第4章 記号類の使い方(6)

その6 記号が連続する場合の注意

1.p131 1.記号間の優先順位

見出しの後ろに点訳挿入符で((ツヅキ))と入れる際、見出しに句点や感嘆符がつく場合は、点訳挿入符の前二マスあけるのでしょうか。

【A】

この場合、記号間の優先順位に従いますので、句点や感嘆符・疑問符の後は二マスあけて点訳挿入符を書きます。

2.p131 1.記号間の優先順位

前後を棒線で囲んだ文章についてお尋ねします。
― 福島では校庭を使わないことになったそうです。茨城では大丈夫ですか?―
― 子供の感受性は大人の三~四倍高いといった新聞記事を見ました。乳幼児はさらに気をつけないといけないそうです。子を持つ親としてとても心配です。―
これらの後ろの棒線は、疑問符や句点のあと二マスあけると考えてよいでしょうか。

【A】

「表記法2018年版」では、第4章、第5節、「1.表記符号間のマスあけ規則の優先順位」に【注意】があり、「文末の句点・疑問符・感嘆符の後ろに棒線、矢印類、カッコ類または点訳挿入符の開き符号が来るときは、文脈により一マスあけも選択できる。」(p85)とありますが、「てびき」のp131「記号間の優先順位」にはそれに該当する【備考】や【処理】を載せていません。
「てびき」では、「表記法」の【注意】の「できる」を採用するのは、p132【備考】、p198【処理2】、p201【処理3】の場合と判断し、それぞれの所に記載しました。ですからこの3つの場合以外は、記号間の優先順位に従います。この場合後ろの棒線は、疑問符や句点のあと二マスあけて書きます。

3.p131 1.記号間の優先順位

思いは「カタチ」にできる。(水王舎)
上記のように図書のタイトルに句点があり、その後ろのカッコに出版社名が書いてあります。この場合、これを句点として2マスあけるのか、タイトルについている記号のようなものと捉えてマスあけなしとなるのか、どちらがよいのでしょうか。

【A】

この場合は、タイトルに含まれてはいますが、明らかに句点ですので、後ろを二マスあけます。

4.p131 1.記号間の優先順位

感嘆符と疑問符の後のマス開けと、点線と棒線の前後のマスあけについてお尋ねします。
(1) そもそも、これはまったく公正な話です。とはいえ、何とついていないことか!・・・ 自分の不運を嘆くほかありません。
(2) どうして三年ものあいだ忘れられていたのだろう?・・・ とてもかわいい子で、パリ一番の別嬪さん(以下略)
(3) この思い出はひょっとしたらぼくの心につきまとう妄想なのかもしれない!- さいわい、今馬車はプレシの路上で(以下略)
(4) お父さま・・・ 具合がひどく悪いのです。

(1)~(3)の感嘆符・疑問符のあとと、点線・棒線の前後の書き方についてですが、(1)~(3)のように、点線のあと1文字分空白があり、そのあと新しい文章が始まっていた場合、墨字の表記方法に合わせて、1文字分の空白が開いているところを文末と判断してよいでしょうか。
《1》何と■ついて■いない■ことか!■・・・■■自分の■不運を(略)
《2》忘れられて■いたのだろー?■・・・■■とても■かわいい■子で、(略)
《3》心に■つきまとう■妄想なのかも■しれない!■--■■さいわい、■今■馬車は(略)
《4》お父さま■・・・■■具合が■ひどく■悪いのです。
点線のあとの空白がなければ、文脈から判断し、記号の優先順位に則り、疑問符・感嘆符のあと二マスあけて、点線のあと一マスあけて新しい文章に入ると思うのですが、このように、墨字に1文字分空白があると、どこを文末と判断すべきか迷います。(4)は最後に句点が使用されていますが、点線のあと二マスあけにするのがよいかと思いましたがいかがでしょうか。
該当の墨字の本は、(1)~(4)の書き方が多々でてくるのですが、句読点は通常通り使用されています。
また、棒線については、1文字分の空白がないところもあります。
提示した《1》~《4》の書き方でよいか、
墨字の1文字分の空白があった場合の考え方について教えて頂けないでしょうか。

