス共カッコの中はセミコロンの後の数字に万年があるので、アルファベットの後は外引閉じ記号を使うことになります。その場合は、引大Gunz外■数100の書き方でいいですか。
また、モロウ(Morrau 1951)との書き方もあります。この場合カッコ内は数字までを外国語引用符で囲むのが正しく、アルファベットの後ろで閉じるのは誤りですか。

【A】

ギュンツ(Gunz;100~50万年)、ミンデル(Mindel;40万年)、リス(Riss;20万年)・・・ これらは、カッコ内の前の部分に、ギュンツやミンデルを原語で書き、セミコロンの後にその年代が書いてありますので、
ギュンツ(引大Gunz引■数100③⑥③⑥数50マンネン)
ミンデル(引大Mindel引■数40マンネン)
のように書きます。
モロウ(Morrau 1951)は、モロウ氏の当該資料の発表年のような書き方でしょうか。または、モロウ氏の生年、没年のようなものでしょうか。前後の文脈によると思いますが、単に、モロウのアルファベット表記を表しているのであれば、
モロウ(引大Morrau引■数1951)
でよいと思います。この人の論文について参考資料のような書き方でしたら、数字まで外国語引用符で囲む場合もあります。

68.p110 4.外国語引用符

英語の出典(人名と、その人物が執筆した論文の出版年)の外国語引用符の付け方についてお尋ねいたします。
以前、「出典 : Gilbert(1997)」の書き方は、外国語引用符は、年数まで入れて囲むとの回答でした。つまり、「出典■■外引大 Gilbert■(1997)外引」とするようにとのことでした。
そのように点訳したところ、「出典■■外引大 Gilbert外引■(1997)」ではないかと会の中で意見が分かれました。
このような場合、その年数も含めて外国語引用符で囲むかどうかはどう判断すればよいでしょうか。

【A】

Gilbert(1997)は、Gilbertが1997年に発表した論文(または出版した本)が出典ですという意味ですので、この場合は Gilbert(1997)を外国語引用符で囲むのが自然です。
どこまで外国語引用符で囲むかは、どこまでが英語の範囲なのかを判断して決めます。たとえば、「てびき」p111の「点字は、フランスの少年~」の例では、日本語の文章の中にLouis Brailleがあり、後ろのカッコ内には、波線が用いてあるので、名前だけを外国語引用符で囲んでいます。

69.p110 4.外国語引用符

英語の単語が長かったり、出典などでスペース無しで英語が続いている場合、スラッシュなどの後ろで強制改行は可能でしょうか。その時に続ける記号(継続符など)は必要でしょうか。

【A】

英語では、単語ごとにマスあけしますから、少し行末があいても、マスあけの所で行移しすることをお勧めします。
15マス以上も続く長い単語の場合は、単語の途中で、行末にハイフンを書いて分ける(分綴)ことができますが、分綴の位置は辞書で調べて音節の区切りで行います。
前後をマスあけする斜線の場合は、そこで行移しできます。

70.p111 5.点訳挿入符

刑事同士の会話に「昨年、長六四をくらったばかりだ」というのが出てきます。
長六四に「ながむし」とルビがあり、調べたところ警察隠語に「長期刑」とありました。この場合、ナガムシと書くだけでいいでしょうか。「ナガムシ(ナガイ■6■4)」あるいは「ナガムシ点挿チョーキケイ点挿」のように説明を書いた方がいいでしょうか。

【A】

前後の文脈によって異なってくると思います。
ナガムシヲ■クラッタバカリ
と書いて、前後の文脈に影響がなければ、点訳挿入符は必要ないと思います。
ここに数字の6と4が使用されていることを説明しないと、前後の文脈が理解できないような場合は、ナガムシ点挿「ナガイ」ニ■数6ト■数4点挿のように入れるとよいと思います。なお、「長期刑」という意味は墨字を読んでいる人にもわかりませんので、不要です。

71.p111 5.点訳挿入符

シナリオの点訳をしています。
映像用語が(F.I)(O.L)など記載されています。
フェード■イン、オーバー■ラップなど読みを書き入れようと思いますが、点訳挿入符で囲むのがよいのか、第1カッコで囲むのがよいのか、どちらがよいでしょうか。

【A】

原本に F.I(フェードイン)のように読みが書いてあれば、第1カッコで囲みますが、F.Iという略称に、フェードインと読みを加えるのは点訳挿入符になると思います。
このような語が、(F.I)(O.L)のほかにもあるのでしたら、点訳書凡例で、《以下の語は本文中では略記されています。》のように断っておくと、本文中に点訳挿入符で入れるよりすっきりすると思いますし、ピリオドも省略して書くことができます。知識として持っている方が点訳挿入符で中断されることも防ぐことができます。
フェードイン■②⑤②⑤■外大大FI
オーバー■ラップ■②⑤②⑤■外大大OL

72.p111 5.点訳挿入符

原本に、
「阿る」は「おもねる」と読む。
という一文があり、その点訳に悩んでいます。
2案考えました。
①「アソサンノ■アノ■カンジニ■オクリガナノ■ル」ワ■「オモネル」ト■ヨム。
「阿る」の字そのものを点訳挿入符はつけずに書き下した案です。
②「アル点挿アソサンノ■アノ■カンジニ■オクリガナノ■ル点挿」ワ■
「オモネル」ト■ヨム。
「ある」と読まないのですが、「ある」と最初に入れて点訳挿入符で説明を入れた案です。
①案のほうが違った読みが無くてわかりやすいのではないかと思うのですが、点訳挿入符無しでも漢字の説明は可能かどうか悩んだところです。やはり②案が無難でしょうか。また、他の点訳例があれば教えてください。

【A】

①も②もよく考えられた案と思いますが、
①は、原文にこのように書いてあると誤解されてしまいます。
②は、「阿る」は「ある」とは読みませんので避けた方がよいと思います。
以下、①と②を少し修正した形ですが、

A.①のカギ内を点訳挿入符で囲んだ形
「点挿アソサンノ■「ア」ニ■「ル」ノ■オクリガナ点挿」ワ■「オモネル」ト■ヨム。

B.②を少し修正した形
「オモネル点挿アソサンノ■「ア」ニ■「ル」ノ■オクリガナ点挿」ワ■「オモネル」ト■ヨム。

のどちらかがよいと思います。少し回りくどくなりますが、Bの方が原文に近いと思います。
なお、「阿」を特定する説明に、「阿蘇山」以外に、「阿弥陀」や「阿修羅」などもあります。漢字を特定する際に、固有名詞の理解には個人差がありますので、注意が必要な場合もあります。

73.p111 5.点訳挿入符

もともとぼくには「辞書狂(教)」的なところがある。その「狂」が刺激を受けたのかもしれない。
この原文を点訳する場合、「ジショキョー(キョー)」点挿クルウ■オシエル点挿
でいいのでしょうか?
次の「狂」にも点挿クルウ点挿が必要でしょうか?
また、(教)を勝手に省略してもいいものでしょうか?

