第4章 記号類の使い方(3)

その3 線類

1.p113 1.棒線・点線

補足説明と思われる棒線の前後のマスあけについて、カギで囲まれた会話文の間にあります。

「もうお分かりでしょう」―彼女の言葉には、不安にさせるものがあった―「わたしの関心は精神的な面なのです。(以下略)」

この文の後は改行して次の段落が始まります。
カギと棒線の間、棒線とカギの間は記号間の優先順位から両方とも一マスあけでよいでしょうか?

【A】

前後を棒線で囲んで、カッコ類と同じように、前の語句の説明をしています。この場合は、一つの文の中に含まれていると見なして、棒線の両側は一マスあけます。
「もうお分かりでしょう」■―■彼女の言葉には、不安にさせるものがあった■―■「わたしの関心は精神的な面なのです。

2.p113 1.棒線・点線 【処理1】

「=」(イコール)は、棒線に置き換えるか、文脈によっては「イコール」と書くとなっています。用例をみると、どちらでもいい、ということなのかなとも思いますが、点訳者の「感性」でしょうか?
以下の場合、どちらがいいと、何か理由付けができるでしょうか?
①赤ちゃんは「いつもの人=パパやママ」のことを「自分にとって大切な人」と認識する
②赤ちゃんに後追いをさせないというのは、保育=保護・養育を、そこで一度やめてしまうこと
③治療は、がんばる=耐える、という意味合いが大きく…

【A】

ここの【処理1】は、「棒線に置き換えるか、《文脈によっては》~」ですので、まずは、棒線に置き換える。それで不都合がある場合に「イコール」と仮名で書くということになります。
その「不都合」が何かといえば
① 原文に、「=」と棒線が混在して使用してあり、すぐ近くの棒線と「=」の区別が付きにくいなどの記号処理上の不具合がある場合
② 会話文や、話し言葉の中で「=」が使われていて、発音して不自然に感じるという表現上の不都合がある場合(「イコール」と発音した方が文脈上自然な場合)が考えられます。
例えば、
① この法則 -- 感情の放出=涙 -- が、適用されるのは~
のような場合や、文中注記符の付いた語と説明の間を棒線でつないだ直後に「=」がある場合などが考えられます。
② 「頑張る=耐えるとは言いきれないよね」と話した。
のように会話の中に出てくる場合は、「イコール」と書いた方が自然です。
挙げられた例は、「イコール」と書いても間違いとは言えませんが、上に書いたような「どうしても」の場合ではないように思いますので、棒線で書いてよいと思います。

3.p113 1.棒線・点線 【処理1】

「女性たちも働くこと(=良いこと)」
この点訳をするとき、カッコ内の=は省略してもよいでしょうか。
昔の資料に「語の後ろに続けるカッコは、前の語の説明なので、カッコ内のイコールは省略してよい」とあった、という話をききました。

【A】

省略しなければならないということではありませんが、カッコが前の語の説明である場合は、多くの場合省略しても構いません。
前の語の説明(言い換え)と、イコール(すなわち)と同じ意味合いであり、記号を二つ重ねて書く紛らわしさを省く意味で、お勧めしています。
ただ、ご質問の文の場合、前の語だけでなく、「女性たちも働くこと」が「イコール よいこと」と言っていますので、「=」を仮名で「イコール」と書く方が分かりやすいかもしれません。文脈で判断してください。

4.p113 1.棒線・点線 【処理2】

点線の後ろに促音が単独で書かれている場合「点線」とことわっていますが、棒線の場合も同じ処理にするのでしょうか?

【A】

棒線も基本的に同じと考えてください。

5.p113 1.棒線・点線 【処理2】

点線についてしか書かれていませんが、棒線も同様でしょうか。[参考]でも、棒線が加わっています。
実際このような墨字の表現は増えていますが、
「なにしてるんですか、面会時間は……っ、きゃあっ、犬!?」
といった文章では「……っ」の部分に間と驚きが表されていると思うので、「面会時間はっ……」にすることはできないかと。文章によっては、原本通りでいいでしょうか?

【A】

確かに微妙な感じがしますが、点線のあとに促音符だけを書くことはできませんので、この場合、促音符を省略しても、「きゃあっ」で雰囲気が伝わると思いますから、前の促音符は省略してもよいと思います。

6.p113 1.棒線・点線 【処理2】

原文が
そ・・・うか
そ・・・うかな
と書いてある場合、どのように点訳すればよいでしょうか。

【A】

長音符は語頭に書くことはできませんので、原文の通りに、「ソ■・・・■ーカ」と書くことはできません。
この場合、原文の表現とは少し異なりますが、「ソー■・・・■カ」「ソー■・・・カナ」と書くのがよいと思います。「そ」と言い始めてからあいだに、余韻、間(ま)があることが伝わるのではないかと思います。
【処理2】の促音符の例と同じような考え方になります。

7.p114 1.棒線・点線 【処理2】[参考]

点線や棒線の後ろに促音が単独で続く場合について、第4版に準拠するとどのようになりますか。
①「・・・っ」→「・・・■っ」
②「―っ!?」→「――■っ!?」
③「っ」→「っ」
④「・・・っ―」→「・・・■っ■――」 棒線は入れる
⑤「・・・っー」→「・・・■っ」 長音は入れない
⑥「・・・って」→「・・・■って」
「っ・・・」「っ――」と 促音を省略した「・・・」「――」とでは、ニュアンスが違うと思います。確かに発音を書くことは難しいですが、促音を省略して点線・棒線のみにしてしまうと、「言葉に詰まっている様子」「微かな舌打ち」「一瞬の間があって沈黙」などのニュアンスが伝わらなくなってしまうと思います。
点訳者の判断で「っ■・・・」「っ■――」と点訳できないでしょうか。