【A】

墨字の組み版の規則や、新聞の用字用語集、JISなどを調べてみましたが、墨字の点線(リーダ)や棒線(ダッシュ)には二文字分用いるという習慣以外に規則らしいものは見当たらず、後ろを一文字分あけるという記載もどこにも見つかりませんでした。この空白は作者の意図的なものか、リーダが一文字分だけの場合、詰まった感じがするからスペースを入れたのか、ピリオドと誤解される恐れを感じてスペースを入れたのか、実際のところ、判断はしかねると思います。
点訳に際しては、原文の記号の前後にスペースがあった場合も、点字の記号類の使い方のルールに従って点訳することをお勧めします。
(1) 何と■ついて■いない■ことか!■■・・・■自分の■不運を(略)
(2) 忘れられて■いたのだろー?■■・・・■とても■かわいい■子で、(略)
(3) 心に■つきまとう■妄想なのかも■しれない!■■--■さいわい、■今■馬車は(略)
(4) お父さま■・・・■具合が■ひどく■悪いのです。
ご質問の文は上記のように点訳します。このように点訳してあっても原文の雰囲気を壊したり、誤読を招いたりするものではないと思います。

5.p131 1.記号間の優先順位

全世界にニュースが配信されたそうだ。全世界に・・・(またも宗教戦争の勃発を懸念する私)
この文の点線の後ろのカッコが説明のカッコであれば続けていいでしょうか。

【A】

ゼンセカイニ■・・・■(マタモ
点線の後ろ一マスあけます。これは、記号間の優先順位により、点線の前後ろを一マスあけるのが第3順位、囲み記号の外側は第4順位ですから、点線の後ろ一マスあける方が優先されます。
句点の後ろに説明のカッコが来る場合も、句点の後ろ二マスあけが第2順位、カッコの外は第4順位ですから、句点の後ろ二マスあけます。

6.p131 1.記号間の優先順位

下記の「?」の後や「…」との間のマスあけはどうなりますか。
1.「~ばりん、ばりん、と音がする。あれは一体何の音だろう?って」
2.「何か感じたかなあ、と思って」「はあ…感じた?…ですか?」
3.「仏さんの代わりに整理するんだから、心のない仕事はしちゃいけねえ」「仏さんの?…」「ああ、そうだ。」
以上の3例です。

【A】

疑問符を②⑥、点線を②②②と書きます。
1.疑問符の後、「って」と続きますので、一マスあけになります。
ナンノ■オトダロー②⑥■ッテ」
2.疑問符は文末に付くということを優先して判断し、記号間の優先順位(p131)の第2順位と第3順位となり、疑問符の後二マスあけます。
②②②■カンジタ②⑥■■②②②■デスカ②⑥」
3.この場合も、疑問符は文末と判断し、疑問符の後二マスあけるのがよいと思います。
「ホトケサンノ②⑥■■②②②」

7.p131 1.記号間の優先順位

以下の文で、感嘆符の後のマスあけについて質問します。
「へうれーか!(わかったぞ!)」
「へうれーか」の説明として(わかったぞ)とあるので、文中として一マスあけでよいとの指摘がありました。理屈は正しいように思いますが、文中という言葉になにかひっかかるので、念のためにこの理解でよいか確認させてください。

【A】

この場合は二マスあけます。
感嘆符とカッコ類の開き記号が続いている場合、記号間の優先順位で、感嘆符の後ろのマスあけが優先されます。
感嘆符は、文中の場合も用いられますが、この場合は「ヘウレーカ!」で1語でも一つの文になっていますので、この感嘆符は文末の感嘆符と言えます。文末の感嘆符は後ろを二マスあけますので、
「ヘウレーカ!■■(ワカッタゾ!)」
となります。

8.p132 1.記号間の優先順位 [参考]

カギと棒線の間のマスあけについてです。
①ロケ現場ではディレクターが「5秒前、4,3,2・・・」――カメラ横で、しゃべり始めの合図をきっちり出していたことだろう。
②「気負わない」「テンションを高めない」-- これが基本。
③「センテンスは短く」ーー これがポイント。
④「この人と波長が合いそうか否か?」--我々は短い雑談を通し瞬時に判断する。
深く考えず、棒線の前後一マスあけをしているのですが、p132の[参考]のカギの中の文章が終わっているかどうかをどう見ればよいのでしょうか。