【A】

「ジショキョー」点挿「キョー」ワ■「クルウ」、■カッコナイニ■
シューキョーノ■「キョー」点挿テキナ■~
ソノ■「キョー」ガ■~
上記のように考えてみましたが、前後の文脈にあっているでしょうか。
この場合「教」を「オシエル」と書いても、文意が通じないように思いましたので、このようにしてみました。
「辞書狂(教)」とあった場合、「ジショキョー(キョー)」と原文通りに書くとわかりにくくなりますので、点訳挿入符で漢字が二つ書いてあることを示せばよいと思います。

74.p111 5.点訳挿入符

主人公は正美といいます。彼女の父親が正美を主人公にした小説を書きました。ただ、本の中では、雅美になっています。最初に出てくる雅美にだけ、傍点がついています。この場合点訳挿入符で説明を入れる必要はありますか。
漢字の説明をしても仕方ないような気もしますが、入れるとしたらどう説明するのか悩んでいます。

【A】

小説の主人公の漢字を変えたことが、全体の物語の理解に重要な意味がある場合は、説明を入れることになります。
そうでなければ、漢字の説明は必要ないと思いますが、原文に傍点があるのであれば、そこの部分にだけ、漢字が異なることを入れた方がよいかもしれません。
雅美 点挿カンジガ■コトナル点挿
雅美 点挿「マサ」ノ■カンジガ■コトナル点挿
雅美 点挿「マサ」ヲ■「タダシイ」カラ■ユーガノ■「ガ」ニ■カエタ点挿
などが考えられます。
あるいは、雅美 点挿シュジンコートワ■カンジガ■コトナル点挿
などと入れた方が分かりやすい場合もあるかもしれません。

75.p111 5.点訳挿入符

見出しに、漢字を説明する点訳挿入符を添えてもよいですか。

【A】

見出しは目次にも掲載しますし、見出しに点訳挿入符で囲んだ説明があると長くなり煩雑になります。見出しのイメージも変わってしまうと思いますので、できるだけ点挿は入れない方がよいと思います。本文を読めば分かる場合は、必要ありませんし、どうしても必要な場合も、見出しが終わった後に行を替えて点挿を入れるなどの工夫をしたらどうでしょうか。

76.p111 5.点訳挿入符

「載ったら乗らない」という見出しがあります。その意味が本文に、「新聞に書評が載ったので、その新聞に猫を乗せて写真を撮ろうとしても、猫が乗ってくれない」という説明が書かれています。本文中にも、「載ったら、乗らない」という言葉が出てくるので、説明は本文だけでいいですか。
また、「乗る/載る」もあります。/は中点にするつもりですが、ノル(ジョウシャノ■ジョウ)では、新聞に猫が乗るとはちがう意味になってしまうでしょうか。「乗らない」の時はどの位置に説明のカッコを入れたらいいでしょうか。

【A】

見出しには点訳挿入符は入れない方がよいと思います。本文も読めば意味が分かるようでしたら漢字の説明は必要ないと思います。
「乗る/載る」は、点訳挿入符で説明するとしたら、「新聞の上に乗ると新聞に掲載される」のような説明でよい場合もあると思います。漢字の説明が具体的に必要な場合は、ジョーシャノ■ジョート■ケイサイノ■サイのように音読みの違いで説明するのがよいと思います。
「乗らない」は、おそらく文脈で分かるのではないかと思いますが、判断が付かないような場合は、「乗らない」のうしろに、「ウエニ■ノラナイ」または「ノッカラナイ」などと説明を入れることになります。

77.p111 5.点訳挿入符

「かぜがまえ」についてです。『さいはての彼女(原田マハ著)』に「凪」という女の子が〈風を止めたくないので〉「止」を書かない字を使っています。今のところ「(風の字の)かぜがまえ」にしようかと思っていますが、他に良い表現がありましたら教えてください。

【A】

几の形を説明するときに、「かぜがまえ」または「かぜかんむり」と書くのは分かりやすいと思います。
ただ、どのような文脈で出てくるのかによって、点訳挿入符で少し詳しく漢字の説明をした方がよい場合もあると思います。
たとえば、
ナギ点挿ナカノ■「トメル」ヲ■カカナイデ■カゼガマエダケノ■カタチ点挿
ナギ点挿カゼガマエノ■ナカニ■「トメル」ト■カク■「ナギ」ヲ■カゼガマエダケニ■シタ■カタチ点挿
等の説明が必要かもしれません。
文脈によってご検討ください。

78.p111 5.点訳挿入符

次の文章の点訳について質問です。

高天原にあらわれた最初の神は、天之御中主神といいます。
これはどう読むと思いますか?
〈アメノミナカヌシノカミ〉と読むのです。
(出典「古事記ー日本のはじまりー」)

初めの漢字記載の「天之御中主神」の部分の点訳はどのようにするのでしょうか。
あとに出てくる実際の読み〈アメノミナカヌシノカミ〉ではなく、何と読むか質問しているので、漢字の説明を入れる必要があると思いますが、「てんの/おんちゅー/あるじ/かみ((6文字の漢字))」の様な書き方はおかしいでしょうか? 点訳挿入文を入れるにも、点訳挿入文だけでなく、原文の読みを何らかの形で表したものに付けなければいけないと思うので、困ってしまいました。

【A】

アメノ■ミナカヌシノ■カミ点挿カンジ■6ジデ■テン■ノ■オン■ナカ■シュ■カミ点挿ト■イイマス。
のように書いてはどうでしょうか。
最初に答えをいう形になりますが、正しい読みで点訳するのがよいと思います。

79.p111 5.点訳挿入符

最近、1冊の本の中に、読みは同じで漢字が違う人名や地名というのが良く出てきます。本によって、要所要所に点訳挿入符で説明を入れるなどの方法で対処できる場合もありますが、本によっては、一つの場面に頻繁に読みが同じ人物が出てきて会話したり、他の人物とやり取りしたりします。例えば、「○○は△△のもとへ駆け寄る」といった具合です。
1.前置きなく文頭に○○は… △△は… と出てくる文も多いのですが、点字を読む方にとって、文を最後まで読めばどちらの人物か見当がつく場合、注や記号がない方が読みやすいでしょうか。それとも、文頭ですぐにどちらか分かった方が読みやすいでしょうか。
2.区別がつくように工夫する場合、凡例や点注で断ったうえで片方の名をカギで囲むことを考えましたが、第1カギだと、会話文の中では二重カギになり、形が変わります。第2カギだと、1箇所に4マスも増えることになり、煩雑な気がします。どういう記号を使えばいいでしょうか。
ケースバイケースであることはもちろんなのですが、一般的に言ってどうすればよいでしょうか。