【A】

ここは、「てびき」編集委員会でずいぶん検討したところです。そして、促音符だけを書くことは、表記上書くことができないだけでなく、触読で促音として読み取れないという委員の意見が強く、現在の参考(p114)の表現になりました。ですから、補う場合は点訳挿入符で補ってください。
4版に準拠すれば、①~⑤は促音符を用いないで書きます。⑥は、上の書き方の通りです。

8.p114 1.棒線・点線 「参考」

促音符についての質問です。文脈や発音を考慮して、位置を変更したり、省略したりすることがありますが、「促音」「長音」の順に点訳は可能ですか。
(例)ダイダイダイダイダイダイダイッ~キライ!
(例)ちっ~とも可愛くない

【A】

促音符、長音符の順では発音することが難しいですので、長音符と促音符の順序を入れ替えた方がよいと思います。
p114の「参考」に、発音や点字としての読み取りやすさを考えて書くとありますが、ご質問の場合もこれに当てはまると思います。

9.p114 2.矢印

矢印の前のマスあけについて質問します。
少年科学もので、句点を使わない説明文があります。
植物は雨や曇りの日は、あまり蒸散しない →
この「シナイ」と → の間は、二マスあけでしょうか。
「てびき」p152 6.(2)③の句読点を用いない文での文の切れ目になるでしょうか。読点はあります。

【A】

シナイ と → の間は、一マスあけになります。
矢印の前後は、一マスあけです。
ただ、例外は、これらの記号の前に句点がある場合とカギ類の閉じ記号で、句点を省略した(p132 「参考」)場合で、記号間の優先順位に関するところです。
矢印の前に、記号が無い場合は、文の終わりかどうかを考える必要はなく、一マスあけになります。

10.p114 3.波線

波線(範囲記号)の使い方について、「てびき」には、数量・時間・場所などの範囲を表すとあります。例えば個人の時期の経過を表すことはできるでしょうか。

(原文)
私が舞台で人を沸かせることを初めて体験したのは、チャップリンズというコント・コンビをやっていたときのことでね。一旦、整理して書いておくと、小豆島~三木のり平師匠~神様・高倉健さん~東映~商業演劇~カジノ~坂本九さん~チャップリンズ~コント・レオナルド、ってなるわけだけどさ。

この「~」を波線(範囲記号)を使うことはできるでしょうか。あるいは何の記号を使うのが適切でしょうか。

【A】

このような場合も、時間的な範囲を表していますので、波線を用いることができます。
ですが、マスあけを含む語の間に波線が8箇所も続くと読みにくくなります。ここは時間的に一方向の流れを示していますので、「~」の部分を右向き矢印で点訳するとすっきりすると思います。

11.p115 3.波線 【処理2】

原本で、
「~歳からの哲学入門」と聞けば、小学生なら「7歳から」とか、中学生なら・・・
とあります。
この場合第1カギに波線が続くことになります。波線を伏せ字に変えて点訳することはできますか?もしくは点線か棒線に変えるほうがいいのでしょうか?

【A】

この場合の波線は、点字で用いる波線の用法ではありませんので、何かほかの記号類に置き換えることになります。
棒線や点線でもいいのですが、「×歳から」「○歳から」などと伏せ字に置き換えるのが自然ではないかと思います。

12.p115 3.波線 【処理2】

線類の使い方についてお尋ねします。
「もう一度ご説明します。まずは~」という文があります。この場合の「~」は棒線でも点線でもどちらでもよいのでしょうか。
「てびき」には適切な記号に置き換えるとありますが、棒線と点線に意味の違いはあるのでしょうか。
また、「あ、はあ・・・。」といった文もあります。この点線と区別して棒線の方がよいということはありますか。

【A】

棒線と点線は、「てびき」では、その区別を特に規定せず、墨字の棒線・点線にほぼ対応させるとしています。
墨字での棒線、点線の機能は、各新聞社の用語のてびきによると
棒線(ダッシュ)(--で書きます)
① 文中・文末で間を持たせるため
例:1783年--ゴヤ37歳のときだった。
例:真実はどこにあるのだろうか--
② 箇条書きをまとめるとき
例:応募条件は①18歳以上②既婚--など複数ある。
③ インタビューの問いの行頭
例:--今年の目標は?
「もちろん優勝です」
④ 区間・組み合わせ
例:東京-大阪間  巨人-阪神戦
⑤ 挿入
例:藤田さんはそのあいだを--都市と自然の境目を--描いています。
⑥ 引用句を受ける
例:〈苦しいときほど人間が最も人間らしくなるときはない〉--作家・山本周五郎はエッセー「人生の冬自然の冬」でそう書いている。
点線 (リーダー)
① 言葉の省略や無言を表す
例:お年寄りが「喉が痛くて・・・」と言葉をつまらすと
例:「どうした?」「・・・」
となっていますので、墨字の記号を点字に置き換えるときの参考になると思います。
ここから考えると
「もう一度ご説明します。まずは~」
は、言葉の省略ですので、点線が適していると思います。

ただ、点字では墨字に比べて記号の数が少なく、また、レイアウトにも制限がありますので、現実には、あまり厳密に使い分けができない事情もあります。
例えば、墨字のコロンや短いダッシュの代わりに、二マスあけや棒線のほか点線を用いたりする場合もありますし、点字の棒線は、イコールの代わりに用いられることもあり、多用されがちですので、棒線では区別が分かりにくいときに点線を用いたりします。このように、墨字の機能に注意しつつも、点字の特性を考慮して、棒線・点線を適宜使用することになります。