【A】

棒線の前後は一マスあけが基本ですが、「てびき」p105、p132の[参考]なども参考にして判断することになります。
① ディレクターが「~」~きっちり出していたことだろう。
と、なり、全体で一つの文ですので、棒線の前後は一マスあけになります。
② 「~」「~」は、語句の並列と考え、棒線の前後を一マスあけでよいと思います。
③ これも、②と同じと考え、棒線の前後は一マスあけになります。
④ 最後に疑問符が付いています。疑問符は基本的に文の終わりにつきますので、ここで文が終わったと考えた方がよいと思います。棒線から新しい文が始まったと考え、棒線の前を二マスあけ、後ろは一マスあけにします。

9.p132 1.記号間の優先順位 [参考]

閉じカギの後に棒線や点線の前のマス開けにいつも悩みます。
あります」■■―■それは・・・
あります」■――。
私は点線や棒線の後に句点があるときは、文の続きとして一マス開けでよいのではと思うのですが、いかがでしょうか。

【A】

上の例はカギで文が終わって、次に新しい文が始まっていると考えられますので、二マスあけでよいと思います。
下の例は、判断が難しいのですが、「~あります」で文が終わって、棒線で新たな文が始まっているとは考えにくく、棒線の後ろの句点までが一つの文と考えるのが自然だと思われますので、記号間の優先順位に従って、一マスあけがよいと思います。

10.p132 2.読点が他の記号と連続する場合 (1)

児童書で閉じカギの前には全て「句点、読点、疑問符、感嘆符」のいずれかが記されています。「そろり、そろり、」とありここで改行しています。 読点を省略した場合、この箇所だけ句読符がないのは不自然な感じがします。また改行になっており誤読の心配はあまりないと思われます。このような場合でも「てびき」どおりに処理すべきでしょうか。

【A】

p132の原則に従って、カギのとじ記号の前の読点は省略することをお勧めします。
児童書であればなおさら、余分な記号が付くことによって、読みにくさが増すと思われます。
p132のルールは、「てびき」だけの規則ではなく「日本点字表記法」のルールですので、点字では、第1カギの直前に読点は書かないことになっています。
カギの閉じ記号の前に読点を書いてよいのは、法律の条文や、他の文章からの引用部分の終わりに読点があり、省略すると文意が伝わらない場合などに限られています。

11.p133 3.囲みの記号が他の記号と連続する場合 (3)

原文に、《…どうすればいいのか、といった「いけん」を書くのが小論文です。》という箇所があり、「いけん」から小論文までが赤字で書かれています。赤字の部分は第3指示符を使用することにしています。
ト■イッタ■第3指示符■「イケン」ヲ■カクノガ■ショーロンブン第3指示符デス。
となっていますが「いけん」は第1カギでもいいのでしょうか。またその前は一マスあけるのでしょうか。

【A】

「てびき」p133 3.(3)にあるように、指示符類の内側に第1カギが続く場合は、その間を一マスあけるか、一般書では第1カギを第2カギに置き換えることができます。
小論文について書いてある本ですから参考書または実用書かと思いますが、赤字で書いてあるところを指示符で囲むと指示符の部分が非常に多くなるのではないかと思います。
原本の点訳方針に関わることですので、一概には言えませんが、赤字の部分に指示符を用いるのは、点訳書全体を読みにくくしているのではないかと思います。また、第3指示符は主に問題文の傍線・下線部などに用いるものですので、このような文章中の赤字の部分に用いるのはあまり一般的な用い方ではないと思います。
解説書の本文の赤字は、「てびき」p110 【処理】に該当し、[参考]に書かれているように、省略した方がよい例になると思います。
プライベートサービスや学校からの依頼の点訳でこのような希望があった場合は、別です。

12.p134 3.囲みの記号が他の記号と連続する場合 (4)

カギの内側に第1カギがある場合の処理について伺います。
「てびき」の例はカギが連続する場合の処理ですが、連続しなければそのまま第1カギを使えるのでしょうか。
例: 日本経済新聞社発行『仕事中だけ「うつ」になる人たち』
第2カギの内側の第1カギはいかがでしょうか。
例:《交響曲第二番「小ロシア」》
(上記《 》は原本の文脈上、第2カギを用いています)
カギの中にさらにカギが必要な場合は、ふたえカギか第2カギと思っていたのですが、誤読のおそれがなければ、第1カギを用いても差し支えないのでしょうか。