【A】

一般に、文章を読めば分かる場合は、注記や記号などで区別をしたりする必要はありません。
また、区別のために何か工夫をする場合でも、毎回入れるのではなく、文章を読んでどうしても分からないときにだけ入れるとよいでしょう。
点訳書凡例などで断って、カギ類などの記号類を用いてもよいのですが、後ろにカッコで囲んで簡潔な説明を入れる方が分かりやすい場合も多いと思います。マス数は少し多くなると思いますが、後ろに付いているカッコは必要のない場合は飛ばして読むことができるので、むしろ便利だと思われます。
カッコの中は、最初に断ってできるだけ簡潔にします。
たとえば、伊達市(北海道と福島)の場合は、北海道の方にダテシ(キタ)としたり、伊達市と伊達氏の場合で区別が付かない場合は、頻度の少ない方に、(チメイ)(ヒト)と入れるなどの工夫をしたらどうでしょうか。
これらも、文脈で判断が付けば入れる必要はありません。

80.p111 5.点訳挿入符

現在、国語関係の読みものを点訳しています。内容は、「漢字の単語について対立する2つの読み方を上げ、どちらが本来的・一般的か論じる」、「漢字の表記や送り仮名について、2~3つの書き方を上げ、どれが適切か論じる」というものです。
見出しには、「不気味」vs「無気味」のようにvsを挟んで対立する語が併記されています。
同じ読みで表記が異なる語が繰り返し出て来る本で、点訳挿入符の入れ方について迷っています。
①点訳挿入符内では、なるべく音を合わせるようにと思って来ましたが、必ずしもそうでなくてもよいのでしょうか。
例えば、「若輩」vs「弱輩」を比較する項で、「若輩(じゃくは自若のじゃく)」「弱輩(じゃくは強弱のじゃく」とするよりも、「若輩(わかい)」「弱輩(よわい)」とした方がわかりやすく、内容も短くなります。
②必要最小限について
点訳挿入符についての質問例の中で、地名「伊達」の書き分けについての解説があり、必要最小限に「伊達(きた)」というような入れ方をしてもよいとされていました。
「不気味」と「無気味」が何度も文中に出てくる場合、最初は「不気味(ぶは不安のふ)」「無気味(ぶは有無のむ)」としますが、2度目以降は「不気味(ふ)」「無気味(む)」まで簡略化することはできますか。
同じく最小限ということでは、「的確」vs「適確」では、1度目は「的確(てきは目的のてき)」「適確(てきは適当のてき)」と入れますが、2度目以降は「的確(目的のてき)」とするか、「的確(目的)」まで簡略化できるのか迷っています。「のてき」の部分はマス開けを挟むこともあり、繰り返し出てくるたびに書くと意外と長くなるので、できることなら省略したいと思うのですが。
③数字の読み方が問題となる語について
例えば「十中八九」は点字では「数10ちゅう■数8数9」と書きますが、「じゅっちゅう」と読むか「じっちゅう」と読むかが問題となる項では、凡例で断った上で、「じゅっちゅう■数8数9」vs「じっちゅう■数8数9」と書き、見出しの最後に2マスあけて点訳挿入符で(数10ちゅう■数8数9)と入れています。
このように取り扱うと決めても、「一人前」を「ひとりまえ」と読むか「いちにんまえ」と読むかの項では、意味の解説の中に「一人分」の意味も、「技能などが人並みであること」の意味も取り上げられており、意味によって点字では数字を使うことも使わないこともあるので、見出しの最後に数字を使った点字表記を併記するべきか迷いがあります。
これらのことについて、凡例で断るなど、わかりやすく処理できる方法はありますでしょうか。

【A】

原本の特徴をよく捉えられており、基本的に、お考えの点訳方法に賛成ですし、その点訳方法で、点字で読んでも理解しやすいと思います。
① 前後の文脈にもよりますが、「輩」の説明がなくてもよければ、「わかい」「よわい」で十分分かると思います。
②「不気味」と「無気味」の2度目以降の簡略化も「ふ」「む」でよいと思います。「的確」「適確」についても、2回目以降は「もくてき」「てきとう」でよいと思います。
③数字の読みについては、原本の性質上、点字では数字で書くか仮名で書くかに厳密にこだわらなくてもよいと思います。「ジッチュー■数8数9」「ジュッチュー■数8数9」と書いてあれば、数字の10であることが分かりますので、点訳挿入符で正しい点字表記を入れなくても内容の理解には影響がないように思います。

81.p111 5.点訳挿入符

同音異義語についての質問です。
「言葉のおもちゃ箱 伊奈かっぺい綴り方教室」伊奈かっぺい著の中に、同音異義語で「池、鯉、亀、桶、家、翁⇒行け、来い、噛め、置け、言え、起きな」をあてているのですが、点訳挿入符で説明がいるかと思うのですが、どこにどのように入れたほうが、読むにあたって流れを止めずに、本の雰囲気を壊さずに伝えられるかと思い質問しました。
文は以下の通りです。

1.【池、鯉、亀、桶、家、翁…これらの文字を見るたびに命令形を思い、ムッとする性格なのだ。雀…暑いだろうョなどと思ったりもするがね命令形。…池、鯉、亀、桶、家、翁。とりあえず声に出して読み別な字に置き変えてみるアソビ…抱きつくように舐めまわす。声に出して嫁これも命令形に書き直せ、なんてね。】と前半の文があり、(中略)、後半に【池、鯉、亀、桶、家、翁の命令形とはー行け、来い、噛め、置け、言えとなる。『翁、いつまで寝ているつもりか』となれば、翁は起きなと命令形に変化する。雀…暑いだろうョの雀は涼めに直すとわかりやすい。声に出して嫁とは声に出して読めとなる。】

点挿イケブクロノ■イケ、サカナノ■コイ、ツルカメノ■ツル、フロオケノ■オケ、イエガラノ■イエ、オジイサンノ■イミノ■オキナ点挿、を最初にでてきたところのすぐ後に1回のみ入れてはどうかなと思っています。

上記とは別に、もう一つ、以下の文があります。
2.「おかしなコレクション・陶々おつむテン展と題して手作りの陶器、焼物の展覧会を開催したのは1978年(昭和53年)。」

「おかしなコレクション・陶々おつむテン展」のあとに、この〈陶々〉は点挿でトージキノ トー点挿と説明したほうがいいのでしょうか?この後に、陶器、焼物の展覧会とあるので点訳挿入符での説明はいらないような気がするのですが。

【A】

1.
【池、鯉、亀、桶、家、翁…これらの文字を見るたびに命令形を思い、ムッとする性格なのだ。雀…暑いだろうョなどと思ったりもするがね命令形。…池、鯉、亀、桶、家、翁。とりあえず声に出して読み別な字に置き変えてみるアソビ…抱きつくように舐めまわす。声に出して嫁これも命令形に書き直せ、なんてね。】
⇒ この部分に一つ一つ漢字の説明をいれていると、とても冗長になり、読んでいて文意が把握しにくくなると思います。ここは、それぞれ名詞を動詞の命令形に替えることのおもしろさを言っているので、
【池、鯉、亀、桶、家、翁点挿すべて漢字の名詞点挿■…これらの文字を見るたびに命令形を思い、ムッとする性格なのだ。雀点挿鳥の名点挿■…暑いだろうョなどと思ったりもするがね命令形。…池、鯉、亀、桶、家、翁。とりあえず声に出して読み別な字に置き変えてみるアソビ…抱きつくように舐めまわす。声に出して嫁点挿お嫁さん点挿■これも命令形に書き直せ、なんてね。】

【池、鯉、亀、桶、家、翁の命令形とはー行け、来い、噛め、置け、言え点挿動詞の命令形点挿と■なる。『翁点挿おじいさん点挿、■いつまで寝ているつもりか』となれば、翁は起きなと命令形に変化する。雀…暑いだろうョの雀点挿鳥点挿は■涼めに直すとわかりやすい。声に出して嫁点挿およめさん点挿とは■声に出して読めとなる。】
これだけで、文意は通じると思います。

2.「おかしなコレクション・陶々おつむテン展と題して手作りの陶器、焼物の展覧会を開催したのは1978年(昭和53年)。」
「トートー■オツム■テンテン点挿「トー」ワ、■トーキノ■トー、■サイゴノ■テンワ■テンランカイノ■テン点挿」と書けば、漢字の当て字であることが分かると思います。

82.p111 5.点訳挿入符

原本の中に
ゴーダマ・ブッダも「ブッダ」と書き、ゴーダマ・ブッダ以外の諸仏については「仏陀」に統一した。
と、いう一文があるんですが、この場合漢字のところは点訳挿入符を使って、
点挿ホトケ■アミダノ■ダ点挿
と、入力したほうがいいのでしょうか?

【A】

少なくとも「ブッダ」と「仏陀」が、カナと漢字であることは説明する必要があります。
前のブッダに点訳挿入符で「カタカナ」と入れ、後ろのカンジの部分は
「ブッダ点挿カンジ点挿」
「ブッダ点挿カンジデ■「ホトケ」ニ■アミダノ■「ダ」点挿」
文脈によって、どちらかを用いればよいと思います。

83.p111 5.点訳挿入符

次のような時はどのように点訳すればよいのでしょうか。

いい笑顔だ。目が特に。
線のように細くなって、目頭から目尻まできれいな弧を描いて、つまり三日月というか、タテ書き上カッコーー「(」みたいで・・・。
ダイブツさんはにっこり笑う。両目がタテ書き上カッコの「(」になった。

カギの中は縦書きの上カッコです。パソコンで入力できないのでヨコカッコを書いています。あだ名がダイブツさんと呼ばれている方の目の表現です。

【A】

タテ書き上カッコーー「(」みたいで
ここは、カギも入れると、文章が不自然になってしまいますので
⇒ タテ書き上カッコ((墨字記号の形が添えてある)) みたいで
のように点訳挿入符で囲んで書き、次の文は
両目がタテ書き上カッコの「(」になった。
⇒ 両目がタテ書き上カッコの「((記号))」になった。
と書いたらどうでしょうか。

84.p111 5.点訳挿入符

歴史的仮名遣いの文章についてです。現代文の中に、和歌や法律が引用されたような場合です。歴史的仮名遣いにする必要、必然性があれば、断ったうえで、歴史的仮名遣いにすることは承知しています。
ただ、特に歴史的仮名遣いにする必要がない場合、
「点挿ゲンブンノ■ママ点挿」を入れて 原文にあるように歴史的仮名遣いで表記することについて、校正で、どのように扱ってよいか、迷っています。
(例)
アタツテワ((ゲンブンノ■ママ)) ← 法律の条文の引用文で、「あたっては」
(アオニヨシ ~) ハナノ■ニホフガゴトク((ゲンブンノ■ママ))
「てびき」p23 「現代文の中に歴史的仮名遣いの語句や文が挿入されているときは、現代文の仮名遣いに直して書くことを原則とする」とあるので、現代文の仮名遣いでと、説明しましたが、((ゲンブンノ■ママ))を書けば、これでいいのではないかと言われました。また、それに同意する人もいました。
この解釈は、それで良いでしょうか。
歴史的仮名遣いの必要性がなければ、現代文の仮名遣いの方が、読み手にはわかりやすいのではと考えましたが、そのような指摘は校正の範疇を超えるでしょうか。

【A】

一般文章中では現代文の仮名遣いで点訳するのが原則となります。
ご質問の中では、和歌は古文の点字表記で点訳することもあるかもしれませんが、法律の条文は、現代文の仮名遣いにすることをお勧めします。
和歌などを古文の点字表記で書く場合は、点訳書凡例で断った上で、「てびき」p211以降の表記に従って書きます。
そのつど、点訳挿入符で((ゲンブンノ■ママ))と入れるのは避けるということを、校正で指摘する必要があります。
触読ではその部分を飛ばして読むことは困難ですので、その都度、((ゲンブンノ■ママ))を、読まされてしまう煩わしさやわかりにくさに配慮するべきです。
読みやすい点訳を心がけることが求められると思います。

85.p111 5.点訳挿入符

原文が以下のようになっています。

台詞の人物の名前は3文字で書きます(例えば、「長谷川」や「二ノ宮」の場合はそのままで良いのですが、「三宅」の場合は「三 宅」という具合に、あいだに1文字空けて高さの幅をそろえます)。
「三 宅」は、どのように表記すればよいかご指導のほどよろしくお願いします。

【A】

《「三 宅」という具合に、》を省略して、
「三宅」の場合は、あいだに1文字空けて高さの幅をそろえます)。
と点訳し、句点の後ろに点訳挿入符で
点挿「ハセガワ」「ニノミヤ」は3文字だが、「ミヤケ」はフタモジ点挿
のように、補えば分かりやすいかと思います。

86.p111 5.点訳挿入符

現在点訳校正中の本にいくつか面白い墨字表記があります。これらに漢字の説明を点訳挿入符を使って入れるか、入れないか迷っています。迷っている箇所は以下の通りです。

1.携帯機器について次のような記載があります。
推子の耳たぶに埋め込まれた極小のイヤフォンからは、須磨後奔で再生している動画の音声が流れ続けていた。
※須磨後奔 に、すまあとふぉん とルビ

この文章の数ページ後には、推子の友人がスマートフォンを使用していると記載があり、そのすぐあとに「操作性や機能、容量が格段に向上した<須磨後奔>という新しい通信機器が普及した」と須磨後奔についての説明があります。

この須磨後奔について漢字の説明は必要でしょうか。「スマアトフォン」だけでも「スマートフォン」との違いは出ますが、漢字が充てられていることは伝わりません。
漢字の説明を入れる場合、初出のところになるのか、入れる場合1字1字の漢字を説明するのか((漢字表記))とだけ簡単に入れるのか…。いかがでしょうか。

2.AIに絡んだものが次のような文章で出てきます。
ええ愛店員によって運ばれてきたコーヒーをしばらく不味そうに口に運んでいた。
※ ええ愛 に傍点がふられています

この10ページほど後に以下の記載があります。
十年前、「AIをもっと親しみやすい存在に変えよう」と始まった政策の一環で、あ る日突然<ええ愛>という薄気味悪い愛称があらゆるメディアで使われ出したのだ。