【A】

日本経済新聞社発行『仕事中だけ「うつ」になる人たち』
《交響曲第二番「小ロシア」》
ご質問の二つの例は、ともに誤読される恐れはありませんので、第1カギを用いることができます。

13.p134 3.囲みの記号が他の記号と連続する場合 (5)【処理】

原文に、「ド」~「ミ」とあります。
(5)に『波線の前後ろに第1カギが続く場合、第1カギを第2カギなどに置き換える。』とあります。また、【処理】に『原文の文脈上差し支えない場合は、全体を第1カギなどで囲むことができる。』とあります。
例をみても【処理】の方を使用する方が読みやすいように思うので、【処理】の方を使用しようと思いますが、『文脈上差し支える』場合とは、例えばどんな場合なのでしょうか。
また、原文の「ド」~「ミ」は、どうしたらよいでしょうか。
『試しに「ドレミファソラシド」と口ずさんでみましょう。たいていの人は「ド」~「ミ」あたりが地声になっているのではないでしょうか。ちなみに、ジャパネットたかたの高田明さんは日本で唯一「シ」で話せる人です。』

【A】

【処理】を用いて、全体を第1カギで囲み、「ド~ミ」と書いてよいと思います。墨字で、地の文の中で、ドやミ、シだけを書いては紛らわしいので、地の文から浮きだたせるためにカギで囲んだと思いますので、「ド~ミ」全体を一つのカギで囲んでも文脈上差し支えない例にあたると思います。
「文脈上差し支えない場合」という表現は、原文には多様な表現があり、すべてを想定することは不可能ですので、「てびき」ではこのような表現を用いています。
たとえば、
犬棒かるたが江戸と京都では中身が違うことを説明した文が以下のようにあった場合、
江戸は「犬も歩けば棒にあたる」~「粋は身を食う」、京都は「一寸先は闇」~「雀百まで踊り忘れず」
このように中にマスあけが含まれる場合はひとつのカギに囲むことはできません。
また、たとえば、新幹線の駅名を列挙し、のぞみ停車駅をカギに囲んで書いているような場面で、「東京」~「新大阪」のようにそれぞれがカギに囲まれていることに意味がある場合には、「東京~新大阪」とするわけにはいきません。
もちろんそこだけを第2カギにすることもできませんので、このような場合は、はじめから原文でカギに囲んでいるところを全体に第2カギで点訳するなどの方法になります。

14.p135 3.囲みの記号が他の記号と連続する場合 【備考】

【備考】に第1カギの閉じ記号の後ろに促音符が続く場合はそのまま書いてよいことが示されていますが、
「ぱくッと食べる」の「ッ」がいかにも美味しそうだ。
という文章の「ッ」は、カギの中に②の点のみで表して問題ないでしょうか。

【A】

②の点で表して指示符の閉じ符号と同じ形になっても、文が続いていればよいのですが、単独の促音の場合は読み取りにくいので、「ソクオン」と書くか、または「チイサイ■ツ」のように言葉で書いた方がよいように思います。

15.p135 3.囲みの記号が他の記号と連続する場合 (7)【備考】

アルファベットの本の題名を『~』で囲み、その後に英語で出版名がある時は『~』を書いた方がいいのでしょうか。『~』を削除した場合、全部を外国語引用符で囲んでよいのでしょうか。
『Essays On … Tradition』University Press

【A】

全体を外国語引用符で囲み、『~』を、英語のコーテーションマークにするのが自然な方法だと思います。
外国語引用符の中のコーテーションマークは、形が同じですが、「てびき」p135【備考】(2)にあるようにそのまま用いることができます。

16.p135 3.囲みの記号が他の記号と連続する場合 【備考】

促音符ですが、慌てた様子で、「っ本当」、「っはい」、「っ申し訳ない」などはどうなりますか。

【A】

促音はカギで囲まれて単独である場合、前後一マスあけでポツンと一つある場合、点線・棒線の前や後ろに、1文字だけある場合などは、促音と読み取りにくいので、省略したり、「ソクオン」「チイサイ■ツ」などと書いたりするなどの工夫をします。
ご質問の場合は、カギの開き記号の直後にあって、第1指示符の閉じ記号と同じ形にはなりますが、後ろに語があるので、促音であることが読み取れると思います。
促音を②としますと、
「②■ホントー」「②■ハイ」「②■モーシワケ■ナイ」と書いてよいと思います。