ここも点訳挿入符での説明は必要でしょうか。入れる場合、初出のところでしょうか、その後の説明のところでしょうか。

3.子供の名前について次のような文章があります。
この年にそういう流行があったのだろう。
年中組さんは「画ラ酢(がらす)」「打ッ土(うっど)」「斜和ー(しゃわあ)」などという外来語を手当たり次第に取り入れた名前がやたらと多い。
娘のズポポ組さんは「脚矢(あしや)」「舌郎(ぜつろう)」「目見(めみ)」「夢臓(むぞう)」くんに「奈爪(なつめ)」ちゃん、と身体にまつわる漢字だらけだ。
推子も娘に「肚」と名付けたが、流行りだったという以外の理由をよく思い出せない。
※カッコ内はルビ

ここの漢字説明はいかがでしょうか。読みだけでいってもよいものでしょうか。1字1字漢字説明必要でしょうか。悩みます。

4.オンライン状態に常にいるのが当たり前の世の中で、それに対応できない「オフライン依存」の子どものための学園として<お麩来ン学園>というのが出てきます。
ちょうど来週、彼女が理事長を務める<お麩来ン学園>の学園説明会が校舎で行 われるらしいという情報を発見した推子は~
※麩来に「ふらい」のルビ

1.と3.の須磨後奔と子供の名前については、漢字は当て字でしかないと考えます。その漢字でなければならない必然性がありません。無味乾燥な感じを倍増させます。
2.の ええ愛 はイメージ先行のキャンペーンとしての当て字かなと思います。
4.の お麩来ン学園は、このあと麩を使った料理の話題が出てきます。
どれも入れなくても、話は通じると思いますので、入れないという選択肢もあると思います。ただ、漢字説明を入れないと、そこに必然性のない漢字があてられていることは伝えられません。そこは伝わらなくても、内容が伝わればいいのでしょうか。また、どれも、漢字説明を入れることを考えると点訳挿入符内が長くなることが考えられます。
個人的には、点訳挿入符での漢字説明は必要最低限と考えています。同音異義語など、説明しないと読み誤りが起きたり、話がつながらなかったりする場合には入れますが、そうでない場合は、文脈でわかるならあまり著者の文章に点訳者の言葉を入れたくないと思ってしまいます。点訳挿入符については、入れる入れないはもちろん、ケースバイケースだとは思うのですが…一般的にはどのように考えればよいのでしょうか。また、今回の場合でしたら、どのように処理するのが適切になるのでしょうか。

【A】

点訳挿入符の入れ方についてはお考えのとおりと思います。私たちも、《点訳挿入符での漢字説明は必要最低限と考えています。同音異義語など、説明しないと読み誤りが起きたり、話がつながらなかったりする場合には入れますが、そうでない場合は、文脈でわかるならあまり著者の文章に点訳者の言葉を入れたくないと思ってしまいます。》のご意見に賛成です。
今回の原本をみると、AIやオンラインの社会にかなり依存している人が、オフライン生活者を揶揄しながら実は・・・というような内容の作品のようで、漢字の当て字が頻繁にあるようです。それをその都度点訳挿入符で入れていくと、作品の流れに影響すると思われます。
この作品については、点訳書凡例を用いてはどうでしょうか。
点訳書凡例で
《この作品は、外来語に漢字の当て字が多く用いられています。また、人名も特徴的な漢字が当てられていますが、漢字の説明は省略しました。以下に外来語の当て字の例を挙げます。
スマートフォン スマアトフォン 地名「須磨明石」の「すま」、「うしろ」、「奔走する」の「ほん」
AI   ええ愛  「よい」の関西弁「ええ」、愛情の「あい」
オフライン たべものの「ふ」に「お」を付けた「おふ」、来年の「ライ」、カタカナの「ン」》
このような感じでいかがでしょうか。人名の漢字の説明は要らないと思います。

87.p111 5.点訳挿入符

読みが同じで漢字が違う語句の書き方について
「お母さんのお名前は?」
「典子です。私は同じのりこですが紀子と書くのです」
と、いう文章です。
「ノリコ点挿テンコ点挿デス。■■ワタシワ■オナジ■ノリコデスガ■キコト■カクノデス点挿<ノリコ>ト■スル点挿」
としたのですが。
また、このあと文章を読めば母の典子と、娘の紀子の区別が分かれば<ノリコ>として区別する必要はないのでしょうか。

【A】

「典子です。私は同じのりこですが紀子と書くのです」
「ノリコデス。■■ワタシワ■オナジ■ノリコデスガ■ノリコト■カクノデス」点挿ハハワ■ジテンノ■テン、■ワタシワ■21セイキノ■キ点挿
と、文の終わりにまとめて説明した方が分かりやすいと思います。テンコやキコだけでは分かりにくいと思います。
またこのあと、母か娘かが分かる場合は、点訳挿入符などは必要ないと思います。
もしどうしても必要な場合は、ノリコ(ハハ)などの方が分かりやすいと思います。

88.p111 5.点訳挿入符

(原文)×高見の見物  ○高みの見物
「高見」にはルビがありません。「コーケン」と読んでいいですか。点訳者は著者の意図を察して「タカミ」と読んでいますが、ルビがないので「タカミ」と読む必要がないのではないかと思います。「高見」を「タカミ」と読んで同音異義語とするべきでしょうか。「高見」の漢字の説明は入れた方がよいとは思いますが、解説文でも「コーケン」と読むか「タカミ」と読むかで書き方が変わると思います。
同様に
×「御頭付きの鯛」○「尾頭付きの鯛」
というのもあって、「御頭」を「統領」と捉えるか、「御」が付いた丁寧語とするか説明を考えています。点訳者は「御の付いた丁寧語」としています。「尾頭付きの鯛」の方の説明は「シッポとアタマ」としています。

【A】

これらの例は、語句や慣用句などの「読み」は正しいが、間違った漢字をあてはめて、違った意味に捉えていることを示していると思います。
「高見」をコーケン、「御頭」をトーリョーのようにしてしまうと、提示された語とは離れた意味になり、文意を理解しにくくなると思います。
原本の全体にこのような書き方がしてある場合は点訳書凡例で、特定の章や見出しだけの書き方であれば、該当の見出しの始まりに点訳挿入符で、
《先に語句の読みを書き、そのあとに、×、○、それぞれの漢字または意味の説明を書きました》のように断って、例えば以下のように点訳してはどうでしょうか。
タカミノ■ケンブツ■ーー■バツ■「タカイ■ミル」、■マル■「ダイ数3シャテキニ■ミル」
オカシラツキノ■タイ■--■バツ■「カシラノ■テイネイゴ」、■マル■「シッポト■カシラ」

89.p111 5.点訳挿入符

以下の原文があります。
①FUKURAの蔵書印のあるものにたびたび合うようになった。・・・・フクラというのは珍しい姓だが、福浦または福良とでも書くのだろうか。
②主人の話しではフクラとは「深良」という姓の人で、港区南麻布5丁目の広い家に・・・
姓を点訳挿入符で説明したいのですが、どのような書き方が適切でしょうか。

【A】

福浦点挿コーフクノ■「フク」ニ■カスミガウラノ■「ウラ」点挿
福良点挿コーフクノ■「フク」ニ■ヨイ■ワルイノ■「ヨイ」点挿
深良点挿アサイ■フカイノ■「フカ」ニ■ヨイ■ワルイノ■「ヨイ」点挿
のように書いてはどうでしょうか。
「良」については、点挿ヨイノ■オンヨミノ■「リョー」点挿 もよいと思います。

90.p111 5.点訳挿入符

俳句が話題の小説です。

1.父は、「だって、トーク用の話題を用意していくんだろ?」 僕は、噴き出してしまった。父は「投句」と「トーク」を混同しているのだ。
2.句の評価が、駄目なときは「駄ッ句スフント!」と返ってくる(ダックスフントのダジャレだ)。

1.の「投句」と「トーク」は、説明を加えた方がいいでしょうか。それとも、過剰になるので、説明は入れない方がいいのでしょうか。
2.の「駄ッ句スフント!」は、そのまま「ダックスフント!」でいいでしょうか。

【A】

1.《父は「投句」と「トーク」を混同しているのだ。》は、点訳すると共に「トーク」で、わかりにくくなりますので点訳挿入符で説明をした方がよいと思います。
「トーク」点挿ハイクノ■トーコー点挿
「トーク」点挿ハナシ点挿 または点挿オシャベリ点挿
では、どうでしょうか。
2.「駄目なとき」と断ってあるので判断できるのかも知れませんが、説明を入れた方が親切だと思います。
「ダックスフント!」点挿ダメノ「ダ」ト■ハイクノ■「ク」ガ■カンジ点挿ト■返ってくる

91.p111 5.点訳挿入符

語の説明が必要と思われる箇所がたくさんある本です。
1.温かく(暖かく?)見守る
2.不逞(不貞?)な輩
3.あれが予言ならぬ預言であるなら
4.「戦時下」と同じニュアンスで「コロナ禍」って書いたりする。正確には「コロナ禍下」じゃないんですか。何人かは「コロナ下」と表記しているのを発見。

【A】

1.2.は、文脈から、漢字の説明が不要な場合もあると思います。
このあとに、これらの表現についての言及がなければカッコ内は省略して
アタタカク■ミマモル
フテイナ■ヤカラ
とだけ書いた方が分かりやすい場合もあります。
もしどちらの漢字を使用するかについて、このあとにも言及があるのでしたら
アタタカク 点挿オンドノ■「オン」、■カッコナイニ■ダンボーノ■「ダン」ニ■ギモンフ 点挿■ミマモル
フテイ 点挿フトドキ、カッコナイニ■フーフカンノ■「フテイ」ニ■ギモンフ点挿ナ■ヤカラ

3.アレガ■ヨゲンナラヌ■ヨゲン 点挿カミノ■オツゲ 点挿デ■アルナラ
4.センジカ点挿モト点挿
コロナカ点挿ワザワイ点挿
コロナカカ 点挿ワザワイ■モト 点挿
コロナカ 点挿モト点挿

92.p111 5.点訳挿入符

原本に以下のような箇所があります。

「時間というのは、一瞬一瞬の点のつながりでしかなく、それが一本のラインのように見えているだけです。次の「点」を一つずつ、眺めてみてください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この点を目で追っていた一瞬は、もう二度と戻ってこない一瞬であり、」

云々と続いています。また、後半では

「23ページで、私たちは今という「・」で生きているといいましたが、死も一つの「・」に過ぎません。死ぬときに何かが起きると思って想像を膨らませますが、
・   ・     ・       ・
この点が消えたときが死であるだけで、やはり、人生の一部なのだと実感できます。」

とあります。
この2か所の点をどのようにすればいいのか困っています。点線を書いて点訳挿入符で説明するのがいいのでしょうか。また後半の点は間隔がのびていますので、それをどのように表せばいいのでしょうか。

【A】

これは点線ではありませんので、点が並んでいるところに点訳挿入符で以下のように書いてはどうでしょうか

「時間というのは、・・・です。次の「点」を一つずつ、眺めてみてください。
点挿 1行に短い間隔の点が数多く書いてある。 点挿
この点を目で追っていた一瞬は、もう二度と戻ってこない一瞬であり、」
「○○ページで、私たちは今という「テン」で生きているといいましたが、・・・死ぬときに何かが起きると思って想像を膨らませますが、
点挿 テンが1行に数個書いてあり、点と点の間は次第に広くなっている。点挿
この点が消えたときが死であるだけで、やはり、人生の一部なのだと実感できます。」

93.p111 5.点訳挿入符

下記のような文章の時に、同じ読みをする漢字の表し方はどうなりますか。
東京の巣鴨の地名についての文章です。

元巣鴨村は今日のJR「巣鴨」駅付近で、そこには川の支流が三本もあり、
それぞれ池を作っていた。古くは「菅面」「洲処面」「須賀茂」などと
書かれている。
本の中に同じような書き方が多くあります。漢字の一つずつに説明を
付けると、点字を読んでいる方には却って読みにくいでしょうか。

【A】

《古くは「菅面」「洲処面」「須賀茂」などと書かれている。》だけで、この後にそれぞれの書き方の由来などが説明してあったりしない場合は、
フルクワ■「スガモ」点挿数3シュルイノ■カキカタ点挿ナドト■カカレテ■イル
フルクワ■「スガモ」点挿「スガ」ニ■スイメンノ■「メン」ナド、■数3トオリノ■カキカタ点挿ナドト■カカレテ■イル

など、読み進めるのに影響しない範囲で、省略して書いてよいと思います。

94.p111 5.点訳挿入符

1.「じゃあ、私たち、似た者同士ね」
同士とは、同志のことなのだろうか
2.詩よ残れ死よ残れ志よ残れ

1.2.は、点訳挿入符で説明を加える必要あるでしょうか。あるとすれば、どのようにすればよいですか。

【A】

点訳挿入符で説明した方がよいと思います。
1.ドーシトワ、■ドーシ点挿オナジ■ココロザシ点挿ノ■コトナノダローカ
2.シヨ■ノコレ■シヨ■ノコレ■シヨ■ノコレ点挿「シ」ワ■ポエムト■シヌ■コトト■ココロザシ点挿
としてはどうでしょうか。

95.p111 5.点訳挿入符

『NHKが悩む日本語』を点訳しています。「第3章 表記の沼へようこそ」では、同音異字について書かれています。何度も出てくる同音異字をどのように書き分けたらよいでしょうか。
Q.「カショ」の表記には、「箇所」「個所」「か所」「カ所」「ヵ所」「ケ所」「ヶ所」などいろいろありますが、どのように使い分けたらいいのでしょうか?
A.放送では、「故障のカショ」などのときには「箇所」、「3カショ」のように助数詞として使うときには「○か所」とひらがな表記することにしています。

Q.に7つの「カショ」の表記がありますが、それぞれ点訳挿入符で説明したほうがよいでしょうか。「いろいろあります」とあるので、Q.では個々に説明せず、以後の本文中で最初に出てきたときに「箇所」点挿カジョーガキノ■カ、イゴ■カンジ点挿■
「個所」点挿コジンテキノ■コ、イゴ■コ点挿 「か所」「カ所」「ヵ所」「ケ所」「ヶ所」については、点挿で、ひらがな、かたかな、ちいさいかたかな、かたかなのケ、ちいさいかたかなのケとしたのですが、どのような書き方が適切でしょうか。

【A】

丁寧な分かりやすい書き方だと思います。
「カショ」について、Qのところで説明をしない場合は、「箇所」「個所」「か所」「カ所」「ヵ所」「ケ所」「ヶ所」すべてを書かなくてもよいのではないでしょうか。たとえば
「カショ」の表記には、「箇所」点挿七つの書き方点挿などいろいろありますが、
のように書いてはどうでしょうか。

96.p111 5.点訳挿入符

原本で、メールの返信時の誤変換の指摘があります。
メールは異様に返信が早く、誤字ばかりだった。
「このご辞世なので~」「エントランス前に後集合~」
間違い箇所の指摘の文やカッコ書きはなく、見て、「ご辞世」の辞世は時世、「後集合」はご集合か御集合の誤変換とわかります。この点訳に、説明を加える必要性があるか悩んでいます。
また、
「コロナ禍」という言葉がすっかりなじんだいま
という文には コロナ禍(ワザワイ)の説明は必要でしょうか。

【A】

そのまま点訳しただけでは誤字が分かりませんので、《「ジセイ」「ゴシューゴー」ノ■カンジガ■マチガイ》の程度の説明があった方がよいと思います。漢字がどのように間違っているのかの説明は必要ないと思います、
「コロナ禍」は、この語が一般的ななじみのある言葉になっていますので、説明は必要ありません。
《「コロナ下」ではなく「コロナ禍」なのです》のような文脈の時には説明が必要になります。

97.p111 5.点訳挿入符

広報誌(議会だより)の特別号に関しての質問です。
表紙には広報誌名と議員一同の挨拶文のみです。次ページから全議員それぞれの議員名、挨拶文が始まります。
以前の点訳では、見出しも説明もないとのことだと思うのですが、点訳挿入符で「新年のご挨拶」と7マス目から入れてありました。
今回の点訳に際して、点訳挿入符を使った場合、見出し扱いにするのは違う、点訳挿入符を使った場合は3マス目からです。との意見がありました。
「てびき」を読んでみても3マス目から書かなければならないとは、書かれてないように思うのですが、点訳挿入符の使い方としてはどうなのでしょうか。

【A】

点訳挿入符で囲んで、点訳者が見出しを作ってはいけないという規則はありませんが、その場合も、レイアウト上の簡潔な言葉(たとえば、「まえがき」「索引」「凡例」など)を用いることが原則になると思います。
点訳挿入符で《新年のご挨拶》と見出しを作ってしまうのは、行きすぎのような感じがします。入れる場合は、「点訳上、分かりにくいので、このように見出しを入れてもよいか」と、議会事務局に確認して入れるのがよいのではないでしょうか。
質問文を読ませていただく限りでは、原文のとおり、見出し無しで議員一同の挨拶文を書いても不自然ではありませんし、見出し無しで差し支えないと思います。
レイアウト上、不都合があれば、3マス目から点訳挿入符で、《以下、議員一同による挨拶文》のように簡潔に書くのがよいと思います。

98.p112 5.点訳挿入符 【備考1】

原本は「高校生向け大学学部調べ 環境学部」です。
「殖産興業政策の下で鉱業や製鉄業、紡績業などの工業が~~」とあり、点訳者は興業(フッコーノ■コー)、鉱業(コーザンノ■コー)、工業(コーサクノ■コー)としていますが、漢字1字について説明するのと興業、鉱業、工業各々について辞書により概要説明するのとどちらがよいのでしょうか。科学・化学については、科学(カワ■ガッカノ■カ)、化学(バケガク)とし、修得(シューワ■シューリノ■シュー)などのようにしています。一つの語句に対してその中の1字のみを説明するのは理解しにくいような気がします。

【A】

原本が 「高校生向け大学学部調べ 環境学部」ということですので、「殖産興業政策の下で鉱業や製鉄業、紡績業などの工業が~」という文章でしたら点訳挿入符は必要ないと思います。
点字は仮名文字ですが、前後の文脈から意味を理解しながら読みますので、点訳挿入符が多すぎると読みにくく、意味も取りにくくなります。
ここでは「殖産興業政策」という複合語になっていますし、「紡績業」というキーワードが前にあることなど、文脈の中で十分理解できます。その語だけに着目して説明の要・不要を判断することは避けた方がよいと思います。
「てびき」p112[参考]にあるように、使用が過剰にならないように気を配ることも必要です。
この文では、点訳挿入符は必要ないと思いますが、興業と鉱業と工業について、興業(産業をさかんにすること)、鉱業(鉱石を製錬する産業)、工業(製品を生産する産業)のように書くと、丁寧ですが長くなりますので、興業(コーワ■オコス)、鉱業(テッコーノ■コー)、工業(コーサクノ■コー)とした方が簡潔で分かりやすいと思います。
科学、化学については、科学(シゼン■カガクノ■コト)、化学(バケガク)
習得、修得については、習得(ナラウ)、修得(オサメル)のような説明ではどうでしょうか。
ここに書いた方法がいつでも効果的とは限りませんし、意味を説明した方が分かりやすい場合もあると思います。点訳挿入符は文脈を考慮して簡潔に説明する、本文の流れを妨げないことが必須条件になります。

99.p111 5.点訳挿入符 【備考1】

花の色はうつりにけりないたずらに我が身
世に経る(降る)眺め(長雨)せしまに
大江山生野(行く野)の道の遠ければまだ
文(踏み)も見ず天の橋立
音で遊ぶ、和歌の掛け詞の例文です。カッコの部分の点訳はどうしたらいいですか。

【A】

まず初めに、途中に点訳挿入符などを入れないで、和歌として点訳します。そして、その後に点訳挿入符で掛詞の説明をします。
ハナノ■イロワ■ウツリニケリナ■イタズラニ■ワガ■ミ■ヨニ■フル■ナガメ■セシ■マニ 点挿 「フル■ナガメ」ワ■「ナガアメガ■フル」ト■カケテ■イル 点挿
オオエヤマ■イクノノ■ミチノ■トオケレバ■マダ■フミモ■ミズ■アマノ■ハシダテ 点挿「イクノ」ヲ■「ユク■ノ」ト■カケ、■テガミノ■フミト■フミイルノ■フミヲ■カケテ■イル 点挿

100.p112 5.点訳挿入符 【備考1】

原本に「作詞した高田ひろお(本名・博雄)さん」とありますが、カッコの中の点訳の方法を教えてください。

【A】

この原本で、「ひろお」と「博雄」の表記の違いについて言及している箇所がなければ、(本名・博雄)の部分は点訳しないで、「タカダ■ヒロオ■サン」だけでよいと思います。本名が漢字であることを説明する必要がある場合は
タカダ■ヒロオ点挿ヒラガナ、■カッコナイニ■ホンミョー■カンジ点挿
または
タカダ■ヒロオ点挿ヒラガナ、■カッコナイニ■ホンミョー、■カンジデ■ハクシノ■「ハク」ニ■エイユーノ■「ユー」点挿
など、必要に応じて入れることになります。
ただ、これだけ説明するのに1行以上を要しますので、特に必要がない場合は、漢字の説明は省略してよいと思います。

101.p112 5.点訳挿入符 【備考1】

<住所 秋田県能代市鰄淵×××>
あきたけん、のしろしは読めたけれど、そのあとはさすがに読めなかった。さっそくスマホの漢和辞典ソフトを呼び出して調べると<かいらげふち>と読むらしい。
という文章の、まだ読み方のわからない<鰄淵>をどう点訳したらいいでしょう。漢字の説明をすればいいのでしょうか。

【A】

点訳では、初出のところでも「カイラゲフチ」と点訳してよいと思います。その後ろの文で読めなかったことが分かりますので、そのまま読んで差し支えないと思います。点訳挿入符を入れたりすると煩わしくなります。

102.p112 5.点訳挿入符 【備考2】

②③⑤⑥の点が3マス連続する状態で用いることができないために回避する方法が示されていますが、具体的な事例を示していただけないでしょうか。

【A】

(胸部)のようにカッコ内に書かれた語に点訳挿入符で「ムネノ■ブ」と説明を補う場合、キョーブの直後に入れると、点訳挿入符の閉じ記号と第1カッコの閉じ記号が連続します。このようなときは、いったん(キョーブ)と書いてカッコを閉じた後に、一マスあけて点訳挿入符を開きます。このように、一方の閉じ記号と一方の開き記号が連続する場合は、間をマスあけします。開き記号どうし、閉じ記号どうしが連続する場合に間をマスあけすることはできませんので、点訳挿入符内の文章表現を工夫するなどします。たとえば点訳挿入符内に「(1)は~」などと記載する場合、「イカノ■(1)ワ~」とカッコ前に言葉をつけたり、「~は割合(%)」であることを記載する場合、「~ワ■ワリアイ、■タンイ■外p」とカッコを用いずに書いたり、閉じカッコのあとに句点を付けて点訳挿入符を閉じるなど、点訳挿入符の内側に第1カッコが接しないように工夫します。

103.p112 5.点訳挿入符 【備考2】

次のような文章で、視線(指線)の部分の点訳ですが、カッコ内に点訳挿入符を使おうと思うと閉じカッコとの関係で使えないのですが、このような場合はどうしたらよいのでしょうか。
本のページの手触りを意識し、視線(指線)で活字を追いながら、紙上ワークショップをお楽しみください!

【A】

このような場合、シセン(シセン)と書いても、同じ読みの繰り返しで、分かりにくいだけですので、
シセン点挿ミル■セン、■カッコナイニ■ユビノ■セン点挿
などのように、同じ読みの語がカッコ内に書かれていることを説明するとよいと思います。

104.p112 5.点訳挿入符 【備考2】

点訳挿入符を使い説明するとカッコが続いてしまう時の対処の仕方を教えて下さい。
家臣たちからは「お館様(お家形様)」と呼ばれ、
この部分はどの様に点訳すればよいでしょうか?

【A】

「お館様(お家形様)」の漢字の違いについて、原本でこの前後に言及されていず、単に2種類の書き方を示しただけでしたら、
「オヤカタサマ」と書くだけで、(~)は無視してもよいと思います。
もし、漢字で2種類の表現があることを示す必要がある場合は、
1.「オヤタカサマ((カッコ内に異なる漢字で書いてある))」
2.「オヤカタサマ((「ヤカタ」は「たて」と、カッコ内に「イエ、カタチ」))」
などの説明をいれてはいかがでしょうか。

105.p112 6.段落挿入符類

『指導者ハンドブック 第4章』のp30の例の回答p102を見ますと、7マス目見出しと5マス目見出しの間に段落挿入符で前文のようなものが書かれています。
この際7マス目見出しと5マス目見出しを行あけせず続けて書かれていますが、5マス目見出しの前を行あけすると間違いになるのでしょうか。p31のポイント解説にありますように、段落挿入符を使わない場合は行あけするということでしょうか。
これまでこの種の前文は7マス目見出しの内容と考え、段落挿入符を使った場合も、5マス目見出しの前を行あけしていました。

【A】

行あけしても構いません。
段落挿入符は囲みの記号で初めと終わりがはっきりしているので、見出しの上でも行あけしない例を載せました。また、4章ではまだ見出しの書き方も学んでいないので、単に記号を用いる練習という意味でもこのような形にしています。
5マス目からの見出しの前で1行あけて構いませんし、このような例で必ずしも段落挿入符を用いる必要はありません。

106.p112 6.段落挿入符類

段落挿入符について質問します。
章の大見出しに続いて、前文が太字で書かれ、中見出しにつづきます。このとき、前文には段落挿入符を使わなければいけないものでしょうか。
また一つの章では前文に続いて偉人の名言が本文より上げて、やはり太字で書かれています。この場合、違いを明らかにするにはどうしたらよいでしょう。すべてを段落挿入符で囲むのでしょうか。名言の部分は原本通りに一文字目からでよいでしょうか。名言の部分を一部書きだします。

人の長たる者としては
単に自分ひとりが誠実というだけでなく、
多くの人々を容れるだけの度量の広さと・・

【A】

段落挿入符類は、本文の要約や前文に必ず用いなければならないものではありません。大見出しがあって、前文のような本文があって、中見出しが来る場合は、とくに段落挿入符で囲まなくてもよいと思います。
要約や前文があって、そのまま本文に入る場合など、区別の必要がある場合に用いればよいと思います。
「てびき」p157の例のように、見出しの構成が複雑で、全体の要約であることがわかりにくい広報や雑誌、参考書や論文集などには有効です。
この場所に段落挿入符を用いると決めた場合は、レイアウトを統一するとよいと思います。
ご質問の場合は、段落挿入符を用いる必要は無いと思われますので、前文に続いて、偉人の名言がある場合も、1行あけで処理すればよいと思います。

107.p112 6.段落挿入符類

前後1行あけで段落挿入符を使っています。
18行目で本文が終わり1行あけで段落挿入符の開きになりますが、この場合、次ページ1行目を行あけするのか、それとも1行目から書いてもいいのでしょうか。反対に段落挿入符の閉じが18行目で、本文に戻る場合は、次ページ1行目をあけるのか、あけないのか、どちらでしょうか。

【A】

段落挿入符は、見出しとは異なりますので、本文と同じ判断になると思います。ご質問の場合、本文の後1行あけで段落挿入符を用いると言うことは、原文で行をあけて書いてある挿入文・引用文でしょうか。
前後1行あけで段落挿入符を用いる場合は、どのような場合も前後1行あけたほうがよいと思います。